「僕を勇者の代わりになる……最強の魔法剣士にしてください!!」
「よろしいっ! では……」
アバン先生は懐から紙を取り出した。
「この契約書にハンコを……!! あ、サインでも結構ですよ!!」
ガクッ!? そういえばアバン先生はこういう人だったな。
知ってたのに調子が崩されるなぁ……
「ト、トール……」
「ピィ!!」
「じいちゃん! ゴメちゃん!」
僕がアバン先生に調子を狂わされているとブラスじいちゃんとゴメちゃんがやって来た。
「無事じゃったか……」
「もちろん」
ブラスじいちゃんの様子がおかしくなった瞬間に僕は島のモンスターの皆を気絶させるために家を出たので、じいちゃんが心配するのも当然だった。
「アバン先生。紹介します。僕のじいちゃんのブラスじいちゃんと、友達のゴメちゃんです」
「おお! 話には聞いてますよ! はじめまして! この度、トール君の家庭教師になりました、アバン・デ・ジニュアールⅢ世と申します! これは弟子のポップです。現在魔法の修行中の身であります」
アバン先生がじいちゃんと握手した後、ポップの肩に手を置きながら紹介した。
ポップはペコッっと頭を下げる。
「家庭教師? どういうことですかな?」
「ええ……もうすでにお気づきでしょうが……魔王が再び現世に復活してしまいました」
「……や、やはり」
じいちゃんが信じられないといった顔をしている。
魔王がアバン先生に倒されて15年、死んだと思っていた魔王が復活したんだ。じいちゃんが驚くのも無理はない。
「魔王の配下の邪悪な怪物たちが世界中にあふれ出し、人々を苦しめはじめています。ロモス、パプニカなどの王国も危機にさらされているのです」
ロモス王とレオナのところだ。確か原作ではほぼ同時に攻略が始まっていたはず。
対抗できたのは強力な兵士や兵器がある国だけだったはず……
「私はパプニカ王国の王家から頼まれてここに来たんですよ。デルムリン島に住むトールさんこそ未来の勇者!彼を1日も早く秦の勇者に育て上げてほしい……とね!!」
「いえ……僕は勇者ではなく魔法剣士なんですが……」
そこは重要だからな。勇者はダイだけだ。
いや、ダイは「勇者は何人いても良い!」って言ってはいたけど、そこは譲れないものがある。
「まぁまぁ……できることは勇者も魔法剣士も変わりませんよ! トール君が魔法剣士として各地で頑張れば頑張るほど、”勇者”と呼ばれていくんですから! 早いか遅いかの違いです!」
「は、はぁ……」
キィイイイイン
話していると風を切って島に何かが接近してきた!
「な、なんじゃあれは!?」
じいちゃんが驚いているが、僕は原作で知っていたのであまり驚かなかった。
「ガーゴイルだ……」
「ケケケーー!! 人間だ!! 人間がいたぞ!!」
「殺せ殺せ!! キイイイィ!!」
なぜか額にAとBと書いてあるガーゴイルが物騒なことを言いながら、僕たちに向かって切りかかろうとしてきた。
「グェッ!?」
が、アバン先生が張ったマホカトールの結界に阻まれて、車にぶつかった虫みたいになった。
「なんだこりゃ!?」
「おい見ろ!! 島全体が光の魔法陣で封印されちまってるぜ!! これじゃあ中には入れねぇ!!」
説明おつ
「どうやら魔王の偵察隊のようですね。ポップ、あいつらをやっつけちゃってください」
「ええ~~? おれ1人でですか~?」
アバン先生がガーゴイルを任せようとしたがポップが面倒くさそうだ。
「その通り! 私はマホカトールを使って、ベリーベリー疲れているのです」
「ちぇ~っ、ずりィな先生」
ポップは嫌そうだが、アバン先生はポップをガーゴイルの前に押し出した。
「はぁ……おいカラス野郎!! 俺が相手してやるからおりてこいっ!!」
「こ、このガキがっ!! 笑わせるなー!!」
額にBと書いてあるガーゴイルが怒りに任せてポップに斬りかかった。
だがポップは焦らずに杖を取り出し、呪文を唱える。
【メラゾーマ!!!】
「グワワッ!?」
杖の先から炎がほとばしり、ガーゴイルを焼き焦がした。
血と、羽根と、脂の焼ける悪臭があたりに漂い、ガーゴイルが全身焼き焦げた状態で墜ちてきた。ピクリとも動かずに死んでいるようだ。
「き……貴様ァっ!!」
「へっ! 今度はお前をヤキトリにしてやるぜっ!」
「クワァアアッ!!」
ガーゴイルがいきり立ってポップに襲い掛かる。
ポップは余裕の表情を浮かべている……だが
【マホトーン!!】
油断したポップに魔法を封じる魔法、マホトーンが当たる。
「未熟ですねぇ! ガーゴイルは
弟子の大ピンチだがアバン先生はひょうひょうとポップのミスを指摘した。
「まとめて葬ってやるっ!!」
ガーゴイルが2人に襲い掛かる。
僕は2人の前に飛び出て、ガーゴイルの剣をパプニカのナイフで防ぐ。
「な、なんだおまえ!?」
ガーゴイルは驚きつつも剣を僕に突き立てようと押し込むが、剣は微動だにしない。
「おい……1回しか言わないぞ」
「!?」
「この島から出ていけ。2度と戻らなければ倒さないでやる」
「……っ!? き、貴様ぁーー!!」
僕の言葉にガーゴイルは怒り、剣をめちゃくちゃに振り回してくる。
「遅い」
僕はナイフで上手く剣をいなす。
「ふっ!」
「げふっ!?!?」
剣をいなし、ガーゴイルの隙にけりを叩き込む。
「もう分かったろう? お前じゃ僕達には勝てない。無駄死にだ。戻るなら今のうちだぞ」
「ぐ……ゲゲゲ……」
ガーゴイルは腹を抑え息を整えている。
「ふ……ふざけるなぁーーっ!! 俺は魔王軍の兵士だ! 人間ごときにぃぃぃ!!」
ガーゴイルは肩を怒らせ僕に襲い掛かってきた!
「…残念だ」
僕は構えを取る
「……斬 空 剣!!!」
――キィン
「さよなら…だ」
僕はナイフを腰の鞘に納め、アバン先生達の元へと歩く。
背後で海が割れる。
そしてガーゴイルが海に落ちる音が聞こえた。
「おおっ! トールさんすげぇ!!」
ポップが驚きつつ喜ぶ。
「……ええ……そうですね」
アバン先生は眼鏡を光らせながらそう返した。
(トール君、君は……なるほど……これはベリーベリー難しい教育になりそうですねぇ……)