あなたも曇らせ最高と叫びなさい!
◇シャーレ・執務室
”あれ?今日の仕事は・・・もう終わったのか。”
とある日のシャーレ。そこには、各地からやってくる問題や連邦生徒会の書類を片付けている先生がいた。
しかし、朝からずっとやっていた為か、山ほどあった書類は無くなっており、しばらくは追加の仕事も来そうにない。つまり、暇になってしまったのだ。
”生徒たちは・・・どうかな。”
先生はモモトークを開いたが、珍しく生徒たちからのお誘いや相談が無い。
ゲーム開発部も風紀委員もティーパーティーも・・・メッセージは一つも無い。
”平和なのは良い事なんだけどね・・・”
困った生徒がいないのはいい事である。しかし、先生としては少し寂しいと感じてしまう。
そんなことを考えている最中、扉が叩かれる。
”はーい、どうぞー!”
「失礼します・・・」
入ってきたのは、現・情報室長を務めるツキミだった。
元副室長であり、ヨハネがいなくなった後の空いた情報室長の席に着いた少女だ。
”ツキミ・・・大丈夫?”
「はい・・・私も、情報室のみんなもだいぶ立ち直ってきたので・・・」
作戦の後、話を聞かされた情報室は荒れに荒れた。
映像記録で彼の死を認識した彼女らは、先生や
しかし、それを止めたのはツキミだった。
冷静さを欠いた彼女らをなだめ、代表して話を聞きに来たのだった
全てを聞いた彼女は何も言わずに去っていったため、先生はかなり心配していたのだ。
”今日はどうしたの?”
「これを・・・見てほしいのです。」
ツキミから渡された複数の写真。
一見、普通の市街地の風景だが、そこには信じられない物が写っていた。
「ごく最近・・・調査隊や非番の者が偶然取った写真です。」
”うそ・・・”
そこには死んだはずのヨハネの姿が写っていたのだ。
見切れていたり、ぼやけていたり、どれも判別が難しい物だがそれでも分かる。何せ、男子生徒はヨハネ以外に聞いたことが無いし、彼の特徴である赤い手袋や青いネクタイが身に着けられているからだ。
”これは・・・ヨハネなの?”
「我々にも分かりません・・・ですが、少なくとも接触はするべきかと。本人でなくても。」
真剣なまなざしでこちらを見てくるツキミ。
先生はいてもたってもいられなくなった。
”何か・・・何か私にできる事はない!?”
「私は先生に協力してもらおうと思ってここに来ました。各学園に協力を要請してください。今は・・・少しでも新しい情報が欲しいのです。」
先生は急いで各学園の生徒会に連絡を取った。
先生の人望とヨハネの名前が出た為か、どの学園もすんなりと協力を約束してくれた。
まるであの作戦の時のように・・・
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◇???・前
”ここか・・・”
とある建物の前。
先生は指定された場所に向けて進んでいった。
発端は黒服からの連絡だった。
見せたいものがあるから来いとの事。だが、ヨハネの死体を持って行ったのは黒服だ、確実に今回の件に関与しているだろう。
指定された場所の周辺には、多数の生徒を待機している。
先生は大丈夫と言っていたが、それでも心配した生徒たちがなんとか説得し、部隊を派遣したのだ。
建物の中はいたってシンプルだった。今見えるのは、先生のいる長い廊下とその先にある扉のみ。
襲われることは無いと思うが、それでも気を抜く気はない。
廊下の先の部屋には、呼び出した張本人・黒服がいた。
「お待ちしてましたよ、先生。」
”お前・・・「ヨハネについてでしょう?」・・・なら話が早い。彼はどこ?”
「すぐに来ますよ。まずはおかけになってください。」
先生はこの場で黒服を叩きのめしてもよかったが、それでヨハネが出てこなくなるのは避けたかったため、黒服のいう通りに椅子に座った。
”それで?話って何?”
「まぁ、まずはお茶でもどうですか?」
”は?お茶何てどこにも―――『お待たせしました。』―――っ!?”
ふざけたことを言う黒服に、先生は本気でぶちのめそうと考えた。しかし、その直後に聞こえた声。そして黒服の背後の扉からやってきた人物に言葉を失った。
『どうぞ、ごゆっくり。』
「ありがとうございます。」
”え?・・・ヨ・・ハネ・・・?”
あの日、自身の手で撃ち殺したはずのヨハネだったのだ。
真っ黒なスーツに身を包み、淹れてきたであろう紅茶を先生と黒服の前に置いている。
カップを置いたヨハネ?の手を、先生は思わず掴んでしまった。
『・・・どうかされましたか?』
”ヨハネ・・・生きていたの?”
「クックックッ!」
”何がおかしい,黒服。”
『あの・・・人違いではないでしょうか?』
”・・・・え?”
目の前のヨハネ?は不思議そうな表情でこちらを見てくる。
対して、黒服は心底嬉しそうに笑っており、先生は少し苛立った。
”黒服、これはどういう事?”
「どう・・・とは?」
“とぼけるな。お前がヨハネの記憶を消したのか?”
「クックックッ・・・」
先ほどまで笑っていた黒服は急に黙り、その雰囲気を一変させた。
「先生、私は彼には何もしていませんよ。」
”は?・・・ならなんで――”
「では死んだ人間に、記憶があるとお思いで?」
黒服の表情が変わる。
今まで上に上がっていた口角?が下に向き。頭から上がるもやは、より一層大きくなる。
声から抑揚が無くなり、低く相手を追い詰める様な口調になる。
「あなたは自身が被害者のようにふるまっていますが・・・一番の被害者は私であることを忘れないでください。それに、今回お呼びしたのは彼を諦めてもらう為ですので。」
”諦める?”
「えぇ、そうです。彼を捜索することも、私たちを詮索するのもやめていただきたい。」
”断る。”
「いえ、今回はそうもいきません。そもそも、彼は私の部下です。彼が望み、彼が決めたこと・・・あなたが口出しすることではありません。」
”ホシノの時と同じように騙しているんだろう。”
「・・・そうお考えになるのも分かります。ですが、彼は本当に望んで私の部下になったのです。まぁ、前の彼が消えた以上、証明できませんが。」
”尚更怪しくなってきたよ。”
「どうでもいいことですが、私が本気で隠蔽工作をすれば、あなた達は痕跡すらも掴む事は出来ませんよ。残念ですがね・・・」
”・・・・・・”
「それに、彼を殺したのは貴方でしょう?」
”・・・ッ!”
「あなたは私の部下を殺し、奪った側です。何を偉そうにそのようなことが言えるのでしょうか?
あなたが使った〈大人のカード〉・・・そこから発せられる膨大な神秘が彼に定着した〈呪い〉を弾き飛ばし、その力を打ち消した。・・・まぁ、だからこそ彼は死んだのですが。」
”なら・・・なんでヨハネは生きて・・・”
「それは私にも分かりません。安置していた死体がいきなり起き上がった時は私も驚きました。おそらくはわずかに残った〈呪い〉が作用したのでしょう。
ですが、記憶までは戻らなかった。そういうことです。」
先生は掴んでいた腕を離し、絶望した表情でヨハネ?を見る。
相変わらずきょとんとした表情でこちらをみる彼は、黒服に一礼してから扉へと向かい、部屋を出て行った。
「先生、もうお分かりでしょう?彼はもはやあなた達の知る四騎ヨハネではありません。」
黒服は淡々と、けれどどこか寂しそうな様子で告げる。
もう自分の知る彼はいないと先生に・・・自分に言い聞かせるように。
「・・・さて、言いたいことは言いましたし。私らはここで失礼しますよ。」
黒服は席を立ち、ヨハネの入った扉の方へと向かっていった。
そして振り返り、先生に告げる。
「先生、今更ですがあなたには感謝してます。」
「夢か現実か分からない日々に絶望していた彼を、彼の望む形で終わらせてくれたことに。」
”・・・・ぇ?”
「それでは、さようならです。」
扉の向こうへと消える黒服。
しかし、今の先生に追いかける理由も、気力もない。
追いかけたとて、連れ戻せない。
彼のいた日常は帰ってこないのだ。
追憶が、戻るはずも無いのだけれど
今回はここまでです。
本編が進むうちに各学園の関係者とこのIF世界のヨハネ君が出会ったときにお話を書いていきますわ。
あと、もしかしたら書き直しを行う可能性がありますのでご了承を・・・
それではまた次回・・・
狩人よ、君はよくやった。長い夜はもう終わる。さぁ、私の介錯に身を任せたまえ。
君は死に、そして夢を忘れ、朝に目覚める。解放されるのだ。この忌々しい、狩人の夢から・・・
さらばだ、優秀な狩人よ。・・・血を恐れたまえよ。
これからの方針
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メイン優先
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閑話あり
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曇らせを書きなさい