勇気を受け継ぐ勇者の物語   作:せんと凪

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 ああでもない、こうでもないとやってたら遅くなってしまった……。


第二話 高嶋 結太2

 

 高嶋家の敷地内に在る武道場。

 

「じゃあ、はじめようか結太君」

 

「オッス! よろしくお願いします!」

 

「おっ、気合十分だね! よし。まず結太君には、最初の1、2週間、基礎体力向上の為に励んでもらうよ。いくら神樹様の力を借りて人の域をこえると言っても、元の体がちゃんとしてないとだめだからね。まぁ勇者システムの改良が進めばそんなことはなくなると思うけど……そこは置いておいて、先ずはやろう」

 

「押忍!」

 

 基礎体力向上とのことで、茜さんからメニューが書かれた紙を渡される。

 内容は腕立て伏せ、上体お越し、スクワット、計15回ずつとランニング3キロ。これを毎朝と帰宅後に行うという、いたってシンプルなものだった。

 一見普通の内容で、容易に行えるものだと思うかもしれない。

 が、しかし結太の場合は違った……

 

「はぁっ、はぁっ、くっ…………がっ、はっ!」

 

 なんと腕立て伏せ、わずか1回で腕は悲鳴を上げた。一瞬、力が抜けたのと同時に両腕の体制が崩れ、ペタン、と、地面に体が落ちる。結太は、筋力の限界値があまりにも低すぎたのだ。

 

「まだ1回だよ、1回! 頑張って結太君! あと14回ものこってるよ!」

 

 そんな結太を見て声援を送る茜。応援に答えようともう一度、もう一度と、何度も踏ん張り、何とか腕立て伏せ30回を終わらせた。両腕に変な痙攣があったが、構わず上体お越し、スクワットも終わらせる。この二つも先の腕立て伏せ同様時間がかかった。

 すでにと言うか、序盤からもうバテバテで息切れを起こす結太、いったんコップ一杯の水を飲んだ後ランニング3キロにを走りにかった。

 

 んん……結太君大丈夫かな? やっぱ、いきなり15回とかはきつかったよね、10回いや、5回ずつにすればよかったかも…………ランニングも心配だな……一緒に走った方がよかったかな?

 

 茜がそんな心配をして数十分後……

 

「た、ただいま、もどり……ました……はっあ」

 

 ふらふらで武道場に戻って来た結太は滝のように汗をかき、激しい息切れを起こしていた。

 

「おかえりーって! だ、大丈夫結太君!? これ、タオルと水! 水は落ち着いたらゆっくり飲んで」

 

「は……はい、なんとか…ハァはぁ、ありがとう……ござい、ます……」

 

 手と膝をついて四つん這いに疲れ果てている結太をじっと見つめる茜。

 

「んーーーー結太君ってもしかして………筋肉もそうだけど体力もあんまりない感じ?」

 

 やっと呼吸が、落ち着いて話すことが出来るまでに戻ってきた。

 

「実は…………体はそこそこ柔らかいんですけど、筋力や持久力は昔からダメで………………」

 

 毎年行われる体力テストの結果は下から数えた方が早い方。運動が苦手な文学少女と同じくらいなものなのだ。

 

「そうだったんだね………ごめんね、私知らなくて、今からメニューの見直しを……」

 

「いや、大丈夫ですこのくらい。それに、これ毎日こなせば体力が付くって茜さんが考えてくれたんですよね?」

 

「そうだけど……」

 

「ならやりますよ。こんなことで弱音を言ってたら御役目も果たせないと思うから」

 

「…………わかった。でも無理しちゃだめだよ、ちゃんと休憩はとる事」

 

「はい」

 

「なら良し! ……おっと、もうこんな時間だ。着替えて、朝ご飯食べたら学校行く準備しなくちゃね。初日から遅刻は大変だから」

 

 武道場に設置してある時計の時刻を見ると時刻朝七時を回っていた。その場を後に、軽くシャワーを浴び、学校指定の制服に着替える。朝食を食べ終えた後、登校の準備が整った。

 

「それじゃぁ、行ってきます」

 

「うん、気を付けて行ってらっしゃい!」

 

 親指御立ててグットサインが茜さんから送られ、家を後にする。

 

 

 

 

 目に映る景色を横目で歩く、新しい通学路。新鮮な気持ちにある。

 

 ふと、新しく通うことになる学校の事が思い浮かんだ。これから通う小学校の名は、神樹館と言う名の学校。この世界の全てである、神樹様の名が入ったとても格式高い学校と聞いた。

 そんな高貴な学校に僕が通って大丈夫かな?………ちゃんとうまくやっていけるだろうか……。

 ああ、なんだか不安になって来た、どうしよう……。

 そんなことを考えながら歩いていた時、前方から何かを叫び呼ぶ声が聞こえて来た。

 

「おーい! コロウマル! 止まれー!!」

 

 見ると、走り回る犬を追いかける少女の姿が見えた。その追いかけられている犬はこっちに向かって来る。

 困ってるようだし、捕まえようと構えると柴犬は勢いよく結太に向かって飛びかかった。

 その拍子に尻餅をついて転んでしまう。

 

「ってて…」

 

「ワンッ!」

 

 柴犬は遊んで欲しいのか、ゆうたの顔をべろべろとなめ回す。

 

「や、やめ……やめて、くすぐったいよ……!」

 

「ヘッヘへ! ワンワン!」

 

「こら! コロウマル、そいつ困ってるだろ! よっと」

 

 頬を舐められ困っていると、誰かが柴犬を持ち上げ、解放してくれる。

 見ると、助けてくれたのは、先ほどこの柴犬を追いかけていた女の子だった。

 

「捕まえてくれてありがとな…ん、大丈夫か?」

 

「な、なんとか……」

 

 顔が犬の唾液でベタベタだ…。

 

「コロウマルー!!」

 

 遅れて柴犬の名前を呼ぶ大人の女性がやって来た。この人は多分、この柴犬『コロウマル』の飼い主さんだろう。

 

「あっお姉さん! コロウマル捕まえましたよ!」

 

「はぁ、はぁ……ごめん、ありがとうね。もうコロウマルったら!」

 

「ワン!」

 

「“ワン!”じゃないわよ! もう!」

 

 そう言いながら、力を押さえてコロウマルの頬を掴みぐいぐい回す、飼い主さん。

 

「クゥ〜ン」

 

「ありがとう、コロウマルを捕まえてくれて。この子ったらちょっと気を抜くとすぐ飛び出してっちゃうから心配で……だから、捕まえてくれて本当にありがとう」

 

「頭下げなくていいですって! 私は追いかけただけですし、捕まえたのはこっちなんで」

 

 少女は隣に立つゆうたの肩にポンと手を置いた。

 

「ううん、そんな事ないは、一緒に追いかけてくれてありがとう。本当に助かったわ」

 

「そ、そうですか? あはは」

 

 照れ臭そうに頭をかく少女。

 

「君もコロウマルを捕まえてくれてありがとう。コロウマル二人にちゃんとお礼を言いなさい! 捕まえてくれなかったら事故ってたかもしれないんだから」

 

「ワン、ワンッ!」

 

 柴犬のコロウマルは、『ありがとう!』と言うようにゆうた達に向かって吠えた。

 

「そうだ、お礼と言ってはなんだけど……確かこの辺に……あった、これ良かったら使って」

 

 お姉さんは、ポシェットから取り出した物をゆうた達に渡す。見ると何やら割引券のようだ。

 

「ああ!? これイネスで使える割引券だ!!」

 

「……イネスって確か……近くのショッピングモールだったような……」

 

「もしかしてイネス行った事無いの?」

 

「……うん」

 

「なら今度私が案内してあげるよ!!」

 

「あっ、うん、はい。お願いします」

 

 まだ名前すら知らない女の子に、そう言われ戸惑う結太だったが、少女の勢いに押されて了承した。

 

「イネスはねぇ凄いんだよ…あっ、でも良いんですか? イネスの割引券貰っちゃって?」

 

「構わないわ。お礼みたいなものだから、好きに使って」

 

「やったぁ! お姉さんありがとございます!!」

 

「喜んでもらえたら良かった。それじゃあ私達は行くから気を付けて登校してね」

 

「ワンッ!」

 

 コロウマルと飼い主さんは朝の散歩に戻って行った。

 少女は貰った割引券を嬉しそうに見ている。

 

「君のおかげで良い事があったよ、コロウマルも捕まえられたし、一石二鳥ってやつかな? ありがとな……あ……えーっと………その…名前なんだっけ?」

 

 少女はようやっと、隣に立っていた人物(結太)の名前を知らない事に気づく。

 

「あっ僕の名前は」

 

「まった! こう言うのはまず聞いた方からだよな、私の名前は三ノ輪 銀ってんだ、よろしくな!」

 

 ニッと笑みを向ける少女。それが彼女三ノ輪 銀との出会いだった。

 

「うん、よろしく。僕は、高嶋、高嶋 結太」

 

 お互いに自己紹介をした所で、三ノ輪さんが「その制服って神樹館のだろ? 私も神樹館の生徒だから一緒に行こう!」と言ってくれたので、一緒に登校することとなった。

 

「……高嶋はここら辺じゃ見ない顔だけど……もしかして転校生か?」

 

「うん、そうだよ。今日転校する事になってるんだ」

 

「へぇーやっぱ転校生なのか。学年は?」

 

「5年生だよ」

 

「おっ、私も5年生なんだ。もしかしたら同じクラスになるかもな」

 

「その時は、よろしく三ノ輪さん」

 

「おうよ! 任せないさい!」

 

 この後三ノ輪さんと一緒に学校に向かった。道中何度かさっきほどのコロウマルの様なトラブルがあったが、協力して切り抜け、なんとかたどり着いた。

 

「いやー高嶋のおかげで、今日は早めにたどり着いたよ!」

 

「え、それっていつも遅れてくるの?」

 

 遅れてるって事は遅刻してるって事?

 もしかして三ノ輪さんは遅刻の常習犯だったりするのだろうか? いやそんな事はないだろう、多分。

 

「ま、まぁ色々あってな……あっそうそう、職員室はこっちをまっすぐ行けばあるから、私は自分のクラスに行くよ、んじゃぁな」

 

「うん、三ノ輪さんありがとう」

 

 三ノ輪さんに教えてもらった通り職員室に辿り着き、中に入ると担任の教師が僕の事を待っていた。

 教師に案内され、これから通う事になる教室の前に立つ。先に先生は教室に入り、転校生がこのクラスに来ますと、生徒達に説明している。

 

「それでは高嶋くん入って」

 

 そう担任の先生に言われ、教室に入る。

 

「自己紹介を」

 

「初めまして、今日からこのクラスの一員になります、高嶋結太です。よろしくお願いします」

 

 にざわめく教室。これから、新しい学校生活が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高嶋 結太

 

 勇気 1 +1 =2

 筋力 -10 +1 =-9

 優しさ 1 +1 =2

 





 銀ちゃん登場!! 

 銀ちゃんとは関係が少し深いって感じにしたかったので早めの登場。

 園子や須美は別々のクラスに居る設定にしたので登場はちょっと遅くなる。

「わ、私主人公なのに!?」

「うへぇ~まだ先なんよぉ~」
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