嫌顔至上主義   作:嫌至ξ紳士

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龍園少女【キング】

 休日の夜。

 自動販売機で、男が無料の飲料水のボタンを連打していた頃。

 

 そこに、とある一人の柄の悪い少女が現れた。

 彼女は、制服を崩したように着ており、そのラフさはヤンキー娘といったところ。

 ネクタイを緩め、スカートの丈も短くした、その妖艶な着こなしは少し無防備だ。

 

「おい、オレのひよりにちょっかいかけたのはテメエか?」

 

 と、その少女が男に声をかけた。

 休日の夜の静寂を破ったのは、その柄の悪い少女の冷たい声だった。

 

  男は無言のまま、無料の飲料水のボタンを押し続ける。

 少女の問いかけに応える気配はない。彼女はそれを無視と受け取ったのか、イラついたように眉をひそめ、ゆっくりと男に近づいていく。

 

「無視かよ……テメエ、オレの言葉を無視して、ただで済むと思っているのか?」

 

 少女は更に詰め寄る。

 声は低く、挑発的だが、どこかその目には好奇心が混じっていた。

 男が何も返さないままのその瞬間さえ、彼女にとっては面白いと感じているかのようだ。

 彼女は男を見下すようにじっと見つめる。

 

 その瞬間――。

 ヒュンと風を切るようなスピードで、男の眼前に少女の脚が素早く繰り出された。

 

「ちっ、ハズレか……まあいい。少しはやるみたいじゃねえか」

 

 少し苛立った様子で、しかしニヤリと魅惑的な悪い笑みを浮かべた少女。

 すると、彼女は自分の名前を名乗る。

 

「オレはCクラスの龍園だ。お前の名前はひよりから聞いている。だから、余計なことは言わなくていい」

 

 少女――龍園は男を見下ろし(上げ)ながら、自信満々に言い放った。

 彼女の勝ち誇ったような態度は変わらない。

 男が依然として無言で、無料の飲料水ボタンを押し続けるのが、さらに彼女の苛立ちを刺激しているようだった。

 

「テメエが何を考えているか、興味はねぇ。ただ、オレのクラスメイトにちょっかいを出すってんなら……相応の覚悟はあるんだろうな?」

 

 彼女は男に再び詰め寄り、その距離が縮まる。

 目の前にいる男が無反応であればあるほど、龍園少女の好奇心はますます強くなる。

 彼の無言さが、まるで挑発を受け流しているように見えるからだ。

 

「ふっ……」

 

 と、彼女はふいに笑みを浮かべた。

 その笑みには、彼女独特の威圧感が込められていた。

 

「無反応でいれば、オレが諦めるとでも思ったか? オレはそんな甘くないぞ」

 

 龍園少女は男の肩を軽く押して、さらに近づいた。

 彼女の香りが微かに漂う。

 彼女の制服の崩し方やラフな態度とは裏腹に、仄かに甘い匂い香りがしていた。

 

「これを見ろ。お前とひよりの、あの時の写真だ。どういうことかわかるな?」

 

 そこには、図書館で男が行っていた“コト”の瞬間の写真が写っていた。

 これはつまり、――まずい。ということだ。

 

「さて、どうする? お前がオレの手駒になれば、ひよりのことも見逃してやるし、何ならもっと面白いことを教えてやってもいい……オレの下で働くと誓えるなら、悪い思いはさせねえ」

 

 彼女の提案は半ば冗談めかしているが、その目には確かな野心と好奇心が混じっていた。

 男がどう反応するかを楽しみにしているかのようだ。

 

 男は依然として無言のまま、龍園少女の顔をじっと見つめる。

 

「……まあ、いいさ。そんなに頑固に無視を決め込むってことは、案外オレの提案に乗る気もあるんじゃないのか?」

 

 彼女は軽く肩をすくめた。

 

 その瞬間、龍園少女の表情がさらに悪戯っぽくなる。

 彼女は男にもう一歩近づき、囁くように言った。

 

 

「お前が忠実であれば、オレが自分の下着を見せてやってもいいぜ?」

 

 その言葉はまるで冗談のように軽く発せられた。

 しかし、龍園少女の目は真剣だった。彼女は確実に試している――この男がその誘惑にどう反応するか、その無言の仮面の下にどんな思惑が隠されているのかを見極めようとしている。

 

「どうだ?それくらいの『ご褒美』があれば、少しは動く気になるか?」

 

 龍園少女は悪戯っぽい微笑を浮かべ、まるで遊びを楽しむかのように男を見つめた。

 表情は冷静さを保っているが、内心では彼の反応を待ちわびているのが透けて見える。

 龍園はじらすように視線を外し、再び冷ややかに笑った。

 彼女は支配力を誇示し、男がその『ご褒美』に屈するかどうかを試しているようだ。

 

――ふむ、悪くない提案だが……。

 

 するとついに、男が声をようやく発した。

 龍園少女の表情が歪んだのは一瞬だったが、その喜びの色を隠しきれない。

 無言で何も語らない男が、ついに口を開いたという事実が、彼女にとって予想外かつ嬉しい展開だったからだ。

 

――私の望みは、ただ下着を見ることじゃない。

 

 龍園少女は眉をひそめ、興味深そうに彼の言葉に耳を傾けた。

 

 

――嫌な顔されながら下着を見せてもらいたいんだ。

 

 

 一瞬、呆気に取られたように男の顔を見つめた。

 その静かな表情の中に、彼の本心がどこまで真剣なのかを探ろうとしていた。

 やがて、彼女の唇がゆっくりと歪み、挑発的な笑みが再び浮かび上がる。

 

「……テメエ、どこまでふざけてるんだ?」

 

 彼女は低く、笑いを堪えた声で言った。

 だが、男の表情は変わらない。無言のまま、龍園をじっと見つめている。

 その沈黙は、どこか底知れない不気味さを感じさせ、彼女の背筋に微かな冷気が走る。

 

「面白い……いいだろう、試してみるか?」

 

 龍園少女はそう言うと、ゆっくりとスカートの裾に手をかけた。

 しかし、その動作を止める。

 

「だが、その前に、オレからも追加条件を出そう」

 

 それは驚くべきもので――。

 龍園少女は男にさらに近づき、耳元でそっと言った。

 

 

「……お前、オレの彼氏になれ」

 

 

 ぞっと肌に冷たく響く、妖しい色香を帯びた声。

 それは一人の男を硬直させるには、十分な響きだった。

 

 男は一瞬、龍園少女の言葉に驚き、わずかに目を見開いた。

 しかし、すぐにその驚きを抑え、表情を無に戻したようだった。

 場の緊張感がさらに高まっていく。

 

 龍園少女はその沈黙を楽しむかのように、男にさらに近づいていった。

 もはや密着している状態といってよいだろう。

 

「どうした?さっきまで無反応だったくせに、さすがにこの条件は効いたか?」

 

 男は動かない。

 依然として沈黙を貫くその姿は、彼女を試しているようにも見えた。

 

「坂柳も、一之瀬も、鈴音も……皆がお前を欲しがっている。お前の存在は、とても貴重で、危うくて、惜しいものだ……ゆえに欲しい。オレは全てをオレの物にしたい」

 

 龍園少女は続ける。

 

「だから、オレの彼氏になれ。そうしたら、お前の“欲望”を全て叶えてやるぞ……?」

 

 彼女の目には、興奮と期待が交錯していた。

 その瞬間――。

 

 男は静かに手を伸ばし、スカートの裾に手をかけていた龍園少女の手首を掴んだ。

 その動きはゆっくりとしたものでありながらも、確固たる決意を感じさせた。

 彼女は驚きで目を見開いていたが、その驚きはすぐに好奇心に変わり、彼をじっと見つめ返す。

 

「ほう……やっと動いたか?」

 

 彼女はにやりと笑ったが、内心では自身の支配欲にさらに火がついたようだった。

 男が自分の手に落ちかけた瞬間、その予感に龍園少女は興奮していた。

 これまで無反応だった男がついに動いた――その事実は、彼女にとって期待以上で。

 

「何だ、やっとオレの提案に乗る気になったか?」

 

 龍園少女は挑発的に言葉を続けたが、その声には少しの興奮が隠せない。

 

 男の眼差しは、まるで全てを見透かすかのように冷静で、不気味なほどに静かだった。

 

「……どうする?」

 

 龍園少女は少し苛立ちながらも、興奮を隠しきれずに続けた。

 

「オレの提案を受け入れたら、お前は全てを味わえる。オレだけじゃない……オレが持つ全てを、心ゆくまで……」

 

 握られた手を、握り返し、自分の下半身の元へとゆっくり誘導して近づけていく……。

 

 しかし、彼女のその行動が終わる前に、男はふいにさっと龍園少女の手を払った。

 その動きは無音で、無駄がなく、龍園少女の予想を完全に裏切るものだった。

 

「……お前、何を――」

 

 その動きは決して強引ではなく、むしろ優しく、何かを守るかのようだった。

 彼は彼女の頬を静かに撫でると、絞り出すような声で、低く囁いた。

 そして、

 

――お願いだ、そう私をいじめないでくれ。

 

 ぞっとするほど優しい声で。

 まるで魂が天に吸い込まれるかのように。

 心に温かく響くようにつぶやいたのだ――。

 

 その言葉は、彼の無口で頑なだった態度が崩れた瞬間であり、彼の内面の脆さが露わになった偶然でもある……龍園少女は一瞬、息を飲んだ。

 

「は……は……はっ?」

 

 龍園少女は一瞬、言葉を失ったかのように、彼の顔を見つめる。

 その頼りない声は、先ほどまで無言を貫いていた男の姿と、あまりにもかけ離れていた。

 

「お、お前……」

 

 彼女の声は、普段の冷静さを失っていた。

 普段の龍園少女ならば、誰もがひるむその威圧的な態度を崩すことはなかっただろうが、この男の予想外の行動は、彼女を動揺させた。

 

「なんだよ……そんなこと」

 

 龍園少女は言葉を探しながら、再び彼を見つめた。

 だが、彼の表情は変わらない。彼女の反応を待つように、静かに立ち続けるだけだった。

 

「……ふざけるなよ」

 

 数瞬の沈黙の後、龍園少女はようやく冷静さを取り戻すかのように、鋭く吐き捨てた。

 彼女は男の手を振り払おうとしたが、どこか力が抜けている。

 

「お前なんかに、そんなこといわれても……聞くわけないだろ」

 

 そう言いつつも、彼女の言葉には自信が欠けていた。

 男の無反応と、突然の優しさが、彼女の心を揺さぶっていたのだ。

 

 しかし、龍園少女は自分が支配する側だということを忘れてはならないと、頭を振って自らに言い聞かせる。

 彼女はもう一度、男に顔を近づけた……しかし。

 

――どうか私を、許してくれ。

 

「なっ、な……」

 

 またもや、龍園少女の脳内を甘い声が溶かすように響いてくる。

 それはまるで聞き続けていたら、自分自身が自壊してしまいそうなもので。

 だからこそ、彼女は「はっ!」と意識を再び現実世界に戻すと、こちらを睨んでくる。

 

「ちっ……こうなったら仕方ねえ」

 

 その声には、力強い響きが戻っていたが、その瞳の奥には、微かな迷いが残っている。

 

「こういうときは……先手必勝だ!」

 

 そして、龍園少女は意を決したように、呟く。

 すると再びスカートの裾に手をかけ、男の前でわずかに持ち上げた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

の動きは己れ自身も躊躇するほどに遅く、

○○○の自分の大胆な態度とは対照的。

○○○○○も言われぬ感情に困惑。

○○○○○○想郷は生命力の色。

○○○○○○○ング龍園少

 

 

 

 

「これで、お前はオレの彼氏……わかったな?」

 

 悔しそうに、負けたように。

 自分自身の中にぽつんと生まれた”新たな感情”に、嫌悪するように。

 

―END―

 




これも嫌パンなんです(穏健派)

龍園少女「彼氏」
周囲「ないです」
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