12月中旬くらいまでだいぶ忙しいんで、投稿間隔がまちまちになると思ひます。
「予選通過は上位42名!そして次からいよいよ本戦よ!ここからは取材陣も白熱してくるわ!気張りなさい!!」
障害物競争が終わって、最終順位が発表された。
凛は出久に抜かれた後にまた焦凍にも抜かれてしまって3位になり、それでちょっとだけ落ち込んでいたが。ミッドナイトが次の競技の説明をすると言い出したので、気を取り直して前を向くことにした。
「さーて、第二種目よ!次の競技は……コレ!『騎馬戦』!!」
「騎馬戦……!」
「……ん、刀アリかな……」
「木刀ならセーフっしょ」
ルールは簡単で、予選を突破したものたちで2〜4名のチームを作り、騎馬を組んで戦うというもの。そして各騎馬にはそれぞれポイントが与えられ、そのポイントは障害物競走の順位で決まるらしい。42位であれば5pt、そこから順位が一つ上がるごとに5ptずつ与えられるポイントが増えるというものだ。すなわち、3位でフィニッシュした凛に与えられるのは200ptということになる。騎馬に与えられるのは、騎馬の構成員の合計ポイントということだ。
制限時間は十五分、騎馬は崩れても持ちポイントが無くなってもアウトになることはなく、42名からなる騎馬10〜12組が制限時間中フィールド上で戦い続けるという割としんどいものらしい。
とまぁ、そういう風に順調にルールを理解していたわけだが……唐突に、ミッドナイトから予想外のルールが告げられる。
「そして、予選通過一位に与えられるポイントは……1000万!!!」
「……わお」
なんだ、その取ってつけたようなメチャクチャなルールは、とは思いつつも、凛はその1000万ポイントの主人である障害物競走で一位を取った出久に目を向ける。
当の彼も、冷や汗ダラダラであった。
「……1000万?」
……まぁ、実質あれの争奪戦ということになりそうだし、彼と組むのは無しだろうとなると誰と組むかだけれど……
「上をいく者にはさらなる受難を……これぞ、
と、時間がスタートすると同時に続々と周囲で交渉が始まっていく。少しの間ぼーっとしていたが、考えていてもしょうがないかと思いとりあえず凛も誰かに声をかけようかと動き出したところで……誰かが、凛の後ろから彼女に声をかけた。
「アンタ、予選3位の人だよな?俺と組まないか?」
後ろを振り向けば、紫髪の長身の男子生徒——
パッと、口をつぐんだ。
「……なぁ、アンタ、組まねえかって聞いてんだけど……」
口をつぐんだのに理由はない。ただ、嫌な直感が働きかけただけだ。少し周りを見てみれば、彼の後ろには焦点の合っていない瞳で中空を見つめている尾白ともう一人男子生徒がいた。
どうにも、様子がおかしいようだ。
この男子生徒、顔を見かけたことがないし、おそらくA組でもB組でもない。ヒーロー科以外の生徒だろうか。
「オイ、聞いてる?なんとか言えよ」
さっきからしきりに口を割らせようとしてくるな……なるほど、少し読めた。響香が言っていた宣戦布告をしてきた普通科の生徒というのはおそらく彼のことだろう。すなわち、それをするに足る何かの自信があったということ……
つまり、返答はアウトだろうか。ならば、一方的な宣言、あるいは彼以外の第三者へ向けた発言、もしくは独り言ならおそらくセーフ……ふむ。
ならばこうしよう。
「なぁ」
「
「!?」
「そこのあなたも、それで、いい?」
「……チッ。なんだアンタ、見破ってんのか、ヒーロー科サマは流石だな」
「猿夫、私騎手やりたい……」
「あーあー、わかったわかった。霧崎だったっけ。騎手はやっていいよ」
というわけで、凛のチームメンバーは決定した。
騎手に凛を据えて、騎馬として正面を心操、サイド二人を尾白と庄田が務める、という結果になった。ただまぁ、サイド二人は心操の”個性”によって洗脳済みではあるのだが。
その二人を眺めてから、言いたいことは言っておこうと口をひらく。
「……催眠か、洗脳だろうけど……」
「なんだ、文句かよ」
まだ返答させることを諦めていなかったようだ。凛の直感が『これには答えてはいけない』と警鐘を鳴らしていた。
そのため、素早く言葉の向ける先を変更する。
「……猿夫、彼を恨んじゃダメ、だよ?紛れもない彼の”個性”に、彼の実力に、猿夫は負けた……」
「っ……!はぁ、いいよ、もう。”個性”使わねえからちゃんと話してくれ」
面と向かって(?)褒められたのを照れたのか、どうやっても”個性”に引っ掛からなそうな凛に諦めを抱いたのか、そう言って心操は”個性”の発動をやめた。
同時に、凛も嫌な直感が作用しなくなったのを感じて、心操と改めて会話することにしたようだ。
「ん……名前、まだ聞いてなかった」
「普通に喋んのかよ……はぁ、心操人使だ」
「ん、人使、よろしく……」
「……ああ」
そろそろ交渉時間も終わりということで、各自騎馬を組む場所へと向かっていく。ふらふらと操られた状態で後ろからついてくる尾白と庄田を見た心操は、少しの後ろめたさを滲ませながら凛へと声をかけた。
「お前は、あんまごちゃごちゃ言わねえのな」
「……なに、が?」
「コイツらだよ。俺の”個性”見たやつは、大抵気味悪がったり利用しようとしたりするもんだし、洗脳されてるやつ実際に見たら解除しろとか色々うるさく言い出すんだ」
「……ん。さっきも言ったけど、”
その言葉を受けた心操は、少し顔を伏せて答える。
「こんな個性、別にいいもんでもない。
「
「あ?」
「人使は何になりたいの?」
「……俺は………ヒーローだよ。こんな”個性”で、馬鹿らしいと思うけど。憧れちまったモンはしょうがねえんだ」
自分の手のひらを見つめながら、真相はそう答えた。
それに対して、凛は言葉をかける。
「……んーん、なんも、馬鹿らしくない。人使がそう思ってるうちは、人使は絶対にヒーローになれる。……憧れに挑み続けるのは、」
「かっこいいよ、人使」
いつも通りの無表情で、そう告げた。
生まれ持った力による不利、育ってきた環境による不利。それらは全て残酷なことに、『運が悪かった』で片付けられるかもしれなく、引っ提げている痛みはじくじくと心を蝕み続けるのだろう。
だが、折れない心ひとつ、誰かの言葉ひとつ、彼方への憧憬ひとつ。
それがあれば、きっとその逆境は跳ね除けられる。
「……かっこいい、か。そんなの言われたの初めてだ」
「……そ?」
「ああ。お前、人を乗せるのが上手いな」
「………。猿夫、そろそろ行くよ……」
「チッ。なーんでバレんだ……?」
そろそろカウントも少なくなってきて、四人はいよいよ騎馬を組み始める。
「……人使、”個性”の詳細」
「ああ。俺の言葉に他人が答えるとそいつを洗脳できる。衝撃を与えると解除される、くらいだな。お前は?」
「ん。刀をしまったり使ったりできる……」
「うお、腕から刀……。すげえ個性だな」
「人使、ほどでもない……」
「ハッ、ありがとよ」
騎馬を組み終わって、簡単な作戦の共有も済ませてから、凛たちは開始の合図を待つ。
やがて、その時が来て。
『さぁ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!!』
木刀を構えた凛は、スッとフィールド全体を見渡して、一つ息をついた。
『さァ上げてけ鬨の声!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!』
「頑張ろ、人使、猿夫……えと」
「確か名前は庄田だったはずだ」
「……庄田くん」
締まらないが、とにかく騎馬戦の火蓋が、今切って落とされた。
霧崎チーム
霧崎:200pt(3位)
心操:80pt(27位)
尾白:155pt(12位)
庄田:50pt(33位)
TOTAL:485pt
感想、評価等おなしゃす。