黒いスーツの転生者   作:実力と発想が見合わない人

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呪いに底は無く、悪夢は巡る。
しかし、少しは救いがあっても良いんじゃないか?


ようこそ、先生。

◇数十分前

 

 

 

ドォン!ドォン!

 

ドドドドドドッ!

 

 

 

『ふむ・・・やはり素早いな。』

 

「・・・・くっ!」

 

 

市街地を高速で移動する二つの影。

爆発と銃声が鳴り響き、それすらも置き去りにしていく程の速さである。

 

二つの影の内の一つは狐坂ワカモ。七囚人の一人であり、厄災の狐と呼ばれ恐れられている。

 

もう一つは四騎ヨハネ。連邦生徒会の情報室長で、連邦生徒会で唯一戦闘に特化した人物だ。

 

ヨハネは右手に小型の斧を持ち、左手にショットガンを持つスタイル。

ワカモは左手に愛銃を、右手には外した銃剣を持っている。器用に左手でボルトを操作し片手での射撃を行っている。

 

接近すればお互いがナイフや斧を使い、離れれば射撃で牽制しまた接近戦へ。

ヨハネはショットガンを使う都合、離れると射程負けするため積極的に接近するしかない。

それを見越してか、ワカモは手持ちの爆弾や手榴弾を駆使して距離を取る戦い方をいていた。

 

しかし、それを許すほどヨハネも優しくは無い。

ワカモが離れる以上の速度で距離を詰め、斧を振り回す。

 

 

「・・・そんなに積極的に距離を詰めては、女性に嫌われますよ?」

 

『町を破壊するような人はこっちから願い下げだ。』

 

斧による遠心力が乗った重たい一撃。今は回避できているが、もし当たればワカモもただでは済まない。

さらにヨハネは本来大ぶりなはずの斧をナイフの様に素早く振り回している。

 

 

「相変わらずでたらめな身体能力ですね!」

 

『あんたらとそう変わらんだろ?』

 

 

迫りくる斧を銃剣で受け止める。鍔迫り合いの様になり、お互いの動きが止まる。

ワカモはライフルを突き付けて引き金を引こうとするが、ヨハネがショットガンでライフルを押さえつける。力は拮抗しているように見えるがわずかにワカモが負けているのか、徐々に押されていく。

不利を察知したワカモはバックステップで飛び退き、ライフルを素早く3連射する。

少ない動きでそれらを回避したヨハネはまたもや距離を詰めようとするが、ワカモの投げた手榴弾の爆発に阻まれる。

 

 

「今日はここまでに・・・なっ!?」

 

 

撤退を開始しようとするワカモに、爆炎を突っ切ってヨハネが接近する。

その手にはショットガンが握られており、射撃を繰り返しながら接近してくる。

ショットガンの弾薬も一発ごとに違うのか、スラッグ弾や焼夷弾が混じっている。

 

 

 

「・・・先ほどの斧は――」

 

『よそ見してる場合か?』

 

「ッ!?」

 

 

ヨハネの無くなった斧を気にして隙が出来たワカモに、急接近してショットガンを叩きつける。

ストックで殴打し、続けて射撃。足に、腕に、腹部に、頭部に、体の各所に撃ちまくる。

しかし、叩きつけられるような衝撃の中でもワカモは意識を失わず、反撃を開始した。

 

愛銃をヨハネに叩きつけ、横っ腹にめり込ませる。そして銃剣を振り下ろし―――

 

 

『・・・おっと。』

 

 

 

 

 

 

ヨハネの右腕を切断した。

 

キヴォトスの住民ならではの身体能力で振り下ろされた銃剣は、キヴォトスの外の人間と同じで脆弱な耐久力のヨハネの腕を腕を切るには十分な威力だ。

肩口からバッサリと切られ、大量の血を流すヨハネ。しかし、その表情に変化は無く。苦痛の一つも、悲鳴すらも上げなかった。ただ、『ああそうか。』と言った様子だった。

その異常な光景にさすがのワカモも恐怖を感じ、動きを止めてしまった。

 

 

「・・・なんd――――」

 

 

ドスッ‼

 

 

 

 

 

 

「がっ!・・・・あ”あ”あ”あ”あ”っ‼

 

 

動きを止めたワカモは、突如落ちてきた斧に左腕を切断される。

それは先ほどまでヨハネが持っていた斧である。

肘から先がバッサリと切られ、持っていた銃と共に足元に転がる。

 

 

「な、くっ!・・・・あ”ぁ”!」

 

 

ヨハネはその隙を逃さずにワカモの足を撃つ。

足を撃たれた痛みと腕を失ったことによってバランスを失い、ワカモは転倒する。

左手を押さえ、仰向けに転がるワカモに、ヨハネは近づく。

ショットガンを背負い、左手に先ほどの斧を持っている。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・ふうぅぅぅぅ!」

 

 

痛みを我慢するように深呼吸を繰り返す。

 

 

『どうしたんだ?そんなに痛そうにして。』

 

 

ヨハネはさも不思議そうに聞くが、怪我をすれば・・・それも欠損をすれば痛いのは当然だ。

 

 

「な・・・なぜ平気なのですか?」

 

『何がだ?』

 

「なぜあなたは片腕を失っても平気なのでしょうか?」

 

 

ワカモは痛みを堪えながら質問する。ヨハネは少しの間をおいて答えた。

 

 

『なぜって・・・・慣れ、かな?』

 

「なっ!?」

 

 

慣れ。

確かにワカモも銃弾の痛みはある程度慣れる事はある。

何度も何度も撃ち撃たれを繰り返せば当然だ。

しかし、これは異常だ。大けが・・・それも欠損レベルはまず治療が不可能だ。慣れる慣れない以前に一度しかないはずだ。それを慣れると言う事は――――

 

 

「あなた・・・本当に人間ですか?」

 

 

人外と言っても過言ではないだろう。

しかし、ヨハネは心外と言った様子で答えた。

 

 

『失礼な、これでもまっとう・・・ではないが人間だよ。定義にもよるが。』

 

 

未だ流れる血を気にもせずにいる。そんな奴が人間と言っても信じられない。

ワカモは恐怖心からか、距離を取ろうと後ずさるが、腰が抜けてうまく移動できない。

 

 

『もう終わりにするか・・・後処理が大変だが――――”ヨハネ!”――――・・・時間を掛けすぎたか。』

 

 

ヨハネが斧を振り上げた時、こちらに向けて駆け寄ってくる先生が見えた。

後ろからは他の4人も走ってきている。

ヨハネはめんどくさそうな表情で斧を降ろした。

 

 

『先生。ご無事でしたか。』

 

 

”うん・・・って、そうじゃなくて!早く治療しないと!”

 

「情報室長!こちらに!」

 

 

先生の後ろから駆け寄ってきたチナツは真っ先に鎮痛剤を打ち込んだ。

鋭い痛みと共にじんわりと体に何かが流し込まれる感覚がする。

 

 

「止血をします。動かないでくださいね。」

 

 

チナツはカバンから包帯や医療道具を取り出すが、ヨハネによって止められる。

 

 

『俺はいい。こっちの奴を治療してやってくれ。』

 

「・・・え?」

 

 

ヨハネがさした先には、息も絶え絶えと言った状態のワカモがいた。

しかし、そんな状態でも彼女はこちらを睨んで・・・いや、あの様子は―――

 

 

”君!私はシャーレの先生。手当てするから暴れないでね!”

 

「・・・し・・・」

 

”?”

 

失礼しましたーーーーー!・・・・・あら?」

 

 

原作通りだった。

ワカモはその場から去ろうとしたが、止血もせずに血を流し続けた為か、走り出すと同時に倒れてしまった。

 

 

『・・・・行ってやってくれ。』

 

「え?・・・ですが―――」

 

『暴れ出したら俺が止めるから。』

 

「いえ・・・分かりました。」

 

 

渋々と言った様子でチナツは簡単な止血だけすると、ワカモの方へと向かった。

その後ろからスズミとハスミが着いて行き、ワカモを監視する。

ユウカは携帯でどこかに連絡を取っている。聞こえる限りでは救急だろうか?

先生はワカモを起こしている。

 

 

『っと・・・あったあった。』

 

 

ヨハネは周囲を見渡し、自身の落ちている腕を探す。

幸いにも離れた場所には無かった為、移動して拾う。

拾った腕を傷口に合わせ、懐から取り出した青いネクタイ(終幕の淡蒼)を巻き付ける。

 

終焉の淡蒼・・・ヨハネの所有するオーパーツの中でも重要な物の一つ。どのような怪我であっても治す事ができ、欠損すらも克服する事が出来る。本来はネクタイのように装着するが、巻き付ける事でも効果は出てくる。

 

傷が塞がり、腕がつながる。少しずつだが腕を動かすことができるようになった。

しばらくすれば完全に元通りになるだろう。

後はワカモだが・・・ぶっちゃけ戻さなくてもいいとも思っている。そうすれば暴れることも無いだろうし、仮に暴れても鎮圧が楽だ。しかし、先生がなんというか分からない。元に戻ったヨハネの腕を見れば戻してあげてほしいと言うだろう。

 

念のためにワカモの腕も拾っておく。

 

 

「ヨハネさん。こちらに!」

 

 

チナツに呼ばれた。

どうやら処置は終わったようで、今度はヨハネの方をやろうと思っていたようだ。

しかし、すでに腕は繋がっており、傷口一つすら見えない。

 

 

「お待たせしまし・・・・え?」

 

”ヨハネ・・・・腕が・・・え?”

 

 

やはりそういう反応になるか。まぁ、仕方ないだろう。

ヨハネは先生たちを置いてワカモに近づく。そして、持っていたワカモの腕を終焉の淡蒼で巻き付ける。

後で色々言われるよりも、さっさと治してやろうと考えたようだ。

しばらくすると、ワカモの腕はきれいに繋がっており、袖が無い以外はなにも無かったように元通りになった。

 

 

『これに懲りたら、もう俺の部隊を襲うのはやめてくれ。次は容赦しないぞ。』

 

 

言い聞かせるように警告し、その場を後にする。後ろが騒がしいが無視だ、無視。

 

ヨハネはシャーレの部室に向かって歩いていく。

しかし、正面入り口は固く閉ざされておりシャーレには誰も入れない。

大人しく行政官が来るのを待った方が良いだろう。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

そこからは原作と同じように進んでいった。

行政官と先生がシャーレの部室に入り、行政権が連邦生徒会に渡った。

そして先生たちがいない間に他の4人から質問攻めに合ったが、適当に流したり無視したりした。

 

そうしているうちに先生と行政官が部室から出てきた。

その手には先ほどまでは無かった白いタブレット端末が収められている。おそらくあれがシッテムの箱だろう。

 

 

『行政官。中はどうだった?』

 

「ダメでした。それらしい場所は粗方探しましたが、連邦生徒会長の姿はどこにも・・・」

 

『そうか・・・あとで俺も探してもいいか?』

 

「はい、私では見落としがあるかもしれないので。あとで権限を更新しておきます。」

 

 

セキュリティーの関係上で、部室に入れたのは先生と行政官だけだった。なので、以前手に入れた情報を行政官に教えてタワーの中を調べてもらったが、連邦生徒会長は見つからなかったようだ。まあ、俺は知ってるんだがな。

 

 

『まぁ、それはさておき・・・』

 

 

先生に向き直る。

 

 

 

 

 

『ようこそ、先生。我々はあなたを歓迎しよう!何か困ったことがあれば是非とも情報室を頼ってほしい。』

 

 

 




今回はここまでです。


だいぶ遅くなっちゃった・・・ごめんね。
まぁ、根詰まり起こしてた場所は過ぎたし、アビドス編はスムーズに進むと思う。


それではまた次回・・・
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