アトムパンク日本国召喚   作:(休止中)サン少佐

2 / 4
1.1 ― 灰塵に帰す火炎王の宴 前

 蒼天は〈閃光〉を経て黄昏に染まった。

エジェイの山麓に迸った閃光こそ、地球文明の英知の結晶たる〈原子(アトム)の光〉である。

 

 

 山地より昇る禍々しき雲を前にして、恐懼せぬ者が何処に居ようか。

脳裏を蛇の様に登り来る…漠然たる死の恐怖が、ロウリア軍将兵()を取り囲むが如く渦巻いている。

「―――閣下…閣下!」

「……何が起こった…!?何が…!?」

 ロウリア軍指揮官"パンドール"将軍もまた、その渦中に居た一人である。

彼の眼と口は驚愕を表し、自身の幕僚たる"アデム"副将に呼び掛けられるまで、半ば放心していた。

「…ば…爆発であります、閣下…!

恐らくエジェイ山地の何処か(・・・)で…!」

「…一先ず、先遣隊に状況報告を求めよ…!」

 此処はエジェイ西方、ギム平原。東進中のロウリア軍主力部隊は、日本軍の放った核分裂兵器の片鱗を眼前にして、その歩みを止めた。

 

 

 

 

 〝私は亜人の何たるかを知っている。

文明に属さぬ者達、蛮人である。〟

 

 ロウリア王国副将軍、アデム。

ロウリア三将軍たるパンドール将軍を支える幕僚。

ギム市おける大虐殺の指示者。

 クワ・トイネ公国の大都市"ギム"が、轟々たる猛火に沈んだ時、その光景に恐れるでも満足するでも無く……

 

 

 彼は戦争に、酷く恋焦がれた。

 

 

 時折…歴史には、戦争に対して狂愛を向ける者が現れる。

その昔、ドイツ国副総統にRudolf Heßと言う人物が居た。

 彼は第一次世界大戦中に志願兵として激戦地イーペルに居た頃、家族へ向けた手記の中で、次の様な言葉を残している。

 

〝焼け落ちる村々は、心奪われるほどに美しい……ああ戦争よ!〟

 

 ……その一人であるアデムが、この戦争始まって以来初めて恐怖を覚えたのが、あの〈閃光〉であった。

 

 

 

 

 

 

 「―――エジェイ山地に向かった騎龍隊は…救援要請の直後に連絡が断絶しました。」

…未だ噴煙立ち昇るエジェイ山地を前にして、時が止まったかの如く呆然とするパンドール将軍に対し、アデム副将は次の様に進言した。

「将軍、アデムはギムまでの陣地変換を進言致します。」

 

 パンドール将軍は、渦巻く深淵に心を突き落とされた様だった。

主力部隊を率いる将軍が、ロウリア三将軍と称えられた男が、撤退を強いられる(など)この上ない恥辱。

 

 しかし彼の部隊(身体)は背に恐怖(重し)を載せるが如く、ただ眼前に見える黒雲(恐怖)に飲まれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……撤退は許されぬ。」

 

パンドールはアデムの方を向いて、決意した様に言った。

「東方では恐ろしきものが…我等を待ち受けている…。それが何であろうと、この大軍に打ち倒せぬ筈があるまい。」

 

 

それに(わし)は……見てみたい。

(わし)に恐怖を抱かせた敵を。

 

血湧き肉躍る、大いなる戦いを。」

 

 

 

 

 〝解せぬ。ロウリア主力部隊を率いし将軍たる男が、自殺願望を表に曝け出すとは。〟

 

 …実の所、それは戦士たる者の(さが)。強者と激闘を繰り広げ、名誉ある死を望む。

アデムは、戦闘指揮において"それ"を持ち込む事が全くもって解せなかった。

 

 

 「我が軍はエジェイ山地を抜け、敵国首都クワ・トイネを目指す!

之は神の恩寵に護られしロウリア王国軍に下された天啓であり、我は暴戻なるクワ・トイネを膺懲せねばならぬのだ!

 

ロウリア王国に栄光あれ!

大王陛下万歳!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……何て数だありゃ…数十万はおるぞ。」

ロウリア軍部隊から数km先の丘上(きゅうじょう)に―――複数の影がある。

「…待て、それが通信機か?」

「クワ・トイネの航空部隊から拝借した〈魔信〉とやらです。」

その兵士は上官に、クワ・トイネ軍のバシネットヘルムに付属した小型の通信器具を見せた。

「そんなちっこいので通信出来んのか………まあ良い。

通信兵、〝ロウリア軍主力部隊ト思シキ大部隊ヲ発見セリ〟と打電しろ。」

 

 

 見つかった(・・・・・)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。