◇ミレニアム・エンジニア部・部室
廃墟での一件から翌日。
その日の仕事が片付いたヨハネは、先生からの連絡で再びミレニアムへとやってきていた。
何でも、武器の事で相談があるんだとか。
『・・・んで、なんでまた俺を呼んだんだ?』
そこら中に機械や道具などが立ち並ぶエンジニア部の部室の中、連邦生徒会から呼び出されたヨハネは面倒くさそうに顔を顰めている。
”えっと・・・実はアリスが―――”
「こんにちは!」
事情を話そうとした先生の後ろから元気のよい挨拶と共に小さな少女が姿を現す。
昨日みた無機質で機械的な様子は消え、より自然で感情の豊かな顔をしている。
やっぱりあの
まぁいい。それよりも今回呼ばれた理由だが・・・大体の予想が付く。
「あなたが剣を売っている武器商人でしょうか?」
『違うが?』
「えっ⁉」
どうせ剣が欲しいと言ったアリスに先生が口を滑らせたのだろう。
キヴォトスで剣をぶん回すイカレ野郎なんて俺くらいだからな。
「で、ですが先生が剣を持っていると・・・」
『持ってはいる。だが人に渡せるモノは無い。』
「・・・・うぅ・・・」
半分涙目で落ち込むアリス。
仕方がないだろう。
『本当に必要ならそこのマイスターに作ってもらえばいいだろ。』
「無茶を言うなよ。情報室長くん。」
先ほどまで話を聞いていたウタハが困り顔でしゃべり始める。
「確かに私たちは技術屋であり発明家だ。でもそれは機械のハードウェア専門であって、実用できる刀剣の類は専門外だ。」
「そんな・・・」
「一から作れる知識が無いんだ。すまない。」
『そもそも、銃の蔓延るキヴォトスで剣を使うのは無理難題過ぎないか?』
”ヨハネが言っても説得力ないよ?”
現実を突き付けられ、今にも泣きそうな表情のアリス。
いや、仕方ないだろう?月光の聖剣も黄金律の大剣も気軽に渡せるもんじゃないし。
何度も言うがキヴォトスで剣と言うのが・・・そうだわ、人の事言えねぇわ。
「・・・・うぅ・・・」
ダメだダメだ。心を鬼にしろ。
与えても扱えるわけがない。広い場所でも狭い場所でも荷物になるだけだ。
これも大事な経験だ。うまくいかない世の中の事を知る良い機会だ。
「・・・くすん・・・」
仕方がない。
若者への・・・未来の勇者への贈り物としようか。
『はぁ・・・わかった。そこまで欲しいと言うのなら俺が用意してやろう。』
「・・・・え?」
”お?”
『だが条件が3つある。1つ目は俺が許可を出すまでは一人で使わない事。2つ目はちゃんと銃も手に入れる事。3つ目は俺から剣を扱う指導を受ける事。これを守れるのなら―――「守ります!!」―――即答かよ。』
先ほどとは打って変わって元気な返事をするアリス。
まさかさっきのは演技・・・いや、それが出来るほど成長はしてねぇだろ。
周りのみんなも満足げな表情だ。
「なんだ。ちゃんと渡せる剣があるじゃないか?」
喜ぶアリスを見ながらニヤニヤとした表情でウタハが俺に近寄ってくる。
『何言ってんだ?そんなのねぇよ。』
「え?」
『お前らと同じだ。無ければ作れ。そうだろう?』
「まさか鍛冶の技術を持っているのかい?」
『もちろんさ~』
驚きを隠せないウタハを置いて、俺はアリスに話しかける。
『剣は俺が用意する。指導も俺の時間が空いている時ならいくらでもやってやる。』
「はい!」
『それはそれとして、銃の用意はしておけよ?』
「わかりました!」
”よかったね、アリス。”
〈名も無き神々の王女〉を知る機会が出来ると言えばこちらにもメリットはある。
それにこれからのストーリー上、面白い事がたくさんありそうだ。それに関与できるのなら最高の収穫と言えよう。
まぁ・・・なるようにはなるか。
『そろそろ俺は戻るが、剣と指導についてはまた後で連絡する。』
”うん、今回もありがとね。”
『・・・先生は少し俺に頼り過ぎだとは思いますが。』
”・・・うぐっ!”
『・・・まぁいいでしょう。それでは。』
さっさと部屋を後にして連邦生徒会へと向かい始めた。
『さてと・・・ボスに報告だな。』
今回はここまでです
~見習いの勇者剣~
神秘を宿した勇者の持つ小さな大剣。
水底にある鉱石を加工した良質な武器。
自身と周囲の味方のFPを持続的に回復させる。
勇者と魔王は表裏一体である。
だからこそ、その意思が重要なのだ。
それではまた次回・・・
これからの方針
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メイン優先
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閑話あり
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