サムライ少女のヒーローアカデミア   作:crack

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9話 屋内対人戦闘訓練-1

 

 

 

『んじゃ、次の英文のうち間違っているものは?』

 

雄英での高校生活が始まって、記念すべき最初の授業日。その午前中、凛たちヒーロー科の面々も一般の学生らしく、必修科目の勉強に勤しんでいた。

 

『おらエヴィバディヘンズアップ盛り上がれー!!!』

(普通だ)

(普通だ)

(普通だ)

(クソつまんね)

(うる……さい……!)

(関係詞の場所が違うから……4番!)

 

一つ忘れてはならないのは、彼らは偏差値79の学校の入学試験の筆記を突破したものであり、同時にヒーロー科独自のカリキュラムのせいで午後の授業が潰れるため、高校の課程を一般校よりもおよそ1.5の速度で終わらせなければならないと言うことだ。

 

当然、授業のレベルも初回から高いものだった。

 

 

 

 

 

午前の授業が終わって昼休みになると、凛は食堂には行かず、教室で弁当を食べることにした。その弁当は言うまでもなく、彼女が朝早起きして作った手作り弁当である。机の横にかけておいた鞄から弁当を取り出そうと、身をかがめた。

 

 

ガシャッ

 

 

「……あー」

 

ちょうど弁当を取り出そうとした拍子に腕が机に当たってしまい、その衝撃で筆箱が落下してしまい、悲惨な光景を繰り広げていた。授業初日で、慣れない机のせいで目測を見誤ったのか。

面倒だ、と思いながら、中身を拾い集める。すると、そんな凛の隣に、ふっと影が差し込んだ。

 

「大丈夫か」

「……ん」

「手伝う」

「……ありがと。えっと……」

「轟だ」

 

そういって、ペンやら何やらを拾うのを手伝ってくれた。

轟、だったっけ。第一印象はクールでとっつきにくそうな感じだったけど、意外と優しいものだと、凛は思った。やがて拾い終わって、凛も取りこぼしがないことを確認した。

 

「ん。だいじょうぶ」

「そうか、よかった」

「……轟も、お弁当?」

「ああ、そうだけど」

「いっしょ、食べよ?」

「……いいぞ」

 

許可を貰った凛は、轟の机の方へ弁当を持って向かっていく。

向かいの机をくっつけて、二人とも弁当を広げ始める。

 

「……轟、名前、なに?」

「焦凍だ」

「ん、焦凍ね……」

「お前、他人は名前呼びなのか」

「……友達は、みんなそう」

「そうか」

 

凛が広げた弁当は、弁当の所有面積のうちの半分に卵焼きがぎっしりと建設されているという、なんとも癖の強いものだった。焦凍もそれを見てかすかに目を見開くが、そんなことは気にせず凛はぱくぱくと卵焼きを頬張っていく。

 

「……卵、好きなのか」

「ん!……あげない、よ?」

「……別に、元から取ろうとは思ってねえ」

「焦凍のは……お蕎麦?」

 

凛の向かいで弁当を広げ終えた焦凍の昼飯は、弁当ではあまり見ることのない、蕎麦だった。

 

「好物だからな」

「ん。私は卵料理が好き」

「見りゃわかる」

「……そう?」

 

まあ、そんなこんなで。

凛の昼休みは、緩やかに過ぎていった。

 

 

 

 

お弁当を食べ終わって、午後の授業の開始を待っていると、続々と他の1-Aの面々も教室に戻ってきた。ちらりと周りを見渡してみると、これから始まる授業に対する期待故か、みんな目を輝かせながら待っている。かくいう凛も、少し楽しみにしていた。

 

「わーたーしーがー!!」

 

チャイムが鳴ると同時に、廊下の方から声が聞こえてきた。誰しも一度は聞いたことがあるだろう、この国の平和の象徴の声だ。

 

「普通にドアから来た!!!」

「オールマイトだ!すげえや、本当に先生やってるんだな!!」

銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだ……画風違いすぎて鳥肌が……!」

「オールマイト……!本物は、はじめて……」

「おー、霧崎もやっぱオールマイトは好きなん?」

「ん……人並み、には」

 

ヒーロー基礎学。各学校に設けられたヒーロー科でのみ受講できる、ヒーローとしての素地を作り、ヒーロー免許取得を目指すため、様々な訓練を行う課目だ。

ざわざわと一段と騒がしくなる生徒たちの前に立ち、オールマイトは体を引き絞るようにした後、『BATTLE』と書かれた札を取り出した。

 

「早速だが今日はコレ!戦闘訓練!!」

 

戦闘訓練の実施が、言い渡された。まだ授業一日目だし、時期尚早な気もするが、初っ端の授業で『それらしい』授業を行うことで、ヒーローになる人間としての意識を育てるという目的もあるのだろう。

そしてそのことを裏付けるように、生徒一人一人に戦闘服(コスチューム)が配られた。

 

「格好から入るってのも大切なことだぜ、少年少女!自覚するのだ!!今日から自分は———」

 

凛も、自らのコスチュームを受け取って、自分の気持ちが高揚していくのを感じていた。

 

「ヒーローなんだと!!!」

 

 

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

凛も自分のコスチュームに着替えてから、他のクラスメイトよりもやや遅れてグラウンドβへ出た。と言うのも、着替えるのに若干の時間を要したためである。

凛はコスチュームの要望を、個性の詳細以外は『動きやすく。あと和服っぽく』とだけ書いて提出したために、今の今までどんなものが来るのか知らなかったのだ。

実際届いた物は、凛の想像以上のものではあったが。

 

……ちなみにこのコスチューム制作の裏話として、あまりの要望の少なさに困った制作側から「もう少し要望を増やすか、おまかせというのであればせめて着用者の写真を送ってくれ」いうクレームが入ったというものがある。そしてまあ、面倒臭がりの凛は自分の写真を撮って送っていたのだが。

その結果として、凛の写真と"個性"の格好良さを見てめちゃくちゃ創作意欲の湧いた製作者が、自分の持てる全ての技術と時間(と性癖)をかけて、渾身の出来栄えのものを作ったのだが、それはまた別のお話。

 

やっとの事で凛が着替え終わって、いざ外に出てみれば、クラスメイトのほとんど全員、既に着替えて待っていた。

 

「あ、霧崎も来た……すっげ、めっちゃかっけぇな、そのコスチューム!」

「ほんと。よくよく見れば和服モチーフ?でも全体の印象は軍服っぽいっていうか」

「おー、凛ちゃんめっちゃ可愛い!ってかかっこええ!」

「ケロ、とっても似合ってるわ」

「……えへへ」

 

凛のコスチュームは、一言で言えば和軍服だろうか。全体的に黒を基調としているが、ところどころに赤や白でアクセントが入っているようだ。

 

かっちりとした軍服のような服を主軸として、その上に和服を模したような襟の高いコートを羽織るような感じだ。そのコートの生地は和服とは違い皮っぽいもので厚めだが、意外にも軽く、さらに腕を通す袖の部分は腕を動かしやすいようにか和服のような広袖になっていた。

ついでに右肩からも漆黒のペリースが垂れていて、そこにあしらわれた真紅の桜の紋様がいっそう目を引く。

 

スカートも袴をモチーフにしたような膝丈のもので、足の動きを邪魔しないいい塩梅になっている。まさにデザインと機能性を両立したようなコスチュームだ。

膝下まで覆うブーツを履き、フィンガーレスの黒い革手袋をはめ、軍帽のような帽子を被り、最後に腰に黒赤の太刀を佩けば、完成である。

 

互いのコスチュームを見せ合い、やれどこがかっこいいだの可愛いだの言っているうちに、クラスメイト全員がグラウンドに集合しきった。

全員がオールマイトに視線を集中させる中で、先陣を切るようにロボットのようなコスチュームの男子——飯田が、オールマイトに質問を投げかける。

 

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」

「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!」

 

オールマイトから語られたのは、「(ヴィラン)組」と「ヒーロー組」に分かれての、2対2の屋内での戦闘訓練を実施する、というものだった。

そんな中、八百万が質問を投げかける。

 

「勝敗のシステムはどうなります?」

「ぶっ飛ばしてもいいんスか」

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……?」

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか」

「……真剣は、やっぱり、使っちゃダメ……?」

「このマントヤバくない?」

「ん”ん”ん”〜聖徳太子ィィ!!」

 

……気を取り直した様子で、オールマイトは訓練の詳細を語り始めた。

状況設定は、(ヴィラン)がアジトとなるビルのどこかに核兵器を隠していて、ヒーローがそれを回収しようとしているというもの。

ヒーロー側の勝利条件は、時間内での核兵器奪取もしくは(ヴィラン)陣営の確保。そして(ヴィラン)陣営の勝利条件は、時間いっぱいまで核兵器を守り抜くか、ヒーロー陣営を捕まえることだ。チーム分けはくじ引きによってランダムで選出し、マッチアップもくじ引きによって決定するらしい。

 

(ちっちゃなカンペ読んでる……ちょっと、かわいい?かも)

 

凛はまあ、どうでもいいことを考えていた。

 

ちなみにやっぱり、『朱鵺』をはじめとした真剣の使用許可は出なかった。今日も今日とて、木刀での参戦だ。かなしい。

これまでの人生で、実戦に身を投じたことなどなかったから武器の持ち運びとかは気にならなかったが、雄英に入ったのだ。こういう局面も増えていくだろう。常時刀を持ち歩いているわけにも行かないし、そうなった場合緊急時の対応が面倒だな、と凛は考える。

そういった面で、他の個性と違い毎回毎回刀を手に持っていかなければいけないのは、少し面倒な個性だな、と凛は思った。

 

……毎回毎回、刀を持っていくのが面倒、か。

凛は、自身の思考の片隅に、何かが引っ掛かるのを感じた。

 

「霧崎、くじ引きだって。行かないの?」

「………ん、いく」

 

ちょっとだけ突飛な考えが頭をよぎったけれど、その考えはすぐさま流れて消えてしまった。

箱の中に手を突っ込んで、ボールを一つ引く。

 

「……ん、I(アイ)チーム……」

「あ、霧崎さんIチームか。よろしくね」

「……ん、尾白、よろしく……」

 

凛が引いたのは、Iの文字の書かれたボール。相方は、個性由来の尻尾が特徴的の、空手の道着のようなコスチュームに身を包んだ少年、尾白だった。

軽く挨拶を交わした後、オールマイトの方を向く。あまり尾白とは会話を交わしたことはなかったが、彼の人当たりが良さそうなこともあってか、凛も少し安心していた。

一通りの組み分けが終わったところで、オールマイトがくじ箱に両手を突っ込んで、掻き回す。

 

「続いて最初の対戦相手は……こいつらだ!!」

 

手に握られた、白と黒の球。

 

「Aコンビが『ヒーロー』!!Dコンビが『(ヴィラン)』だ!!」

 

 

 

なんだかまあ、因縁というのは恐ろしいものだと、他人事のように凛は考えた。

 

 

 






チーム分け

A:緑谷/麗日
B:轟/障子
C:八百万/峰田
D:爆豪/飯田
E:青山/芦戸
F:砂藤/葉隠
G:耳郎/上鳴
H:常闇/蛙吹
I:霧崎/尾白
J:切島/瀬呂


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