とある妹達《レギオン》の監視役《ウォッチドッグス》   作:大体三恵

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ちょっと構成失敗で短くなりました。



そちもワルよのぉ~

 ゾンビクイーンの捜査依頼をしてきた企業は、美都の仇である氷川の関連会社だった。

 

 考えてみたら、その通りよね。

 

「考えてみれば、当たり前だよな」 

 

 私の考えを、大智(しょうさ)が代弁してくれた。

 

「ロキちゃんは、氷川の研究が事業関連を調べてたわけだから、それは関係会社が被害を受けるわねン」

「うん。それじゃあ、確かにそうなる確率高いよね?」

 

 マイカと真優が、うんうんとうなずく。

 美都は周囲の深刻な反応を見て、いよいよ事態に気が付いた様子だった。

 

「そ、そんな! ……でも、わたし、けっこう偽装してたんですけど? 関係のないところにも潜入してましたし、そういった要らない情報は別のゾンビPCへ送って追跡を回避してましたから……まあ、それで被害を受けた芸能人の人がいたけど」

 

 美都も無対策ではなかったようね。

 

「違うぞ、ロキちゃん。それは違う」

 

 遊驥はいつもと違い、静かに真面目な対応をしてくる。

 

「関係ない偽装工作用に潜入したところは、おおかた重要な情報は抜いてないだろ?」

 

「はい……たしかに」

 

「機密に触れられたら対応は違っただろうが……。氷川に匹敵するような大した悪事もしてなかっただろうし、そもそも気が付かない可能性がある。だが、悪事をやってるところは違う。即座に、表立たない方法で対応してくるというわけだ」 

 

 遊驥の説明に、美都は言葉を失った。

 いかにゾンビPCを使うことに長けていても、被害者側である企業の動きを予測することは難しい。

 

 確かに美都の能力は、財神黒客(ツァイシェンヘイカー)のメンバーを超えているだろう。 

 だが、大企業の御曹司であり、企業間の手のことに詳しく触れていた遊驥は、美都のアドバンテージを超える対応ができる。

 

「逆をいえば、警察を利用せず、ゾンビPCの発信元を探すのは、それだけやましいというわけだな。……うむ。まずいぞ。単に研究成果を奪ったくらいじゃないことを、他方かつ裏でやってるかもしれん」

 

「あー、そういう風に考えることもできんのね」

 

 私は遊驥の発想に、素直に関心した。

 

 遊驥の思考は一足飛びしているところがあるが、それでも推論の立て方として間違っていない。

 最悪のパターンを考える方法だ。

 まあ、その方が面白いからだ! っていうのが透けて見えるけど。

 

「あぶなかったわね……」

 

 もし、私が美都に出会わなければ、財神黒客(ツァイシェンヘイカー)が氷川インダストリーに、情報を与えていたかもしれない。

 池袋のとある場所である。と、そこまでの情報では、通常犯人はわからない。

 

 だが、そのあたりに美都の父親の仕事場があるとわかれば、話は別だ。

 氷川誠一郎はすぐにゾンビPCの犯人は、研究成果を奪った相手の娘である美都ではないか? と、当たりを付けただろう。

 すぐにどうこうしてくるわけはないが、絶対に探りを入れてくる。

 

 美都は悔しそうに、だが同時に危険性を認識して、青い顔をしていた。

 

「どうする? すぐ池袋に帰るの危なくない?」

 

「レールガンはどう思う?」

 

 質問したら、質問で大智が返してきた。

 私は自信満々に答える。

 

「私にかかれば襲撃を察知するのもできるし、撃退もできるわ」

 

 氷川のバックに、私が能力者であることを理解し、対応したハウンドドッグみたいな組織がいない限りは。

 

「それは頼もしいよ、ほんと。で、美都の居場所がバレると思う? 他のハッカーグループに」

 

「そんなこと言われても、他のハッカーグループのレベルってのがわかんないんだけど」

 

「俺たちより上。たとえば……デッドセックを想定できるか?」

 

「ああ、あいつら」

 

 ふむ、考える。

 私はこの世界のハッカー事情には詳しくない。でも、さすがにそろそろデッドセックの能力は、噂の情報を元にした程度ではあるが、推測できるようになってきた。

 

「おおよそだけど……こっちの市販で高性能な機材を使って、私と同じやり方をした場合、10人くらいがかかりっきりになれば、3日ってところ……かしら?」

 

「そ、そんな早くか?」

 

 私の推測に、遊驥が驚く。

 と、同時に私はちょっとしたミスに気が付いた。

 

「あ、いま、睡眠時間とか休憩考えてなかった。ちょっとその辺修正して」

 

 なかには不眠不休で好きなことをする人もいるけど、外部からの依頼でそこまで頑張る人はいないと思う。

 

「じゃあ大丈夫だな。10人、20人なんてまとまったハッカー集団は日本にいない。チャットで連絡しあってる者はおるだろうが……」

「依頼として別々で受けてるだろうね」

 

「ちょっといいかな?」

 

 真優が疑問を挟んできた。

 

「僕はあまり詳しくないけど……ctOSを介した通信って、池袋の一地域までしかわからないのだろ? それで、美都がゾンビPC使いって、わかるのかい?」

 

 真優の疑問に、大智が答える。

 

「うん。普通ならね。でも、今回、美都は関係者だ。その大雑把な住所を知った氷川インダストリーが、その地域に研究を奪った相手の娘が住んでるって知ったら?」

 

「犯人だと思うわな。少なくても確認しにはくる」

 

 ソファに背をあずけ、天井を見上げる遊驥。

 

「どうしよう……」

 

 美都は私の隣で、深刻にうつむいている。

 

「バレている前提で、ロキはどこかに逃げるってのが最善なんだろうが……、学校とかあるだろうし」

 

 大智が安全策を提案してきた。しかし、それはそれで美都にとって損失が大きい。

 彼女がそのくらい覚悟してるかもしれないが、日常に大きな支障が出るようなことは避けたい。

 私はそう考えて……。

 

「いっそ、こっちから討って出る?」

 

 もう隠す必要のない電撃を、小さく放って見せた。

 

「オマエ、怖いな! そりゃ先手必勝は基本も基本だろうが……」

 

 遊驥が大げさにびっくりして、ソファの上でのけぞると、ふと真顔になって考え込む。

 

「俺たちが最終的に敵対することを覚悟して、ウソの成果を報告する手がないか?」

「ああ、欺瞞情報で、先手ってわけね」

「まあ、俺がさっき依頼、消しちゃったけどな」

 

「断ったわけじゃないから、遊驥が依頼元に報告書をメールで出すだけだよ」

「ゾンビPCからの送信先とか、改竄してあげましょうか? 誰か気に入らないヤツでもいる?」

「うわ! それデッドセックのやり口じゃねぇか! ていうか、できんのかよ!」

 

 どんな手を打ってやろうか。私と大智と遊驥が、顔を寄せ合って相談していたら──。

 

「アンタたち、悪人の顔してるわよン」

 

 マイカが呆れたような溜め息と同時に、いいかげんにしないと怒るわよ、という鼻息を鳴らした。

 この人、なんか器用ね……。

 

「そちもワルよのぉ~、しょうさ」

「へへへ……雷神様ほどじゃございませんぜ」

 

「ちょっと、コントに巻き込まないでよ!」

 

 悪ノリした遊驥と大智が、なにか時代劇を始めやがった!

 美都がちょっと笑ってくれたから許すけど!

 

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