それに合わせて全話にちょっとした修正入れました。見ても見なくても構いません。
観客の歓声を受けながら、生徒たちが一斉に走り出す。
少し遅れて走り出した凛は、フィールドへ入場するための唯一の道である幅の狭い通路に辿り着いた。だが、他にも多くの生徒がその通路に殺到していて、中々面倒なことになっている。
はて、どう突破するか……面倒だ、飛び越えよう。
そう決めて飛び上がった時、直感が凛に何か囁きかけてきた。何かと思えば焦凍が集団の前の方で氷を地面に張り巡らせようとしている。なるほど、自分の移動手段の確保と妨害も兼ねた一手だろう。
凛は空中にいたので問題なかったが、足を凍らされて動けなくなった生徒が何人か見受けられた。
そういえば、ミッドナイトは何してもいいとか言っていたな、なんて思いだす。今更地面に降りて走るのも他の生徒が邪魔で面倒だし、動きの止まった生徒を踏み台にするか。
「うわっ」
「あだっ……何しやがる!」
「いてっ、誰だよ!……可愛いので許す!」
(……跳ねのいい踏み台……?)
奇しくも勝己の宣誓の言葉を実践してしまっているな、と思いながら凛はその通路を抜けてフィールドへ躍り出た。変なのがいたのは無視した。
そうして凛は通路を抜け出して——
その先に一気に広がった光景に、凛は思わず口元に笑みを浮かべた。
まず目に入るのは入試の時の仮想
タイミングを見計らったように、プレゼント・マイクの実況が入る。
『さぁいきなり障害物だ!まずは手始め……第一関門、ロボ・インフェルノ!!』
約十体ほどの入試の時の巨大仮想ヴィランことロボ・インフェルノが生徒たちの行手を阻むべくひしめき合うように配置されていた。どこからこんなのを用意する金が出てくるのだろうか。不思議だ。
障害物……と言えるレベルかどうかはさて置き、凛にとては朗報だった。体育祭、結構楽しめそうだ。
ロボ・インフェルノの群れを見とめた凛は、腕の中から大太刀『大嶽丸』を取り出す。入試の時は『朱鵺』を使っていたが、この巨大な怪物の相手には長刀が適任だろう。まぁなにぶん長いせいで取り扱いの難しさはあるけれど、ロマンを感じるこの大太刀も割と凛は好きだった。
ちなみに、養父の倉庫にある刀のうちの一本である。彼は、外見やヒーローとしてのスタイル、ついているファンからも分かるように結構な武具マニアだ。一人暮らしで金はあったからと買い漁っていたらしい……ちょっと悲しいエピソードだね?
ズバンと景気付けに小さい仮想ヴィランを横真っ二つに斬り飛ばして、凛はロボ・インフェルノに襲いかかった。
先日のヴィラン襲撃の時脳無に負けた件もあって、凛は結構フラストレーションが溜まっているのだ。
「……制御機構、頭なんだよね……そこ斬ればいいかな……?」
なんだかよく理由はわからないが、十体ほどいたロボ・インフェルノがたじろいで少し後ろに下がった気がした。その隙に一体が焦凍に凍らされ倒れ伏す。
凛もさっさと倒してしまおうと思ったのか、一番通り抜けるのに邪魔そうなロボ・インフェルノに目をつけた。
入試の時と方法は同じだ。飛び上がり、腕に乗り、駆け上がり——
『うおっ!1-Aの霧崎が巨大ロボの体を駆け上がってんぞ!?あれどーゆーカラクリだほぼ垂直だぞ!』
ロボ・インフェルノに
制御機構を傷つけられたその緑の怪物は、全身から煙を上げながら地面へと倒れ伏し、砂埃をあげて沈黙する。
確かに図体はデカく、見るものに威圧感を与えるが。
『倒すべきもの』として考えれば、的が大きく、弱点丸わかりで装甲も薄い、鈍臭いただの鉄の塊であった。
観客から、大きな歓声が上がるのも構わず、凛はさっさと駆け出す。すでに焦凍や勝己なんかはさっさと突破しているし、ロボ・インフェルノの撃破に余分な時間を取られたせいで少し出遅れていた。
『こいつぁおったまげた!臆することなく正面突破ァ!1-Aのサムライガール、霧崎だあぁぁ!!』
『流石だな……元から能力は高かったが、実戦を多く経験したのがさらなる成長を促したか』
『つーか刀ってアリなん?』
『体に収納できる分はもう”個性”の範疇だ。だから許可した』
実況のプレゼントマイクの隣に、なぜか解説っぽい立ち位置で相澤先生が入っているようだ。
紹介してくれるのはいいけれど、うるさいのはどうにかしてほしい。あとで抗議しにいこうか。
凛を含めた先頭集団が第一関門を突破し、トップを走るのはいち早く第一関門を突破した焦凍だった。ロボを凍らせて足元から抜けたことで、頭上から避けていったりわざわざぶっ倒していったりした生徒よりも早くにトップに到達している。
『オイオイ第一関門チョロいってよ!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!』
凛の目の前に広がるのは、ポツポツと石柱が生えるだけの巨大な峡谷だった。そして、これで向こう岸に渡れと言わんばかりに石柱の間には細いロープがかけられている。
『第二関門、ザ・フォール!!』
一言で言えば、渓谷の綱渡だろうか。まともにいっては芸がないし、時間が取られて面倒そうだ。
早速とばかりに、焦凍は氷を足下に生成しながらロープを滑りながらわたっているし、勝己の方は『爆破』で空を飛んで移動している。……ああ、私も岩と岩の間を跳べばいいのかな。
というか。
(これ……入り口のところのロープ……全部切ってから飛び越えちゃえば……)
……まぁ、流石にそこまで妨害に命をかけているわけでもないのでやめておいたが。
ぴょんぴょんと、石柱から石柱に飛び移ることで時間短縮を図る。刀は体の中に収納してあるから『刀と触れている』判定なのか、身体能力の向上の効果は継続したままだ。大抵の石柱同士の間はジャンプで飛び越えられるし、溝が広ければある程度まで綱の上を走ってから飛び越えればいい。
刀を持っていると、普段より体幹や柔軟性とかも何故か向上するらしいというのは、凛がこの二週間で色々と検証した結果判明したことだった。
焦凍と勝己は前を走っているし、できればさっさと追いついてしまいたいところだけど……うーん、難しそう……どっかでいい具合に妨害できたらいいんだけど……。
そう思っているうちに、凛も渡り終えて3位の順位をキープしたまま、遂に最終関門まで辿り着いてしまった。
『先頭は一足抜けて下はダンゴ状態!そして早くも最終関門!!かくしてその実態は——』
「なんもない……?」
一見、何もないだけの更地がゴール前まで広がっているように見えるだけ。だがしかし。
『一面地雷原!怒りのアフガンだ!!』
あの人不謹慎だな……とは思ったが、凛はとりあえず臆せず地雷原へと足を踏み入れた。
地雷の位置はよく見れば分かる仕様になっている、とは言うが、それでも確認しながら走っていては時間がかかってしまう。——それに、凛にはその必要はなかった。
『ここで先頭の轟はスピードダウン!反対に爆豪は個性で空を飛ぶことで地雷を回避しながら轟を猛追だぁ!そして3位の霧崎は……アイツなんで普通にトップスピードのまま走れてんの?』
『ああ、アイツは勘がいいからな』
『勘!!!』
相澤先生の言うとおりである。凛は持ち前の勘によって地雷のありそうな場所を避けながら走っているのだった。これでトップとの差は縮まってきたが、まだ足りない。その時、勝己が焦凍に追いついた。
『そーゆー問題かよオイ……ッとぉ!ここで先頭が変わったー!!喜べマスメディア!お前ら好みの展開だああ!!後続もスパートかけてきた!だが引っ張り合いながらも先頭二人がリードかあ!!?』
焦凍と勝己が揉み合っているせいもあって、凛との差は大体10mくらい……これなら、なんとかなるか?
そう判断した凛は徐に体から木刀を取り出した。体内にストックできる刀の数はどうやら5本が限界だと言うのは事前準備の段階でわかっていたので、『朱鵺』と『大嶽丸』、『葉霆』以外は木刀を1本と打撃専用の鉄刀を一本ずつ入れてきておいたのだ。だからまぁ、ここで木刀を一本
凛は取り出した木刀を振りかぶって、タイミングを見計らって——勝己と焦凍の方へぶん投げた。狙ったのは勝己か、焦凍か。いや、そのどちらでもなく、木刀は彼ら二人の前の地面に着弾して。
瞬間、彼らの行手を眩ますように木刀の突き刺さった地雷が爆発を起こした。
前方二人のスピードが緩んだ瞬間、凛は彼らを追い抜いた。
「っ……霧崎!」
「待てやボンヤリィ!!」
『ッとぉ!ここでまたもや先頭が変わったー!遠隔からの地雷起動で一気にトップに……いや!A組緑谷、爆発で猛追———……っつーか!抜いたああああ!!!』
後ろで地雷の大爆発が起こったかと思えば、なんだかものすごい勢いで出久が飛び出てきた。
「デクぁ!!俺の前を行くんじゃねえ!!」
「後ろ気にしてる場合じゃねえな……!」
「……わー」
『元・先頭の3人足の引っ張り合いを止め緑谷を追う!共通の敵が現れれば人は争いを止める!!争いは無くならないがな!!』
『何言ってんだお前』
ほんとに黙ってってほしいと思う。
勝己は爆破で猛追し、焦凍も氷の道を作り始めて追いかける。凛も同様に追跡を開始した、が。
結局、出久が着地と同時に再度の地雷起爆によって、三人の妨害をしつつゴールまで駆け抜けていってしまい……
『さぁさぁ序盤の展開から誰が予想できた!?今一番にスタジアムへ還ってきたその男——』
凛もゴールに辿り着きはしたものの、残念ながら一位ではなくて。
『綠谷出久の存在を!!』
出久が歓喜と共に拳を観客席で眺めていたオールマイトに向けて突き上げたのを、凛は少し悔しそうに見ていた。
最終順位
1位:緑谷
2位:轟
3位:霧崎
4位:爆豪