とある妹達《レギオン》の監視役《ウォッチドッグス》   作:大体三恵

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トオルとロキ

 私は財神黒客(ツァイシェンヘイカー)のメンバーたちに、私の能力と学園都市について、そしてこれまでの経緯を説明した。

 内容はほぼ美都へ説明したことと同じだ。美都と出会った経緯分が、増えたくらいかな?

 

「まあ……そういうわけで、以上よ」

 

「……うーーん」

 

 途中、質問もあったが、すべてを最後まで静かに効いてくれたみんなは、ため息とも唸り声ともつかない声を漏らす。

 

「まさかレールガンが文字通りだったとは」

 

「先に言っておくけど、今は能力が下がって、とてもじゃないけど撃てないわよ。あの……みんな雷神っていうあの状態なら撃てるかもしれないけど、どんな影響とかあるかわからないし、できればやりたくないから」

 

 大智(しょうさ)が、最初に名乗った私の異名に納得してくれた。

 雷神化すれば撃てるんだろうけど、どんな影響があるかわからないから遠慮したい。 

 

 一方、遊驥は私の能力より、学園都市の存在に興味があるようだった。

 

「いやぁ。俺として気になるのは、学園都市とかだ。そんな科学が進んだ学園都市とかがあるなら、行ってみたいものだがなぁ」

 

 確かに彼みたいな技術者は、学園都市とか垂涎の的よね。

 実際、学園都市の学生でも、実家からの支援で研究開発をしてる人たちが多い。

 篠原重工の御曹司なら、そういった研究者か開発者ができると思う。

 

「大変だったのねぇ。いえ、今の大変なのね。いいわよ。アタシが面倒を見てあげるからね。今度、私の家に遊びにきて。得意の中華料理、ごちそうしちゃうわン。元気出るわよ」

 

「あはは。その時はお願いしますね」

 

 マイカは反応が情緒的だ。

 内容に触れないのは、彼女なりの……いえ彼……やっぱり彼女ね。彼女なりの優しさの表れだと思う。

 ごちそうしてくれるのはいいんだけど、サンフランシスコ生まれのジャマイカからきた中華が得意料理とか、国際色の無節操さがすごいわね、この人。

 

「これは僕たちもできる限り協力できるしないといけないね」

 

 真優はこれからについて考えてくれた。

 彼なりの……いえ彼女……やっぱり彼ね。彼なりの優しさだと思う。

 

「ところでみんな、この突拍子もない話を信じるの?」

 

 すこし疑問に思ったので、ちょっと確認してみた。

 

「雷神とレールガンとか能力ってやつは信じる。見たし聞いたし。クローンもまあ、ちょっと成長促進がわからんが、理論も技術も理解できないこともない。ただ、並行世界というのと、レールガンの記憶がクローンに入っているというのは、どうもいまいちだな。雷神と違って、完全にフィクション世界のままだ」

 

 しょうさの反応は、美都に近かった。

 

「でも超電磁砲(レールガン)とか、能力は見せてないわよ」

 

「実際に見なくても、あの雷神の姿の方が意味わからんしもっと衝撃的だろ。それにレールガンとか電子の動きでハッキングとか、現代のシステムでも完全に制御できてないのを、頭脳一つでできるのがわからんが、超能力とはそういうもんだと思えば理解できる」

 

 工学系に遊驥とっては、再現性の方が気になるようね。

 

 真優が飲み物を用意してくれた。

 長々としゃべって、ちょうど喉が渇いてたのよね。なんか警戒したくなるけど、こういうところは気がきくのね、真優さん。

 

「はいどうぞ」

「ありがとう」

 

 コップを受け取り、美都にも手渡す。

 

 ひと段落したところで、マイカが神妙な顔で迫ってきた。

 

「アタシはね、あなたの言う元の世界? 美琴ちゃんの話を信じられないんじゃなくてね、並行世界があるかどうか心配なの。帰れるかどうか以前に、存在するかどうか不安な場所に、帰ろうとするのはどうかしら。もちろん、帰りたいって気持ちは大切よン」

 

 圧されながら、私はこの言葉に衝撃を持って頷く。

 マイカの言うことももっともだ。

 

 ここでやっと思い至る。

 私は「御坂美琴」なのか? そして学園都市のある世界が、別世界として「実在しているのか?」という疑問だ。

 仮に、魂が能力を持った御坂美琴本人だとしても、別の世界などなく、私が空想の産物をそう思っていたり、思い込まされてる可能性だってある。

 そうよ、大体魂って実在性あるの?

 記憶だけ、あの子に刷り込まれたってほうが、まだ学園都市らしい。

 作られた記憶だったとすると、能力以外は全て幻ということも……。

 

「あんまり実感がないわね。でも可能性として」

 

 それほどゾッとはしなかった。

 元の世界がない、というのがあまり実感がない。

 その場合、私はいったい何者なんだろうか?

 そっちの方が気になる。

 

 私が考え込んだところで、借りてきた猫のようにおとなしかった美都が、意を決意して声をあげた。

 

「お姉様の後は、わたしでしょうか?」

 

「え? なに?」

 

 遊驥が素で疑問を呈する。

 こいつ……美都のこと、忘れてない?

 

 ムッとした私に代わり、真優が間に入る。

 

「いや、遊驥、あのね。美都ちゃんは自分がどうして、ゾンビクイーンであるかを、説明したいんだと思う」

 

「あー、そっかそっか。すまん。忘れてた」

 

 遊驥はすまんと頭を下げるが、美都は拗ねてそっぽをむいてしまった。

 しかし、この一連の流れで、美都の緊張は取れた。狙ってやったなら凄いわね、

 

「アスキーがごめんね。さて、じゃあ、美都ちゃんがなんでゾンビクイーンなのか、教えてもらおう……」

 

「ちょっと待って」

 

 大智(しょうさ)が改めて訊ねようとすると、マイカが深刻そうな顔をして止める。

 なんだろう?

 

「こんな愛らしいお嬢さんを、ゾンビクイーンって呼ぶのどうかしらン?」

 

「それ重要か?」

 

 話しの腰を折るほどかと、遊驥が不満で顔をゆがめる。

 

「ハンドルネーム読みって必要だとは思うわン。でもゾンビクイーンはやめた方がいいと思うの、色んな意味で」

 

「ああ、悪名が轟いてるからな。じゃあクイーンでいいだろう」

「やめてぇ!!」

 

 遊驥の安易な提案に、私は頭を抱えて拒絶する。

 

「クイーンとか女王って、それだけの呼び方はダメ」

 

「な、なんでだい? レールガン?」

 

「私と同列で同じ学校に通ってるやつが、そりゃムカつくやつで! 私のパートナー(同室者)と友達たちに手を出した(能力を使った)あげく、あんな恥ずかしい記憶を植えつけやがってぇっ! 」

 

 私は大覇星祭での絶対許せない案件を思い出し、わなわなと手が震える。

 そう!

 手といえば、この手で掴んだあのオンナの……。

 

「挙句に、あの堕肉……。なんなのよ、あの、あの……あの胸! しっとりと包み込むのに、しっかりとした弾力の胸は! しかも、黒子たちを使って、あんな辱めをこの私に与えやがって、絶対許さないんだからっ!」

 

「お、お姉様?」

 

「はあはあ……はあ……ご、ごめんなさい……。どうしたのかしら。いま、私、なにを? なんか言った?」

 

 みんなの唖然とする視線が、私に向いている。

 

「ほんと、ごめんなさい。なんだろう? 無いはずの思い出も、口走ったような?」

 

 私はわきわきとしていた手を下げた。

 この手で何かを揉んだ記憶? なんてないはず?

 なんだろう、このモヤモヤした気分。

 

 

「そこまでいうなら、わかったから。女王(クイーン)はやめよう」

 

「じゃあ、プリンセスか」

 

 大智が女王を取りやめ、遊驥が安直なアイデアを出す。

 

「それはちょっと、遠慮したいです……ね、はい」

 

 うん、そりゃそうよね。

 

「じゃあ、ロキで」

 

 次の案として、遊驥はロキを提案した。

 

「なるほど、黒木のクを抜いて、ロキね」

 

「おう。そんで、雷神をお姉様と呼ぶからな」

 

 ……ああ、北欧神話ね。

 あんまり詳しくないけど、偉大なソーで見たわ。

 

「え…なんか、裏切りそうだし、他の人たちから嫌われてそうなんですが」

 

 美都は微妙~、って顔してる。

 

「悪くないと思うわよ。ハンドルネームから男性かと思われるし、欺瞞にもなるじゃない。いっそ私も男装時はトオルって名乗ってもいいかもしれないわね」

 

 男装してるのに、お姉様と呼ばれてはあまり意味がない。

 別に普段はいいけど、男として活動してるときの偽名もいると思うから、いいアイデアだと思う。

 

「美都。これからカップルのふりをするときとかは、私のことはトオルって呼んで!」

 

 私の提案に、きょとん、とする美都。

 

「……トオルお姉様?」

 

「どっちやねん」

 

 美都のどっちよ、という発言に、遊驥がどっちやねんとツッコんでくれた。

 

「わかりました。財神黒客(ツァイシェンヘイカー)ではわたしはロキで、デート中ならお姉様はトオルさんですね!」

 

「うんうん、そうそう。……うん?」

 

 なにか違う……ような?。

 

「では、わたしのことについて、話させてもらいます」

 

 疑問が浮かんだけど、重要な美都の話が始まった。

 

 ──この疑問、なおざりにしてよかったのかしら?

 

 + + + + + + + + +

 

「大変だったのね、ロキちゃん! アタシのことはお母さんだと思って、今度うちに来て! 得意のベトナム料理をごちそうしてあげるわン!」

 

 美都の話を聞き終え、マイカはハンカチで涙を拭きながら、さっきどこかで見た反応をした。 

 今度はベトナムかー。そういえば日本語もペラペラだし、マイカさんって一人多国籍軍ね。

 

「復讐か。ロキは、どんな仕返しをしたいんだい?」

 

 しょうさは協力してくれるような口ぶりで尋ねる。横で聞いている遊驥は、バカと小さく呟く。そんな協力するような言い方するなという意味だろう。

 しょうさはお人よし、遊驥はツンデレの慎重派でバランスが取れてそう。

 

「わたしは……お父さんの名誉を取り戻したい!」

 

 美都は泣いていなかった。

 話している最中、何度も泣き出しそうになったが、よく耐えた。

 でも、ついにそれを口にして、美都は泣き出してしまった。

 

 研究と功績を奪い返した氷川誠一郎へ対し、恨みつらみを吐くときは耐えられる。

 だけど、父のためにこうしたい。と言うと、悲しみが勝ってしまうのだろう。

 

 おちつくまで、私は美都を抱いて頭を撫でる。

 マイカさんはハラハラしてるけど、なにかあったらと身構えてもいてくれる。

 反応がやや薄いのは、真優だ。たぶん、私がいるから手出し無用って考えてくれてるんだろうけど。

 

「よし。そのなんだか悪い科学者の悪行、白日に晒してやる!」

 

 遊驥が乗り気だ。やはり仲間になったからだろうか?

 ……ちがうわね。

 半分は、面白そうだという顔をしている。

 

 動機の半分はどうであれ、義憤を感じてるからこそ、それを隠すため面白うそうだ、という顔をわざと見せてる感じもする。

 

「こうなると早いから、遊驥の奴。で、その科学者って?」

 

 しょうがないなぁーと、大智が尋ねてくる。

 

「ああ、この子の仇? 氷川誠一郎って奴なんだけどね」

 

「氷川……氷川だって!?」

 

 今まで、しょうがないという顔つきだった、大智の目の色が変わる。

 

「ゾンビクイーンの探索依頼、氷川インダストリー、氷川誠一郎が代表やってる会社からなんだよ!」




ハンドルネームとかハッカー内での呼び方の違いがあって、キャラが煩雑に…。
でもとあるシリーズも通り名や異名があるわけだからなんとかなるかな?

前回、遊驥がエース呼びだったりアスキー呼びだったの煩雑なので、アスキーに一本化します。
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