また万文字だよ……
なんでこうなった……
───ある世界線。
───キヴォトスD.U.シラトリ区。連邦生徒会所有の秘密セーフハウス。
───【Operation LastMiracle】作戦前夜。
『ホシノ、貴女ちゃんと寝れてるの?』
『…………今度は空崎か』
『…………なに?』
『何でもない。大丈夫……ちゃんと休んでるよ』
『本当かしら? 明日は分かっているでしょう?』
『もちろんだよ……』
『ならいいけれど……無理はしちゃだめよ』
『…………君に言われるとはね』
『? 』
『昔の空崎が聞いたら驚くんじゃない?』
『ふふっ……確かにそうかもしれないわね』
『私がゲヘナにお邪魔した時、空崎も酷い顔だった』
『そうね……あの頃は、少しでも仕事が減らないかなってずっと思ってた』
『だろうね』
『でもね?』
『?』
『今となっては…………もう一度あの頃に戻りたいわ』
『…………そうだね』
『アコも……チナツも……イオリも……皆居なくなってしまったわ』
『…………』
『…………』
『…………明日は頑張りましょう』
『…………そうだね』
『それじゃ……しっかり休んでね?』
『わかってる。ちゃんと休むよ』
『
『わかった。
ゲヘナ学園所属:空崎ヒナ
キヴォトス連邦生徒会、最後の作戦、【Operation LastMiracle】に参加。
小鳥遊ホシノ、美甘ネル両名とほぼ同等のフィジカルと、愛銃である機関銃デストロイヤーの広範囲殲滅能力を買われ遊撃役として作戦に参加。
少数を陸八魔アル、多数を空崎ヒナと分担しながらパーティー内でのサポートを勤めるも、休みない激戦により神秘を消耗して負傷。最後は作戦成功率を上げるため咄嗟に陸八魔アルに庇われるも、陸八魔アルを貫通した凶弾により倒れる。
───作戦参加者:小鳥遊ホシノ、陸八魔アル、美甘ネル、槌永ヒヨリ、空崎ヒナ
─── KIA :陸八魔アル、美甘ネル、槌永ヒヨリ、空崎ヒナ
─── MIA :小鳥遊ホシノ
───作戦目標のキヴォトス脱出を確認
───【Operation LastMiracle】作戦成功
キヴォトスの鉄道移動において、主要路線を運航しているのはハイランダー鉄道学園というのがキヴォトスでは有名だけど、逆を言えば主要路線以外ではハイランダー鉄道学園が運航管理していない路線図も存在する。
残念ながら、小鳥遊ホシノに憑依する前の私の知識はアビドス編で二章まで。
本格的にハイランダー鉄道学園が登場するアビドス編の三章は軽い知識として知っているだけで私自身がプレイした訳ではない。だからこそ、この
例外というのは、ノノミがアビドス高校ではなくハイランダー鉄道学園に入学した世界線の話。この
なにが言いたいのかといえば、ハイランダー鉄道学園の路線がないアビドス自治区では鉄道移動というのがそこそこ不便なのだ。
集客の見込めない今のアビドスにおいて、運航される電車は半ばボランティアのような赤字事業。だから一日の本数も減らされているし、終点の停車駅もアビドス高校からはやや離れた位置で終わっていてそこそこ不便。
「…………疲れた」
終着駅の半ば無人駅とかしている駅舎を出た私は、背負っているワカモを背負い直すように少しだけ跳ねながらそう小さくぼやいた。
幸いな事に、謎の狙撃手に襲われてから既に数時間が経過している。未だ狙撃して来た下手人が誰だかは分からないけど、組織的な犯行であれば狙撃だけで終わるはずがない。故に恐らく下手人は単独犯。
ミレニアムサイエンススクールからアビドス自治区まで最短でも数百㎞はある。相手が単独犯ならば十分に撒いたと思っていいだろう。
背負ったワカモのことを考えれば、生前見たハー○ロッカーのように長時間息を潜めて狙撃合戦など今の私におこなう余裕などない。
私は耳に付けていたインカムへと手を伸ばし、通信のスイッチを入れる。
「黒服……聞こえる?」
繋いだインカムへとそう話すけれど、聞こえるのは微かな雑音のようなノイズだけ。
「…………黒服?」
もう一度私はインカムの向こうへと問いかける。
『ジジ…………ホシノさん、聞こえますか? 』
『聞こえるよ黒服。何かあった?』
数秒ほど経って聞こえた黒服の声に、少しだけ安堵の息を吐いた。だけど、インカム越しの黒服の声は少しだけ焦っているようで、私は訝しむようにそう黒服へと聞き返した。
『落ち着いて下さい。ゲヘナ学園の風紀委員会がアビドスへとやってきています』
「風紀委員が来ることは分かっているはず…………いや、黒服が焦っているってことは何かあったんだね?」
『話が早い。風紀委員会ですが、空崎ヒナが出てきています』
「それは…………最初っからってこと?」
『えぇ……本来ならば天雨アコの独断だったはずが、風紀委員長直々の作戦へと変化しています』
チッ!
黒服の言葉に、私は思わず舌打ちをしてしまう。
黒服の言う通り、本来なら天雨アコという風紀委員会のNo.2が独断で便利屋を捕らえにアビドスまで来るのが本来の道筋だ。天雨アコの独断であるからこそ原作世界では偶然だけど風紀委員長たる空崎ヒナというカードを切れたのであって、風紀委員会の正式な作戦行動だとして最初から空崎ヒナが率いている場合には役に立たない死に札も同然だ。
「
『そこが第二の問題、小鳥遊ホシノさんが限界です』
「それは…………どういうこと? 」
『貴女から報告を聞いて、こちらでも小鳥遊ホシノさんを観察していましたが……脈拍や心拍数の乱れなどからかなり精神的に無理をしているようです』
「原因は、黒服?」
『
歩いていたはずの、私の脚が止まる。
「…………どういうこと?」
『おそらくですが、貴女と出会ったことで小鳥遊ホシノさんは過去のトラウマを強く刺激されたのでしょう』
『見た目こそそこまで似ていませんが、貴女の目つきや表情……その身に纏う雰囲気などはかつての一年生だった頃の小鳥遊ホシノさんに良く似ている』
『貴女も経験があるでしょう? 大切な人を失くした時の絶望や悲しみ、そして防げなかった自身への憤怒』
『小鳥遊ホシノさんにとって、貴女という存在そのものが過去のトラウマを刺激する劇薬に他ならなかった』
つー……と、私の頬を一筋の汗が落ちる。
浅い呼吸が、早鐘の如く鳴り響く私の心臓の鼓動が……
「…………私の……私の所為か」
『全てが貴女の所為ではありません。早期に気づけなかった私にも責任がある』
ワカモを背負っていたまま崩れ落ちそうになる自分の体に活をいれ、内からこみ上げて来る吐き気を私はなんとか堪えようとする。
「他の皆は…………ノノミたちは大丈夫?」
『精神的支柱である小鳥遊ホシノさんがボロボロなのです。奮闘していますが遅かれ早かれ、風紀委員に敗北するでしょう』
「先生は? 先生がいるなら…………」
僅かな希望を込めて、縋るように私は黒服へとそう聞き返したが……インカム越しに聞こえる小さな黒服の溜息に何となく答えが分かった気がして……
『ホシノさん、いくら先生の指揮能力が高くとも絶対的な戦力の差というのは覆しようがありません』
『それこそ……
黒服の言葉に、私はゾワゾワと自身の肌が強張るのを感じた。
それはつまり…………黒服が言いたいこととは…………
「まさかせ……先生が、大人のカードを使うかもしれないってこと?」
『可能性として……相手も生徒である以上、使わない可能性もありますが』
上ずって掠れた私の言葉に、黒服は可能性としてあり得ると……そう告げる。
原作と乖離してきているのは理解していたし、覚悟していた。
けど、まだ大丈夫だろうと確認したのはつい昨日のこと。なんなら黒服と先生に大人のカードを使わせないと決めたのは三日前のことで、私がこの
「皆と関わったのはたった二回だけのはず…………なのにどうして……こんな短時間で此処まで道筋が変わってしまった?」
『考える時間は後で幾らでもあります。今重要なのは、この展開をどう対処するかです』
私の言葉に黒服はそう告げたあと、二つの選択肢を私へと提示した。
『一つはこのまま我々は干渉せず、先生や小鳥遊ホシノさんたちを信じてアビドス生のみで対処する』
『二つ、小鳥遊ホシノさんの精神を信じて我々……というよりホシノさんが干渉してことを収める』
はっきりいって、わずかでも先生が大人のカードを使う可能性がある今の状況で私たちが一つ目を選ぶのは論外。
そして二つ目も、黒服の言葉が本当ならば
両方とも、メリットを考えるよりも先にデメリットの方を考えてしまう。
空を見上げる。出口のない回廊のようにグルグルと纏まらない私の思考が、綺麗に透き通っていたはずの青空を薄汚く穢してしていく。
「…………いや、薄汚いのは私か」
結局、私のやることは変わらないのだ。この
そのためには
…………先生を守りさえすれば、
「黒服……ごめんけどワカモを預かってくれない? 」
『クックック…………行くのですね? 良いですとも』
「……それと私の装備も」
『分かりました。既にメンテナンスは終えてありますよ』
「有り難う黒服」
インカムの通信を切って私は空を見た。遠い空に見える、クジラの形をした雲が……その形を歪ませていく。
ストレスからかキリキリと痛む胃を押さえながら、私は空を見上げていた顔を地へと堕とす。淀んだ私の目に……青春を代弁するかのような今日の青空は少し眩しすぎた。
「…………行くか」
背負っていたワカモをそっと、優しくその場へと降ろす。
「……ごめんねワカモ。目が覚めたら…………私のこと教えてあげるね」
直ぐにでも、ワカモは黒服が回収してくれるだろう。私の装備は道中で回収が終わった黒服から受け取ればいい。
未だ目を覚まさないワカモを近くのベンチへと座らせて、私は小さくそう声をかけてからその場から背を向ける。向かうのは勿論、先生たちと風紀委員会が対峙している場所へ。
ピピッと、タイミングよく黒服から件の座標が私のスマホへと送信されてきた。これで、最短で向かうことが出来るだろう。
「……有り難う。黒服」
聞こえない黒服へと、私はそう告げてから走り出す。
一刻も早く、先生たちを守るために。
⏱
あぁ、どうしてこうなったのだろう。
障害物に体を預けながら、私の声にならない呟きは荒れた呼吸と共に宙へと吐き出される。
眼前に連なるゲヘナ生の壁。そしてその壁を率いるように私たちの前へと並び立つ四人の人影。
空崎ヒナと名乗ったゲヘナ学園の風紀委員長とその幹部たちは、冷めた目で私を……アビドスの皆を見下ろしている。
「過大評価……だったかしら? 目的が便利屋68とはいえ、要警戒人物である小鳥遊ホシノが此処まで弱体化していたなんて……これならアコにでも任せていれば良かったわ」
冷めた目じゃないね……氷のように冷たい目で、空崎ヒナがそう独り言のように言い放つのを私は歯噛みして睨みつけるしか出来なかった。
私がアヤネちゃんの連絡を受けて駆け付けた時、既にアビドスの皆は風紀委員会と交戦中だった。
シャーレの先生と、そして私という乱入者で一度は中断した戦闘はしかし、目の前の風紀委員長の意思によって交渉に持ち込むことも出来なかった。
問題の便利屋も、目立たないよう私たちを援護してくれていたし、先生の指揮もあって一時は盛り返したけど多勢に無勢。
弾薬も尽きた私たちには、これ以上彼女たち風紀委員を防ぐ手立てがなかった。
いや……それも言い訳だ。空崎ヒナの言うように私がもっとちゃんとしていれば……この程度どうってことなかったはずなのだ。
震える両足に力を込めてフラフラと立ち上がった私に、風紀委員の数十という銃口が向けられる。
ノノミちゃんも、シロコちゃんも、セリカちゃんやアヤネちゃんも…………
私が
あぁ、どうしてこうなったのだろう。
理由なんて分かり切っているのに、どうしようもなく零れ出る弱音が私の心を締め付ける。
「まだ、おじさんは戦える……からね」
精一杯の虚勢を吐いて、私は空崎ヒナを睨んだ。
「そう……私たちの目的は便利屋のみ。これ以上邪魔するなら容赦はしないわ」
ゆっくりと私へと向けられる、紫色に輝く彼女の機関銃。なんとか盾を構えるのが精一杯な私にあれを耐えきることができるかどうか…………
思わず目を瞑って衝撃に備えた私は…………しかしいっこうに来ない衝撃に目を開けてしまった。
「…………間に合ったか」
小さく聞こえた馴染みのある声。茶色い外套を身に纏い、シロコちゃんと同じ青いマフラーをたなびかせる、私と瓜二つの顔。
「無事か?」
無理して立っていた私の脚から力が抜ける。今まで感じたこともないほど盾が重く感じる。
小鳥遊ホシノ……私と同じ名前の少女が、空崎ヒナと私の間に立っていた。
呼吸が先ほどまでより早く、荒くなるのが自分でもわかった。彼女の
「…………やっぱり私の所為か」
ぼそっと呟かれた彼女の言葉が良く聞きとれない。耳が遠くなったかのように彼女の声も周りの音も何も聞こえない。視界がぐにゃぐにゃに歪んで見えて、上か下かも分からないほどに私の感覚が消えていく。
ただ、この身の内から湧き上がる吐き気のような気持ち悪さだけが…………最後まで消えることがなかった。
⏱
「…………やっぱり私の所為か」
今にも
黒服が言っていたことは正しかった。やはり私の所為で、
本来の、万全状態である小鳥遊ホシノだったら相応の実力を持っているヒナは兎も角として、その他の風紀委員なぞに手こずるはずがない。
「ホシノさん……」
「ノノミ。彼女を頼んだよ」
いきなりの展開に思考が追い付いていないのだろう。怪我してボロボロの体で私の側にやって来たノノミたちに、私は背後で気を失った
”ホシノは大丈夫? ”
「あぁ、先生か。彼女は大丈夫……ここ最近満足に眠れていなかったんだろう。疲労で気を失っただけだよ」
シッテムの箱と共に、追いかけるようにノノミたちのあとから走って来た先生へと、私はそう告げる。
先生の手にはシッテムの箱以外を持っていないようで、大人のカードを使った形跡も使おうとした様子もない。私と黒服が想定していた最悪の可能性は取り越し苦労だったようで一安心だ。
「さてと、私は風紀委員に用があるから……ノノミたちは離れていてね」
「でも、これは私たちの問題で…………ホシノさんだって!」
「大丈夫。私に任せておいて」
そっと心配そうに見ているノノミの頭を撫でながら、私は安心させるように作り笑いを浮かべる。
ちゃんと笑えているだろうか。この事態を引き起こしてしまった罪悪感と自身への怒りが、キリキリと酷く私の胃と心を痛めつける。
目尻に涙を浮かべて俯いていたノノミは、暫く黙っていたあと小さく頷いて皆と私から離れていく。
「さて、お騒がせしちゃったかなゲヘナ風紀委員の皆様方?」
先生は大分私を置いて離れるのに抵抗があったみたいだけど、やっぱり
「小鳥遊ホシノが……二人?」
「諜報部のミス? …………ですが……」
「あの雰囲気、諜報部の資料と似ている……」
ざわざわと動揺したように話している風紀委員の幹部たち。声の雰囲気的にたぶんイオリとチナツとアコだろうか。
「貴女は…………そういうこと。漸く
動揺する他三人に対してひとり納得したようにそう口を開くヒナ。その顔は相変わらず険しいけれど、目元に隈を浮かべどこか萎びた雰囲気を漂わせている。
あぁ……なるほど。かつて彼女本人が言っていた通り、風紀委員の仕事というのは大分大変らしい。今の私と同じくらい……酷い顔をしているようだ。
「その質問に答える義理は無いんだけどね。この場所から引いてくれるなら……少しは考えるけど?
「な!? 貴女なに委員長を気安く名前呼びしているんですか!」
「煩いよヨコチチ娘」
「んなっ!? これは利便性とその「煩いと言ってるのが聞こえないのかな? それともその耳は飾りかい?」ッ……! 」
「私は今、ヒナに話しかけてるんだ。横からしゃしゃり出るのはその無駄な駄肉だけにしといてくれないかな」
冷たく、私は風紀委員のNo.2たる行政官のアコへとそう言い放つ。
私の言葉にアコは絶句して、なお喋ろうとしたアコの言葉に私は更にキツイ言葉を言い放つ。同時に他の幹部……イオリとチナツは私の言葉に思わずといった様子で小さく噴き出している。
どうせ今回の大元の原因はアコだろう? どんな形で本来の道筋から変わったのか分からないが、このくらい言ったってバチは当たらないはずだ。
「私たちの目的は陸八魔アル以下、便利屋68の捕縛。私たちの邪魔をしているのは貴女たちアビドス生よ」
「へぇ……それでわざわざアビドス自治区までご苦労様。でも知ってるよね? 自治区を跨いでの任務は双方の生徒会と連邦生徒会の許可を取らなきゃいけないってことをさ」
「勿論知っているわ」
「…………だってさ。アヤネ、アビドスにそんな連絡はあったかな?」
ヒナの言葉に、私は背後にいるアヤネにそう問いかける。
唐突な問いかけにアヤネは少しだけびっくりしたように肩を躍らせたけど、すぐさま持っていたタブレットを操作して確認している。
「念のため……もう一度確認しましたけど、そのような連絡はゲヘナの生徒会はおろか連邦生徒会からも届いていません」
「まぁ……だろうね」
タブレットを操作しながら、そう答えてくれたアヤネに私は短く返した。そもそもの話、本来の道筋から大きく外れ……キチンとアコたち風紀委員会が関係各所に許可を取っていたのなら、アビドス高校の窓口を担っているアヤネが見過ごすはずがなく、こんな大事には発展していないはずなのだ。
「そ、それは貴女たちが正規の部活ではないからでしょう! 」
私とアヤネの会話を遮るように、アコが慌てた様子で叫ぶ。
へぇ……そこを調べているってことは、アコはある程度事前にアビドスのことを調べてはいたんだね。
「ふぅん……じゃあ、連邦生徒会に聞けばわかるんだね?」
「え? そ…………それは……」
アコに向かって淡々と私がそう問いかけると、対する彼女はモゴモゴと歯切れ悪く口を開いたり閉じたりさせて何処か焦りを感じさせる。
…………なるほど。何となく今回のカラクリが見えて来た。
「こっちにはシャーレの先生がいる。知っているだろう? シャーレは何処の自治区にも属さない独立した部活だ。その気になれば全ての面倒な手続きを省略して直接連邦生徒会に問い合わせることだって出来る」
「そうでしょう。先生?」
ここが踏ん張りどころだ。冷徹に、そして嘲笑うかのように……演者の仮面を私の顔に張り付けて、アヤネの時のように後ろにいる先生へとそう話かける。
アヤネの時と違うのは、私の視線がずっとアコの方に向いていること。余計な茶々を入れさせて、今私が掴んでいるこの場の主導権を乱されないように。
”…………そうだね。今確認したけど、連邦生徒会ではそのような風紀委員会の許可を認めた覚えはないそうだよ”
少しの間が空いてから、先生は小さく息を吐きながらそう風紀委員会へと口を開いた。
やっぱり先生が居てくれたおかげで物事がスムーズに進む。先生の言い放ったその言葉が、この場において決定打となってくれたから。
顔面を病人の如く青白く変化させ、止めどなく冷や汗をだらだらと垂れ流すアコ。合わせて、バツが悪そうに視線をアコから明後日の方へと向けるイオリとチナツ。
そして、そんな三人を冷ややかな目で見つめ続けるヒナ。
最早戦闘や便利屋68の捕縛など出来ないだろう。それを遂行するための偽りのお題目が、目の前でガラガラと崩れ去ったのだから。
「さてと、なにか反論があるなら聞くよ? アコ行政官」
「アコ…………貴女、私に言ったわよね? 各所に許可は取ってあるって……どういうことなのかしら?」
私とヒナ。
僅かばかり神秘の籠った二人の冷たい視線を受けて、アコはその体をビクつかせる。
「あ、いや……その……」
「どうなの?」
…………恐らくだけど、アコの本当にやろうとしたことは本来の道筋である原作と変わらないのだろう。ヒナにパトロールだと嘘をついて、便利屋68を捕らえたあとでゲヘナに戻り辻褄を合わせれば何とかなるとでも思ったはずだ。
だが、出撃するどこかのタイミングでヒナにバレ…………更に嘘を重ねたのだろう。正式にアビドス自治区や連邦生徒会の許可を取った……とでもね。
ヒナが付いて来た理由はそんなとこだろう。
連日の激務でまともに寝ていないのだろう。判断力が低下しているのと風紀委員会への信頼が、ヒナの判断を狂わせたはずだ。
「…………すみません」
私の視線と、ヒナの重圧にとうとうアコが白状した。
大半は私の予想通り、嘘を咎められるのが怖くて更に嘘をつく。文字通り、アコの判断は
此処までやらかしたんだ、アコの罰は反省文程度じゃすまないだろう。部下からの信頼も大きく下がったはずだ。
それでアコへの罰は十分だろうし、当事者である他の皆が何も言わないならば……私からアコにこれ以上何かするのは過剰な気がして躊躇われた。
「…………ゲヘナ風紀委員会を代表して、謝罪するわ…………ごめんなさい」
一通りアコの話を聞いてから、ヒナは私に頭を下げた。
「謝罪をする相手は私じゃない。私の後ろにいるアビドスの皆や先生……でしょ?」
後ろに居る皆に向かって後ろ手で指さしながらそう返す私に、ヒナは小さく微笑んだ。
「…………えぇそうね、貴女の言う通りだわ」
カツカツカツ……と、ヒナは私の横を通り過ぎ後ろにいる皆の所へ向かう。
少しだけ、私の肩にのしかかる重みが減った気がする。それはなんとかこれ以上の大事にならずに済んだからか、はたまた…………かつての戦友の、その懐かしい姿を再び見ることが出来たからか。
気のせいか、ずっと感じていたお腹の痛みも…………
「ゴフッ!?ゴホッゴホッ!」
唐突にこみ上げて来た吐き気に私は蹲ってしまう。体が崩れ落ち、四つん這いの体勢になりながら手を口元に持ってきて何とか抑えようとするけれど、こみ上げて来る液体は私の意思とは無関係とばかりに口内から吐き出される。
口を覆っていた手を思わず見た。吐き出された物は胃液でも消化物でもない。赤く、紅い…………まぎれもない、私の血だ。
「ホシノさん!?」
誰かが私を呼ぶ声がする。ノノミかな……セリカかな……残念だけど、私の耳に鳴り響くキーンという甲高い耳鳴りの所為で誰の声なのか……どんな意味なのかも分からないや。
視界がどんどん暗くなる。ドサッと耳鳴りの最中に聞こえた重々しい音と衝撃が、私が地面に倒れてしまったことを理解させて来る。
「は……はは……ヒナとの約束……忘れてた…………」
ちゃんと休むって、約束していたのにね。
そんな言葉を最後に…………私の意識は暗い闇の中へと吸い込まれていった。
………………
…………
……
原作と大きく乖離させるポイントどうしよっかなぁって考えてて、風紀委員編だとヒナ出せばニセノが再会できて一石二鳥やん!
↓
理由付けめんどい……アコに全部押し付けちゃえ!
↓
あれ……これヒナのアコへの信頼度、マリアナ海溝より深く落ち込むのでは?
↓
ヤッチマッタゼ\(^o^)/オワタ
旧版と改修版……どっちが読みやすい?
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旧版
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改修版