透き通るような世界で俺がやるべき唯一のこと   作:THE TOWER XVI

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激突! 浜辺の合体ロボ?!

「魔物のスタンピードです!」

「ちょっと、アリス、喜んでる場合じゃないって! さっきからキリが無いんだけど!」

「お姉ちゃん、休んでないで手を動かしてよ! このままじゃ押しつぶされちゃう!」

「うわあああん! 浜辺のリサーチの予定が、なんでこんなことに!」

「うぅ……部室に帰りたい……」

 

 才羽たちが騒ぎながら、押し寄せるオートマタやドローンを迎撃する。

 

 俺とデカグラマトンの計画の第一段階、カイザーPMCの兵器による襲撃は順調に進んでいた。

 

「部隊の識別子はカイザーグループとなっていますが、不釣合なほどセキュリティが高度ですね」

 

 彼女たちの支援に徹している明星が呟く。

 

「全知の手をここまで煩わせるなんて……ええ、本当に一企業ではなく、もっと超常的な存在を裏に疑ってしまいそうです」

「……AMASの展開も激しい妨害を受けているわ。現状、呼び寄せたAMASの状況すら不明瞭よ」

「リオ様、必要でしたら、私が敵部隊の全容の偵察を行います」

 

 忙しなくタブレットを操作する調月に、飛鳥馬が別行動を提案する。

 

 俺も配置に着いたし、ばらけられると困るから……そろそろだな。

 

「よし、行けるか?」

「問題ない。現時点でのシミュレーションとの誤差は0.5%未満……完璧だ。作戦を第二段階に移行するとしよう」

 

 俺の合図にデカグラマトンが応えて、後方からゴリアテと呼んでいた大型の人型兵器が飛び出す。

 

「いえ、トキはこのまま──!」

 

 飛鳥馬に答えようとした調月は、目の前の事態に思わず絶句した。

 

 ド派手に音楽を打ち鳴らしながら、合体シーケンスを開始したゴリアテたち。

 

「合体! 合体! 五体合体ッ!」

「え?! 何この音楽?!」

「合体ロボです! アリス、初めて本物を見ました!」

「え、えぇ……合体シーンって周りの人から見たら、こんな感じだったのかな……」

「……随分、ふざけた音楽ですが、今回の騒動の下手人は正気なのでしょうか……?」

 

 各々、余りのインパクトに動揺する中、調月だけ真面目に反応する。

 

「まさか……あり得ない……! これは、『名もなき神』の力の痕跡……?!」

 

 オートマタを吸収しながら五体のゴリアテが戦闘車両と接続し、巨大な人型を構成する。隙間を埋めるようにドローンが集まり、完成する超巨大ロボット。

 

 まさに全ての印象を吹き飛ばすべく、俺とデカグラマトンの二人で考えた渾身の策!!

 

「超絶無双皇帝ッ! マキシマ〜ム・カイザー、バージョン・スリィィィイイイイ!!」

 

 決めポーズと共に、色付きの煙幕と紙吹雪を撒き散らして、新たな敵はその名を名乗った。

 

「あくまでも今回の私は黒幕……部品にあやかり、その名も、マキシマム・カイザーV3!」

「流石は神! 他人(カイザー)の装備で、ごっこ遊びなんて……こんなの、誰も真似出来ねぇよッ! 作曲センスも神がかってるしな!」

「ふっ、神は完全無欠故に、当然だ」

 

 デカグラマトンは鼻高々に誇る。

 

 ……せっかく録画した合体シーンは先生にでも送り付けておくか。実際にロボットのプラモデルを買ったりと、こういうのが好きだった筈だ。

 

 尚、先生はついこの前誘拐されていた。公園で抗議活動を続ける少女たちの事情に巻き込まれた結果のようだが……その数日後には大雨を経て仲を深めていたし、先生が理想の百合の黄金郷のキーパーソンであるという見方は変わっていない。

 

「……バージョン3ということは、他のバージョンもあるのでしょうか」

「今気にすることじゃないと思うよ?」

 

 飛鳥馬が零した疑問に、浜辺に踏み入れる前から黒ビキニ装備の和泉元が答える。

 

 予定通りの合体を披露したマキシマム・カイザーV3は、決めポーズを解いてその頭部から合成音声を流した。

 

「カ~イカイカイカイ! 本日をもって、ビーチはカイザーグループが占拠するカイよ~!」

「うわぁっ!? しゃべった!? しかもカイザーエアプみたいな台詞じゃん!」

「! ビーチはみんなのものです! みんなの楽しみを奪うような真似は、このアリスが許しません!」

「えっ、アリスちゃん?!」

 

 アリスが正面に飛び出すと、威勢よく立ち向かう。

 

「ふむ、骨のありそうな奴がいるカイね! しかぁし! このマキシマム・カイザーV3に刃向かった事、すぐに後悔させてやるカイ!!」

 

 ゴリアテの頭部に相当する箇所に据えられた火砲、五つすべてが変形を通じて胸部に格納されており、今、その扉が開く。

 

 迫り出した大口径五連装砲は、高速回転を始めて。

 

「カイザー・バースト!!」

 

 凄まじい勢いで弾丸を発射し、地面が吹き飛ぶ。

 

「カイカイカ~イ! 次は当てるカイよ~! 痛い目に遭いたくなければ、ビーチを諦めてカイザーグループに渡すカイね!」

 

 濛々(もうもう)と砂埃が舞い上がって──空から大型の物体が堕ちる。

 

 煙が晴れた先には、武装を展開した飛鳥馬とレールガンを構えたアリスが居た。

 

「パワードスーツシステム『アビ・エシュフ』起動完了。全火力を集中します」

「アリスも合わせます! 光よ!」

 

 最大火力に近い飛鳥馬とアリスの攻撃が、胸部の装甲車両を直撃。マキシマム・カイザーが爆発に呑まれる。

 

「や、やった?!」

「お姉ちゃん、それフラグ……」

 

 思わずモモイが期待の声を上げて……しかし、煙の中から現れたのは無傷のロボット。

 

「ほんのちょっと、効いたカイよ。でも、あくまで蚊に刺された程度カイね!」

「攻撃が効いていません!」

「成る程、全体で一つの個でありながら、数多の兵器から成る群体でもある。つまり、破壊されても他の部位から補充することで、疑似的な再生が可能ということですか」

「……やはり一企業が手にするような技術じゃないわ……何か、別の相手が裏に……」

「くっ、ヒイロが居れば、強力な合体技が使用可能なのですが……」

 

 当のヒイロ君も知らない謎の合体技について飛鳥馬が口にするが、同時にチャンスである。

 

 俺は一人手を前に振って、デカグラマトンに合図を送る。

 

「どうやら、三条ヒイロを待っているようカイね!」

「なっ! いったい何の関係が」

「既に三条ヒイロなら、来る途中に倒したカイよ! 雑魚過ぎてマキシマム・カイザーV3にならなくても倒せたカイ!! 今頃寝てるカイよ~!」

「そんな! アリスは信じません! ヒイロが敗けるわけがありません!」

「しかし、確かに……SNS上に銃を使わない変人が戦っていたという情報も存在します。……いささか、都合が良いほどにですが」

 

 若干疑われつつも、無事、明星がデカグラマトンの撒いてくれた情報を確認してくれる。

 

「三条ヒイロって、部長が良く言ってた人か……結構強いって話だったけど……」

「ええ、私のベストパ──」

「はい。私とヒイロは共に研鑽を積む親密な仲で、お互いに実力を認め合う仲……つまり、その戦闘能力はミレニアム最強のメイドである私に匹敵します」

「余計に解らなくなったかも……」

「天才病弱美少女の台詞が遮られた件について、フォローは無いのでしょうか……?」

「お喋りはそこまでカイよ!」

 

 改めて外野として聞くと、飛鳥馬の謎に高い好感度に胃が痛くなるが……それも今日この日まで!

 

 デカグラマトンと俺の作戦で、視界外で敗北した糞雑魚ヒイロから謎の黒百合騎士へと興味を掻っ攫う!!

 

 作戦通り、マキシマム・カイザーV3はその表面を蠢かせ、変形する。

 

 ドローンが集まり、形成される一つの巨大な砲身(バレル)

 

 まるで大砲に足が生え、四つ足で這いつくばったような姿に変貌する。

 

「完全☆変態! マキシマム・カイザー・巨砲モード!! レディー・ゴーゴーゴー!!」

「うわっ、ダサ……」

「お、お姉ちゃん……たしかに、可愛いデザインじゃないけど……」

「個人的には、この形態の方が前衛的(アバンギャルド)で悪くない見た目ね」

「えっ……?」

「……え?」

 

 ミドリと調月の間に微妙な空気が流れ、それを消し飛ばすようにマキシマム・カイザーV3が叫ぶ。

 

「お、お喋りする余裕もそこまでカイよ!! この一撃で消し飛ぶカイね!!」

「エネルギー密度が急速に高まっています! ふざけた見た目ですが、ッこれは!! 早く、退避を!!」

 

 明星が慌てて叫んで、耳元でデカグラマトンが囁く。

 

「今だ、三条ヒイロ! いや、黒百合騎士よ!」

 

 口角を上げて、俺は飛び出す。

 

「もう大丈夫! 私が来た!」

「!!」

 

 マキシマム・カイザーの眼前に着地を決めて、対峙する。柄に手を伸ばし、俺は居合いの構えを取る。

 

「カ〜イカイカイ! いまさら虫が一匹増えたところで、纏めて消し飛ばすカイよ~!!」

「いや、終わりだね」

 

 そう言って、俺は電磁ブレードを抜き放った。

 

 原理不明だが、慣性によって飛び出た電撃が空間を走る。

 

 凄まじい白光と雷鳴を撒き散らし、斬撃は飛び──マキシマム・カイザーV3に直撃。

 

「な、なんて威力カイ~! エネルギーが暴走してしまって制御できないカイよ~!!!」

 

 丁寧に口頭で状況を解説しながら、巨大ロボットは光り輝く。

 

「くっ、今回は敗けカイね。でも、カイザーグループは不滅カイよ~!! カイカイカイカ~イ!!」

 

 捨て台詞と共に、マキシマム・カイザーV3はしめやかに爆発四散。

 

 こうして、ビーチは悪のカイザーグループの手から護られたのだ。

 

「さて──」

 

 俺は振り返ろうとして。

 

「やはり、ヒイロは来てくれました」

「──え?」

 

 信じがたい言葉に静止する。

 

 素早く俺の傍に現れた飛鳥馬に言葉を失う。

 

「三条ヒイロ、プランBだ!」

 

 デカグラマトンの言葉に、意識を取り戻し、念のための緊急対応策を思い出す。

 

 そうだ、まだバレたとは決まってない! むしろ、ここで動揺する方が危険!!

 

「人違いだ。私は黒百合──」

「先ほど、私の純粋さが仇となり、敵の言葉を信じかけてしまいましたが……ヒイロが敗けるわけありません。実際に、目の前で倒してくれました」

「いや、話を聞いて? 人違いって言ってるよね?」

「おかしい……外見も音声も変更している! シミュレーション上は何も問題は無かった……私のデータは完璧な筈……!」

 

 デカグラマトンが困惑する中、俺は飛鳥馬以外に助け舟を求めることにした。

 

「ごほんっ! すまない、どうやら彼女は私を別人だと勘違いしているようだが……」

「確かに姿も声も変えているようですが、普通にヒイロですよね?」

「はい! アリスもあの居合の構えは良く覚えています! まさに運命を切り拓く導きの一撃です!」

「そうね。実際にヒイロと戦闘試験を行ったトキも言っている以上、間違いないと思うわ」

 

 どうやら剣=俺という思考回路で結び付けられたようだが、当然、俺は反論する。

 

「いや、待て待て待て! 世の中には収斂進化なんて言葉もある! 偶々似たような居合術を使うやつがいてもおかしくないだろ!?」

「そ、その、私は百合仮面の時しか知らないので、詳しくはないですが……剣術以前に、銃じゃなくて剣を使う人自体が……ほ、殆どいないと思います……」

「ユズも言ってるけど、キヴォトスで銃を持ってない人なんて、全裸の人を見つけるより難しいしね!」

「ぁ……(宇宙猫)」

 

 花岡の正論に刺された俺は、思わず遥か彼方の宇宙に意識を飛ばしかける。

 

「……その言い方だと、この人が全裸よりも珍しい存在ってことに……実際そうだけど」

「百合仮面の話も聞いていたけど、部長が頻繁に話題に出すぐらいだから……うん、変わった趣味を持っていても不思議じゃない」

 

 ミドリに続いて和泉元が点と点を結び付けて納得している中、デカグラマトンが叫ぶ。

 

「三条ヒイロ! プランBは破棄! 次はプランCだ!!」

「いや、その領域は俺知らねぇぞ?! てか、完全無欠の神なら、剣じゃなくて銃にすべきだって最初に指摘しろよ!!」

「し、仕方あるまい。貴様の技を知る良い機会ゆえに……そもそも、シミュレーションでは問題なかったのだ!」

「お前、もう、絶対的存在辞めちまえ!!」

「神に対し何たる言いぐさ! それは聞き捨てならないぞ、三条ヒイロ! そもそも、私が指摘する以前に貴様が気づくべきだったのだ! 全てを神に頼ることほど不健全なこともなかろうッ?!」

 

 醜く責任を押し付け合いギャーギャー二人で喚いていると、ふと周りの視線に気づく。

 

 俺の奇行を良く知る者達の、やっぱりという生暖かい視線。背筋を脂汗が流れる。

 

「一人で空中とプロレスするのも、ヒイロの特徴です。私は見逃しません。ぶい」

「……」

「そ、そうなんだ……でも、一人で完結するなら……まぁ、部長よりはましかも」

「エイミ? それはどういう意味でしょうか?」

 

 明星と和泉元が話している間に、俺は一歩後退りながら、死ぬ気で百合IQ180の頭脳をフル回転させる。

 

 ほぼ俺をヒイロだと思っているようだが、まだ、外見も声も明かしていない。なんとか、ここから巻き返せないのか?! 方法が、何か……! 誰でもいい、縋れる糸が一本でもあれば……!!

 

「ヒイロ君。僕のターンだ」

「アルスハリヤ先生……?」

「任せたまえ。そこのAIは何処まで行っても、所詮は機械。人の心を真に理解できるのは……人だけだ!」

「アルスハリヤ先生……!!」

 

 俺はドヤ顔の魔人に歓喜の声を上げて、奥から新たな声が聞こえる。

 

「本当にここで合ってるの? 騒動の中心だけど」

「水着を選ぶときにかなり悩んでいましたからね~。ちゃんと見て貰えるといいですね?」

「ノ、ノア!」

「この声は……!」

 

 辺りを見渡しながら近づく早瀬と隣で楽しげに笑う生塩に、モモイが叫ぶ。

 

「大魔王ユウカ?! なんで此処に?!」

「誰が大魔王よ。私もヒイロに誘われたの。で、肝心のヒイロは何処に……」

「ヒイロならあそこです! でも頑なに認めません!」

「認めないと言いますと……?」

 

 オートマタに扮している俺と目が合う。

 

 訝しげに早瀬が目を細めて、俺はアルスハリヤの意図を悟る。

 

 確かに、戦闘時の俺についてあまり知らない彼女たちなら、味方になってくれるかもしれない!

 

「じ、実は先程から私は三条ヒイロではないと主張しているのだが……どうにも信じて貰えず。助けてはくれないだろうか?」

「なるほど……」

「異議ありです! アリスはあのカッコイイ抜刀術をこの目で見てます! ヒイロに間違いありません!」

「一人で空中に喋るのもヒイロだけです」

「それは、確かにヒイロらしいわね」

「しかし、そのヒイロは人間であろう? 私は見た目もオートマタ故に、全くの別人! まったくもって根拠のない妄想だ!!」

「ふふっ」

 

 歩いて傍まで寄って来た生塩が、ニコニコと至近距離で微笑む。

 

「ヒイロさんって嘘を吐くとき、瞬きが多くなりますよね?」

「……」

 

 俺は瞼を手で押さえようとして、今はオートマタに扮しているので、そもそも顔が見えないことに気付く。

 

「嘘です♪ ふふっ、ごめんなさい。でも、やっぱりヒイロさんですね。実は引っ掛けなくても、身振りの癖でだいたい分かっていたので……これは無断欠勤分のちょっとした悪戯です」

 

 とどめを刺された俺は覚束ない足取りで後ろに下がる。

 

「あ、アルスハリヤ先生……? これは一体……?」

「すまない……」

 

 穏やかに、アルスハリヤは目を閉じ微笑む。

 

「どうやら、悪手だったようだ」

 

 状況を悪化させただけの魔人を思いっきりぶん殴る。

 

 そして、その場で膝をついて、俺は号泣した。

 

「三条ヒイロ、作戦は失敗したようだな……。おっと、本装備に排水機能は無いため解除しておこう」

 

 何一つ、俺の悲しみを理解していない無責任AIが外骨格スーツを解除する。

 

「わぁ、凄い! 本物の変身スーツだ!」

「ヒイロと判っていても、やはり姿と声が違うと違和感があるものです。こちらの方が落ち着きます」

 

 分かった風に頷く飛鳥馬の前で、俺は両手を地面につくと、震えながら懺悔する。

 

「し、仕方が無かったんだ……仕方が無かったんだよぉ!! 俺は、俺はッ!! 考えて、考えて! トキが楽しみにしてるって、知ってたけど!! でも!! やっぱり、百合が見たかった!! 男が挟まるなんて、許せなかったぁ!!!」

 

 大粒の涙を流し、俺は叫ぶ。

 

「許せなかったんだッ!!!」

「大丈夫です」

 

 慈愛の籠った声に顔を上げて、微笑む飛鳥馬と目が合う。

 

「だって、ヒイロは来てくれました」

「そうです! またみんなを守ってくれました! アリスはヒイロの新スチルをゲットしました!」

「ぁ……」

 

 どうしようもなく温かい現実に、視界がぐにゃりと歪み──起死回生の一手に気付く。

 

「って、待って、俺、そこは誤解を解かないといけないわ」

 

 立ち上がった俺は、背後の残骸を指さして罪を告白する。

 

「あのマキシマム・カイザー、俺とグルだから。別に俺が助けたとかじゃなくて、普通にマッチポンプだから」

「……?」

「ちなみに、俺はあの未曾有の脅威として有名な神聖十文字(デカグラマトン)と、二人で共謀して今回の騒動を引き起こしました」

 

 俺が虚飾に満ちた舞台の真実を伝えると、それぞれ顔を見合わせて。

 

「既に予定より時間が遅れているわ。早く始めましょう」

「はい! 優勝してヒイロをゲットです!」

「ちょっと、本当にヒイロの所属をこれで決める気なの?!」

「まあまあ、私たちが勝てばいいだけですし」

「……私は正直どうでもいいんだけど」

「あら、ではエイミの頑張り次第ではクーラーについて妥協して差し上げますよ。ヒイロを引き込めるのであれば、多少の厚着程度は許容範囲内です」

「分かった。全力でやるね」

 

 各々俺を無視して浜辺へと歩いていく。

 

「もしもーし? あれ、ヒイロ君の声が聞こえていないのカナ?」

「目的が見えませんし、敵対していたデカグラマトンがこんなことに協力するとは思えません。流石の完璧メイドにも補佐不可能な嘘ですね」

 

 一人、俺の傍に残った飛鳥馬がささやく。

 

「謙虚なのも美徳だとは思いますが、そこまで恥ずかしがらなくても大丈夫です。私はちゃんと解っているので」

「理解してない、理解してない!! 何一つ、理解してないッ!!」

「では、皆様も待っているので、迅速に行動しましょう。時間は有限です」

 

 キヴォトス人との純粋な力の差。容易く俺は飛鳥馬に引きずられ──続く言葉に唖然とする。

 

「折角なので、二人で一緒に個室の更衣室を使いましょう。私のパーフェクトメイドボディをお見せするチャンスです。

 ……ちなみに、ヒイロだけ特別です。別に相手は誰でもいいわけではないので、そこは誤解しないでください」

 

 俺は上下の歯を打ち鳴らし、その身を抱いて、恐怖する。

 

 男女二人で、同じ更衣室だと……!? 正気か……!? 百合の為でなくても、男子禁制の空間に、男を一つまみだなんて許されざる禁忌だというのにッ!! ふざけるな、俺は百合界のエリート、ユリートだぞッ?!!

 

 必死に、俺は空中のドローンに叫ぶ。

 

「神、何とかしてくれ!! 魔人はカスみたいな行為で悪化させただけだし、もう俺が頼れるのは、神だけなんだ!! 頼むッ!! 俺は、百合が、見゛た゛い゛!!!!」

「三条ヒイロ……」

「神……?」

 

 ドローンのモノアイと目が合って、クルリと反転して背を向けられる。

 

「ふっ、貴様と過ごした日々は、思いのほか楽しかったぞ……また、何時か会おう」

「逃げるな、卑怯者ッ!! 責任から逃げるなぁぁあああ!!!」

 

 デカグラマトンにすら見捨てられ、喉も枯れ果てた俺は、涙を流しながら無の境地に至る。

 

 カイザーPMCから借りパクした兵力を塵に変えておきながら、何一つ成し遂げられず。

 

 こうして、悉くを失敗に終わらせた俺は、強制的にビーチへと連行された。

 

 

 

 

 

 

 




 問題は、デカグラマトンがアイン・ソフ・オウルをどのタイミングで作成したかだ。いや、作成したのではなく何らかの素体を感化した可能性も……そもそも、感化はしておらず、純粋にデカグラマトンが拾い、理念に賛同して着いて来た説だって……。
 もしアイン・ソフ・オウルがデカグラマトン作なら、マルクト(お姉様)とアイン・ソフ・オウルの姉妹百合もデカグラマトンが創造したことになるんだよね。

 デカグラマトンこそが真の百合IQ180だった……?
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