TS転生した近未来世界で俺が唯一の前線パイロット 作:純愛の方が好き
真っ黒な機影が五つ、雲を切り裂くように飛翔する。大型なものが一機と、それに連なるように左右にそれぞれ二機。気流を受けつつもその編隊は一糸の乱れもない。
そこへ突然直下からのミサイルが襲いかかる。五機は全く同時に散開するが、それは意思を持つかのような軌道を描き、大型で鈍重な機体に直撃した。爆散。空に舞う黒煙を置き去りに、残りの四機は迷いのない飛行を続ける。それは機械だからこそ為せる技。不意の事態であろうと問題を見せず、目下の問題に対応する。
四機は高度をズラして四角形の陣形を組む。そしてそれぞれのレーダー情報の相違から、一つの機影を浮かび上がらせた。ステルス機と思われるかなり大型のそれは、真っ直ぐと彼らに向かって上昇している。
四機はドッグファイトに付き合う気は無いと言わんばかりに速度を上げつつ、機銃で牽制射撃。四方向から逃げ場無く斉射されるそれは牽制でありながら敵機を容易に爆散させる。
しかし、その攻撃は避ける動作すら見せずに躱された。四機はすぐに原因を解析する。理屈は単純、速度を落とすことで予測射撃から逃れている。人間なら気づけないかもしれない、錯覚を利用した回避。だが彼らにそれは通じない。速度の低下に合わせて標準をずらそうとした瞬間、機体から二つのミサイルが放たれる。即座に四機は斉射の対象を修正し、ミサイルの撃墜にかかる。が、当たらない。それらはまるで双腕のように自在に軌道を変化させ、機銃の斉射を嘲笑うように回避する。
完全な撃墜を断念し、機銃の対象を一つに絞ることによって片方のミサイルの撃墜に成功するが、もう一つは既に最後方の機体に迫っていた。苦し紛れのように回避軌道を取ると同時にフレアを放つが、これも通じない。直撃し爆散する。
更にもう一機が、今度は背後からの機銃の斉射によって爆散する。いつの間にか、あの機体がドッグファイトの距離まで迫っていた。気づいていない訳ではなかった。彼らは機械だ。ミサイルと同時に迫ってくる機体は当然捉えていた。しかし、対応できなかった。ミサイルへの対応へ処理を割いていたことは勿論、黒い機体の推力は想定される範疇を超えていた。明らかなイレギュラー。例外を処理する仕組みを持つ彼らですら対応を誤った、例外中の例外。
だが、それでも。彼らに動揺はない。残るは二機。一方はそのままの速度で飛行しつつ、もう一方は急激に機首を上げ速度を落とす。Gを感じる肉体を持たない者に取っては容易な軌道だ。
そのまま直上を通り過ぎようとしたその時、カメラはあり得ないものを捉えた。それはコックピット。現代の空中戦では存在しない筈の、人間が搭乗する為の器官。
更にあり得ないのは、そのコックピットのキャノピーが開いていること。大口径のライフルの銃口が、カメラを見つめている。それを構えているのは、金の短髪をたなびかせる美しい少女だった。
爆散。残りの一機は操縦が単調になったその一瞬をつき機銃を斉射し、その機体に命中させる。だが堕ちない。反撃の機銃の斉射によって、その最後の一機も爆散した。
全滅。それを齎した機体は、繭を脱ぐようにして黒い外装を排除した。それは単なるカモフラージュ。機体の真の姿を見せないようにする為の嘘。
そして姿を現したのは、灰色の機体。そのボディには誇るような三ツ星のマークがペイントされている。大型ながら通常の戦闘機然とした姿を持つそれは、軽快に身を翻すと先ほど見せた以上の速度で飛び去っていった。
少女は基地を我が物のように闊歩する。だが、誰もが少女を咎める様子はない。理由は単純である。その場の誰もが、かつてはパイロットに憧れていたからだ。
ここは空軍基地である。とは言っても、少女以外にパイロットは居ない。十年前、一部の機体が完全な無人機になって以来次々と有人機との置き換えが進み、数年前には一部を残し有人機は無くなった。無論パイロットも居なくなった。だが一年前、数少ないパイロットの生き残りと言われる伝令隊の一員だった彼女が奇跡を起こした。有人機対無人機という、絶望的な戦いに勝利したのである。
その後幾度かの勝利を積み重ね、前線に配備されるようになったのが半年前。これまでの機体を改良した専用機がロールアウトされたのが一か月前。そしてその機体で初めての実戦飛行を行ったのが、今日この日だったのである。
そう、つまり彼女は浮かれていたのだ。本来彼女は道の真ん中を闊歩するような人間ではない。寧ろ道の端によって慎ましく歩くタイプなのである。
周囲の視線に気付き、少女はようやくいつも通りの振る舞いに戻った。時間にして約十分。この日のことは彼女が感情を見せた珍事として基地の人々に記憶されることになった。
主人公側視点を出せなかった……。ので、次は出します。多分