アトムパンク日本国召喚   作:(休止中)サン少佐

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1.2 ― 灰塵に帰す火炎王の宴 後

 アデム副将軍の元に、一騎の馬が近づく。

「馬上から失礼、アデム殿。…お呼びですかな。」

己の身を隠すが如くローブを纏い、緑黄なる平原で独り闇を発する〈馬上の男〉

…実の所、彼はある国家の"観戦武官"であったのだが、その姿は正に"悪役"たるものであった。

「…一つ…尋ねたい事があって…だな。」

アデムは若干の疑心が籠もった視線を向け、再び前方へと目線を戻して言った。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 「いえいえ…例え列強であっても…あの様な爆裂魔法は……

あの(・・)規模(・・)は、〝古の魔法帝国〟でも無い限り考えられますまい…。」

〈馬上の男〉は言った。

「〝皇国神話〟にも限度がある…と言う事か。」

「ハハハ…お恥ずかしい限り。」

 

 

 

 

 アデムの心中には疑心があった。

クワ・トイネ…非文明国たる彼の国が、あの様な爆裂魔法を用いる(など)有り得るのであろうか。

 列強国の魔法が如何なるものか、それをアデムは知らぬ。

然しながら、あの〈閃光〉を、あのクワ・トイネが、文明に非ざる(あらざる)クワ・トイネ公国が、

 

 ()()()()()()()、あの神龍の火炎(ブレス)が如き魔法を、果たして()()()()()()()()()()()()()

 

 

 …実の所、ロウリア王国も非文明国家である。

今度の大軍勢は、水面下の後援者(パトロン)となる超大国の影があってこそ、成ったものである。

 …その後援者(パトロン)は、義理でロウリア王国を支援する様な者達では無い。

彼等は実利で動く。…最も、十年に渡って支援を続けたロウリアから直ぐに鞍替えするなど有り得ないからして、()()()()()()()()()()()()()疑念が晴れたと言えるであろう。

 

 

 〝クワ・トイネの背後には、恐ろしき者が居る。

我がロウリアの様に。〟

 

 

 

 

 〈馬上の男〉は、見た。

見てしまった。見てしまったが故に、〈馬上の男〉の心中は黒雲(恐怖)に侵された。

エジェイ山地にて迸った閃光(驚愕)

エジェイ山地より昇った黒雲(恐怖)

…〈馬上の男〉は、今度のロウリア王国による〈ロデニウス大陸統一事業〉を〝支援〟する目的で派遣された、〝パーパルディア皇国〟の工作員の一人であった。

 

 

 〝神話に住まう人々〟、と言う言葉がある。

それは〈第三文明圏〉に独り立つ大帝国、パーパルディア皇国の臣民を指す言葉。

 

 泡立つスパークリングワインと甘美なフルーツ、豪華絢爛な豪邸、綺羅びやかな衣装に彩られた貴族や資本家達。

 仕事終わりに安物のジンで一杯引っ掛け、飯時にはベーコンやパンを口にし、給料は少なくとも文明圏外国ではまず有り得ない、高度な生活を送る労働者達。

 皇国は第三文明圏随一の生活水準を誇り、周辺の非文明(・・・)諸国は皇国臣民に畏敬の念を込めて〝神話に住まう人々〟と評したのだ。

 

 しかし一体、"あれ(・・)"は何たるものであろうか。

さも太陽が燦々と光り輝いた様な、山間より()ずる旭日(・・)

 

 

 〈フィルアデス大陸〉南方、水平線の彼方。

文明に非ざる(あらざる)地、ロデニウスの僻地において、皇国神話を超越する旭日を見て、

〈馬上の男〉は恐怖した。

 

 

 

 

 翌日、ロウリア主力軍の足音は、エジェイ西方数十kmの地点にまで響き渡った。

然しながら、昨夜の野営中にロウリア軍は士気の暴落が〝大脱走〟と言う形で表面化。

 ギム平原の地形は酷になり、遂にエジェイ山地に到達せる頃には、20万ほど居た(つわもの)どもは10万にまで瓦解。〈閃光〉の心理的影響は確実に浸透しつつある。

 

 指揮官たるパンドール将軍は部隊後方、馬上より壮観なる兵の動きを眺めており、その傍にはアデム副将軍も居た。

 

 

 

 

 すると彼は、眼前のエジェイ山地へ目を向けた。何か…()()を感じた様に。

 

「……この音は…。」

 

 アデムの聴覚が、遥か遠方より響く〈何か〉を捉えたのである。

……()()()()()()()()()―――奇妙な音。

それが何たるかは分からなかったが、その音は確かに、アデムの鼓膜を揺らしている。

 

「…何だこれは……!?」

「アデム君!この音は一体―――……

 

 …―――その音は次第に轟々たるものとなり、遂には山地を包み込むに至った。

深淵に吹き付ける風切り音を前に、ロウリア軍将兵等の士気は、ちょうどダムが崩れ去る様にして崩壊―――。

 

…いや、()()()()

 

 ただ死を迎え、名誉の死を遂げるでも無く、その場には一切の遺骸は無く、ただ一瞬の閃光の(うち)に、ロウリア三将軍と称えられし将軍の一人〝パンドール〟は、その意識を手放した。

 

―――そして火炎王の宴は、灰塵に帰した。

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