サムライ少女のヒーローアカデミア   作:crack

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誤字報告助かっちょりますぅ。


23話 トーナメント-2

 

 

人使と出久の戦いが終わった後、凛は自分のトーナメントの試合が迫っていたために控え室へと続く廊下を歩いていた。本当は焦凍と範太の試合も見たかったが仕方ない、さっさと控室に行ってモニターで見よう。

スタジアム裏の廊下に人気はない。一応この辺りは観客の出入りも可能なのだけれど、みんな白熱している試合に夢中で、下に降りてくるなんてことはしないのだろう。

 

それにしても、さっきの出久だ。人使の洗脳を解くためだったとはいえ、また性懲りも無く自傷していた。いくら仕方がなくても、あの調子でポンポン自分の体を傷つけられては、見ているこっちがいたたまれない。この前出久と話したときに、何か対策……自傷せずにそこそこのスペックで戦えるようにする方法は模索してる、とは言っていたから、なんとかするとは思うけど。

 

でも、どうせまたピンチになったら自分の命すら顧みず他人を助けるに違いない。

そうやって助けられた人はそりゃもう嬉しいだろうし……でも、彼は自分が傷ついて悲しむ人間がたくさんいるという事実をあまり考慮していない。

なんであんな自己肯定感が低いんだろうか。

 

そんなこんなで、半ば愚痴混じりの考え事をしながら控え室までの道のりを歩いていたら、緩くカーブした廊下の向こうから何やら大柄な人物が歩いてくるのが見えた。

 

誰だろう、と思っているうちにそのシルエットはどんどん大きくなってくる。

 

「……あ」

「む?」

 

2mに届きそうな火炎を纏った筋骨隆々の体、やや逆立った赤髪に、鋭い眼光。

凛ですら、何度かテレビで見たことのあるその人物は。

 

「……エン、デヴァー……」

「…君は確か、焦凍のクラスメイトだったか」

 

なぜ日本のNo.2ヒーローがこんなところに、と思ったところで、すぐに合点がいった。十中八九、彼の息子——焦凍のことでこんなところにまで来ていたのだろう。ちょうどそろそろ試合が始まるはずだけれど、彼に激励でも言ってきたのだろうか?

 

「その個性、」

「?」

「第一種目、第二種目ともに見させてもらったが、君の個性はお世辞にも強力とは言い難い」

 

いきなりなんなのだろうかこの人は。

出会い頭に自らのアイデンティティを否定されては、いくら凛といえど頭に来るものだ。しかし目の前の人物はそんな凛の心の機微などわかっていないようだった。

他人の気持ちとかがわからないタイプだろうか。もしくはひどい天然か……焦凍にも若干そういう気はあるけども。それでも彼は、初対面の人間を面と向かって評論するようなことはしないが。

 

「だが、君の刀剣を操る技術は高いレベルにあるな。授業でやったという対人戦闘訓練のことは耳にしている、どうやらうちの焦凍に勝ったそうじゃないか。焦凍にとっていささか不利な屋内戦だったとはいえ、その技量は賞賛に値する」

 

……よく、詳しいところまで知っている。焦凍があの調子だから、家でも父であるエンデヴァーとはあんまりまともなコミュニケーションをとっている方ではないと思うんだけど……

 

「……なんで、知ってるの……?」

「焦凍は学校のことをなかなか話してくれないからな。知り合いを雄英に潜り込ませて、調べさせた」

「…………えぇ」

 

過保護……あるいは親バカか。いささか行き過ぎな気もするが、そう言うことにしておこう。無理やり納得したけれど、凛がちょっと引いてしまったのは内緒だ。

そんな凛の内心を知る由もなく、エンデヴァーは話を元に戻した。

 

「ともかく、君の技量は卓越している。経験は未だ少ないが、それさえ積めば技量という点においてオールマイトに匹敵するほどになるだろう。焦凍がオールマイトを超えるために乗り越えるべき壁の一つとしては丁度いい」

「オールマイト……?」

「ああ、ウチの焦凍にはオールマイトを超える義務があるからな」

 

なんの疑いもないと言うように、目の前の男はそう言い切った。自らの行いに間違いなど一つもないと、その佇まいが言っている。

 

色々文句はあるけれど。

まぁ、想いの動機はなんとなくわかる。彼はNo.2で、つまりはオールマイトに一番近いヒーローと言っても過言ではないだろう。一番彼の背中を見てきた人間だ。

昨今のこの国の状況を見てみれば、どこもかしこもオールマイトを『平和の象徴』として扱うばかりで……要はオールマイトは『象徴』であるからして、競う対象ではなく、讃え、崇め、見上げるのみのヒーローとしているだけなのである。

 

その中で、エンデヴァーだけがオールマイトを目の敵にしている。つまり、彼だけがオールマイトに本気で挑もうという真摯な思いを持っているわけだ。なんとしてでも超えてやるという想い、それは賞賛に値すると思う。

 

だからと言って焦凍にその歪んだ思想を託すのはお門違いなわけだけど、あくまで部外者でしかない私が言ったところで彼の耳には春のそよ風も同然だろう。

 

天井の方から歓声が聞こえてくる。試合がスタートしたのかな、そろそろ行かなければ。

 

エンデヴァーから視線を外し彼の横を通り抜ける。その刹那、凛は口を開いて告げた。

 

「……親って」

「?」

「子供の……一番の理解者だと思うんだけど」

「……それが親子というものだ」

「そして、子どもにとって、親って……すごく大きな存在なんだ」

 

多少困惑したような瞳で彼はそう言う。

なんとなくエンデヴァーの人となりはわかった。真摯な想いを持つ、不器用で鈍感な、それでいて過保護な父親という見方もできるのだが。

ただ、肝心の子どもの本質には目を向けていないように思える。まともなコミュニケーションを取ってないのだから当然かもしれないが。

 

凛は実の両親と過ごした期間が短かった。その点、焦凍は両親がいるだけ羨ましいと思うことはあれど、それが理解者ではないという点では少し同情する。凛には、養父という良き保護者がいた。

子供を外敵から守護し、衣食住を提供し、社会の居場所を確保する。それは親が果たすべき無償の義務であり、見返りを求めるべきものではなく。まして親は、子供の未来を限定する権利など微塵もないだろう。

 

「もっとちゃんと……話し合ったら?」

 

取り返しがつかなくなってからでは、遅い。言葉を交わせなくなってからでは、遅い。

 

曲がり角を曲がって、エンデヴァーは見えなくなった。

 

凛の歩調は荒い。瞳に感情は映っていないが、眉間に皺はよっていた。

 

家族のことすら満足に見られないエンデヴァーにも。

 

そして、そんな父親に囚われっぱなしで、周りが見えていない焦凍にも。

 

なんだか少し、イライラしている。

 

 

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 

『さァ気を取り直して第三試合!さっきはまぁ氷で瞬殺したせいで場内も冷えっひえだったが……こっちは熱い戦い見せてくれ!!!』

『他人の戦いに文句つけんな』

 

焦凍と範太の戦いはどうやら焦凍が早々に終わらせてしまったらしい。範太も戦略は満点に近かったけれど、いかんせん相手が悪かったのだ。

 

焦凍が出した氷で発生した水分を乾かすために時間を要したから、凛にも十分待ち時間はあったんだけれど、プレゼント・マイクも会場もなんだか少し妙な雰囲気になっていた。

 

一方的すぎて範太へのドンマイコールが起きてたくらいだし。

まぁ、今はどうでもいいか。

 

『次の対戦!綺麗な花に惹かれて迂闊に触れれば、鋭い刃が飛んでくる!A組随一の剣客、霧崎凛!』

 

わぁ、っと歓声が沸き起こる。

別に触られたくらいで斬りはしないのに。誤解を招くような発言はやめてほしいな、と凛は思う。続いてステージの反対側によく見知った顔が姿を現した。

 

(バーサス)!こちらもA組、スパーキングキリングボーイ!上鳴電気!』

 

ポケットに手を突っ込み、不敵な笑みを浮かべながらの登場だった。

いざ向かい合ったところで、電気が口を開いた。

 

体育祭(コレ)終わったら飯とかどうよ?」

「……ん、いいよ」

「いいんかい」

「他にも誰か誘う……?」

「……あ、うん。みんなで打ち上げやろうな」

 

目論見が外れたのか、電気がガクッとなる。気を取り直したのか、もう一度、今度は右手に電気を溜めながら話し出した。

 

「そんじゃそん時、俺が慰めてやるよ……」

 

『START!!』

 

プレゼント・マイクの合図が聞こえた。

 

「お前、体の中に刀入れてるだろ?鉄の刀。多分この勝負、一瞬で終わるからよ……!」

 

ああ、なるほど。そういう感じか。

確かにそういえば、体の中に入った刀がそのままの物質的性質を保ってるのかの検証はしてなかったや。一応体の中に刀を入れた状態で体重を測ってみたのだけれど、その場合体重は変わらなかったんだよね。刀の分の質量はどこに行ってたんだろう。

 

でも、だからと言って体内の刀が鉄としての電気伝導性を保ったままではないという保証はないわけで。

まぁ、対策は容易だけれど。

 

さっきからむしゃくしゃしてるし、電気には悪いがさっさと終わらせてしまおう。

 

ダッと、木刀片手にすでにチャージを終えた状態の電気の方へ駆け出す。

 

「遅ぇよ!」

 

彼からみれば、私は”個性”の性質を逆手に取られて焦って距離を詰めているように見えるのだろうか。両手を振り上げて、電気はその”個性”を発動させる。

 

余談だけれど、先生たちと刀の扱いについて協議したとき、基本真剣等に関しては人に向けなければ『どう使うのも自由だ(・・・・・・・・・)』って言われてるんだよね。

 

「オラァ!」

 

腕を地面へとつける、その瞬間。

凛は足を止めて、すぐさま木刀から手を離し左腕から『葉霆』を取り出した。それをそのまま電気の近くの地面へ投げつけてつき刺す。

 

「無差別放電130万ボルト!……ウェ?」

 

直後、フィールド上を縦横無尽に駆け巡るはずだった雷電は、大惨事を引き起こすことなく一本の刀に収束し消えてしまった。

 

それに気を取られたのと、あとついでに全力放電のせいでアホになってしまった上鳴を申し訳ないが木刀で吹き飛ばして戦いを終える。

 

『おーっと霧崎、クレバー!!刀を避雷針代わりにして上鳴の攻撃を凌いだ!そしてそのままダイレクトアタック、上鳴戦闘続行不能!!』

『確かに刀は何にでも使って良いと言ったが……もう少し条件考えるべきだったか』

 

原理は簡単だ。

まずこちらから焦ったように突っ込んで、電気の攻撃のタイミングをこちらから意図的に限定する。実際近距離での戦いの中で不意をついて無差別に放電される方が不味かったわけで、それを避けるためだ。

そういえば、対人戦闘訓練の時にも似たような手法を使った記憶がある。『後の先』?いや、『先の先』って言うのだろうか。

 

あとはプレゼント・マイクも言ったように刀を避雷針にして解決だ。

 

『瞬殺!あえてもう一度言おう、瞬・殺!!勝者、霧崎凛!』

 

歓声が湧き上がった。二戦続けてのショートマッチであり、さらに割と地味な試合だったにも関わらず観客はそのボルテージを保っており、拍手は鳴り止まなかった。

 

倒れ伏した上鳴にそばに屈みこんで持ち上げる。ちなみに俵担ぎだ。

とりあえず保健室に運べばいいだろうか。

 

「あとでご飯の時、慰めてあげた方がいいのかな……」

 

やめてやれと、どこからか声が聞こえてきたそうな。

 

 

 

 





木刀で人を叩いちゃいけません。
バットと同じですが、頭叩いたら普通に死ぬ可能性あります。

あと木刀軽いんで人を叩いでも普通吹っ飛びません。人を叩くのはやめましょう。




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