透き通るような世界で俺がやるべき唯一のこと   作:THE TOWER XVI

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電子書籍の購入特典、書き下ろし短編風の閑話です。
本筋とは関係ありません。


閑話:拝啓、元高校同期の皆様

 拝啓

 

 アビドスの砂漠は今日も砂に塗れていますが、そちらはいかがお過ごしでしょうか。

 

 カプカプヘルメット団の副団長(仮)です。

 

 最近、お金をもらってアビドス高校に襲撃を仕掛けてきました。

 

 意味不明なぐらい強い小鳥遊ホシノという悪魔が住み着いていますが、前払いな上に、かなり報酬が旨いので、断る理由はありません。

 

 しかし、なんと三回目の襲撃の際にこのキヴォトスではツチノコのような存在と遭遇してしまいました。

 

 人間の男です。しかも、ヘイローのない同年代の男子です。

 

 団長を含め、私以外の団員は皆オツムが弱いので、気にしていませんでしたが。聡明にして思慮深い私は、とある書物から男性の恐ろしさを知っています。

 

 きっと、アホ丸出しの団長と話しながら、時折鋭い目付きを見せる彼は、上玉の女を見つけ出して喰ってやろうと、考えているに違いありません。

 

 あの金髪イヤリングの軽薄そうな見た目。「ウェイw」が鳴き声の、脳味噌が海綿体で出来ているチャラ男と一致します。

 

 眉目秀麗な私に気づいたが最後、溢れんばかりのリビドーで、手籠めにせんと迫ってくるでしょう。この時ばかりは被っていたヘルメットに感謝するばかりです。

 

 さて、調子に乗っている団長を煽てていると、襲撃を受けました。

 

 ヘルメット団にも派閥があるため、抗争も珍しくはありませんが、姿を見せない不意打ちとなると、ほぼあの悪魔で確定です。

 

 しかし、それ以上に驚愕する出来事がありました。なんと、あの金髪男は団長をかっこよくかばいやがったのです。

 

 そのまま抱き合って転がる二人をガン見していると、目の前の戦車が内部から吹き飛び、私もいつの間にか意識を失いました。

 

 衝撃的なものを目撃した一方、私たちはいつも通り悪魔にボコボコにされて拠点に戻ってきていました。

 

 話によるとあのチャラ男がピンクの悪魔から守ってくれたそうです。あの化け物にもひるまず立ち向かうとは、脳味噌が海綿体十割は言いすぎたかもしれません。

 

 少し感心していると、団長の様子がおかしいことに気づきます。

 

 もとからアホ面を世間に晒していましたが、今日はより一層上の空であり、ド級のアホ面、ドアホ面です。

 

 最悪の可能性が脳裏をよぎります。それとなくあの男がどうかしたのか確認すると、「ち、ちげーし!」と顔を真っ赤にして否定してきます。

 

 なんということでしょう。あの刹那の間に、団長はあの男の毒牙に掛かってしまったようです。恐ろしい男です。まさに色欲エロモンスター。

 

 しかし、ちんちくりんの団長にすら手を出すとは、あの男の底なしの性欲を見誤っていたようです。きっと催眠アプリを手に入れた暁には、そこらじゅうの人々にオラッ!催眠ッ!と言って回るに違いありません。

 

 あの男への認識を改めつつ、私は決意します。

 

 いくらちんちくりんでアホな団長とはいえ、拾ってくれた恩も感謝も変わりません。ここはクレバーな忠臣たる私が団長の目を覚まさせる必要があるでしょう。

 

 舌を回して団長を説得し、二人であの男を尾行する予定を取り付けました。

 

 あの男の化けの皮を剥がし、誰彼構わず手を出すとんでもない性欲系男子であることを団長に教えてやることにしたのです。

 

 そうして、ヘルメットを脱いで、変装した私と団長は奴の尾行を開始しました。

 

 奴がアビドス高校の所属であることは事前調査で判明していたため、名目上はアビドス高校の弱みを握るということになっています。暇な団員にアビドス高校と都市の間を張らせて、既に奴の行動パターンは把握済みです。

 

 どうやら、あの男は人気のない砂漠の廃墟に向かった後、アビドスの都市部に向かっているようです。

 

 まずは砂漠の廃墟で待ち伏せましょう。人気のないところでコソコソと何か企んでいるに違いません。

 

 砂漠の廃墟の一角で張っていると、金髪男がやってきます。そしてその場で素振りを始めました。張れども張れども、鍛錬ばかりで、挙句の果てには、半裸で汗を拭きながら、肉体を見せつけ始めます。

 

 初めて見る男性の、服越しには分からなかった鍛え上げられた刺激的な肉体に、二人揃って釘付けになってしまいました。

 

 今思えばこれも奴の策略だったに違いありません。なんという男でしょう。恐るべき三条ヒイロ。

 

 そんなことも露知らず、私が本来の目的を思い出したのは、奴が鍛錬を切り上げ、都市部に向かい始めてからでした。

 

 今の所真剣に鍛錬に勤しむ姿と無駄にある筋肉で余計、団長が沼に嵌っている気がします。しかし、誰彼構わず手を出す野獣のような男であることを知れば、きっと団長も目が覚めるでしょう。

 

 ポケーと頬を染め、呆けたままの団長を引っ張って、トラックに乗って追いかけます。

 

 しかし、都市部でもなかなか奴は本性を見せません。賞金稼ぎが目的のようですが、不良の抗争を制圧したり、おばあちゃんの荷物を運んであげたり、性欲魔人としての姿を巧妙に隠しています。

 

 数日にわたって張り込み続け、団長の口が「かっけー」専用発声器と化して漸く、尻尾を掴むことに成功しました。

 

 いつも通り見回っている彼に、銀髪と金髪の長髪の学生が話しかけます。あの特徴的な翼と角はゲヘナの生徒でしょう。傾国の美女である私には及びませんが、あの二人のレベルもなかなかです。

 

 下半身で物を考えている男が、この二人を見逃すわけがありません。

 

 何やら会話していると、二人に両側から拘束され何かを叫びながら連れ去られて行くではありませんか。唖然とする団長を引っ張って、私は追跡します。

 

 すると、三人は路地裏のバーに入っていきます。

 

 そうして、ブツブツうわ言を吐いている団長をよそに、辛抱強く待っていると、げっそりとした顔の奴と、満足げな二人が現れます。

 

 なんということでしょう。二人とはそういう関係だというのでしょうか。一人では飽き足らず、二人同時にパックンチョと行くなんて、なんという大食漢。三条ヒイロ、私の想像を超える危険人物のようです。

 

 確信を得て興奮する私は、そのまま追跡を続行します。すると、今度は中学生程度の白髪の少女が背後から近づき、驚かすように後ろから抱き着きます。

 

 憔悴していたのか、全く気付くことのできなかった彼はかなり驚いている様子。そう、まるで旅先でやり捨ててきた女と自宅の近くで出会ってしまったかのように!

 

 その後、少女を言いくるめようと奮闘するも、押しに弱いのか、そのまま遊びに付き合わされていました。

 

 それにしても年下でも構わないとは……奴の底なしの性欲には驚かされます。改めて三条ヒイロの危険性を確認できました。

 

 楽しそうに笑う少女と別れて、三条ヒイロが虚空に喚きながら帰路につきます。

 

 それを見送りながら、私はほくそ笑みました。今日だけでも大収穫です。どうやらアビドスでは猫を被っているようです。

 

 最後の少女もゲヘナ出身のようですし、おそらく、奴はアビドスではなくゲヘナで少女を誑かしているのでしょう。

 

 なんという狡猾さ。

 

 自身のホームではなく、遠方でつまみ食いを繰り返すことで、リスクヘッジを狙っているのでしょう。これには私も震えあがります。

 

 そうして身震いしていると、団長が私の袖を引きます。その顔は暗く、きっと、三条ヒイロが軽薄浮気男だったことが、ショックだったのでしょう。

 

 基本的に能天気で、脳内お花畑の団長をここまで追い込むとは、度し難い男です。とはいえ、無事団長の目は覚めたわけですし、目的を達成した私は意気揚々と帰ることにしました。

 

 ただ、私はあの男の化けの皮を剥がすのに夢中で、油断していました。

 

 どうやら変装していた私たちは狙われていたらしく、不良の恐喝を受けてしまいます。なるべくヘルメット団とばれないように、何時ものアサルトライフルではなくハンドガンを装備してきましたが……正直ハンドガンでは心もとないのも事実。

 

 せめて団長だけでも無事に帰そうと、腰もとに手をやったところで、奴が上空から飛び込んできたのです。

 

 何を勘違いしたのか「姉妹百合をぶっ壊す奴は、俺がぶっ飛ばぁぁす!!」と叫びながら登場すると、目を見開く団長を背に、摩訶不思議な術と舞うような剣術で不良を蹴散らしていきます。

 

 全員逃げ出したのを確認すると、笑顔を浮かべて振り返り、怪我が無いか訊いてきます。緊張して噛み噛みの団長と一言二言交わして、私が唖然としている間に、颯爽と去っていきました。

 

 先ほどまでの様子が嘘のように、小さくなる彼の背中に熱視線を送る団長を見て──私の脳裡を電撃が走ります。

 

 私は全てが奴の手中にあったことを悟ったのです。きっと、三条ヒイロは私たちが尾行していたことに気づいていたに違いありません。

 

 そう、わざわざ鍛錬で半裸を見せつけたのも、女にモテているアピールをしたのも、そして、此処で助けに来たのも。全部、あの男の策略なのです。

 

 団長に雄を見せつけ惹きつけたうえで、周囲の女を匂わせ不安にさせる。次にその揺らぐ心理を突いて、危機から救い出すことで、その心に自身を植え付ける。

 

 頭脳明晰でインテリジェントな私には通用しませんが、恋愛のレも知らないアホな団長ではひとたまりもないでしょう。

 

 俺は隣に立てるぐらい強くなるんだ、と決意の炎を燃やし、呟く団長を見ながら、私は己の敗北を悟りました。

 

 残念ながら、私の団長は既に手遅れになってしまいました。辛抱強く、時間を掛けて真実に気づいてもらうしかありません。

 

 何処から団長が手引きしたのか、今や、三条ヒイロは私たちの拠点に時折様子を見に来るほど入り込んでおり、巧みな人心掌握術で一部の団員には兄貴とまで呼ばれています。

 

 悪夢です。

 

 私が割のいい襲撃依頼を持ってきても「ヒイロに駄目って言われたからな」と却下される始末。それどころか、あの男に騙されている一部の団員に引っ張られ、カプカプヘルメット団全体が奴から紹介された建築現場等の健全なバイトに精を出しています。

 

 果たして、私よりあの性獣を優先するとは、どういう了見でしょうか。団唯一の頭脳にして参謀である私が、あの脳細胞の代わりに精子が頭に詰まっていそうな男に敗北するとは、実に屈辱的です。

 

 奴の毒牙にかかり、カプカプヘルメット団は麻痺していると言っても過言ではありません。

 

 願わくは、これ以上の被害者を増やさないためにも、三条ヒイロという男には十分注意してください。

 

 あの男は甘言と状況を巧みに操り、無垢な女の子を誑かして食い散らかす、キヴォトス史上最悪の淫獣です。

 

 さて、そんな危険な男は、毎回人数分の焼肉弁当を持って来ては、弁当を口実に「お前も食うか?」と私にも粉を掛けてきます。

 

 今までの三条ヒイロの行動原理と狡猾さを踏まえ、聡明な皆さんならお気づきと思います。

 

 そうです。奴の本命は恐らく私です。

 

 尾行の際に素顔を晒していたのが仇になりました。

 

 私が尾行していたことはばれています。であれば、私と団長の身長差から容易にあの十人中十人が振り返る美少女が私であることは、海綿体の詰まった脳味噌でも容易に辿りつくでしょう。

 

 なぜ、団長のようなちんちくりんに手を出したのか謎でしたが、それも私が本命であると分かれば奴の計画の内であることは明らかです。

 

 ただ、優れた私は既に奴の目的も計画も把握済みです。そう簡単には靡きません。

 

 恐らく、あの性欲魔人は、底なしの性欲と執着心でもって、私を手に入れようとあの手この手を使ってくるでしょう。

 

 その下卑た策略すら利用し、逆に奴の本性を白日の下に曝して見せるため、私は日々計画を練っております。

 

 次の手紙では、三条ヒイロを懲らしめることが出来た旨、報告が出来ること期待しておいてください。

 

 また、可能であれば、三条ヒイロの危険性について、そちらの方でも拡散のほど宜しくお願い致します。

 

 

敬具 

 

 

 

 

 




 最近忙しいうえに構想も固まっていないので、次はその時の調子に依存しますがご容赦ください。
 なお、三条燈色は本家でも二週間失踪した挙句、「普通に『帰ってきたよ~』で良いんじゃないの?」と宣う、客観視オプションなしで産み落とされた、ファーストパーソン・ラブハンティング野郎なので、復活してもたぶんアビドスには帰りません(確信)
 戻っても確定で百合に挟まるだけなので、百合の守護者の危機管理としては正しいかもしれませんが。

先生の性別

  • うへぇ~ヒイロが先生と生徒に挟まってる…
  • 百合ハーレムに決まってるじゃんね☆
  • ん、先生♀で燈色の脳を破壊する
  • エッチなのは駄目!死刑!
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