補足・仮面を着けてる時の名前はウォーデンで、仮面を外している時の名前はヨハネで使い分けしてます。仮面には認識阻害の効果があるため余程の事が無い限り、他の人はヨハネ=ウォーデンと分かりません。
◇アリウス自治区
『支援要請?』
「はい、敵勢力が相当厄介な場所に立てこもっています。その者らを排除してほしいのです。」
『その間、ロイヤルブラッドはどうすんだ?』
「こちらで保管します。ちょうど色々と〈教育〉をする必要がありましたしちょうどいいです。」
『そうか・・・で、場所は?』
「この者に着いて行って下さい。」
『またあんたか・・・よろしく頼むぞ。』
「ああ、こちらこそ。」
秤アツコの見張り役を任されて数週間。ついに援軍要請が来たようだ。
反乱分子か何かは知らないが、とにかく敵を倒せばいいらしい。
『それじゃあ、さっさと終わらせますか・・・』
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◇アリウス自治区
「この先は狙撃されるから近づくな。」
『わかった・・・で、あれが敵の立てこもっている要塞か?』
「そうだ。まったく、面倒な場所を取られてしまったな。」
アリウスの拠点から少し離れた場所。そこには防衛用拠点としてなのか割と立派な要塞が存在していた。正面の守りは固く、弱点らしい弱点も無い。しかし、現場の戦力でもすべてをフルで使えば取り返すこと自体は可能だ・・・が、大きな損害が出るらしい。そこで少しでも被害を減らすために俺が派遣されたらしい。
『買いかぶり過ぎだろ・・・』
「ははは・・・期待しているぞ。」
『はぁ・・・・ま、とりあえずやってみますか。』
初めての戦闘が要塞攻略とか言うハードモード。用意されている道具や武器はすべて把握している。どれだけ役に立つかは知らないが、やれることをやるしかないだろう。
『そういえば、狙撃がくるって言ってたよな。場所分かるか?』
「ああ、この地図に載っている。」
『ふむ・・・わかった。ちょっと潜入してくる。』
「・・・・・・は?」
『それじゃ。』
「おい!・・・・行ってしまった。」
俺はアリウス生徒(案内役)を置いてさっさと敵地へと向かった。
そして目標の要塞の近辺までやってくると、手袋から一丁のハンドガンを取り出す。
『【暗夜の重鎮】』
サプレッサーのついた少し大型のハンドガン、色はなんの飾り気のないべた塗りの黒色。
俺はその異様なハンドガンを持って狙撃注意エリアを要塞に向けて歩き出した。
匍匐前進でもなく走り抜けるでもない、散歩をするようにただ歩いているだけだ。
普通に考えたら敵狙撃手の視界の中で的になるような行為である。もちろん彼が戦場を舐めているわけでも、無策で挑んでいるわけでもない。
秘密は彼の持っているハンドガンにある。
『本当にバレてないみたいだな。』
武器系のオーパーツ、【暗夜の重鎮】
所有者の気配や存在感を消し、周囲から認識されなくなる効果を持つ。
黒服からもらった武器の中でも特にお気に入りの一つである。これさえ持っていればたとえ目の前にいても気づかれる事は無いだろう。
『なんというか、あっけないな。』
姿の見えない俺はなんの苦労もなく要塞の下までやってくることができた。
しかし、入り口は大きな門で閉ざされており、姿を消すだけでは通れそうにない。
俺は見張りが居ないことを確認すると、両手に鍵爪を装備して壁を登り始めた。
『周辺は・・・クリア。』
特に敵に見つかることもなく要塞内部へと入る事が出来た。
周囲には見張りはおらず、おそらく上の階にスナイパーがいるだけだろう。
俺はもう一度拳銃を取り出し、進み始めた。
上の階には2人のスナイパーが外を見ていた。どうやらこの二人が見張り兼狙撃役らしい。
俺は特に気にすることもなく近づき、その頭に銃弾を撃ち込んだ。
パスン、パスン、と乾いた銃声が二つ鳴り、二人のスナイパーの意識を奪った。
これで、友軍が狙撃される心配は無くなった。
『あとは下の方かな?』
そのまま来た道を戻り、さらに広間の方へと向かう。そこには多くの敵がいた。
油断しているのか休憩しているのか、あまり装備を付けていないものが多い。いや、単純に装備が無いのかもしれない。俺は拳銃を手袋にしまい、別の武器を取り出した。
『これ使ってみるか。』
それは二振りのダガーナイフだった。
ため息が出るほど美しく繊細なナイフは、まったくと言ってもいい程に重さを感じさせない軽さだ。しかし、このナイフは非常に脆く、普通のナイフと同じ扱いをすればすぐに壊れてしまうだろう。しかし、鋭く素早く扱う事の出来る為、熟練した者にとっては自身の間合いに入った相手を屠るのには最適な得物となる。
仕掛けるタイミングは・・・一人がこちらにやってきているのでそいつを仕留めてからにしよう。
のこのことやってくる敵。それが間合いに入った瞬間に俺は仕掛けた。
「・・・・ッ!なんだきさm」
『フッ!』
まずは一人。体中を切り裂き、沈黙させる。
何人かがこちらに気が付いたのか、慌しく動き始める。
俺は一気に敵のど真ん中に突撃した。
「何だ!」
「敵襲・・・敵襲ー!」
「う、撃てー!」
近くにいた二人を切り払い、それを盾にして銃弾の雨を防ぐ。
隙を見ては敵に近づき、順調に数を減らしていく。おそらく今ので数十人は倒したはずだ。
しかし、敵もただやられるだけの馬鹿ではないらしい。
「おい!無事なものはこっちに集まれ!奴から距離を離すんだ!」
『ほう?』
敵の一人が指示を出している。奴が指揮官なのかもしれないが・・・面倒だから全員倒すに限るな。しかし、奴も考えたものだ、通路に俺を誘い込んで攻撃の方向を限らせる算段らしい。
もちろん、それは意味をなさないがな。
『舐めてもらっちゃ困るなぁ?』
攻撃が来る方向が限られたのは相手だけではないのだ。
むしろ俺は正面からの銃弾だけを対処すればいいだけになったのだからな。
『この程度で勝てると思ってるのか?』
「これで死ねぇ!」
そして鳴り響く数多の銃声。
敵を貫かんと放たれた銃弾は――――
『これでは死ぬのはお前らだぞ?』
二振りのナイフに弾かれ、俺に当たる事は無かった。
両手に持ったナイフを絶え間なく振り回し、自身に当たる軌道の弾だけを正確に切り飛ばす。
この繊細で脆いナイフは、
力に任せず、力の方向を見極めて正確かつ精密に切る。
【呪い】のおかげで動体視力や身体能力が上昇しており、なおかつ自然と出てくる戦闘技術を使えば何十人からの銃弾であっても捌くことは不可能では無い。おまけに飛んでくる方向も一つだ。
「な、なんだあいつは!?」
「ば、化け物だ!」
「おい!逃げるな!」
「無理だ!俺たちみんな殺されるんだ!」
『殺すだなんて物騒な。少しの間眠ってもらうだけだよ。』
この要塞さえ奪取できれば殺す必要は無い。別に殺せと指示があった訳でもないしな。
それに、元は現代人。血なんて見たくはない。*1
それに頑丈だからそう簡単に死なないだろうに。
俺は銃弾を弾きながらある程度近づくと、隙を見て一気に接近し一瞬で敵の数人を倒し、指揮官らしき奴も気絶させた。
そして、そこからは一方的な戦いになった。
司令塔を失った雑兵どもは逃げるかばらばらに反撃するくらいしかしてこなかったからだ。
そうして俺の初戦闘は特に被害もなく完全な勝利で幕を閉じたのだった。
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◇アリウス自治区・拠点
『てなわけだ、簡単だったぞ。』
「そうですか・・・いえ、それくらいはしてもらわなければ。」
要塞を制圧した後は適当に敵を縛り上げて、後続のアリウス生徒に丸投げにした。
ちなみに奴らを尋問したところ、あの要塞に溜め込まれてた物資を奪うために制圧したらしい。
俺は今、ベアトリーチェに報告したところだった。
『それじゃ、俺は戻りますわ。』
「えぇ、構いませんよ・・・ああ、そうでした。」
『ん?』
「数日後に敵地への攻撃に参加してもらいます。あなたの力はよくわかりましたので。」
『わかった・・・それで、ロイヤルブラッドは?』
「奥の部屋で待機しています。またしばらくは任せますよ。」
『へいへい。』
にしても不思議だ。奴の言う〈教育〉をする人員がいるなら、別に俺なんていなくてもいいだろうに・・・謎の違和感が増えた様な気がするが・・・まぁいいだろう。
そして奥の部屋へと入った俺が最初に目にしたのは。
「あ、おかえり。」
『・・・どうしたんだ?それ。』
体中が無数の傷や痣まみれとなったアツコの姿だった。
今回はここまでです。
ベアおばの教育ってほぼ虐待だと思ってる人多いよね。実際そうだけど。
以下おまけ
前回と今回の間のお話です。
思い付き&下準備くらいの物です。
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◇アリウス自治区・夜
『・・・・ん?何だ?。』
ロイヤルブラッドの見張りを始めてから数日目の夜、俺は夜でも見張りを続けていた。
まあ、見張りと言いながら実際は寝られないだけなのだが。
そうして暇を持て余した俺はひたすら見張りをしながら、建物で見つけた本を読んでいた。
すると部屋の扉が少しだけ開く音が聞こえた。
「・・・起きてる?」
『・・・どうしたんだ?こんな時間に。』
「・・・その、寝られなくて。」
環境の変化か敵地での不安か、子供が調子を狂わせるには十分すぎる状態だ。寝られなくなっても不思議ではないはずだ。何とかしてやりたいとは思うが・・・そう言えばあれがあったな。
『ちょっと待っとけ。』
俺は手袋から小型のバーナーコンロを取り出し、お湯を沸かした。
そしてコップに暖かいココアを注ぎ、アツコに渡した。
アリウス自治区の夜はだいぶ冷える。マジでクッソ寒い。
『ほら、飲みな。落ち着くぞ。』
「・・・あ、ありがとう。」
『これも着とけ、寒いだろ?』
「・・・うん。」
持ってきていた防寒具を着せて、一緒にココアを飲む。
暖かく甘い液体が体を心から温めてくれる。
正直、今まであの薄着の子をほったらかしにしてた自分がクソみたいだ。
「・・・あったかい。」
『そりゃよかった。』
それからしばらく後にアツコはウトウトし始めた。
俺は自分の部屋にあるまったく使わない簡易ベッドに彼女を寝かせた。
『しっかりと寝な・・・いずれやってくる理不尽な未来に備えてな。』
俺は頭を一撫ですると元居た場所に戻り本の続きを読み始めた。
どこからか入ってきた冷たい風が俺の首筋を吹き付けて去っていった。
ちなみにその日からアツコは俺の部屋のベッドで寝始めやがった。使わないから別にいいが。
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どうでもいいけど、作者の好きな言葉は「他人事」です。
【他人事】
自分には関係のない、他人の事。よそさまの事。
それではまた次回・・・