サムライ少女のヒーローアカデミア   作:crack

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15話 USJ編-2 疾く

 

 

「一かたまりになって動くな!!」

 

奇しくも、それらが現れたのは『人命救助訓練』の時間であった。直前まで13号が話していた通り、これから凛たちは、自らの力を持って、いかにして人を救うかを学ぶはずであった。

 

「何だアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

「動くな!あれは……」

 

しかし、凛たち1-Aの前に姿を現してたのは、それとは真逆のことに力を行使するものたち。強大な力を、世間の人々の生活を脅かすために使う、途方もない悪意。

 

(ヴィラン)だ!!!」

 

続々と、黒いワープゲートのようなものの向こう側から(ヴィラン)が現れる。先頭に立って率いているようなのは、全身を手に掴まれたような不気味な容姿をした細身の青年。さらに補佐であるかのように隣に立っているのが、黒いもやが人の形をとったような人物。おそらく、主犯が手の男で、ワープゲートを出しているのが黒もやの男だろう。

 

学内への(ヴィラン)の侵入。それに対する動揺はあったが、しかし腐ってもヒーローとその卵である。すぐさま情報共有と現状の確認が行われた。

校舎と離れたUSJという隔離空間に少人数(クラス)が入る時間帯の把握、侵入者用センサーのジャミング、外部との通信の遮断、そして大量の人員を揃える手腕。彼らの奇襲は、用意周到に計画されたらしいものだという結論が出る。

 

生徒たちは未だ狼狽える者も多くいる。だが、しっかりと状況を把握し打開を試みるものもいた。

 

「……電気、その耳のやつ……」

「あ、ああ、特製電子変換無線(コレ)か?」

「それって……外と連絡、できない?」

「っ!試してみる!」

 

「先生は!?一人で戦うんですか!?」

 

そんな中、出久の声が聞こえる。そちらに視線を向けてみれば、相澤先生がゴーグルをかけて戦闘準備を進めているところだった。

 

「……せんせ、私たちも……」

「ダメだ。下がってろ」

「……でも」

「お前は生徒だ。大人が守る義務と責任がある」

「………わか、った」

「いい子だ……13号、任せたぞ」

 

そう言って、相澤先生——イレイザーヘッドは、(ヴィラン)の集団の中へ単騎かけていく。

 

イレイザーヘッド。その戦闘スタイルは、《抹消》の個性で見た相手の個性を消し、首に巻いた捕縛布で捉えるというもの。基本的に視界に収められるレベルの対少数において威力を発揮し、大人数での集団戦や敵味方入り乱れたの乱戦では効果を発揮しづらい、と思っていたが。

そんなことはお構いなしとばかりに、イレイザーヘッドは集団を相手に有利に立ち回っていく。目に被せたゴーグルで視線の動きを悟られないようにし、牽制や肉弾戦を多く駆使して順調に(ヴィラン)を片付けていっていた。

 

「すごい……!多対一こそ先生の得意分野だったんだ!」

「分析している場合じゃない!早く避難を!!」

 

天哉の指示のもと、A組の面々は続々と(ヴィラン)たちの群れから離れてUSJの出口へと向かっていく。だが、そこにいきなり行手を塞ぐように、いきなり真っ黒いもやが出現した。

 

 

「させませんよ」

「!!」

 

……確かこいつは、さっきの手の男の隣に立っていたやつ。おそらく個性は『ワープゲート』とかそこらだろうか。

黒いもやが収束して人の形を取り、話し始める。

 

「初めまして、我々は『(ヴィラン)連合』。僭越ながら……この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせていただいたのは——」

 

慇懃なその言葉遣いが、不気味さを加速させる。

 

「——平和の象徴オールマイトに、息絶えていただきたいと思ってのことでして」

「!?」

「なに、言ってるの……」

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ……ですが何か変更があったのでしょうか?まぁ、それとは関係なく……私の役目はこれ」

 

ズッと、黒もやの男が何かを仕掛けようとする。だが、こちらはこちらで13号が”個性”使用の構えを見せていた。13号自身は普段から救助活動に多く従事するヒーローではあるが、彼女の個性『ブラックホール』は飛び抜けた制圧能力を持つ個性でもある。今回の相手が霞状の不定形の異形系であることも考えると、相性はいいはずだ。

 

そんなふうに凛が分析して13号に戦闘は任せようかと考えた瞬間……鋭児郎と勝己が、予想外に黒もやに飛びかかった。そのまま『硬化』と『爆破』の個性で攻撃を仕掛ける。黒もやの男は、それらの攻撃を躱して(・・・)距離を取った。

攻撃は不発。しかも悪いことに、その動きのせいで彼ら二人が13号の『ブラックホール』の射線上に入ってしまったために、13号が個性の発動をストップしてしまう。

 

「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」

 

鋭児郎が血の気の多いセリフを吐いた。だが、やはり悪手に変わりはなく。

 

——その時点で、凛も動き出した。

 

「危ない危ない……そう、生徒といえど優秀な金の卵」

「ダメだ、どきなさい二人とも!」

 

13号の声が背後で聞こえた。いや、この状況で『ブラックホールを発動して黒もや人間を倒す』という元のプランをやり直してはいけない。時間がかかりすぎる。だから最善手は、これ。

 

相手方の油断を誘うべく徒手空拳のまま駆け抜けた凛は、13号の静止を振り切って黒いもやに近づいた。

そしてそのまま、握り拳を作った左腕を腰の横に持ってきて、それを鞘代わり(・・・・)にして『朱鵺』を取り出し……居合を放つ。

 

「散らして……がっ!?」

「ここで引いちゃダメ……悪手でも、一回押したら押し続ける……!しかもさっき、勝己たちの攻撃避けたから……不定形だけど、実体はあるんでしょ……!」

 

その言葉の通り、凛の手には浅くながらも肉のようなものを切り裂いた感覚が残っていた。

 

その勢いのまま、また凛は距離を詰めてもう一太刀浴びせようとする、が。

 

今度の一撃は、直前に黒もや男が個性を発動したのか、広範囲に黒い霧を広げた男の実体を捉えることはなく、ただ黒いもやを手応えなく切り裂くに終わる。

 

(モヤのところと実体のところが……わかりづらい……!)

 

「く……不覚。ですが……散らして、嬲り殺す!」

 

ブワッと、黒い霧が生徒たちを包み込む。凛も、思わず目を瞑って——

 

 

 

 

 

 

「わ……!?」

 

次に目を開けたときには、どこかのビルの一室らしき場所にいた。

ワープゲートで飛ばされたのだろうということはわかった。だが、他のクラスメイトが見当たらないし、そもそもこの場所がどこなのかあまり見当がつかない。しかし状況を理解する間もなく、目の前にいたマスクで顔を隠したヴィランが襲いかかってくる。

 

「来たァ!殺せぇ!」

「……いきなり、なに」

「ギャッ!?」

 

その男ヴィランは意気揚々と襲いかかったものの。

 

凛はそのヴィランの攻撃を半身になって避けたのち、相手の眼球を『朱鵺』で斬りつけてから流れるように峰で首を打って昏倒させた。

真剣で相手を殺さずに無力化する方法は、養父であるヨロイムシャから数多く聞いている。眼球や腱の切断、神経が集中し斬られると激しく痛む場所への斬撃、打撃によって気絶させる方法。欠損さえさせなければ、ヴィランのある程度の怪我は逮捕後に刑務所附属の病院等で治療されるということなので、凛はそこらを狙うことに躊躇がなかった。

まあ、絵面が結構残虐なのは置いておいて。

 

「武器持ちのガキだ!警戒しろ!」

 

じり、とヴィランたちが距離を取る。だが。

 

「よそ見してんじゃねぇ!!」

「横腹ガラ空きぃ!!」

 

刀を持って現れた凛を警戒した他の(ヴィラン)たちが凛に意識を集中させたその隙に、二つの影がヴィランたちに次々と攻撃を加えて戦闘不能にしていく。

その二つの影は奇襲をそこそこで切り上げ、凛の近くへ来た。

 

周囲を囲むヴィランたちを牽制しつつ、三人は会話を交わす。

 

「……勝己、鋭児郎」

「ここ、USJの倒壊ゾーンだよな。ワープゲートで飛ばされたんだろうけど、なんで俺ら三人しかいねえんだ?」

「他のザコどもは別のとこに散らされてんだろ」

「……ん、さっさと片付けよ」

 

そんなふうに言って、三人で周囲を囲むヴィランたちへ攻撃を開始した。屋内にも関わらず、ヴィランの数は思ったよりも多い。この部屋だけでもざっと20人が三人を囲んでいるし、ビルの中には他にも気配が多くある。

 

だがそれも、この三人には関係のないことだったかもしれなかった。

あっという間に部屋の中の敵を掃討し、階下へと向かっていく。その道中、情報共有も兼ねて会話を交わす。

 

「……さっさと他のところも倒して戻ろ……」

「ああ、そうだな。ここに戦闘得意なやつが固まってるし、他の奴らが心配だ!」

「生徒達に充てられたのがこんな三下なら、大概他も大丈夫だろ」

「まあ、それもそうか……お前、そんな冷静な感じだっけ?もっとこう、死ねぇ!みたいな」

「俺はいつでも冷静だクソ髪野郎!!」

「冷静の言葉のいみ、わかってる……?」

「あ”!?やんのかクソぼんやり!?」

「……あほ、勝己……」

 

仲は相変わらずなようで、喧嘩はしつつだが。

凛が勝己の背後に迫っていたカメレオンのような見た目のヴィランを切り捨て、勝己が凛の背後から襲い掛かろうとしていた筋骨隆々の異形型ヴィランを爆破で片付ける。

 

性格の相性は悪い。だが、戦闘の相性は悪くはないようだった。

 

「……心配なのは、相澤先生とかのほう」

 

凛が呟くように告げる。

 

「あ?なんでだ?」

「多分一人じゃ長くは持たないし……オールマイトを殺そうって来た人たちが、無策だと思う……?」

「なるほど、それもそうだな……」

「行きたきゃ勝手に行け。俺はあのワープゲートぶっ殺す!」

「はあ!!?」

 

勝己の勝手とも取れる発言に、鋭児郎は異議を唱えるものの、凛は納得したように頷いた。

 

「ん……確かに、勝己が適任、かも」

「適任も何もねーだろ!あいつに攻撃は……いや、霧崎が一撃与えてたっけか」

「ん。多分、もやの奥に実体がある。私の刀じゃ捉えづらいから、面で爆破できる勝己の方が適任……」

「勝手に話進めてんじゃねえぞコラ……とにかく、こいつら全員ぶっ潰してからだ!!」

 

 

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

しばらくして全てのヴィランの掃討を完了した三人は、すぐさま広場の方へ直行する。

 

そして三人の目に、混沌とした広場の様子が映し出された。

 

入り口の方では、たった今お茶子が黒もやの男を浮かし、その隙に外へと天哉が駆け出して行くのが見えた。きっと応援を呼びに行ったのだろう。

そして水難ゾーンの方にも、出久たちの姿が見えた。彼らも無事包囲網を脱出できたに違いない。

 

だが、問題は。

 

「〜〜〜っ!!」

 

ベキベキと、右腕を巨大なヴィランにへし折られている状態の、相澤先生だった。その不気味な巨大ヴィラン——脳無は、全身真っ黒な筋骨隆々とした肉体に、焦点の合わない血走った目。それと、不気味な剥き出しの脳みそを持っていた。

 

「なんだ、アイツ……!」

「相澤先生を……離して!」

 

ダッと、凛が駆け出す。

繰り出す技は、黒もや男に対して出したものと同じ。左腕に収納した『朱鵺』の柄に手を掛け、居合の構えをとって。

 

「居合……一閃!!」

 

スパンと。

巨大ヴィランの——脳無の右腕が、切り飛ばされた。

 

 

 

 

 






相澤先生救援RTA



凛ちゃんから見れば脳無は『所詮人間だから全然斬れる』って認識なので、斬れます。

ショック吸収?確かに斬撃攻撃は『極小面積に加わる打撃攻撃』と言う見方も可能ではありますが、オールマイトとの戦いでわかるように限界値はあるようなので、それ以上の威力で切りつけたからスパッといっちゃったって考えてください。

ってことで、斬れます。いろんはみとめる。
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