ありふれた降霊術師へ世界最凶の魔術師は贈る   作:sahala

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今回、あのキャスターは恵里のいない所ではこんな事をしてますよ、という説明回。


第九話「魔術師の宮内活動」

「―――ふうん、そうか。君も辛かったんだなあ」

「そうなの。私なりに彼に寄り添おうとしたけど、彼の方は私の事なんて気にかけてくれなくて、それで……!」

 

 場所はハイリヒ王国の王宮にあるメイドの当直室。そこでキャスターはさめざめと泣く一人のメイドの話を聞いていた。このメイドはつい先日、結婚も見据えて同棲していた男性と別れたばかりだった。当直室には他の人間の姿は無く、メイドの女性は辛い気持ちを気兼ねなくキャスターに話せていた。

 

「私もメイドの仕事があるから家事の手伝いをして欲しかったのに、俺は仕事で疲れているんだ! の一点張りで聞いてくれなくて……」

「分かる、分かる。仕事で疲れてるのは君も同じだよな。まあ、結婚する前からその調子だと長続きはしなかったろうから、早めに見切りをつけられて良かったと思おうぜ。なあに、この世に男なんて星の数ほどいるんだ。君にピッタリの男なんてまたすぐに見つかるって」

「グスン……ありがとうね、キャスターさん」

 

 溜め込んでいた気持ちに吐き出せて少し楽になったのか、メイドは涙を拭おうとする。そこにキャスターはサッとハンカチを取り出していた。

 

「ほら、涙を拭いて。キュートな君に涙は似合わない」

「もう……口が上手い人なんだから。いつもそうやって女の子達を口説き落としてるの?」

「俺はいつだって本気さ。女の子に優しくするのは紳士として当然の嗜みなんでね」

 

 キャスターはハンカチでメイドの娘の目尻の優しく拭う。メイドの娘は顔を赤らめながら、キャスターに触れられる事を嫌がる素振りは見せなかった。

 

「あっ……」

「ほら、綺麗になった。やっぱり君に涙は似合わないな」

「もう、本当に口が上手い人……」

 

 街で見かけるナンパ師の様なありきたりな台詞。だが、キャスターのハリウッド俳優顔負けな顔立ちと、傷ついた自分が今して欲しいと思う事をドンピシャでやってくる色々な仕草に、メイドは胸の高鳴りを抑えられなかった。

 

「ねえ、キャスターさん……私、いまとても寂しい気分なの」

「おいおい。別れたばかりで傷ついてるのは分かるけど、やめた方がいいぜ? 俺は知っての通り、女の子には無条件で優しくする男なんでね。それにこれでも重要な仕事を任されているから、君の元にいられるのは今夜だけだ」

「分かってます。でも……今夜だけでいいから、慰めて貰っていいですか?」

 

 メイドは潤んだ瞳でキャスターを見てくる。それはたとえ一夜限りの関係に終わると知っても、キャスターの側にいたいと訴えていた。

 キャスターは肩をすくめながらも、女の子を骨抜きにする様な甘い笑みを浮かべる。そして、そっとメイドの頬に手を添えた。

 

「あっ……」

 

 メイドは少しだけ身を固くしながらも、されるがままになる。そのまま頬を引き寄せられ、そして――――――。

 

 

 ***

 

「じゃあな。ゆっくりお休み」

 

 パタン、とキャスターはメイドの当直室の扉を閉める。()()()でへばってしまったメイドは返事をする事なく、しかしどこか満ち足りた顔で寝息を立てていた。ベッドの上であられも無い姿になっているが、しっかりと毛布を被せたので大丈夫だろうと判断してキャスターは立ち去る。

 

「〜♪ 〜♪ 〜♪」

 

 鼻唄を歌いながらキャスターは上機嫌そうに夜の城内を歩く。もちろん、身だしなみはバッチリだ。先程まで激しい()()をしていたとは思わせない程にいつものスーツをしっかり着こなし、ほんの少しの香水の香りが洒落た伊達男の雰囲気を引き立てていた。

 そうして歩いていると、通りの向こうから一人の騎士が現れた。

 

「あ、キャスターさん」

「やあ、こんばんは。ホセ」

 

 メルドの部下であり、副騎士団長のホセ=ランカイドにキャスターは旧知の間柄の様に軽く挨拶した。

 

「また勝手に城内に入られていたのですか? 困りますよ、“神の使徒”達に協力されてる冒険者とはいえ、ちゃんと受付で正式な許可を取って頂かないと」

「固い事を言うなよ、ホセ。オルクス大迷宮で肩を並べて戦った仲じゃないか」

「いや、それとこれとは別の問題で……」

 

 馴れ馴れしく話しかけてくるキャスターに、ホセは少し困った様な顔になりながら応じた。とはいえ、そこに嫌悪感の様な負の感情は無かった。今は“神の使徒”達のレベルについていけなくなったとはいえ、彼等と共に戦うキャスターはホセにとって戦友と言えなくも無い事は確かだった。

 

「ひょっとして、またメイドの誰かを口説いて裏口から入れて貰ったのですか? まったく、メイド達も困ったものだな……」

「彼女達を責めないでやってくれ。罪作りなのは女を虜にする俺の魅力なのさ」

「はいはい、そうですか。じゃあ不法侵入の罪で連行してよろしいでしょうか?」

 

 ナルシストな台詞にホセが半眼になると、キャスターはまあまあと手を振った。

 

「俺とお前の仲だろう? ここは一つ、穏便に済ませてくれよ」

「しかしですね、規則は規則なので———」

「ああ、そういえば。クゼリーは“そよ風亭”のチーズケーキを食べたがっていたらしいなぁ」

 

 わざとらしくキャスターは話題を変えてきたが、効果は絶大だった。ホセは目を丸くして黙ってしまった。

 

「“そよ風亭”と言えば、王都で話題になっている食事処だったな。なんでも、別の街でパティシエの修行していた店主の娘が最近戻ってきて、デザートに娘が作った菓子が並ぶ様になったとか。その中でもチーズケーキが一番人気で、一日に作れる個数も決まっているから中々食べられないとか噂で聞いたなぁ」

「…………それが何か?」

 

 実は、とキャスターはニヤリと笑う。

 

「俺はその件の娘さんとちょっと親しくなってねえ。お願いすれば、一個くらいは融通して貰えると思うんだけどなぁ。朝一から並ばないと手に入らない絶品チーズケーキ、クゼリーちゃんが食べたがっていたから、良い話題の種になると思うんだけどなぁ?」

 

 意味ありげにチラチラと見てくるキャスターに、ホセは推し黙る。

 クゼリーはホセと同じ騎士団に所属する女性騎士だ。ホセはクゼリーの事を密かに想いを寄せているものの、副団長と部下という立場に遠慮してなかなか声を掛けられなかったのだ。

 

「………なぜ、知ってらっしゃるので?」

「これでも顔は広いんでねぇ。この手の恋バナはメイド達からすれば絶好の話題だぜ?」

 

 どうやら自分は知らず知らずのうちに態度に出ていたらしい。自分の秘めた想いをこの男に知られている事にホセは渋い顔になるものの、「さ〜ら〜に♪」とキャスターは通販番組の司会者の様に語り出す。

 

「今ならセットで王都で人気の演劇のチケットも付けようか。この劇場、夕陽の見晴らしが良い公園の近くだから、何か伝えるロマンチックなムードはバッチリだと思うなあ〜」

「うっ………」

「でもここで捕まったら色々と手配が出来ないなぁ。あ〜あ、どうしよう?」

「うむむっ……」

 

 職務と一世一代のチャンス。その二つが天秤にかけられ、ホセの中でグラグラと揺れ動く。やがてホセは絞り出す様にキャスターに言った。

 

「…………つ、次からはちゃんと入城許可を取る様に」

「OK、分かったよ」

 

 グッとサムズアップするキャスターから、ホセは気まずそうな顔でそそくさと立ち去る。しかし、その足取りは軽やかにスキップしそうな気配を隠し切れてなかった。

 

(ふふふ、チョロいチョロい……)

 

 真面目な青年に堕落の味を覚えさせたキャスター(悪魔)は後ろ姿を見ながらこっそりとほくそ笑む。そうしてしばらく歩いて、一つの部屋の前を通り過ぎようとすると――――――。

 

「――――馬鹿にしてんのか!」

「……ん~?」

 

 何やら怒鳴り声が聞こえてきた。キャスターは半ば野次馬根性で騒動の元へ向かう。

 

「俺達の事を情けないって思ってんだろ!? ああ、そうだよな! 八重樫さんは強くなってるのに、俺達だけ戦わないのは情けないもんな!」

「お、おい……相川。そのくらいにしとけって……」

 

 その部屋は“神の使徒”達の為に開放された食堂兼サロンだった。ここでは常にメイドが常駐しており、召喚された高校生達が来れば、飲み物でも食べ物でも甲斐甲斐しく世話をしてくれる場所だ。

 その場所でいま、口論が起きてる様だ。正確にはメイドの一人に“神の使徒”の一人が噛み付き、それを数人の仲間達が窘めようとしているという所か。

 

「なあ、はっきり言ったらどうだよ!? なんでチートスキルを貰ったくせに戦わないのか、って! 八重樫さん達みたいに戦わない俺等が情けないって、そう思ってるんだろ!」

「私は————」

「やあやあ、どうした皆の衆? パーティなら俺も入れてくれよ」

 

 唐突にキャスターは部屋に入り、口論してる人間達へ声を掛けた。場の空気を読んでないかの様なキャスターの明るい声に全員が振り向いた。

 

「キャスターさん……」

 

 その場にいた高校生の一人、園部優花が複雑そうな顔になる。優花達は初回の遠征訓練以来、戦いが恐くなってしまった高校生達だ。そんな優花達でも、光輝達と共に行動するキャスターの事は知っていた。自分達と同じ地球出身であり、その強さも“勇者”である光輝に引けを取らない冒険者だという事も。戦いから逃げ出した優花達にとって、顔を合わせるのはなんとなく気まずくなる相手だった。

 

「とりあえず喉が渇いちまった。ニアちゃん、ワインを一杯くれよ。ウル産の十年物のやつ」

「え? あ、はい」

 

 優花達の視線など気にしてないかの様にソファにどっかりと座り、いけしゃあしゃあとキャスターはワインの注文をした。あまりの我が物顔ぶりにその場にいたメイド―――ニアは文句も言えず、つい職業柄でワインとグラスを取りに行っていた。

 

「……何しにきたんだよ」

 

 優雅に寛ぎ出すキャスターを見て、先程まで怒鳴り声を上げていた相川は不機嫌そうに睨んだ。

 

「ん? 見ての通り、酒を呑みに来た。さすが王宮、ヴィンテージ物のワインがゴロゴロとあるからな」

「そういう事を聞いてるんじゃねえよ。あんたも思ってるんだろ? 俺達の事を情けない奴等だって!」

「おい、相川!」

 

 今度はキャスターへと飛び火させる相川に玉井達が止めに入る。しかし、相川はそんな友人達を振り切ってキャスターに食ってかかった。

 

「天之河や八重樫さん達と一緒に陰で戦わない俺達の事を悪く言ってるんだろ!? チート能力を貰って調子に乗ってたくせに、戦わないでこんな所で駄弁ってるだけでの俺達なんか……! ううっ……!」

 

 途中で辛くなったのか、相川は嗚咽混じりに唸るだけになってしまう。それを見て友人である玉井や仁村は何も言えない表情で目を逸らし、一緒にいた優花達も何か声を掛けようとするが言葉に出来ずに口を紡いでしまう。

 こんな事をしていても意味が無いし、やっている事はただの八つ当たりだという事は相川本人もよく分かっている。だが、変わりたいに今の状況から脱するのにどうすればいいか分からないという雁字搦めな心境に彼等は押し潰されそうだった。

 

「……真面目だねえ、君等」

 

 黙ってしまった相川に代わり、キャスターはそうポツリと呟いた。相川の癇癪など何も気にしてないかの様な反応だった。

 

「真面目って……どこがだよ。天之河達みたいに戦ってない俺等が?」

「ああ。だって真剣に悩んで苦しんでるんだろ? 今の状況をどうでもいいや、と思考停止してないだけ上等だ」

 

 そうしてる内にニアがワインとグラスを持って来ていた。ニアから注いで貰ったワインをグラスを手の中で回しながら、キャスターはくつくつと笑う。

 

「そもそもの話、お前達が気に病む事なんて何も無いと思うぞ。ただの学生をやっていた所を突然異世界に拉致して、関係もない御国の為に戦え? それが神に選ばれた者の使命だぁ? ハッ、寝言は寝てほざけ。そんなのお前等で勝手にやってろっての」

「え? いや……その……」

「うん? なんだ、そういう話じゃないのか? いいぜ、溜め込むのは良くない。いっそ吐き出した方が楽になるとぜ」

 

 キャスターの言ってる事は相川達の気持ちを代弁したものだ。だが、それを声を大にして言う事に気が引けており、相川は尻込みした様に口をごもらせる。

 “神の使徒”というのは魔人族に苦しめられている人間族を救う為にエヒト神に選ばれた存在というのが聖教教会やハイリヒ王国の一般的な見方だ。その“神の使徒”の使命を真っ向から否定する様な言動をするのは王国や教会に睨まれる真似だというのは相川達も理解してした。現にニアもキャスターを驚いた様に見つめ、周りに他の人間が聞いてやしないかと不安そうに辺りを見回していた。

 

「まあ、だからいっそのこと、不本意に拉致された俺達は王宮で食っちゃ寝する権利がある! と主張しても良いんだぜ? それなのに、それじゃいけないと思ってるわけだ。お前達は勇者くん達と同じで十分真面目な奴等だよ」

「そんな事無えよ……俺達は天之河や八重樫さんみたいに強くなんか……」

「……相川様。横から口を挟む事をお許しください」

 

 そこでニアが口を開いた。

 

「雫様のお付きの侍従として、そして友人として言わせて下さい。雫様もまた、皆様と変わらない、普通の少女なのです。時には誰かに頼ったり、守って貰いたいと思う様な方なのです」

「普通って……でも、雫っちは超強いし、いつだって頼りになるし……」

 

 宮崎奈々が苦笑いを浮かべながらそう言う。まるで雫と自分を比べて自嘲してる様な顔だった。

 

「確かに、あの方は滅多な事で弱みなど見せたりはしません。ですが、完璧な人間などいません。雫様もまた、少し前まではただの学生に過ぎない少女だった筈です。ならば、周りから“雫様なら出来て当然”と思われる事が、いつか彼女を追い詰めてしまうと思ってしまっただけなのです」

 

 ここに来て、相川達はようやくニアの言いたい事が理解できた。サロンに集まって「自分は雫達とは違う」と自嘲し合っていた彼等に対して、ニアが「雫様も皆様と変わらぬのに」と呟いたのが口論の始まりだった。

 だが、ニアは別に皮肉で言ったわけではなかった。雫の侍従として、そして一人の友人として雫を特別視しないで欲しいという願いが込められていたのだ。

 

「その……すいません、ニアさん。キャスターさんも……」

 

 カッとなって怒鳴ってしまった事に対して、相川は二人に頭を下げた。

 

「いいえ、私の方こそ相川様達の不安な気持ちを考慮すべきでした」

「なあに、気にするな。そもそも俺から見れば、お前も勇者くん達も、どっちも変わらんガキンチョだっての」

 

 そこでキャスターがワインをグイッと飲み干した。

 

「悩め、悩め。自分の在り方に悩めるのは若い奴等の特権だ。そうして悩んで、苦しんで、自分なりの答えを出せ。その上でやろうと心に決めれば、それこそが“真の意志”として道標になるのだから」

「真の意志……?」

「なに、特別な話じゃない。あの勇者くん、八重樫のお嬢ちゃん、そして恵里も。その他にも()()()()()()()が、自分がどうしたいかという道筋に向かって突っ走ってる。それだけの話だ」

 

 ご馳走さん、とキャスターはニアに空のグラスを渡して立ち上がる。そして立ち去ろうとする後ろ姿に声を掛ける者がいた。

 

「ねえ、キャスターさん。ちょっと待って」

 

 優花? と菅原妙子が怪訝そうな声を上げる。オルクス大迷宮の遠征以来、何故か深く落ち込んでおり、あの日以来あまり喋る事も無くなったいたのだ。その友人が誰かに積極的に話そうとする姿を久しぶりに見た。

 

「キャスターさんは、どうして八重樫さん達と一緒に戦っているんですか? 私達と同じ、地球の人なのに」

「ん? 金の為」

 

 暗に戦いが恐くないのかと聞こうとした優花だが、返ってきた簡潔な答えにズッコケそうになる。

 

「お金って……」

「えー? 結構大事な事ではあるぜ? 金で全ては解決出来ないけど、将来の可能性を拡げるのに役立つからな。金があると無いとじゃ大違いだ」

 

 まあ、それは理由の半分だけどな、とキャスターは笑う。

 

「あとはそうだな……行く末が気になる奴が出来た、といった所だな」

「それって一体……」

「ふふ、さあね。まあ、お嬢ちゃんが何を悩んでるかは知らないが、後悔の無い様にやってみれば良いんじゃないか?」

「後悔の無い様に……うん、そうだよね。きっと、()ならそうしたのかもしれない……」

 

 優花が何やら独り言を呟く。そうして顔を上げ、改めてキャスターに声を掛けた。

 

「キャスターさん。ありがとうございます、私……どうすべきか、少し分かった様な気がします」

「さて……礼を言われる様な事をした覚えは無いが。まあ、若者の迷いが晴れた様なら何よりだ」

 

 じゃあな、と軽く声を掛け、今度こそキャスターは立ち去った。

 悩める若者にアドバイスをくれた大人に対して、優花は後ろ姿に深く頭を下げた。そうしてキャスターがいなくなった後、優花は友人達に向かって提案した。

 

「あのね、皆。ちょっと相談したい事があるのだけど———」

 

 ***

 

 優花達と別れたキャスターは夜の王宮内を歩く。そうして歩きながら、先程の優花の事を思い出していた。

 

(礼を言うことなんて無いと思うけどなぁ……だって、裏切る算段をつけてるのだから)

 

 そこでキャスターの顔付きが変わる。先程までの誰にでも軽く接する軟派男ではなく、獲物を吟味している狩人の様な顔になっていた。

 キャスターは何も意味なく城の人間達と親しくなったわけではない。例えば、先程のメイドは王都を守護する結界のメンテナンス担当者が元・恋人だった。彼は魔人族の侵攻が激化してから、結界を維持するアーティファクトのチェックで何度も呼び出される様になり、それが原因で家でもイライラとした気持ちを恋人にぶつけてしまったそうだ。

 そして重要なのは、その際に仕事の内容を恋人であるメイドに話してしまっている事だ。そのメイドとの先程の会話(ピロートーク)の中で、キャスターは王都の守備の要であるアーティファクトの位置も弱点も把握していた。

 その他にもキャスターは巧みな話術を使い、今や王都や城の警備体制、兵達のローテーションや警備ルートなどの情報を全て把握していた。

 これでもし、王国を滅ぼそうとしてる者がいたとして———例えば魔人族などに、いつでも情報を高値で売る算段がついていた。

 

(まあ、こんな情報を使わないに越した事は無いけどな。備えあれば、という事で)

 

 目的の為ならば、友であろうと裏切る狡猾な打算。いかにも魔術師らしい考えでキャスターは動いていた。

 

(しかし、こういう情報収集は暗殺者のサーヴァント(アサシンクラス)の方が適任だろうに。あ~あ、サーヴァントが俺以外に一人でも残っていたらもう少し楽ができ……いや、無理か。イゾーとか言ってたアサシン、諜報向きじゃなさそうだったしなぁ)

 

 エヒトルジュエに殺された侍姿のサーヴァントを思い出しながら、キャスターは心の中でやれやれと呟いた。




>今回のお話しの肝

ぶっちゃけると恵里以外の生徒達にもこんな風に接していますよ、という伏線を張りたかっんです。彼等が絆を感じれば感じる程―――それが裏切られた時のショックは大きくなるでしょう?
いかんな、オバロクロスじゃないのに黒い感情が抑えられてねえ……。

>イゾーさん

エヒトにやられたサーヴァントその1。自慢の始末剣もエヒト相手では分が悪かった。因みに拙作のキャスターとは多分、仲が良い。一緒に賭博や女遊びをして、最終的に龍馬に借金の返済を頼んで、お竜さんに二人仲良く殴られるくらいには。
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