透き通るような世界で俺がやるべき唯一のこと   作:THE TOWER XVI

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極超音速(マッハ10)

 慌てて中央ホールに戻ると、桐藤に情報を伝える。

 

 一瞬目を見開いた彼女は、すぐに立ち上がって古聖堂に設置されている防衛システムのオペレーションルームに向かった。

 

 俺はこういう兵器に詳しそうな人物に連絡を入れながら、桐藤と共にトリニティの防衛システムのオペレーターの横に集まって画面を見る。

 

「そんな、巡航ミサイルだなんてものはレーダーには……」

「地上のレーダーには映らなくて当然よ。この惑星自体の曲率によって、高度30kmを飛行する物体は地上から見て650km前後で地平線の下に隠れるわ。マッハ10の飛翔体なら、理論上最も早く捕捉できたとしても着弾の3分前ね」

「あの、この方は……?」

 

 俺の端末から聞こえる声に、桐藤が疑問を口にする。

 

「ああ」

 

 俺が答えようとして、端末の声に遮られる。

 

「調月リオよ。貴女はトリニティのティーパーティーのホスト、桐藤ナギサね。挨拶は後でいいわ。極超音速が本当なら、対処可能な時間はそう残されていないもの」

 

 想定外の人物に、桐藤は驚愕の視線を俺に向ける。その視線を無視したまま、俺は端末に声を掛けた。

 

「対処できるのか?」

「少し待って……ちょうど今、私の個人衛星で巡航ミサイルを捉えたわ。制御をこちらに渡して」

 

 調月の怜悧な声に、オペレーターが桐藤に視線を送って、桐藤は頷く俺を見て許可を出す。

 

「……私が許可します」

「安心して頂戴。これはミレニアムとしての行動ではなく、彼の頼みに対する私の個人的な行動だから」

「それはそれで、ヒイロさんとどういう関係なのか気になりますね……」

 

 桐藤が独り言ちる中、調月がオペレーターの扱っていた装置に接続し、画面に衛星画像を含むウィンドウが一気に展開される。

 

「現在の進行方向は確かにトリニティの古聖堂ね。このままの速度なら、あと7分でそこに到着するわ。ただ、巡航ミサイルの着弾地点を読むのは、直前までほぼ不可能よ。途中で進路変更を行う可能性も十分あるわ」

「だが、狙うならここだろうな。態々、トリニティとゲヘナの要人が集まる調印式当日に発射しておいて、他の場所を狙うなら、相当な天邪鬼か策士だ」

「それもそうね。狙われた時の被害からしても、目標は調印式だと仮定すべきね。

 古聖堂を着弾地点と仮定した場合の飛翔体の飛翔経路を可能な限り予測して、使用可能な設備で最も迎撃が望めるタイミングを割り出すわ」

「頼んだ」

 

 端末の接続を切って、先程から大人しくしているドローンを頭に乗せたまま俺はネクタイを緩めて気道を確保する。

 

「巡航ミサイルは自由が利くわけか。最後まで何処に落ちるか分からないルーレットほど怖いものはないな」

「弾道ミサイルとの大きな違いだな。弾道軌道という放物線を描く弾道ミサイルは、終末速度がマッハ20を上回ることもあるが、進路の予想がつくため迎撃しやすい。一方で、巡航ミサイルであれば、適宜進路変更を挟むことや、急降下することで直前まで攻撃箇所を悟らせないことが可能だ」

 

 頭上の解説を聞き流しながら、不安そうにこちらを見る桐藤に目を合わせて、数瞬、俺は沈思する。

 

 調月の言うように、巡航ミサイルの着弾位置が分からない以上、この古聖堂がターゲットか分からない。だから、古聖堂から皆を逃がしたところで、逃げた先を狙われたらそこで終わりだ。逃げた先に罠が仕掛けられている可能性もある。

 

 いや、だがトリニティやゲヘナの要人がここに集まっているのも事実。ゲヘナの風紀委員会も先生もいるこの状況でここが攻撃されて、纏めて機能不全に陥ればそれこそ最悪の事態だ。少なくとも、分散することに意味はある……。

 

「ナギサ」

 

 俺は、九鬼正宗の柄に手を掛けてささやく。

 

「ティーパーティーの子たちを連れて、ここから退避しろ。ミカのいる本館を目指せ」

「そう、ですね。こうなった以上、残念ですが仕切り直した方がよさそうです。では急ぎましょう……ヒイロさん?」

 

 移動しようとした彼女は、動かない俺に視線を向ける。

 

「正義実現委員会の剣先も来ているんだろ? 一回見たことがあるが、彼女が居れば下手な相手が襲ってきても大丈夫だろ。道中で見つかれば護衛は彼女たちに頼め。俺が見つけた時は、後で追いかけるよう伝えておく」

「え? ヒイロさんは……」

「俺は先生を探して来る。それに、俺には最悪の場合でもミサイルを何とかできる算段があるしな」

 

 唖然とする彼女に微笑んで、俺はオペレータの子たちと正義実現委員会の護衛に桐藤を頼む。

 

「じゃあ、任せたわ。お前らのトップをちゃんと避難させてやってくれ」

「は、はい! あの! 先輩たちには、わ、私から連絡しておきます!」

「ああ、ありがとな」

 

 オペレーターの子たちが出ていく中、護衛の子が動けずにいる桐藤を抱える。

 

「ま、待ってください! 先生を探すなら私も一緒に……!」

「優先順位を間違えるな、桐藤ナギサ」

 

 出口へと引きずられていく桐藤を、俺は正面から見据える。

 

「エデン条約の調印式に必要なのはお前で、俺じゃない」

 

 少女は両目を見開き──俺は重苦しい雰囲気を和らげるべく、相好を崩した。

 

「まあ、お前を護ると誓ったからな。傍にいてやれないのは悪いが、少なくとも、お前はここじゃない」

 

 衝撃のまま彼女は言葉を失い、その姿が出口の奥に消える。

 

 見届けた俺は、定期的にウィンドウが立ち上がり、文字列がコンソール上を流れる画面に近づく。

 

「これ、聞こえてる? 行けそう?」

「……ええ。本当は、私もヒイロにはそこから離れて欲しいのだけれど……こういう時の貴方は曲げないものね」

 

 通信用のヘッドセットを手に取ると、そこから音声が聞こえてくる。

 

「質問に答えるなら、順調ではあるわ。トリニティが用意していた地対空(Surface-to-Air)ミサイル(Missile)、迎撃用高出力レーザー、対空警戒レーダーの同期と誘導プログラムの対応も問題なく完了済み。

 ちなみに、先生には既に私から連絡を入れてあるわ。ゲヘナの方は先生が説得して、ここを離れる予定よ」

 

 既に先回りして俺の懸念に対処してくれている調月に俺は口元を緩める。

 

「すまん、お前も色々忙しいだろうけど、助かる」

「構わないわ。貴方の頼みだもの。でも、貴方がヒマリではなく私を頼るのは、少し珍しいわね」

「そうか? こういう兵器の類なら、ヒマリよりリオの方が詳しいのかなって……」

「……それでいいわ。ただ、ヒマリがよくベストパートナーだなんて吹聴(ふいちょう)しているから……私も勘違いしていたようね。そうね。何かあったら、分野に関係なくまた私を頼ってもらって構わないわ」

 

 疑問が解決したのか、ほんの微かに声音を上げた調月は画面上のミサイルの位置を拡大して見せてくれる。

 

「今のところ目標のミサイルの巡航高度、方位、全てに変化なし。そこに到達するまで残り5分といったところね。ただ、ミレニアムの設備ならともかく、この兵装で極超音速の飛翔体を迎撃できる保証はないわ」

「一応、そのためのプランBとして俺がここに居る。ただ……迎撃できたとしても終わりとは限らないよな」

「……そうね。このミサイルで終わる理由もない……むしろ、ミサイルの着弾後に攻勢に移る可能性の方が高いはず。何らかの目的を達成するのであれば、高確率で次の一手は地上の制圧のための歩兵の投入ね」

 

 次の一手へと思考が飛びかけるが、俺は目の前の問題に意識を戻す。

 

 今度は、避難の状況について頭上のドローンに問いかけた。

 

「古聖堂に残ってる奴とかいる?」

「ほとんど居ないな。先程の小娘が正義実現委員会に連絡し、そこのエリドゥの少女が先生に伝えたことで、ゲヘナ側も退避したようだな。……逆に、先生は貴様を探しているようだが」

「ナギサたちが退避できているのはいいが……あー、まあ、先生はそうするか」

「だが、周辺には未だに状況を理解していない見物客も多いぞ。情報統制という意味では正しいが、あの巡航ミサイルの大きさから推定される弾頭の炸薬量からして、彼女らも確実に巻き込まれるだろうな」

「……誰か、ヒイロ以外にそこに居るのかしら? いえ、そもそもなぜエリドゥのことを……!」

「なんだ、エリドゥの少女よ。いや、久しぶりというべきか。私は──」

「ああ、うん、そうだ! 今は良いだろ! 後で落ち着いてから紹介するよ、うん!!」

 

 調月に神聖十文字(デカグラマトン)のことを伝えていない事を思い出し、今言えば色々大変なことになりそうなため大声で誤魔化す。

 

「それじゃ、さっさと俺は先生と合流して──」

 

 俺は勢いのまま、話題を変えようとして、調月がつぶやく。

 

「磁場のノイズ……これは、力場……? いえ、『名もなき神』の力……ッ?!」

「この力……まさか──」

 

 画面が暗転する。

 

 急に重量を増したドローンが頭にのしかかり、呻いた俺の上を転がって床に音を鳴らして落ちる。

 

「おい、神……?」

 

 うんともすんとも言わないドローンに、俺は背筋を氷水に漬けられたような感覚に襲われる。

 

「いや、冗談じゃねぇぞ、一体何が……」

「僕の名前を叫ぶときが来たようだね」

「俺の最強の先生探知機がやられるなんて! どうしろって言うんだ……!」

「無視かい……? 酷いなぁ」

 

 俺だけに見える悪霊を無視していると、止まっていたドローンがころりと転がって俺にレンズを向ける。

 

「三条ヒイロ、安心しろ」

「うおっ! 生きてる……?」

「解釈できない力により電子機器が麻痺しただけだ。この端末も影響を受けたが、私の神性の前には無意味だ。先生探知機などという不名誉な呼び名についても、不問に付しておこう」

 

 驚く俺の前で、ドローンは再び浮上する。

 

「この力場を維持する名もなき神々の力の量からして、精々数十分でエントロピーの増大と共に崩壊するだろう。それにしても……さながら、概念的な電磁パルス(EMP)攻撃だな」

「……もしかして、迎撃システムも今のでダウンしたか?」

「当然だ。エリドゥの少女は、その他の有象無象に比べれば認識に値する存在だが、それでもこの力場を破ることは出来ないだろう」

 

 じっと、レンズの奥を回転させて俺を睥睨したドローンが告げる。

 

「さあ、どうするつもりだ三条ヒイロ。ミサイルは針路を変えることなく、古聖堂へと距離を縮め、その距離、着弾までおよそ3分。私の神性でもって、巡航ミサイルにアクセスすれば、まだ間に合うぞ」

 

 着弾の直前になって、解決策があると誘う神に俺は苦笑する。

 

「今頃かよと言いたいところだが」

 

 九鬼正宗に導体(コンソール)を接続する。

 

「相手の正体が分かってもない段階で、切り札を切るわけにはいかないしな。予定通り、プランBが発動したってわけだ。導体(コンソール)の次は、特等席で魔術の応用編を見せてやるよ」

「いいね。最近は君の怒鳴り声しか聞いていなかった気がするからね。偶には、日頃の感謝を込めて好き好きアルスハリヤぐらい言ってほしいものだ」

「……」

 

 魔人の鳴き声を無視した俺は、身体強化を発動させて、さっさと外に飛び出す。

 

 ワイヤーに、重力制御を組み合わせて尖塔の前の屋根の中央に立つ。

 

「一応触れておくが」

 

 ドローンはその光学レンズの表層に俺を映す。

 

「人間の反応速度において、感覚器官から脳への伝達に20から50ミリ秒、脳から運動系へ20から50ミリ秒、合計約0.1秒ほどの遅延が存在する。貴様が認知し、体を動かそうとしたそのコンマ1秒に、マッハ9.6の極超音速ミサイルは300m以上を移動する。いくら人の認知機構がフィードフォワード系であれど、知覚はおろか迎撃など不可能だ」

「ああ、そう……」

 

 デカグラマトンの言葉に、俺はニヤリと口端を上げる。

 

「じゃあ、その0.1秒先の未来が視えていたら、プラマイ0で問題なしだな」

 

 黙り込むドローンに俺はささやく。

 

「迎撃ミサイルの発射だけは神にやって欲しいんだけど、いい?」

「……いいだろう」

 

 一拍の空白を挟んで。

 

 ドローンが承諾したのを聞いて、見た目だけはいつも通り平和な空を見上げる。

 

「アルスハリヤ」

「好き好きが抜けてるぞ」

「……」

「なんだ? 言わないと力を貸さないぞ?」

「……ちゅきちゅきアルスハリヤ」

「きっしょ!!」

「おい、ゴラァ、表出ろや! この緊急事態に、ふざけてんじゃねぇぞ!!」

 

 臓腑から湧き上がる殺意のままに、魔人を怒鳴りつける。

 

 その横で、ドローンは冷静に告げた。

 

「到達まで残り144km、45秒。針路に変更なし。高度30kmを巡航中」

「まあまあ、ちょっとした冗談さ。緊張を解きほぐすための、魔人なりの気づかいってやつだ」

 

 俺は疑念の目を魔人に向けて、アルスハリヤはふわりと視線を回避する様に回り込むと、後ろから両腕をまわして耳朶に囁いて来る。

 

「君がしようとしていることはだいたい分かる。精神世界で砲弾を斬って見せたように、対処しなければデッドエンドの死地に身を置いて、払暁叙事が見せる最善手──即ち、自分が生き残る可能性に頼るわけだ」

 

 何が面白いのか、ニタニタと嗤うアルスハリヤの鬱陶しい感覚に腕を払うが、懲りずにまた纏わりついてくる。

 

「巻き込まれる同居人のことも少しは慮ってほしいが、君だからな。今更か。

 もう一つ問題があるとすれば、あのミサイルが手を広げて待っている君の元に飛び込んでくるかがまだ分からないということだが……」

「到達まで残り96km、30秒。針路に変更なし。高度30kmを巡航中」

「この分だと、我々の胸の中に飛び込んで来てくれそうだね」

 

 魔人を追い払うのを諦めた俺は、九鬼正宗の引き金(トリガー)に指を掛けて、目を閉じる。

 

「まあ、そうだね」

 

 魔力が高まり、足元から粟立つような感覚が肌を撫でる。

 

「君のバカに付き合うのも、一興だ」

 

 生成(クラフト)する魔力壁のイメージを固めながら、訪れるコンマ数秒のために、精神を整え、全ての思考リソースを注ぎ込む。

 

「到達まで残り48km、15秒──」

 

 ──(ひら)く。

 

 緋色に染まった世界。

 

 地平線の先まで森羅万象が染まり、溶ける。

 

 眼球から脳を貫く激痛に、思わず閉じてしまいそうになる魔眼を気合いだけで保つ。

 

 その眼で、俺は空の遥か彼方を視た。

 

 一本の線。

 

 最善を掴む為に必要な情報以外、その全てが溶け落ちて──宙に残った一本の線が視える。

 

 肉眼では視認すら叶わない、天蓋に煌めく一点。

 

 神秘的なまでに暗く輝く宇宙(そら)と眼下に広がる蒼白い大気の層の狭間を、漆黒の鏃は極超音速(マッハ9.6)で飛翔していて──曲がる。

 

 側面からサイドスラスターを噴かせながら、ミサイルの軌道が大地へと折れた。

 

 堕ちる。

 

 堕ちる、堕ちる、堕ちるッ!

 

 特徴的な突入軌道を取ったミサイルが、螺旋を描きながら死の急降下(ダイブ)を開始する。

 

 3kmが一秒で縮まる速度での、成層圏からの落下。

 

 位置エネルギーすらも速度へと変換し、起動したロケットモーターによる大推力は空気抵抗をも捻じ伏せる。

 

 達するは、音速の十倍(マッハ10)

 

 上昇する大気圧とともに先端は赤熱し、断熱圧縮により超高温と化した空気は気体からプラズマへと転じる。

 

 楔形の衝撃波を形成しながら、極超音速の弾頭は空気を切り裂きプログラムされた目標へと加速し──

 

「今だ」

 

 俺は静かに囁く。

 

 デカグラマトンのアクセスを介して放たれた迎撃用地対空ミサイルが、古聖堂の周囲から白い噴煙を吐きながら空へと伸びた。

 

「やはり駄目だな。極超音速により発生したプラズマにより、迎撃ミサイルのアクティブレーダーも機能していない。そもそも力場によって電子機器が──」

 

 ドローンが口走る言葉に意識を割くこともなく、俺は空を見つめる。

 

 ミサイルを眼球で追うことはしない。ただ俯瞰するように、まっすぐ引き絞られた緋色の線と天へと伸びる四本の線を視る。

 

 着弾まで残り7秒。

 

 6秒。

 

 5──引き金(トリガー)

 

 残った天高く聳え立つ四本の線を俺は一つに纏める。

 

 ──生成(クラフト)反射壁(リフレクト・ウォール)

 

 不可視の矢(ニルアロウ)ではなく、鋼鉄の矢(ミサイル)の進路を捻じ曲げる。

 

 魔力壁と軽合金が擦れ合い、紫電が奔る。

 

 物理的な干渉により、個々のタイミングで折れた四つの線。

 

 収束する様に一直線上に並んで──

 

 寸分の誤差なく。

 

 コンマ秒に340mという距離を消し飛ばした極超音速ミサイル(マッハ10)が突き刺さった。

 

 爆閃。

 

 近接信管が作動するよりも早く。

 

 物理的に起爆した迎撃ミサイルの炸薬のエネルギーが、魔力障壁では防ぎきれなかっただろう莫大な運動エネルギーを諸共消し飛ばす。

 

 地上に生み出された火球が、雲を押しのけ空に穴を開け、遅れて到達した衝撃波が古聖堂のステンドグラスを割り、大地を轟音で揺らす。

 

「偶にだが」

 

 火球が黒煙へと姿を変えながら、古聖堂を傘のように覆う下。

 

 衝撃波で痛めた耳を手で押さえる俺の横で、ドローンが呟く。

 

「いくら不可解たる魔術による現象だとしても、貴様が人間なのか疑わしくなるな。確率の意図的な収束など、さながら多世界解釈における世界の任意の選択だ」

 

 そもそも人間ですらないデカグラマトンの言葉に俺は口端を上げる。

 

「生身で銃弾を耐える奴らの中じゃ、これでも人間側だと思うんだけど」

「くっくっく、極超音速(マッハ10)の物体を撃ち落とせる時点で、十分常識外れさ」

 

 くつくつと笑うアルスハリヤの横で、俺は耳を塞いでいた手を下ろすと、端末を取り出す。

 

 依然としてブラックアウトしている画面を確認して、俺は下を指差した。

 

「改めて先生を回収しに行こうぜ。おそらく、本番はこれからだからな」

 

 衝撃波で巻き上がった土埃が晴れていくのを背景に。

 

 直撃していないにもかかわらず、既に廃墟のような姿となった古聖堂の中へと俺達は急いだ。

 

 

 

 

 

 

 




 マッハ10のスクラムジェットは完全なる独自設定です。ロマンを取りました。色々詰め込んでいますが、キヴォトスのオーパーツパワーってことで許してください()
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