サムライ少女のヒーローアカデミア   作:crack

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4話 霧崎凛:オリジン

 

 

少女の人生は、始まるのがやや遅かった。

 

と言ってもそれはただ単に生まれるのが遅かったとか、自我が芽生えるのが遅かったとか、そういうわけではなくて。

自らの意思で人生を歩み始めるのが遅かったということである。

 

覚えている限り、父と母の間には、母から父へという一方的な愛だけがあったように思う。そして、母から少女へ、という愛のベクトルは皆無であった。

 

父が30という年齢で早逝してからは、その傾向はさらに顕著になったように思う。母は恵まれた容姿を活かして、地位のある男や金のある男といった、社会的に力のある男たちの間を行ったり来たりしていて、少女はただ一人、家の居間の、冷たくなった畳の上に置き去りだった。

 

母は、自らが女であるにもかかわらず、女性という立場に対しひどく否定的であった。女性は社会に置いて男性よりも弱い立場であり、女性は男性の庇護を受けなければ生きていけないという歪んだ考えを持っていた。

早い話が、時代遅れの女性嫌悪主義者(ミソジニスト)であった。『個性』が蔓延し、男性と女性との間で社会的地位の差異がほとんどなくなったと言ってもいい現代の個性社会においては、ひどく馬鹿らしい考えだと言える。

 

母自身が無個性だったことや、古くから続く古典的な名家出身だったことも、そう言った考えを助長する要素であったのだろう。

ともかく、女として生まれた少女は、母から見向きもされなかった。増してや家族愛など、あり得るはずもなかった。

 

 

 

少女はしかし、母の愛が欲しかった訳だが。

得られたかどうかと聞かれれば、否という答えしか返せない。

 

 

 

少女の父は、古風な剣士だった。父の持つ個性が『サムライ』という、すごくわかりやすいものだったのもあるし、何より彼自身の性質がとても禁欲的(ストイック)だった。

しかし、戦闘向きの個性であったからといってヒーローというわけでもなく、ただ自身を高めるため、とういう目的で刀を振るう男だった。

 

父と母が結婚するにいった理由はよく知らない。名家としての見合いの結果か、母のゴリ押しに父が折れたか。とにもかくにも、父は母に興味を抱いていなかったように思う。

それこそ、少女が何故父と母の間に生まれたのかもわからないほど。

 

 

しかし父は、少女に対しては、愛と呼べるものではないにしろ、母よりかは気にかけていた。不器用な優しさではあったが。カレーの一杯、頭のひと撫で、帰宅の挨拶。

ともかく。それらの小さな優しさが、少女にとっては一寸の光明と言えた。

 

 

父の死は、少女が生まれてからたったの3年後のことだった。父が死んだその日から、母は既に別の男と交際を始めていた。少女はこの日から、暗く、寒く、何もない居間の片隅で、(かしま)しい母の声と名も知らぬ男の笑い声に怯えながら生きることになったのだ。

 

 

 

 

少女がよくいた居間には、一本の刀が飾られていた。漆黒の鞘は闇に溶け込んでいたが、結ばれた下げ緒の赤色が、光の差しこまない居間の暗闇にあって、異様に少女の目を引く。

父が生前使っていたもので、少女も何度か彼がそれを振るっているのを見たことがあった。

 

 

ぼんやりと虚空を眺めながら、腹を空かせて、死んだように動かないでいた少女は、ある日。

ふと、導かれるように、その刀に手を触れた。興味が湧いたからか、死のうと思ったからか、——亡き父の温もりを求めたからか。

 

 

ともかく、その日から、少女の世界はわずかに色づいたようにして、動き出したのだ。

 

飯を食い、水を飲み、刀を振るう。それだけの日々だったが、小さな少女の世界は、遥かに満たされていた。丁度刀を手にした日から個性も発現し、刀剣を操る才能はどんどんと伸びていった。

 

それから二、三年ののち、母は警察に逮捕された。詳しいことは少女は知らないし、知ろうとも思わなかった。ただ、母が警察に連れて行かれる間際に久しぶりに見た、母の目だけは何故かおぼえている。

 

初めて向けられた、無関心以外の感情を示す目だったから。その時ばかりは、少し嬉しかった。最後に関心を示してくれたから。

嬉しかったけれど、記憶の中のその時の顔は、ぼやけていて思い出せない。

 

 

 

——きっと、わらっていたようにおもう。わらっていた、はずだよ。

 

 

 

 

 

それから少女は、父の友人だというヒーローに引き取られた。

2本の刀を駆使して戦う老年の男性は、少女に対し父と同様に不器用ではあったものの、いろいろなことを教えてくれた。

少女が漠然とヒーローを志すようになったのも、この頃からだろう。

 

少女は、強くなりたいと思うようになった。

ひとかけらの灯火をくれた父のように、その灯火に薪をくべてくれた養父のように。そして——母に強くなった自分を見せるために。

誰かの心に、自らの強さで光を灯せる者になりたいと、願うようになった。

 

それが、少女の原点(オリジン)

 

そしてこれは、空虚だった少女が、人並みの暖かさを手にして、父の刀を手に誰かを救う、そんな物語。

 

少女——霧崎(きりさき) (りん)の、物語。

 

 

 








以下、主人公のスペック


 霧崎 凛<きりさき りん>(15)
 誕生日:12/12
 身長:166
 体重:刀3本分
 好きなもの:刀、雪、卵料理
 出身地:富山県(今は神奈川在住)
 血液型:AB型
 個性:サムライ
 侍っぽいことができるぞ!『斬れる』と判断したものは大抵斬れる!
 索敵、支援能力には欠けるが、純粋な戦闘能力としてはピカイチだ!
 性格:無口なマイペース

 説明:
 何やら重い過去を持っているらしい、この世界の主人公。桃色の髪と薄い青色の瞳を持った可憐な女の子。性格は無口でマイペースで、意外と頑固。大抵のことは気にしないけれど、うるさいことは苦手。おっぱいはそこそこ。勘がすごく鋭く、その鋭さはまるで正しく『第六感』として確立されていそうなほど。
 個性がシンプルゆえ、成長のさせ方をちょっと悩んでるけど、なんとかなるでしょう(適当)。
 引き取り手は、ヴィラン台頭の際に神速で引退を表明した、ヒーロービルボートチャートJPNo.9のヒーローこと、ヨロイムシャさん。絡みを描くのが楽しみです。ちなみに主人公→ヨロイムシャさんの好感度は結構高いです。

 夢は、自らの刀で未来を斬り拓き、たくさんの人々の心に希望の光を灯せるようなヒーローになること。父のように。

 富山県で好きなのは、雪景色と、氷見うどん。卵料理は、養父が作ってくれた少し形の崩れた卵焼きが一番好き。だけど彼はあんまり作ってくれない。



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