透き通るような世界で俺がやるべき唯一のこと 作:THE TOWER XVI
金色の法陣が次々と地面に展開され、一突き。
ヒエロニムスがその杖で地面を叩く度に、光の筋が天から地へと奔る。
「斬り込むから援護してくれ!」
「うん、任せて! あと、ヒイロ!」
弾ける光の狭間を駆け抜けながら、爆炎の向こうから白洲が叫ぶ。
「近くまで行くなら、これも!」
飛んできた白い長方形の物体を左手で受け取って──ヘイロー破壊爆弾か──俺は口角を上げる。
「サンキュー! こんな物騒なモノ、さっさと返品したほうが良いからなッ!」
着地と同時に地面を踏み抜き、蒼白い魔力光を曳いて斜め前へと飛び出す。
反射する光の如く折れ曲がった経路を描いてヒエロニムスの攻撃を掻い潜り、俺は距離を詰めて──影。
アサルトライフルで黒煙を掻き分け、錠前が眼前に飛び出して来た。
俺を通り越して飛んできた白洲の弾丸を、最小限の動きで回避。流れるように銃口を俺に向ける。
「アズサに渡したヘイロー破壊爆弾か……」
チラリと俺の片手の白い物体を見た彼女は囁く。
「今使えば、私を殺せるぞ」
「はっ、何言ってんだお前」
笑いながら、俺は右手で鯉口を切る。
「誰がこんな汚い爆弾を百合に使うかよッ!」
間合いに踏み込んで、錠前が引き金を引くと同時に、腰を落とす。
銀閃。
頭上を弾丸が通り抜ける只中で、俺は横一文字に刃を滑らせる。
しかし、既に錠前は即座に地面を蹴って俺の上を飛び越えていた。
光剣は空を斬って──慣性を維持したまま、半回転。
そのまま右斜め上に九鬼正宗を振り上げ、同時に爆弾を懐にしまった左手も合流する。
背後を取るように着地し、銃の狙いを定めようとしていた錠前に、180度振り返った俺は袈裟斬りを繰り出した。
紫電が弾け、光剣が叩きつけられる。
銃口を退かしたまま、俺は一歩前に踏み込んで膠着状態に持ち込む。
「なぜ……」
よく見ると、俺の頬──槌永の弾丸が掠めて切れた箇所に、錠前の視線が止まっていた。
「貴様は……ヘイローが無い外の人間は、銃弾一発で死ぬのだろう?」
「ああそうだな。まぁでも、三条燈色みたいなサンドバッグに、銃弾を痛いで済ませるような防御力があっても処分に困るだろ。丁度いいんじゃない?」
俺の言葉に錠前は目を伏せる。
「……私たちよりも死が近い貴様にとって、世界はもっと虚しい筈だ」
錠前は平坦な声で囁いて、勿忘草色の瞳と目が合う。
「不条理な死と隣り合わせの世界を知りながら、何故貴様は抗おうとする……自らの命を晒してまで、何故、関係のないトリニティとゲヘナを庇い、足掻く……」
ただただ理解できないと、疑問を持って問う彼女に、俺は口を開いた。
「百合の為。一度、言っただろ? そこに、
桐藤は、親友が二度と危険にさらされないように、己の負担も厭わず、エデン条約を、その先の
白洲は、補習授業部の仲間たちの為に、たとえ一人だとしても、嘗ての同胞に立ち向かった。
そして聖園は、何処までも己を傷つけても、それでもアリウスといつか仲良くお茶会を開くような、そんな優しい世界を願っていた。
「尊い
目の前の少女に、俺は微笑みかける。
「命を張る理由なんて、それで十分だ」
「そんなものが……貴様が、命を懸ける理由だと?」
「少なくとも俺にとっては、三条燈色の命よりも遥かに百合の方が重い」
どこか迷い子を思わせる瞳を覗き込んで、俺は笑う。
「ちなみに、俺の中の百合には、お前らも含まれてるぜ。戦って分かった。お前らからも感じる……百合の波動を! 一緒に苦難を分かち合った芳醇で強固な百合の匂いを……! だからこそ、お前らはここで止めてやるよ。トリニティと仲良しする未来だってあるしな!」
「ッ、戯言を……!」
錠前が左足を軸に回し蹴りを放つ。
腰を捩じって九鬼正宗を左下に落とし防御。
「トリニティとの和解だと?! 我々の憎悪を……数百年の、アリウスの憎しみも知らずに、ほざけ!」
銃での薙ぎ払いから、中段蹴り。
そのまま流れるように繰り出される体術を捌きながら、猛然と次手へ繋ぎ、間合いを保つ。
錠前を巻き込むような無差別攻撃は仕掛けてこないのか、俺の背後のヒエロニムスから攻撃は飛んでこないまま、
「まさしく、無知は罪。憎悪を知らず、世界の真実からも目を背ける貴様に、一体何が為せる!」
しかし、錠前も俺の意図に気付いたのか、後ろに飛んで──俺の視界の端に銃を構えた白洲が映る。
「くっ」
俺の視線で勘付いた錠前はその場で上体を傾け、白洲が放った弾丸がその上を掠める。
同時に、俺の足元にはヒエロニムスが展開する金色の魔法陣が焼け付くように地面に描かれた。
俺は足元で魔力を爆発させる。
蒼白に眩む視界。
後ろに飛び出す直前に、懐に手を突っ込む。
「所詮、口先だけか! ああ、そうだとも、使うがいい! これは殺し合いだからな!」
「おいおい、勘違いすんなよ」
ヘイロー破壊爆弾だと思っているのか、嘲るように口を開く錠前に、俺は笑い返す。
「こいつは、ビーチへのお誘いだ」
「──水鉄砲?!」
水を入れる穴が開いたままの半透明プラスチック製の玩具が、内容物を撒き散らしながら飛翔する。
意表を突かれた錠前は、降りかかる水に腕で目を庇って、その隙に反転した俺は再びヒエロニムスへと突っ込んだ。
「このっ、ッ!」
鬱陶しそうに錠前が声を上げて、背後から銃声が響く。
しかし、俺の背中を狙った凶弾は遥か頭上を飛び越え、古聖堂の壁の上で円弧を描くように土埃の花を咲かせた。
狙いを外した錠前は、乱入者に怒りのまま叫ぶ。
「アズサか! 邪魔をするな!」
「ヒイロ! ヒエロニムスを!」
背後からの白洲の声に、俺は振り向くことなく、錠前に背を向けたまま駆け抜けた。
斜めにフェイントを織り交ぜながら、縦横無尽に長椅子を蹴り倒し、魔法陣と共に空中を走る光の筋を躱しながら着実に距離を詰めていく。
「アルスハリヤァ!」
「待て待て、あの神気取りのAIに警告されただろう?!」
「『十と六の刻』だ。あの電脳世界を除いた現実世界で、俺が魔眼を
「言っておくが、そう言い伝えられているだけで、君の場合は──」
「十と六の刻より少ない可能性もあるってか? じゃあ逆に、多い可能性もあるわけだ。つまり、フィフティ・フィフティだな」
口端を曲げた俺に、紫煙と共に俺の傍で浮遊するアルスハリヤはかぶりを振る。
「まったく、とんだコイントスだね。ロシアンルーレットの方が、まだマシだ」
否定する仕草をしておきながら、魔人は愉快そうに口角を吊り上げる。
「まあでも、病室で君があのメイドと乳繰り合ってた──」
「してないね?」
「──とにかく、あの時、君に教えたエースオブエース、正真正銘の最後の切り札もある。安心して、もしもの時は僕に任せたまえ」
耳朶に囁く魔人を振り払い、俺は九鬼正宗を納刀する。同時に、懐の
「返しとくぜ、化け物。降臨0日目の、俺からの誕生日プレゼントだ!」
その場で動かないヒエロニムスの目の前を白い長方形の爆弾が弧を描く。
遅れて、ヒエロニムスは黄金の杖と禍々しい赤黒い霧を纏う杖を交差させるように防御態勢を取ろうとして──フルオートの連射音。
背後から放たれた弾丸の雨に巻き込まれて、ヘイロー破壊爆弾が数回弾かれるように空中で回転する。
爆轟。
ヒエロニムスの目の前で生じた眩い火球が、酸素を燃やし尽くし、衝撃波が地面を叩く。
チラリと後ろを窺えば、錠前が硝煙を吐くアサルトライフルをこちらに向けていた。
だが、地面に伏していた白洲も、錠前ではなくこちらにその銃口を合わせていて──視線が交わる。
無言のアイコンタクトに背を押され、俺は前を向くと、生じた爆炎の中へと踏み込んだ。
肌を灼く熱も気にせず、黒煙の只中を潜り抜け、杖を交差させた無貌の怪物をその先に捉える。
目の前に現れた人間に、杖を火花を散らして擦り合わせながら身構えて──
一発の銀弾が俺を追い越した。
銀線はフードの奥の暗闇に叩きつけられ、閃光と共にヒエロニムスが体勢を崩す。
致命的な隙に──間合い──
0.1秒の強制開眼。
世界が朱に染まる。
抜──刀。
魔力線
須臾の狭間。魔力線が通う一瞬。その非実在を銀刃が捉え、確定させた。
折れる。
上下に泣き別れになった杖がくの字に分解し、ヒエロニムス本体の枯れ木のような痩躯も、黄金の光を漏らしながら分かたれる。
勢いのまま俺は背後のパイプオルガンに着地し、捻じ曲げた金属製パイプを蹴って講壇の上に戻る。
一回転させた刃を鞘に仕舞って──強制開眼の副作用。
脳の奥から刺すような激痛に呻きながら、俺は顔を上げた。
空中に溶けるように、斬られた端から黄金の粒子となって消えるヒエロニムスの奥。
「──!」
要領を得ぬ思考の狭間で、倒れたままこちらへと必死に訴えかける白洲を捉え──
「──イロ、後ろだ!」
「私を忘れてもらっては困るな」
背後に振り返る前に、二発の銃声が響く。
「ッ……!」
激痛が脇腹を貫く。
焼きごてで内臓を掻き回したかのような熱が体を駆け巡る。
手で押さえる暇もなく横から蹴り飛ばされた俺は、九鬼正宗を握ったまま壇上から転がり落ちた。
「ヒイロッ!」
「認めよう。アリウスにとって、貴様が最大の障壁であったと。戦術兵器が二つも、貴様の為に破壊されるとはな……」
昏い瞳で見下ろしながら、アサルトライフルを下に向けた錠前は囁く。
「しかし、私たちにはまだユスティナ聖徒会がある。無尽蔵の兵力がな。
それに、どちらにしろ、貴様には関係のないことだ。貴様は、ここで終わりだ」
ゆっくりと降りて来た錠前は、上体を起こした俺の額に銃口を突きつける。
「これが現実だ。足掻いたところで、行きつく先は虚無だ。それでも、貴様は……世界の真実から、目を逸らすのか?」
トリガーに指を掛けたまま彼女は問いかける。その何の感慨もない瞳の前で、俺は口端を曲げた。
脇腹を押さえていた手を放して、代わりにその手で銃身を掴む。
「世界の真実ねぇ」
べっとりと血で滑る銃身を握って、額に押し当てたまま俺は笑う。
「……目を逸らしてるのは、一体……どっちだろうな?」
目の前の少女の、勿忘草色の瞳を俺は覗き込む。
「白洲が、言ってたな……その憎しみは、一体誰の物だってな? 怒りの感情でさえ、一日と持たないのに……数百年前の、生まれる前の憎悪を……人は保ち続けられるのか?」
「……」
「本当に、これがお前のやりたい事──」
「虚しいな」
回転する視界。
横薙ぎに振り払われるままに、俺は血を撒き散らして転がった。
「虚しい虚しい虚しい。なぜ理解しない?! 殺意と憎しみに満ちたこの世界で、あらゆる努力は無駄なのだと。足掻こうとも何の意味もない! 全ては、無駄なのだということを!!」
「ああ、分かんねぇな……欠片も、分かんねぇよ……」
顔を憤怒に染めて、激昂する錠前を前に、俺は喉を動かす。
「でも、一つだけ……俺にも、分かることがあるぜ。今のところ、一度もお前の笑顔を見れてねぇ」
唖然と固まる少女に、俺はニヤリと口角を上げた。
「自分自身から目を背けてる奴に、俺が敗けてやれるかよ」
腕を振るい、己の血を飛ばす。
突然の目つぶしに、錠前は反射的に瞼を閉じて、横から白い影が突き刺さった。
「サオリィイ!!」
「ッ、チィッ! まだ動けるか!」
既にボロボロの体で、白洲が無理やり錠前を押し倒す。
もんどり打って吹き飛んだ二人は、長椅子を巻き込んで止まる。
その隙に、後方に引っ込んでいたドローンが出てきた。
「三条ヒイロ、後退して処置するぞ」
「いやいい。後でだ」
「……止血ぐらいして行け」
ロボットアームを展開したドローンから簡単な応急処置を受けつつ、俺は起き上がると端的に問う。
「なぁ、先生たちは?」
「十分程度で着くが……」
「そりゃ良かった」
何かを言いたげに、じっとこちらを見つめる光学レンズを無視して、俺は腰の九鬼正宗に手を掛ける。
足元で蒼白の魔力が迸る。
ドローンに背を向けた俺は、必死に錠前に対して食らいつく白洲の下に飛び出した。
「お前が私に正面から挑んで、勝てるわけがないだろ! 足掻いても無駄だ! 人殺しの覚悟も無い、あのセイアの任務からも逃げたお前に……! 私たちを騙そうとしてまで、綺麗なところに残ろうとする……そんなお前に……私を止められると……?!」
「ッ……うぅ!」
叫んだ錠前は白洲を投げ飛ばすと、床に叩きつける。
背中から落ちて呻く白洲に、流れるように銃口を向けた。
「いい加減、諦めろ。あれでも急所は外したが……お前がこれ以上抵抗するなら、私はあの男を殺さないといけなくなる」
「……! そんなこと、絶対に許さな──」
「お前が言うのか? 巻き込んだお前が、か? 私は言ったはずだ。私たちのような『人殺し』を受け入れてくれる場所などないと。お前のせいで、あの男は死ぬことになる……。そうだ、お前が、お前の大事な友達とやらを不幸にする。大人しく、私たちの下に戻れ、アズサ」
「わ、私は……」
白洲はその顔を歪めて──ドッ──俺は床を踏み込み、加速する。
全身の細胞ががなり立てる激痛という警告も無視して、魔力を足の裏で爆発させて錠前の正面に躍り出た。
抜刀──左から右。
空間に一本の線を引く。
光刃と、アサルトライフルの金属製の側面が擦れ合い、火花が散る。
「その傷で動くか!」
「ヒイロ……!?」
「勝手に、人の死を他のやつの責任にしてんじゃねぇよ」
下から差し込んだ
「俺が死ぬとしても、原因も責任も、全部俺のもんだ」
「で、でも、血が……! 私のせいで──」
魔術による無茶によって、応急処置の意味もなく開いた傷。気にせず、俺はささやく。
「前に言ってたよな。まだ皆と一緒に学びたいことがあるって」
綺麗なアメジストの瞳。
両目を見開く白洲に笑いかけて、俺は正面の少女に対峙する。
「お前の願いは何だ? お前は、どうしたい!?」
「……!」
「アズサ! この男の戯言に耳を傾けるなッ!」
傷が開くのも厭わず、錠前の攻撃を捌きながら俺は俺を張り続ける。
「私は……」
俯いた彼女は床の上で手を握りしめて、顔を上げる。
「私は、皆と一緒にいたい! 海とか、お祭りとか遊園地とか……行きたいところも、知りたいこともまだまだたくさんある……! でも、サオリたちも、私の家族だったんだ……だから……」
「なら、俺が手伝ってやる。俺が一緒に足掻いてやる」
瞠目する白洲に、力強く笑みを浮かべて語りかける。
「『不条理とは、人生に意味を求める人間と、世界の理不尽な沈黙との衝突である』」
自称神が不条理主義について語っていた定義を引用する。
「逆に言えば、世界は俺たちが何をしようが黙って包み込んでくれるってことだ。なら、欲しいもの全部求めて、自由に足掻いてやろうぜ」
「……うん!」
転がっている銃を手に取り、白洲が立ち上がる。
「くっ、甘い夢に惑わされるな、アズサ! もう一度思い出せ、この世界の真実を! 全ては虚しいということを!」
「いい加減、聞き飽きてきたな。分からないなら、もう一度言ってやる。虚しいとか無駄とか、知らねぇよ」
袈裟懸けに銀閃を天から落とす。
目と鼻の先。銃の腹で受け止めた錠前の前で、俺は口角を上げる。
力任せに刀刃を押し込んで、動揺する錠前の瞳を覗き込む。
「甘い夢? 上等だね」
息を吐いて笑った俺は、灼けるような痛みも無視して足に力を込める。
「足掻いて、何が悪い……届かないものに手ぇ伸ばして、何が悪い……」
気圧されて動けない少女の前で、俺は俺の信念を口にする。
「届かないもの求めて手を伸ばして、それでも足掻いて……! そうやって、未来は……奇跡は、掴むもんだろッ!」
魔力を爆発させる。
弾けるように光剣が跳ね上がり、銃ごと錠前は大きく姿勢を崩す。
がら空きの胴体。
引き伸ばされた数瞬、彼女と目が合って──経路線も描かず、俺は
吹き飛ぶ。
弾丸のように吹き飛んだ錠前は、空中で体勢を立て直し──追撃の手を緩めず、俺は距離を消し飛ばす。
唐竹割りに振り下ろした剣戟。
紫電が散り、空間を染め上げる。
俺の一撃を銃で受け止めた錠前は、否定するように吠えた。
「奇跡……奇跡だと……?! そんなものは、幻想だ! この世界に、そんなものは……」
「少なくとも、俺はそうして奇跡を手にした奴を知っている」
誰もが見捨てる土地で、一人奇跡を信じていた彼女だからこそ、きっと、かわいくて強い後輩とのあの奇跡のような日常を手にしたのだ。
──約束だよ!
今更、砂漠に残してきた小さな約束を思い出した俺は自嘲する。
「誰かは大したことないと嘲笑うような、馬鹿にするような、ちっぽけな日常でも、あいつにとっては尊い奇跡だった。お前の世界も、今までの人生も、本当に虚しいことだけだったのか?」
「詭弁を……! それは弱さだ! 世界の本質を直視せず、ただ解釈に逃げているだけだ!」
「俺からすれば、世界の本質が虚しいと決めつけている時点で、解釈に逃げているように見えるけどなァ!」
「……っ!」
弾かれた光剣を再び叩きつけ、錠前の眼前に迫りながら俺は叫んで、一瞬、意識が遠のく。
血が足りない。
気力で保ったところで、身体には限界がある。次の一発に、残りの魔力をすべて注ぎ込む……!
俺は覚悟を決めて──タイミング良く、背後から声が聞こえてきた。
「ヒイロッ!」
その決意を秘めた声に、俺は口元を緩めた。
それに──錠前と決着をつけるべき相手は、最初から決まっているしな。
鍔迫り合いの最中。ふっと俺は息を吐く。
力を抜いて、弾き飛ばされるままに後ろに跳んだ。
「ああそうだな」
不意を突かれ、両目を僅かに見開く錠前の前。
導体を換装した俺は、笑いながら九鬼正宗の
「いい加減、終わりにしようか」
「くっ、何を──!」
凄まじい勢いで体内から吐き出された魔力が、鞘に彫られた導線の上を迸り、導体を通して事象として世界に現れる。
「吹き飛べ」
俺と錠前の狭間で、魔力が収縮し、一点で煌めく。
「
聖堂を照らし出した眩い光が、すべてを呑み込み──弾けて炸裂した。
お互いに反対方向に弾き飛ばされる。
空中に投げ出された俺の前で、錠前も目を細めて呻いていて、そこに一対の翼を靡かせた少女が飛び出した。
「ああああああ!」
「アズサ、お前は──」
銃口から白銀の神秘的な光が漏れて、螺旋を描くように銃身の周りに溢れる。
ろくに防御もせず、呆気にとられるまま最後に錠前は呟いて──声が掻き消える。
爆発的な光が弾ける。
ほぼ零距離で放たれた一撃。
白洲が放った白銀は射線上の全てを呑み込み、一条の銀線が聖堂の祭壇に落ちた。