今回いつもと比べてチョー短いです
◆
アメリカ、とある一室にて。
「ジョンガリ・Aはいないのかい?」
「少しのあいだ暇を与えた。アイツにはあまりに
「人間なら、すべて理解なんてできないと思うのだけど」
「だったら僕はどうなる? それにDIOも……ひょっとして『使徒』とか。ならやめてくれよ。曲がりなりにも僕は神父だぞ」
「どうしてそうなるんだい?ボクはただ事実を述べただけだというのに。君たち人類はいつも情報を都合のいいように解釈する。理解に苦しむね」
男と一匹が、薄明かりの中で会話をしている。男は完全に肩の力を抜いていて、ソファーに体重を任せて座っている。
一匹が率直に感想を述べると、男は不機嫌そうに顔を顰めた。薄明かりなので、相手にはその表情は読み取られなかった。
「君は疑問が多いな……やはりDIOとは違う」
「君は実にしつこいね。自分のことを棚に上げて……それらしいことを言って満足している。自らが特別な存在だと勘違いしていないかい」
「しつこく弁を立てるのが聖職者というものだと知らないのかい?数万年以上も人類を見てきたんだろう? そのくらい知っておいてほしいな」
微妙な空気……もっとも微妙だと感じているのは男の方で、一匹の方は受け答えをしただけだと捉えているが。
男は会話の途切れはマズイと、本来の目的に話題を移す。
「ジャン=ピエール・ポルナレフは無事に日本に着きそうだ。ギャングがいろいろ追ってたみたいだが、僕とジョンガリ・Aで追っ手は始末した。君の方はどうだい?」
「まったく人間はわからないね。感情という不必要なものを最優先に考える。彼女……佐倉杏子、あれはとくに酷いね。まったく彼らに靡いてくれない。状況的に協力以外の選択肢は無いのにね」
「………気になっていたんだが」
「? どうしたんだい?」
男は無理矢理話題を切り替えた。このままだと、この動物らしき奴の、人間は理解不能トークが始まる。
気分がいいものではないし、ついうっかり口を挟むと、さっきのようなめんどくさいことになる。だから話題を変えた。
「どうして君だけで計画を実行しない? 君だけでは無理でも、僕やDIOのような君の考えに賛同する奴らとなら、あの『ワルプルギスの夜』を倒せる可能性も高かったはずだ。わざわざ空条承太郎たちに戦わせるほうが不確定じゃあないのか? 君らしくもない手段だ」
「いや、あれは個々の力で対抗できるものじゃあない。DIOの配下や彼のスタンドパワーは強力なものばかりだったが、我が強すぎる。彼らが互いの弱点をカバーし合えるような奴らなら、僕もそうしたさ」
「魔法少女どもをけしかけたりは」
「いくら正義感の強い魔法少女でも、あれを前にしては尻すぼみするからね。浮き足立ってるところをめちゃくちゃにされてお終いだ。だから、互いに協力できて覚悟の強い彼らが適任。
もし彼らが負けたとしても、そのときはワルプルギスの夜も相当に弱ってるはず。それを今まで集めてきたエネルギー全てを使い、倒す」
「そうか」
男は興味を失ったのかコップの水を一口含んで、またソファーに体重を預けた。
「……ああ、そうだ」
何かを思い出した男は上体を起こし、相手に指をかるく突きつける。
「どうして僕のスタンドを渡さなくっちゃあならないんだ?君が言うには僕のスタンドが一番
「だからこそだよ。ボクにスタンドを渡してくれれば、もし計画の失敗があっても再起できるのさ。僕が失敗して殺されても、DISCを取り戻せばいいし、DISCの状態なら、もし君が死んだとしてもボクがスタンドを引き継げる」
「そうとも限らない……確かに僕のスタンド能力ならそれはできるかもしれないが、君に僕のスタンドが適応できるかどうか」
「できるよ。なにせ、ボクらは空っぽだからね」
そう断言し、反論してきた相手に男は少し気に食わなさを憶えたが、記憶の片隅にあった、目の前の相手は感情を持たない、というのに、納得した。
しかし逆に懸念も生まれた。スタンドパワーとは生命力、言い換えると精神力である。空っぽの彼らに、自らのスタンドを預けたところで、木偶の坊になる可能性があると考えたからだ。
「その心配はいらないよ。『スタンドの矢』があればね」
男がそう考えていたのを見通していたのか、相手は今初めて、男に計画の一端を明かすことで、心配を晴らそうとした。味方にまで訝しまれているというのは、避けたい。そう考えたためだ。
「それは、あの……身体に刺すと、スタンドに目覚める、アレ、か」
「もうひとつ、効果があるんだ。スタンドの矢を
初耳の情報に男は内心動揺するが、平静を保ちながら、スカした態度で耳を傾け続ける。
「外見の変化、新たな能力の発現などが起こるけど……大事なのは、スタンドに強弱はあるも自由意志が生まれるという事だね。あとはもう分かるだろ? レクイエムとなったなら、天国へ到達する進化も耐えることができる。君もそう思うよね」
相手が尋ねると、男は軽く頷いた。しかし、男はバツの悪そうな表情を浮かべ、相手から目を逸らす。矢のことに関して、後ろめたいことがあるかのように。
「体調でも悪くなったかい? 急に黙りこくって」
「いや……君も知っての通りだとは思うが、僕のスタンドはその矢によって生まれたものだ。しかし……僕の手元にそれは、もうない」
「? 君が持っていたんじゃあないのかい」
「紛失した……というべきか。あの矢が僕に能力を目覚めさせた後、別の引力につられるように、僕の目の前から姿を消したんだ。だから、君の求めている矢はもう、ここにはない」
「なんだそんなことか。大丈夫だよ、矢はボクらの方で回収した」
「なにッ」
「ヨーロッパのギャングからこっそり奪ってきた。精巧な偽物にすり替えておいたから、とくに騒ぎになることはないと思うな」
簡単に言ってのける相手に、男は底知らなさを感じる。実のところ、男は相手を信用していなかった。今回同席していないジョンガリ・Aよりも。むしろ警戒さえしていた。
本音を言うならば、さっさと排除してしまいたい。しかしそれができないのは十分承知している。DIOの考えていた天国への道を、自分ではなくこの生物が知っているというのが、たまらなく悔しく感じていた。
「あとは、そのサクラとか言うやつを味方につければ、待つだけか」
「そうだね。ああ、それと……これは直前でいいけど、鹿目まどかの排除もしとかないと」
「誰だ?」
「向こうにいる人間さ。とんでもない魔法少女の才能を持っている。あんなのにもし計画の邪魔になるものを願われたら何もかも破綻しかねない」
「そんなもの君が断ればいいじゃあないか」
「ボクらはプログラム的に願いを受け入れるようになってるから、多少の抵抗はできても強く願われたら叶えるしかなくなるんだ。……でも、君には行かせないよ。君に死なれるほうがリスキーだ」
男は本懐を見透かした発現に腹を立て、舌打ちをした。人間は手のひらで遊ぶものと考えているような態度は、やはりムカっ腹が立っていた。
「だったら今のうちから殺すのはダメなのか」
「彼らの士気を下げることは避けたい。一番ありがたいのは、彼らに勝利してもらうことだ。それに鹿目まどかを始末して、怒りの矛先がこちらに向いては骨が折れる」
それまで言い残すと、相手はどこかへ消え去った。相手としては、ここまで喋るのは男のみなので、充分特別扱いしている気になっているが、その上からの物言いも男をイラつかせる一因となった。
「……ペルラ」
すでに失ったものを想う。しかし男はそのために天国へ行く、宇宙を繰り返すのではない。それはただ似ているだけのものであり求めているものではないから。
友情のため、友が目指した世界を創る。そのためになら誰も彼も、自分も相手の命も犠牲にする覚悟がある。
「ああDIO……ああ主よ。もしどこかで見ているのなら、私が道を違えぬように征くべき道を指し示してください……」
男は、窓に見える星々の元で祈りをささげる。そして、地に目を落とした。
to be continued
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