ジェリコの咎人   作:ミヤフジ1945

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前回より文字数少なくなっちゃった。

いやウマ娘基準だと6600文字は十分な量なんだけど……


第6話  虚しい中にも幸福を

 

 

───ある世界線。

───キヴォトスD.U.シラトリ区。連邦生徒会所有の秘密セーフハウス。

───【Operation LastMiracle】作戦前夜。

 

 

 

 

『……居るんでしょ?』

『えへへ……バレてましたか』

『うへ~……槌永含めて、皆の気配は覚えているからね』

『さ、流石ホシノ先輩です……』

『それで、槌永も私に何か用?』

『い、いえ……その……』

『もしかして、社長や美甘と同じだった?』

『え……えへへ』

『…………はぁ』

『うわぁぁぁん! 良いじゃないですか! 私だってご褒美が欲しいんです!』

『わかった……わかったから。耳が痛い』

『ひ、ひどいですぅ……』

『この作戦が成功出来たら、最後に名前で呼んであげる? 皆と同じ、それでいい?』

『はい! 有り難うございます!』

『…………ふふっ』

『どうしたんですか、ホシノ先輩?』

『いや……久しぶりに槌永の泣き声を聞いたなって』

『ウッ……それは……』

『最初は泣いてばかりだったのに……槌永は強くなったね』

『私は……強くなれたでしょうか? 』

『強いよ……私なんかよりもずっと…………ずっとね』

『わかりました。じゃあ、私がホシノ先輩の背中を守りますね!』

『…………このひよっこ』

『うわぁぁぁん! あげて落とされました!』

『はいはい…………じゃあ、明日は頼んだよ』

『はいぃぃ…………絶対に先輩を守ります。()()()()()

『わかったわかった。()()()()

 

 

 

元アリウス分校、アリウススクワッド所属:槌永 ヒヨリ

キヴォトス連邦生徒会、最後の作戦、【Operation LastMiracle】に参加。

アルと同等の狙撃技術、そして20㎜という大口径狙撃銃からパーティー内ではなく離れたビルの屋上から作戦成功のため狙撃支援を担う。

20㎜という大口径砲弾のため、徹甲弾から焼夷弾、果ては破砕榴弾など……多種多様な弾種によりパーティーに脅威となりうる敵を排除するも、最後は敵の自爆ドローンにより狙撃していたビルが倒壊。

本来ならば脱出出来たはずだったがホシノとの約束を守るため、最後にパーティーに向かっていた大型ロボットを破壊。そのため逃げようにも瓦礫に呑まれて脱出出来ず、小鳥遊ホシノを除く……パーティー最後の脱落者となる。

 

───作戦参加者:小鳥遊ホシノ、陸八魔アル、美甘ネル、槌永ヒヨリ、        

───  KIA  :陸八魔アル、美甘ネル、槌永ヒヨリ、        

───  MIA  :小鳥遊ホシノ

───作戦目標のキヴォトス脱出を確認

───【Operation LastMiracle】作戦成功

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第6話

虚しい中にも幸福を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ホ……ぱい…………ホシノ…ぱい……!」

 

 

考える、あの少女のことを。

 

かつての自分と同じ目と雰囲気を宿した、自分と同じ名前の少女のことを。

 

あの日彼女は言った、『よろしく、私』……と。

 

言葉通りなら、彼女は私……小鳥遊ホシノということになる。

 

 

「可能性は…………アイツしかいない……かなぁ……」

 

 

「ホシノ先輩! 話を聞いてましたか!」

 

 

「うひゃ!? ビックリした。なぁに? アヤネちゃん?」

 

 

考え事をしていた私は急に聞こえて来たアヤネちゃんの声にビックリして、思わず変な声を上げてしまった。

 

 

「ずっと呼んでましたよホシノ先輩…………」

 

 

”……大丈夫?”

 

 

どうやら考え事をするあまり周りがおろそかになっていたみたい。

 

アヤネちゃんや先生、他の皆も心配そうに私のことを見ている。

 

 

「あははぁ…………ごめんね? ちょっとおじさん考えごとをしててね…………」

 

 

誤魔化すように、私は笑顔を()()()()()そう答えた。

 

 

「それで、なんの話だっけ?」

 

 

「もう……ちゃんと話は聞いていて下さいよ!」

 

 

ぷんすかと、そう怒りながら告げるアヤネちゃん。他の皆もなんとか誤魔化せたみたい。

 

 

「ん……ブラックマーケットに行く。」

 

 

「そうよ! 今度こそカイザーの悪事を暴いてみせるんだから!」

 

 

シロコちゃんとセリカちゃんの会話から、どうやら皆でブラックマーケットに行くみたい。

 

 

「じゃあちゃちゃっと準備しないとねぇ~」

 

 

シロコちゃんたちに合わせるように私はそう口にして、座っていた椅子から立ち上がる。

 

大丈夫……私はまだ…………演じられている。

 

 

”じゃあ……行こうか”

 

 

先生の言葉に、皆が相槌を打った。

 

私は、そんな皆から視線を外して遠くに見えるアビドス砂漠を見る。

 

アイツ(黒服)なら…………なにか知っているかもしれない。そう確信のようなものをもって…………

 

そんな私を見つめるノノミちゃんの寂しそうな視線に、私はついぞ気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで、これはなんの真似かな?

 

 

「うふふふ…………先生に近づく悪い虫は早めに駆除するに限りますから」

 

 

背中に押し当てられる銃口の冷たい感触を、私は気にする素振りを隠しながら下手人へと顔を向ける。

 

特徴的な狐のお面と頭頂部の狐の耳。黒く長い髪の毛と、和服をモチーフとしたセーラー服。

 

まさか、こんなに早く出会うとは思わなかったよ。

 

 

「七囚人、狐坂 ワカモ」

 

 

「あらあらまぁ……わたくしのことをご存知でしたの?」

 

 

煽るようにそう告げるワカモに、私は厄介なことになったと溜息をつきたくなる。

 

人の少ない飲食店を探そうと、人気の少ない場所を歩いていた私も隙があったが……まさかいきなりこんな状況になるとは思わないだろう。

 

そして、今の状況を見るからに……残念ながら銃口を突き付けている彼女が穏便にことを収めてくれる気がしない。

 

 

「むしろ、知らない方が可笑しいとも思うけれど?」

 

 

「そうですか。まぁ、どちらにしても貴女はここで終わりですが」

 

 

微かに、ワカモが引き金に力を込める気配がした。

 

その瞬間に、私は自身の神秘を解放しながら思いっきり腰を捻った。

 

鳴り響く銃声、火薬の燃える独特の匂いと共に音速で撃ち出される銃弾が、私の脇腹を掠めていく。

 

そのまま、腰を捻った勢いを殺すことなく私は思いっきりワカモの側頭部へと蹴りを放つ。

 

私とワカモの身長差では、蹴り降ろすというより蹴り上げる、といった方が良いかもしれないが……

 

 

「チィ! 随分と、足癖の悪いお方ですわね!」

 

 

私がワカモの銃弾を避けたように、彼女も咄嗟に自身の銃を盾のように構えることで私の蹴りを防いでいた。

 

 

「生憎とこの程度、アビドスじゃ常識なんだよね!」

 

 

タイミングの悪いことに、愛銃のショットガンと盾は丁度黒服に整備を頼んでいて……今の私は防弾ベストに付けられた予備の拳銃と腰に差している銃剣しかない。

 

胸元の拳銃を抜いて、ワカモへと引き金を引く。

 

三発、頭に一発と胸に二発を撃ったが、案の定ワカモ相手では簡単に避けられてしまった。

 

 

「なんで私を狙うのか、教えてくれないかなぁ?」

 

「それとも、こんなおじさんが相手じゃ、加齢臭が気になるお年頃……かな!」

 

 

腰の銃剣を引き抜きながら、私は勢いよくワカモへと突撃する。

 

CQC……というよりも、かつて見たガン=カタの方が近いかもしれない。

 

拳銃で四肢や脇腹などを撃ち、銃剣でワカモの銃を弾き逸らしたり受け流したり。

 

ハッキリいって、今の私の装備じゃワカモ相手には力不足もいい所だ。神秘を纏ったキヴォトスの人間には、拳銃の銃弾程度では一撃必殺の殺傷武器になりえない。

 

特に目の前のワカモのような、キヴォトスでも上位の神秘を持つような相手ではなおさらだ。

 

こんなことならば、調達数重視で安価なFMJ弾などで済ませなければ良かったと我ながら遅い後悔をしてしまう。

 

クラス4…………いやクラス3でもいい。高価でも9㎜パラベラム弾で防弾アーマーを貫通できるPBP弾やAP6.3弾を調達していれば多少は効果もあったはずなのに。

 

 

「ッ! ……その銃剣! 何故、貴女がそれを持っているのですか!」

 

 

私の内心とは裏腹に驚愕とも、怒りともとれる声でそう叫ぶワカモ。

 

当たり前だ、私の持っている銃剣は……目の前にいるワカモが持っている銃剣と()()()()()()()

 

 

「銃剣のこと、を! ……知りたければ……一度武器を降ろして欲しいんだけど、ね!」

 

 

苛烈になるワカモの攻撃を凌ぎ、時に拳銃で反撃しながらそう私が提案するのだけど、残念ながらワカモは聞く耳をもってはくれない。

 

耳を四つも持っておいて、私の話を聞く耳は一つもないのか……その耳は飾りなのかと言いたくなる。

 

 

「貴女を打ち倒してから、存分に尋問してあげますわ!」

 

 

「私も早くアビドスに帰りたいから、そんな時間はないんだけど……ね!」

 

 

私とワカモの銃剣がぶつかる度に、激しい金属音とともに線香花火のような火花が散る。

 

 

「どうかな? おじさんの話に付き合ってくれるなら……美味しいご飯を奢るけど!」

 

 

ワカモの銃弾を、私は銃剣で切る。お返しとばかりに零距離から拳銃を撃ち返し、ワカモの右わき腹へと叩き込む。

 

 

「グッ! 誰が! 大体、貴女はわたくしより年下で……しょうがっ!」

 

 

「ガッ!」

 

 

もはや拳銃程度の攻撃など、致命傷足りえない。私の攻撃を受けながら彼女は自身の愛銃で思いっきり私を殴り飛ばして来た。

 

お腹へと入った打撃が、重い打撃音とともに私を後方へと吹き飛ばす。神秘と防弾ベストのお陰で衝撃以外はさして痛みは感じないけれど、もし普通の生徒だったら肋骨が折れていたかもしれないほどの一撃だ。

 

 

「おっも! 貴女! ちびっこい癖に何て硬さですの!」

 

 

「あんまり、女の子に言って良いセリフじゃないね!」

 

 

吹き飛ばされた私はその勢いを利用して転がるように近くの物陰へと身を隠した。そして、ついでとばかりに撃ち切っていた拳銃の弾倉を交換する。

 

撃ち切っていた弾倉を捨て、胸のポケットに収められていた予備の弾倉を拳銃へと差し込み、ホールドオープンしていた拳銃のスライドを引いて薬室へと初弾を装填する。

 

そんな私の行動を知ってか知らずか、ワカモは私を追撃することなく、私を銃で殴り吹き飛ばした際のあまりの衝撃に驚愕しているようだった。

 

こちとら、伊達にキヴォトス最硬の神秘と呼ばれてるわけじゃないのだ。もし銃に纏っていた神秘量がワカモのではなく、普通の生徒の神秘量だったならば……逆にその銃をへし折っていただろう。

 

 

「それじゃ、少しは私の話を聞く気になった? 」

 

 

物陰に隠れながら私の言葉に返されるのは一発の銃弾。何かしら不具合でも……と思っていたが残念ながら、彼女の銃を破壊することは出来なかったらしい。

 

 

「逃げるが勝ち……って言いたいけど、このままだと市街地まで追ってきそうだし……」

 

 

気は進まないが、人の多い市街地まで戦闘に巻き込む訳にもいかない。このまま……ワカモの気が済むまで付き合うしかなさそうだ。

 

溜息を吐きながら、私は隠していたスモークグレネードをワカモへと投げつける。

 

空中へと放り投げられたスモークグレネードは手りゅう弾だと勘違いしたワカモによって撃ち抜かれ、辺り一帯に白い煙のカーテンを形成する。

 

 

「しまっ!?」

 

 

慌てるワカモの声を無視して、私は再び彼女の懐へと突撃する。

 

 

「君が先生に対してどう想っているかなんて、サラサラ興味はないけどさ」

 

 

煙を纏いながら迫る私へ、ワカモは咄嗟にその銃口を向けるけど…………想定外というのは人の動きを妨げる上で効果的な戦術なのだ。

 

驚愕によって固まり、一拍ほど遅いワカモの動きに私は彼女の向けるその銃口を蹴り上げることで対応する。

 

蹴り上げて、何も無い空の彼方へと向かって放たれる彼女の銃弾にあたる物などない。

 

 

「あまり……私を巻き込まないでくれるかな?」

 

 

神秘解放

 

 

蹴り上げた脚に己が神秘を纏わせて、そのままワカモの頭へと勢いよく振り下ろした。

 

ドスッ! ……という重い、あまり人体が出していい音じゃないモノを周りへと響かせながら、私は冷たい目でそう告げる。

 

 

フラフラと、恐らく軽い脳震盪でも起こしたのだろう。ワカモはよろけながらその場に膝を突いた。

 

 

「ごめんけどこれ以上、私に関わらないで貰えるかな?」

 

 

そうワカモへと問いかけるが、返事は無い。

 

まぁ、あの状態ならば暫くはまともに戦う事など出来ないだろう。

 

少しだけ息を吐いて、私はワカモから背を向ける。正直、飲食店を探す気分でもなくなったし、コンビニで適当に何か買ってアビドスへと帰ろうか。

 

 

「…………ん」

 

 

ワカモから背を向けて、この場を離れるべく歩き始めた時に、微かにワカモがそう口を開いた。

 

正直何を言っているのかは分からない。小さく、そして掠れているようでよく聞き取ることが出来なかった。

 

 

「わ……ま……負け……んッ!」

 

 

だからこそ、私は油断していたのだろう。

 

 

「わたくしは……まだ負けていませんッ!」

 

 

頭から血を流しながら、未だ脳震盪が続いているのだろうおぼつかない足取りで、しかし焦点の定まらない瞳に炎を滾らせて。

 

彼女はその手に持った愛銃。その銃剣を私へと向けて突き刺そうとする。

 

 

「チッ! 」

 

 

咄嗟のことで一瞬だけ判断が遅れた。先ほどとは逆の立場へと、私は追いやられた。

 

 

「油断……しました……わね!」

 

 

もはや躱すことも出来ない距離まで詰められていた。

 

せめて…………少しでも致命傷を避けようと、私はこの身を動かそうとする。

 

僅かに。ほんの僅かに動けたけれど、これでは完全に致命傷を防ぐことなど出来ない。

 

 

パリィーン

 

 

私が思わず死を覚悟した瞬間、目の前に迫っていたはずのワカモの付けていた狐のお面が弾けて砕けた。

 

 

「……はぁ?」

 

 

一瞬だけ、脳の処理が追い付かなくて私はそんな声を出してしまった。

 

ワカモは()()()()()()()()()()()()()()頭を上へと逸らし、そしてそのまま…………手に持っていた銃を落し、その場に倒れた。

 

一拍のあと、遥か遠くから聞こえる破裂音が私の頭を現実へと押し戻し始める。

 

かつては随分と聞き馴染んだもの。

 

 

「ッ……狙撃かッ!」

 

 

現実へと引き戻された私は咄嗟にワカモを抱きかかえてその場から走って離れた。

 

ワカモを狙った銃弾の弾着と、あとから聞こえて来た発砲音の秒差から……相手はかなりの長距離狙撃だろう。

 

狙撃の死角を縫うように、路地裏や高層ビルの影を交えて私は逃げる。

 

思わず抱きかかえてしまったワカモは意識がないのか…………ぐったりとしていて身じろぎすらしない。

 

 

「放置も出来ないし……しょうがない……か」

 

 

あのままワカモを放置して私だけ逃げれば、ワカモがどんな目に遭うのか分からない。

 

なにより…………目の前で崩れ落ちるワカモの姿がどうしてもかつてのワカモと重なってしまって。

 

 

「このまま、アビドスまで連れて行くしかない…………か」

 

 

狙撃手相手の戦いは長期戦になる。

 

相手がどんな人間なのか分からないが、もし決着がつくまで彼女が目を覚まさなければ…………

 

 

「あんまり、おじさんを困らせないで欲しいんだけどな」

 

 

かつての口癖をわざと吐き出して、私はワカモが私の動きで体調が悪化しないよう…………もう一度優しく抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしていきなり単独行動をしたんだ」

 

 

とある路地裏で、黒い髪の少女がそう口を開く。

 

対面で佇む、薄い水色の髪の少女は『分からない』……と、首を横に振りながら黒髪の少女へとそう答えた。

 

 

『ただ……そうしなければいけない気がした』

 

 

と、明確な理由もなく。漠然とした感情で行動した薄い水色の髪の少女、槌永ヒヨリは仲間でもあり、そして家族でもあるリーダーへとそう答える。

 

彼女の行動で家族を危険にさらすかもしれない。黒髪の少女、錠前サオリはヒヨリの言葉にそう告げたが…………何故かヒヨリはその後は口を閉じてしまった。

 

普段のヒヨリとは何処か違う雰囲気に、少しばかりサオリは戸惑う。が、時間も押しているためにそれ以上追及することはしなかった。

 

 

「なにか…………大切な…………」

 

 

離れるサオリを一瞥して、ヒヨリは空を見る。

 

自身の髪色と同じ、薄い水色の空の下で、誰も聞き取れない小さな独り言をヒヨリは溢す。

 

 

大切な約束…………をした気がするんです」

 

 

思い出すのは、スコープ越しに映るピンク色の髪。

 

なぜそうしたのかことが済んだ今でもヒヨリには分からなかったが、会った事もないはずのピンク色の髪の少女。その娘が後ろから襲われそうになった時、ただその時ヒヨリは咄嗟に体が動いていた。

 

持っていた狙撃銃で撃った。ピンク色の髪の少女を襲う……()()()()()

 

 

「貴女は…………一体誰なんですか?」

 

 

なぜ狐耳の少女を敵だと判断したのか、それは今でも分からない。

 

初めて見たのに、初めて見た気がしない。そんな気持ちにさせるピンク色の髪の少女を思い出しながら呟かれたヒヨリの言葉は雲一つない空に吸い込まれ、応えるものは誰もいなかった。

 

ただ漠然と、虚しい……虚しい……と言い聞かせて来たはずの心が…………間に合って良かったという謎の安心感へとヒヨリの心を代わりに満たすだけだった。

 

 

 

 

 

旧版と改修版……どっちが読みやすい?

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