サムライ少女のヒーローアカデミア   作:crack

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雄英の立地に関する描写は完全なる独自設定です。原作じゃどこにあるか明かされてないからね。静岡あたり、ってことは言われているみたいですが、富士山が見えたりもしないですし。適当に描写を埋めたかっただけなので、あんまり深く気にしないでください。
主人公とヨロイムシャさんのおうちは大体神奈川の小田原あたりとしています。


6話 再開/顔合わせ

 

 

凛の家から雄英までは、電車に揺られて大体1時間くらい。

富士山にほど近い国有の広大な土地に、規格外の敷地面積を持つ雄英は位置していた。国が、これだけの面積を持つ学校を建てるときに敷地の確保に困った挙句、元々は自衛隊の駐屯地があったこの辺りに建設することを決めたらしい。

確かにヒーローたちの台頭で自衛隊の存在意義が薄まったとはいえ、現役の国防戦力の基地を学校の敷地にするのはどうなんだろうか、とは思わないこともないが。

 

雄英の最寄りに着き、読んでいた本をパタンと閉じて席を立った。

凛の体を動かせない暇な時間の過ごし方は、もっぱら読書だ。と言っても、暇つぶし以外の目的はなく、生粋の濫読家で、文字を追っていれば満足という(たち)である。

今読んでいたのも、『猿でもわかる理論物理学の極意』とかいう、難しいのか簡単なのか混乱するような書物だ。

 

改札を出て駅の外に出れば、すぐに雄英の威容は目に入る。見るのは入試以来だけれど、改めて馬鹿げたものだと思う。

と、駅の出入り口で足を止めていたら、凛の背後から声がかかった。

 

「あ!」

「……?」

 

声の方へ視線を向ければ、小走りでこちらへ向かってくる少女の姿が見えた。黒の短髪が跳ねて、走ったせいか頬が少し高潮している。他でもない、入試の前に少し話した少女、響香である。

 

「ん……おひさ」

「あ、うん。久しぶり。アンタも受かったんだ、良かった」

「響香も……おめで、とう?」

「アンタもね」

 

一言二言再会の言葉を交わしてから、凛と響香は歩き始めた。

桜吹雪もほどほどに、穏やかな春の日差しが道を照らしていた。

 

「入学式かー。どんな感じなんだろうね。やっぱり雄英だから、特別な感じなのかな?」

「ん、わかんない……。雄英だし、もっと飛び抜けてるかも、ね」

「あー、確かに。教師陣のクセとか凄そう。全員トップヒーローだし」

「ん」

 

会話が途切れて、響香はまた話題探しの旅に立った。入試の日の朝に続いて、これで二度目である。2回目にして、響香は早くも凛の持つ独特のテンポに慣れてきてしまっていた。

そしてまた、響香が見つけた新しい話題も、凛の背負っていた荷物だった。今回は、入試の日のものより幾分か大きい。

 

「そのでかい荷物、なに?」

「これ……?おじいちゃんが持ってけって言った、刀が4本」

「へぇ。ウチは刀のこととかよくわかんないけど、そんなにいるもんなの?」

「ん。うち一本は木刀だけど、残り3本はそれぞれ別……」

 

入っている刀のうちの一本は、入試でも使った黒鞘の太刀である『朱鵺』だ。持っているものの中で最も切れ味がよく、3歳の頃から使っているから最も手に馴染んで取り回しも効く。

しかし、太刀での戦いはそう何度も打ち合いするものではなく、大抵が一撃で勝負を決めるのを目的とするものだ。従って、乱戦に持っていったりするのに不向きなことが多々ある。そのために、荷物の中には他にも乱戦用の打刀である『葉霆』と、あとは、特殊な用途で使うことがあるかもしれない全長が凛の身長よりはるかに大きい大太刀である『大嶽丸』が入っていた。

 

「ふーん……アンタ、入試の時も刀使ってたけど、どんな個性なの?……あ、ウチのは『イヤホンジャック』って言って、この耳たぶのプラグをいろんなとこに刺して音を集めたり、逆に大音量を放出したりできるってやつなんだけどさ」

 

一方的に他人の個性だけを聞くのはまずいと思ったのか、響香は自分の耳たぶから伸びるコードをぷらぷらと揺らしてそう語った。その響香の心の機微に気付いたか気づかなかったか定かではないが、凛は特に気にせず口を開いた。

 

「……私のは、『サムライ』って個性。斬れると思ったものなら、なんでも斬れる」

「シンプルだね。分類でいうと、増強型?」

「んー。よく知らないけど、複合型?……らしい」

 

こてん、と首を傾げながら答えた凛に、響香は怪訝な顔を向けた。

 

「アンタ、自分の個性なのに、詳しいこと知らないの?」

「ん。お父さんは、教えてくれる前にいなくなっちゃったし……」

「え”。」

 

突然に叩き込まれた爆弾に、響香はものの見事にフリーズした。それを気にした様子もなく、凛は続ける。

 

「複合型らしいってのは、引き取ってくれたおじいちゃんから聞いただけ……今できるのは、『斬りたいものを斬れる』ってくらいだし、他にもできることはあるかも、って言われたけどね……」

「え……っと、その、変なこと聞いちゃってごめん……」

「……?ん、いーよ?」

 

何気なく突いた薮から予想外の大きさの蛇が出てきたために、響香は質問をしたことを後悔した。まあ、蛇の主は大して気にしていないのだが。

でも、と響香は少し考える。確かに、『刀を持つと身体能力が向上する』とかならともかく、『サムライ』という個性の名前で能力が『斬れると思ったものを斬れる』だと少しチグハグだな、と。

そんな響香の小さな疑問は、雄英ヒーロー科、1-Aの教室の扉の前につくと同時に霧散した。

 

「おー、でっかいね」

「……ん、おっきい。誰でも通れるように、かな」

「!あー、バリアフリーか、なるほど」

 

その大きな扉を開けて、二人は教室の中に入る。

教室の中を見渡すと、もうすでに何人か椅子に座っていた。いかな雄英生といえど、新入生であれば少し緊張しているようだった。

……まあ、既に。机の上に足を乗っけて教室に入ってくる人間にガンを飛ばしているような、個性丸出しのクラスメイト予定の男子はいるのだが。

 

教室に入って座席表を確認すると、響香と凛は意外に席が近かった。

そしてついでに、またしても入試以来の名前を二つほど見つけた。自分の席に向かう途中で、凛はその男子の方に声をかける。

 

「電気と踏影……おひさ」

「お!霧崎じゃん久しぶり!いやー、入試ん時はありがとな!お前の作戦のおかげで俺も受かったぜ!」

「ん……電気の自分の力のおかげ、だと思う……」

「だが、お前の作戦で合格に一歩近づけていたことは確かだ。俺からも感謝を贈ろう」

「ん」

 

共に力を合わせて巨大ロボを打ち倒した、常闇踏影と上鳴電気の二人だった。一言二言再開の挨拶をして、凛は自分の席に向かう。

刀のケースを邪魔にならないようなところに置いてから席に着くと、程なくしてメガネをかけた大柄の男子生徒が新たに教室に入ってきた。……生真面目そうなその男子が、先ほどから机に足を乗っけたポーズをとっていた生徒に目を向けた瞬間、凛はなんだかとても、嫌な予感がした。

 

「む……!コラ、きみ、机に足をかけるな!机は足を乗せるところではない!」

「アァ!?」

 

案の定、うるさくなった。再度言うが、凛はうるさいのがめっぽう嫌いである。大きな声が頭の中にガンガン入り込んできて、思考が鈍るのだ。

数十秒立ってもその口論が収まりそうにないのを見て、いよいよ我慢できなくなった凛は立ち上がって二人の方へ向おうとする。

そんな凛を見て、響香から静止が入る。

 

「ちょ、やばそうだしやめときなよ」

「やだ。うるさいの、きらい」

「ええ……」

「耳郎だっけ?諦めろ、こいつ見かけによらずめっちゃ頑固だから。俺も入試の時酷い目に遭った」

 

後ろで聞こえる響香と上鳴の会話をよそに、凛はずんずんと口論を続ける二人の方へ向かっていった。

 

「ねえ、うるさい」

「……む、すまない、気づかなかった。この男子生徒に注意していたのだが、迷惑だっただろうか」

「うん」

「わかった、次からは周りの人に配慮しながら注意することを心がけよう」

 

一方は、なんとか収まったようだ。だが、問題はもう一方。

 

「次から次へとモブが御苦労なこったなぁ!?」

「む……モブじゃ、ない」

「ああ!?こちとら入試トップだぞ!?」

「私は、次席……だけど」

「ハッ!そこらのモブと変わんねえじゃねえか」

「……いーよ、ここで、決着つける……?」

 

凛はまあ、日頃から負けず嫌いだ。入試の時に巨大ロボから逃げなかったのも、ヒーローになる人間として、と言うものもあるが、逃げたら負けな気がしたからである。

そんなところと、意外に頑固な性格も相まって、少々子供っぽいというか。そう言うところが原因で、中学時代はマスコット的な扱いだった。

 

一つの喧嘩が収まった途端、気づけばまた新しい戦争が勃発しそうになっていて、響香含め他のクラスメイトは結構ハラハラしたのだが、それは一人の男子生徒の登場で幕を下ろすことになる。

メガネの生徒はその緑頭の男子生徒の方へ声をかけに行き、机の上に足をかけていた生徒も凛から意識を逸らして、何か思うところもあるのか複雑そうに、教室の入り口に立つ彼を睨んでいた。

 

かくいう凛も、なんだか少しだけ、その生徒が気になった。彼には特に目立った特徴もなく、地味な格好だったが。直感が囁いた、と言うべきか、ともかく喧嘩をしていた意識はどこかへいってしまった。

 

そんな意識の間隙を突くように、声がかかった。

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け……ここは、ヒーロー科だぞ」

 

手入れのされていない長髪、無精髭、不健康な色の肌、充血した眼、寝巻き姿。まごうことなき不審者が、教室の入り口に寝転んでいては、さすがの凛でも驚く。

その不審者は、ゼリードリンクを吸い込み、教室に入って寝巻きを脱ぎながら続けた。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね……」

 

なんら不思議なことはないとでも言うように、その不審者は話を続けた。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

………担任で、あった。

 

クセの強いクラスメイトに、クセの強い担任。

なんだか凛は、ここでの学生生活がとても大変なものになりそうな予感を抱えていた。

 

 

 

なお、当の本人も結構クセが強いことには目を瞑るものとする。

 

 

 






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