透き通るような世界で俺がやるべき唯一のこと   作:THE TOWER XVI

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第四章 消えた百合の謎(ビーチ編)
かくして世界は日常を取り戻す


「いやぁ、アルスハリヤ先生。今日もいい天気ですなぁ」

「何時も君の思考回路は理解し難いが、今日は本当に可笑しいぞ」

 

 ミレニアムタワーのエレベータの中。

 

 気味悪がる魔人に俺はヘラヘラと笑う。

 

 普段は耳に障るアルスハリヤの戯言も、今日この日は、全く気にならない。

 

 あの、すんません^ ^ ノーダメージっす。俺には百合があるんで^ ^

 

 精神世界で気絶した後、俺は数日おねんねしていた。

 

 事の全容は起きた時に明星と調月から聞いている。

 

 アリスは駆けつけていたゲーム開発部との感動の再会を経て以前の日常に戻った。

 

 今回の騒動は対外的に伏せられることとなったものの、調月がエリドゥの建設のために横領した事実は変わらず、本人の希望もあって何らかの処分が下るとのこと。エリドゥも閉鎖されることになったらしい。

 

 ただ立場の後釜やその仕事の問題も多く、正式な処遇をめぐっては関係者内で話し合う予定だと言っていた。

 

 そして訪れた今日この日、あの密会があった場所に呼び出されているので……まさにそれについて話すつもりだと俺は推測している。

 

 ある意味、俺待ちでもあったわけだ。

 

 いやぁ、しかし、この場合、燈色君はどうなるのかな?

 

 謎の好感度アップを回避するべく、白百合仮面に扮したが……まぁ、調月と明星は知っているし、アリスがゲーム開発部に伝えれば簡単にバレる。

 

 実際、モモイがお礼と言って一人で見舞いに来たということは、そういうことだろう。

 

 ただ、飽くまでも保険だしな。バレた所で、燈色君が少女誘拐犯であり、変態仮面野郎と判明しただけである。

 

 流石、百合IQ180……やはり打てる手は全て打っておいて損はない……。

 

 己の百合の守護者としての意識の高さを再確認していると、エレベータの動きが止まり扉が開いた。

 

 廊下に踏み出す。

 

 ガラス越しの爽やかな朝日に当てられながら、俺は鼻から清涼な空気を吸う。

 

 本日は快晴。

 

 まるで、世界が俺の行く先を祝福してくれているかのようだ。

 

「君に危機感はないのか? あのピンクの猫耳をつけた金髪の少女が、態々一人で差し入れに訪れていたじゃないか」

 

 改めてアルスハリヤが指摘してくるが、別に大したことでもない。

 

「皆で見舞いに行くほどの価値がなかっただけだろ」

 

 何なら、みんな嫌がって押し付けあった結果、モモイが犠牲者として来た説もある。

 

 ゲームで負けたやつが行くとか、やったのかな? アレだね。罰ゲーム扱いとか、その、悲しいね(笑) 燈色君、貧乏くじ扱いで、可哀そう(笑)

 

 俺の頭脳をもってすれば、単純明快。俺が変態白百合仮面であることがバレた以上、避けられて当然である。

 

 全ては、俺の計画通りだ……!

 

「まぁ、魔人には分からないかぁ~」

「……(馬鹿を見る目)」

 

 百合IQ180に遠く及ばない哀れな生き物を放置して、俺は今回の成果を頭の中でブリーフィングする。

 

 調月が独りで突っ走るのを防いで、明星という頼れる相手がいることを示せた。ちゃんと少女誘拐にも加担して、燈色君にも罪を擦り付けることが出来た。

 

 アリスの中のケイも、キヴォトスを滅ぼすのを辞めたし、これからもアリスを見守りながら共に歩んでいくことだろう。

 

 共にデカグラマトンを含む災厄に立ち向かった事実を加味して、調月の処分も軽めに終わるだろうし、後処理とセミナーの業務量を踏まえれば、むしろ折角の人的リソースを手放す理由がない。

 

 まぁ、これは俺も同じ話で、希望は退学だが、実際にそこまで行くことはないだろう。その時はその時で、以前通りミレニアム部活百合紀行と早瀬と生塩のサポート兼百合ウォッチに勤しむだけである。

 

 やっぱり、女の子は女の子と付き合うべきなんだよね。

 

 明るい未来を描いた俺は、完成した百合園を拝むべく足早に廊下を歩いて。

 

「たのも~、朕が来たぞよ~」

 

 満面の笑みを浮かべたまま、勢いよく扉を開け放つ。

 

「……!」

「あれ、まだ予定の数十分前だけど早いね。何時も時間ピッタリに来るイメージがあるけど」

 

 タブレットから顔を上げた調月と目が合って、じっと無言で見つめられる。

 

「え、どしたの?」

「……いえ、ただ……あの時のことを思い出して……これは、何かしら……?」

「まぁ、つい最近激動の日々を過ごしたからな。時間を置けば普段通りに落ち着くだろ。俺も初めて百◯姫の表紙絵を見たときは、衝撃で数日心あらずだったしな」

「そう……そうよね。考察するには、もう少し情報が必要ね」

 

 目を伏せて、考え込む調月を前に、俺はどかりとソファに腰を下ろす。

 

「それで、あの後は大丈夫だった? 寝てたから俺は何も出来てないけど」

「特に心配されるようなことは無いわ。皆気兼ねなく接してもらっているのは、その……当事者のアリスにも、責められるどころか、仲間と言われたのも含めて……少し戸惑う部分もあるけれど……」

「アリスらしいな、それは」

 

 俺は微笑む。

 

「ただ、そうね、今はむしろ少し肩の荷が下りた気分よ。前は全てを掌握しなければならないと考えていた。でも、今は……人間一人に掌握できる範囲の限界に気付けたわ。

 その上で、これからも、可能な限り災厄への備えは続けるつもりよ。こればかりは私の性分だから」

「それは俺も同じだしな。打てる手は先んじて打っておくべきというのは同意だ。まぁ、今度はヒマリとか周りを頼ればいいさ」

「……その時が来たら、私は……その、貴方に──」

 

 調月は言いかけて、ノックの音に止める。

 

「あら、二人とも来ていましたか」

「アリスはこちらの世界のヒイロを発見しました! 早速合流イベントをこなします!」

 

 車椅子を滑らせて明星が入ってくると、その後ろから元気に飛び出してきたアリスが駆け寄ってくる。

 

 そのまま俺の膝の上に座ってくる彼女を一旦スルーして、俺は本題に切り込んだ。

 

「よし、じゃあ揃ったなら燈色君弾劾裁判を始めようぜ!」

「裁判と言いますと、どういうことでしょう?」

「えっ、これ、おねんねしてて決められなかった俺の処遇をどうこうする話じゃないの?」

 

 首を傾げる明星から表情の変わらない調月へと、順番に視線を移す。

 

「処遇と言われましても、あの事件のことならもう終わっていますよ」

「えっと、その、一応この少女を誘拐した実行犯のハズなんだけど……」

 

 キョトンとした顔で見上げてくるアリスの頭を軽く叩いて、明星に視線を送る。

 

「精神ダイブ装置を使用するためには必要なことでしたし、それを言えば、ヒイロに協力していた美少女パートナーも同罪になりますね」

「……私のことを庇おうとしているなら必要ないわ。エリドゥの建造資金の件は、あの件とは別に、対外的な示しが必要というだけよ」

「まぁ、何よりも……本人が気にしていない以上、第三者がどうこう口を挟む話でもないでしょう」

「ヒイロはアリスと共にラスボスを倒したMVPです。ですから、むしろ一緒にクエスト報酬を受け取るべきです!」

 

 話し合いは済んでいて、別の呼び出しを俺が勝手に勘違いしていただけか。

 

 流石に何も無いのは想定外だが、プラスがゼロになっただけ……退学チャレンジが特に何も起きずに終わっただけであり、マイナスではないし、問題ない……筈。

 

 しかし、だとしたら……これは何の集まりなんだ……?

 

「どうやら、私の出番のようですね」

 

 いつの間にか背後に控えていた飛鳥馬に二人で驚く。

 

「ち、チビメイド様の仲間ですか!」

「どうも。私はそのチビメイドに該当するだろう人物を上回る戦闘力を誇る、最強のメイド兼秘密のエージェントです」

「そんなっ! チビメイド様以上の存在が飛び出してくるなんて、アリスは聞いてません!」

「まぁ、事前のミッション内容と違う展開になるのは、あるあるだからな」

「そもそも、ネルとの戦闘は互角だったと記憶しているのですが……?」

 

 明星の疑問を流して、飛鳥馬は話を続ける。

 

「今回お集まりいただいた目的は一つ。仲直り会です」

 

 その単語から俺の百合IQ180の頭脳は高速回転し、完璧な答え(パーフェクト・アンサー)を導き出す。

 

 そういうことか……! なんて主人思いなんだ! 素晴らしい!!

 

「そうか、そうだよな! 仲良し……! いい言葉だよなァ! 女の子同士、仲が良くて悪いことなんて一切無い! ちなみに、俺はちゃーんと分かってるぞ。トキは調月のことが心配なんだよな? 安心しろ、俺が全力でその崇高な関係をサポートしよう」

「唐突なハイテンションに困惑を隠せませんが、熱烈な賛同には感謝します」

「……まだ私は、承諾していないのだけれど」

 

 距離を置くように、調月がそう言って。

 

「あら、終わり良ければすべて良しとも言いますが……果たして、ヒイロが居なかったらどうなっていたことやら」

 

 揶揄する様に、明星は棘のある口調で指摘する。

 

「あの時、トキを使ってこの天才美少女ハッカーを監禁した後……リオ、あなたは彼女を使ってアリスを確保するつもりだったのでしょう? 実際にあのような装備も用意していたわけですし。仮定の話ではありますが、あなたは罪の片棒をトキに担がせた上に、彼女から人との交流すらも奪っていたのではないでしょうか……?」

「……」

 

 明星が語る、有り得た可能性。

 

 ただ調月は黙したまま、受け入れる。

 

「その上で……あなたのことを健気に想う彼女の提案を、まさか無下に扱うというのであれば──」

「ヒマリ部長、私のことを気に掛けてくださりありがとうございます。ですが、リオ様を主人と定め、命令に従ったのも私の判断です。なので、リオ様だけを責めないでください」

「トキ、私は……」

「──ふふっ、本当にリオには勿体ないぐらいですね。ええ、先程の発言は少し言い過ぎましたね。ここに謝罪しましょう」

 

 その場で明星は頭を下げる。

 

「ですが、リオはトキに感謝して、一度話し合うなり、考えた方がいいかと。優しくて気の利く、清楚系美少女からのアドバイスです」

「……そうね。肝に銘じておくわ」

 

 明星は微笑むと、再び話を戻す。

 

「それで、その仲良し会とは具体的にどういう事をするのでしょうか?」

「確かに、イベントの内容は重要です! 受注するかの判断基準になります!」

 

 目を輝かせるアリスの前。

 

「ズバリ、ビーチで水鉄砲です」

 

 飛鳥馬は少し得意げな雰囲気で言い放つ。

 

「お互いに遠慮なく熱血バトルをすることで、心と心をぶつけ合い、仲良くなること必至です。何よりも、不履行の契約もあるので、今こそ果たさねばなりません」

「おお! 確かに、ポ○モンバトルをすることで、ポケ○ントレーナー同士の絆も深まります。アリスも賛成です!」

「ビーチバレーとか、もっといい競技があるのではという疑問は置いておいて……折角一段落したし、パーっと気分転換にいいかもな。お互い交流を広げるチャンスにもなるし、この際わだかまりを吹き飛ばすのにも丁度いい」

 

 勿論、俺は参加せずに、数百メートルのソーシャルディスタンスを保って、望遠鏡で天体観測ならぬ百合観測に勤しむ係だ。

 

 ビーチでキャッキャウフフの青春を、この網膜に焼き付けて見届けるからね……。

 

 妄想と共に、ニチャリと俺が湿っぽい笑みを浮かべているうちに、話は進んで。

 

「しかし、交流会をするにしても、何か報酬がないとやる気が出ない気もしますね」

「はい! バトルの後に貰えるアイテムは大事な要素です」

「ただ、人の嗜好には個人差がある以上、特別な物を用意するのも難しいわ。かといって、金銭は遊びに適しないし、処理が面倒よ」

「それもそうですね……さて、どうしましょうか」

 

 考えるように明星は頬に手を当てて視線を動かす。

 

 そのまま俺と目が合って、悪戯っぽく口角を上げる彼女に、不穏な空気を感じ取る。

 

「最初に、ヒイロが処遇についてどうこう言っていましたが……本人も望んでいるようですし、これで決めてしまいましょうか」

「ん? いや、そもそも俺、参加しないよ?」

「丁度所属が分かれていますし、勝ったところがヒイロを貰うということで……そう、例えば、私のチームが勝った場合、ヒイロは特異現象捜査部が貰います♪」

「! これは仲間加入イベントです! 魔法剣士ヒイロを正式にパーティに組み込めます! アリスも参加します!」

「いや、俺、参加しないよ……?」

 

 突然始まった誰得ヒイロ・トロフィー化計画に異議を申し立てていると、調月が助け舟を出してくれる。

 

「元々、ヒイロはセミナーの所属よ。勝手に決めていいことじゃないわ」

「確かに! そうだそうだ、その通りだ! 俺は俺の物だ!」

 

 まさにビックシスターと言うべき頼れるその姿に、俺は援護射撃を飛ばすが、全く動じることなく明星が返す。

 

「しかし、生徒会長であるリオが接触する機会は少ないと思いますよ? 作業はセミナーの役員同士で行いますし、むしろ、これからの対デカグラマトンの調査を思えば……どうでしょう?」

「……合理的な考察の下、認めざるを得ないわね」

「ま、敗けるな調月ッ! ここでお前が敗けたら、俺は一体誰を頼ればいいんだッ!」

「その、今更なのだけれど……調月じゃなくて、リオでいいわ」

 

 叫ぶ俺の前で、突然その何時もの鉄仮面を崩して、戸惑いと恥ずかしさ混じりにそう言う。

 

 俺は愕然と、調月を見つめて。

 

「私も、非論理的とは思うけれど、貴方に名字で呼ばれるのは少し適切でないと感じて……い、いえ、その深い意味はないのだけれど……っ、これは……何故か恥ずかしくっ……! い、今は帰らせてもらうわ。後でトキから聞くから」

 

 初めて見る慌てぶりで、そのままそそくさと出て行く彼女を見送った。

 

「あらあら、下水処理場の浄化槽に浮かんだ油とよく例えていましたが、あの女にもあのような一面があるとは意外です」

 

 思考停止状態の俺の横で、調月の意外な一面を知り、愉しそうな明星がクスリと笑う。

 

「ふふ、ですが、ヒイロと私は既にミレニアム最強のベストコンビなので……残念です♪」

「アリス知っています! これは修羅場イベントです。さらに進化するとネトラレイベントが発生します! モモイがプレイヤーを大胆に裏切る予想外の展開だと自画自賛していました」

「これは修羅場イベントじゃないからね……? ただ単に調月は慣れてなくて友達として恥ずかしがっただけ……。そこに友達以上の意味は無い筈……だよな?」

「くくっ、自分で言いながら不安になるのか」

 

 クツクツ笑いながら、アルスハリヤが現れる。

 

「いやぁ、それも仕方ない。僕の見立てでは、後もう一押し行くだけで──」

「天誅ッ!!」

 

 後頭部を掴むと顔面を床に叩きつけて、魔人を黙らせる。

 

 その消滅を確認して、俺は落ち着きを取り戻す。

 

 だ、大丈夫だ。まだ舞える。

 

 確かに、少し……いや、ちょっと、頼れる相手として明星を提示した筈が……明星は調月に思う所がありそうだったり、調月も遠慮があったりで、なんかベクトルが俺の方に向いちゃっている気もしないでもないが……い、いや、これ以上考えると脳が不味いと直感が叫んでいる! 俺の大事な脳を保護するためには、これ以上の考察は命取り……! 

 

「胸でも痛めましたか?」

「だ、大丈夫……まだ、一回刺されただけだ……俺は、まだ、行ける……」

 

 心臓の当たりを片手で掴んだまま蹲っていた俺は、いびつな笑みを浮かべて、覗き込んできた飛鳥馬に答えた。

 

「いえ、どう見ても大丈夫ではないのでは……?」

「取りあえず、モモイがアリスに教育上悪い単語を吹き込んだ件は……今度ユウカに、チクるね……」

 

 明星に至極真っ当な指摘をされながら、俺は仏のような微笑みと共に、モモイを早瀬に売ることを決める。

 

「それはそれとして、ヒイロは参加したくないのですか?」

「そ、それは……」

「既に言質は一度取ったと主張しても良いのですが……私もヒイロが嫌がることはしたくないので、強要はしません」

 

 そう言うと、目を閉じて思い出すように飛鳥馬は続ける。

 

「ただ、こうして私の新しい日常が始まって……それでも、最初に遊んだのも、約束したのもヒイロです。なので、私はヒイロに来て欲しいです。そうでないと……寂しいです」

「……」

 

 デジャブ。一度同じような状況に陥ったことが俺にはある筈だ。

 

 しかし、こればかりはどうしようもない。

 

 俺は百合の守護者だが、同時に、女の子を悲しませておいて、百合を語ろうだなんてことも出来ない……!

 

 つまり──

 

「わぁーい、急にビーチで水鉄砲片手に遊びたくなったなぁ! 急に、小学生の頃の童心に返って、水の掛け合いとかしたくなったなぁ! 楽しみだなぁぁああ!!」

 

 進退窮まった俺は、全力で、楽しみアピールを繰り出した。

 

 口元で小さく弧を描く飛鳥馬に、明星も微笑んで、纏める。

 

「では、また決まったら連絡してください。勿論、この全知の称号を持つ私を頼ってもらっても構いませんよ?」

「分かりました。その時はお願いします」

「はい! アリスはゲーム開発部のみんなも連れてきます! ヒイロにも紹介するので、待っていてください」

「そうですね、エイミにもヒイロを紹介しないといけませんしね。丁度いい機会になりそうです」

 

 そのまま各々部屋を出て行って、俺は一人取り残される。

 

 静寂の中。

 

 数分の間を置いて、何故か俺の端末が鳴る。

 

「その、この後……久しぶりに、あの教室で会いませんか……?」

 

 わざわざ口頭ではなく、全員が出て行った後に繋げてきた明星は、電話越しに囁く。

 

「勿論、二人っきりで……ま、まあ、預言者の話も聞かなければいけませんしね! ふふっ、では、待っていますよ」

 

 そう一方的に連絡すると、彼女は通話を切る。

 

 暫く、俺は端末を見つめて、天井を仰いだ。

 

「ビーチ、楽しみだなぁ!」

 

 とりあえず、俺は思いの丈を叫ぶことにした。

 

「ビーチ、楽しみだなぁぁぁああああ!!」

「君が描いた百合は無さそうだが?」

「……」

 

 急所を突かれた俺は、黙り込む。

 

「まぁ、そのなんだ……」

 

 馴れ馴れしく、魔人は俺の肩に手を乗せる。

 

「もしも僕が君の立場なら、百合IQ180だなんて口が裂けても言えない、そんな結末だ。しかし、そう悲観することはないさ。人生、山あり谷ありだ。次はきっと上手く行くさ……ぷぷっ、す、すまない」

「……」

「愉☆悦」

 

 満足げな笑みを最後に、アルスハリヤが消える。

 

 歪んだ視界。

 

 合計三か所の心の刺し傷により、致命傷を負った俺は、静かに悟った。

 

 ビーチ()は早々──回避不可能である。

 

 

 

 

 

 

 




 エデン条約編のプロットをちょっと埋めて来ます。その間に幕間を足すつもりですが、調子に依るとは思います。

特に意味はないアンケート

  • 私は約束しました。ヒイロとビーチに行くと
  • ふふっ、合計欠勤時間は記録済みですよ~♪
  • えへへ、ヒイロは共に肩を並べた戦友です!
  • 考察を重ねた結果……その、今いいかしら?
  • あの教室で会いませんか?二人だけでです♪
  • 三条ヒイロ、私は神性の証明を必ずや……!
  • ここは学外脱出に懸けるしか無いじゃんね☆
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