とある妹達《レギオン》の監視役《ウォッチドッグス》   作:大体三恵

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史上初!異能の戦い!

 まずいっ! 念動力者はまずい!

 

 私は裸足の男を睨みつけながら、内心、どう対応するか頭がフル回転真っ最中。

 美都を守るため、高まった能力を全力投入して車を抑えつけてしまった。

 おかげでめまいがして、息が切れる。

 

 考える時間稼ぎのため、威嚇で電撃を多めに放つと、念動力者らしき裸足の男も警戒して身を硬くしていた。

 

「おおっ!」「キャーッ!!」「ひゃっあーっ!」「やだなに!」「雷神ちゃんだ!」「池袋の!」

 

 集まった群衆が歓声とも悲鳴ともつかない声をあげて、電撃を放つ私にスマホを向けて注目するけど……あー、もう仕方ない。

 裸足の男は血走った目で、電撃と群衆の反応に戸惑ってる。集中力があんまりないようね。

 この隙に、思考する。

 

 アイツの能力は、ありきたりと思われる念動能力(テレキネシス)

 だけど実は念動力って敵対すると、かなり厄介なのよね。

 

 まず応用が効きすぎる。

 微力ながら見えない電子を操るレベル4だっているという。

 わけがわからない領域になると、念動力の力場を作っておいて、そこで起きる物理現象を全部把握なんてできる能力者もいる。

 

 そして効果が幅広い。

 常盤台中学の切斑さんみたいに、数十、数百という大量の物体をそれぞれ個別に自由自在、互いに干渉することなく高速で操れる器用の極限みたいな人もいれば、数十万トンという大質量を動かすパワーの極限みたいな念動使いもいる。

 

 これ、どっちもレベル4扱いなのよね。

 出力パワーでレベル4判定されれば、精密操作でレベル4とか、応用もできたり、どれも標準以上だからレベル4だったりと、たぶんいろんなタイプがいるのが念動使い。 

 

 戦闘で重量物を操ってくる相手は、まだ組みやすい。厄介なのは絡め手や応用ができる相手だ。

 

 レベル1や2でも、眼球に触れるくらいの力で激痛を与えられる。能力が届く距離にもよるけど、地味に恐ろしいのよね、これ。

 能力の距離範囲外でも、砂をまき散らして目つぶしだって狙える。

 

 人体の構成に詳しいと、文字通り手探りで、見えない内臓にダメージを与えてくる。たとえ低レベルでもだ。

 これは演算能力の高さと、知識の高さまでいるから、誰でもできるわけじゃない。多分、この手のことは、裸足の男は出来ないと思う。

 

 次に気体を操れるやつも危険。窒息狙いとかできる。

 念動力で固めた空気で殴ってくるのも、脅威は低いけど厄介ね。もっとも見えないところや、見えない物を動かせるのは、レベル関係なく才能と努力がいるけど。

 とにかく見えない攻撃ほど、危険なものはない。

 

 ま、なんにせよ、やることは決まったわ。

 

 裸足の男(念動使い)の出力は、2トン近い乗用車を動かせるから、まあまああるほう。操作は大雑把。操れる数は多くても、一斉で真っすぐ。

 私が勝手に判断するなら、学園都市での評価は……。

 

「レベル3くらいかしら? 能力開発だけじゃなくて、レベルアッパーでもあんの? ここ? 困ったわねぇ」

 

 対策はある程度思いついたところで、私は電撃を弱めて愚痴をこぼす。

 あれ(レベルアッパー)は大人数の能力者がいるから、ないとは思うけど。

 

 時間にしては数秒だったけど、群衆に興奮状態だった裸足の男は、やっと私を睨みつける。

 

「お、お前ぇぇっ! お前がぁぁぁっ!!」

 

「うっさいわね!」

 

 叫ぶ裸足の男へ、私は電撃を浴びせる。

 放った電撃は裸足の男の周囲を囲むように、円形を描いて逸れ、やがて弱まり空中に掻き消えた。

 

「ふひっ! だ……大丈夫だ! おれは強い! 強いんだ!」

 

 一瞬、ビビって目を閉じて身体を竦めた癖に、裸足の男は私の攻撃が通用しないと思って笑ってる。

 美都を傷つけようとしたし、なんかムカつくわね、こいつ。

 

「おおお前っ! 引っ張ってぇー! 押す! 死ねぇっ!」

 

「そんなのじゃ死なないって」

 

 裸足の男は周囲のゴミを引き寄せ、私に向かって放ってきた。

 これを電撃や砂鉄の槍で迎撃。

 出力の下がって操れる砂鉄の量が少ない今の私でも、ゴミくらい叩き落せる。

 

 ちなみに砂鉄の高速振動は、少量ならできる。あれは出力の強弱ではなくて、電磁場の操り方なので。

 

「ふん、今ので大体わかったわ」

 

 ゴミを引き寄せた範囲からして、裸足の男の能力は、約半径5メートル。前後左右上下、満遍なく、周囲全体。

 ゴミばかり集めたのは、立ってた場所の物体は、すでに美都たちに向けて放ったから、もうゴミしか残ってなかった。

 さらに遠くから、投擲物となる重量物を引き寄せなかったところからして、能力の範囲は半径5メートル。

 

 相手がよほど頭の回転がよくて、私を欺こうとしてない限り、ほぼ確定。

 

 見えないものである空気も掴めるのはすごいわね。

 射程と精密操作以外は、なかなか有用な念動力ね。特に見えない物や気体と、視界外の後ろなどまで影響がでるのは素直に脅威。

 

 アイツの念動力は、引き寄せて固定する。そして突くように30キロメートルくらいの速度で、まっすぐに押し出す。

 狙ってはいなかっただろうけど、引き寄せて押し固めた空気で、私の電撃を逸らした。

 

 掴んでがっちり固定すれば実質高い気圧の場となり、絶縁耐力をある程度持つ空気で電撃を防げるはず。

 雷は空気の中を進みにくいから、固定なんてされちゃったらああやって周辺の気圧が低いところへ流れてしまう。

 

 問題は、空気の絶縁耐力を越えるほどの電撃を喰らわせたら、あの裸足の男が死んでしまう。それはちょっと避けたい。

 

 かといって、磁力で物をぶつけるのは、あの空気の塊に阻まれて難しい。

 あと、物をぶつけると、それは相手の弾を与えることと同じことになる。

 あまりいい手じゃない。

 

 もちろん、砂鉄の剣や槍はダメ。アイツの能力の範囲内に入った途端、がっちり固定される可能性が高い。

 

 ま、もう対策は思いついてるけどね。

 

 私は乗用車から歩道に降りて発電、放電。

 バリバリと電撃を纏い、裸足の男の周囲に落とす。

 纏った電撃も地面を走らせる。

 

 こうして、裸足の男の地面、半径5メートルの外に正の電荷をためておく。

 

「効かないよ、効かない! ふひっ! お前、お前も、俺みたいにひどい目に味わえぇぇっ!」

 

 裸足の男は歩いて移動し、半径5メートル以内に物があふれる場所で能力を使った。

 

 5メートル以内にあった、店頭の商品やその棚、自転車やゴミなどが、裸足の男の周囲に引き寄せられた。

 あれを突き出し、私にぶつけてくる気なんだろうけど、その辺りはさっき私が電撃を落としたところなのよね。

 

「ほい」

 

 私は一番近い、念動力で集められた自転車へ向けて電撃を放った。

 

 今度は空気に塊に阻まれず、電撃は周囲に浮いている電位差のある物体へ短絡(ショート)を繰り返し、あちこち迷走してから裸足の男に直撃した。

 

「ごががっ!」

 

 裸足の男は気を付けの姿勢となり、一瞬跳ね上がる。

 そしてその場に昏倒し、周囲に集まっていた物体は路上へと落ちた。

 

「そんだけ自分の周りに、通電性のある物体を集めたら、こうなるってわけ。自分で自分の防御に穴をあけたってことよ」

 

 確かに分厚い空気の壁や塊には、絶縁耐力が期待できる。

 けど、その中にいくつも通電性のある物体があれば、電気はそれらを経路として伝わり、正の電荷が貯まった地面に立っている物体(避雷針)……この場合、裸足の男を目指す。

 

 電気は怠け者。

 厚い空気を避け、通りやすい道を通って、ジグザグに進み、正の電荷の貯まった地面を目指すってわけ。

 

 相手が賢くて、自分の近くにアースとして幟の棒でも地面に突き立ててたら使えなかったけど、そんな対策はしてなかったので狙えた技ね。

 原子や電子まで固定できる能力だったら脅威だったけど、そこまでできる能力は学園都市でも上澄みも上澄みでまずいない。

 絶対零度や超電導すら望めるから、そんなのいたら学園都市でレベル5判定も夢じゃない。

 

「さてと。ちょっとこれ借りるわね」

 

 私は路上看板に使われていた電源ケーブルの延長コードを操り、気を失った裸足の男(サイコキネシスト)を縛り上げる。

 コイツの能力なら、複雑に縛った電源ケーブルは解けない。

 縒った銅線に樹脂被覆のあるケーブルを、数トンのパワーで引っ張ったら本人が引きちぎれるからやらないだろう。 

 

 さらに5メートル周囲になにもない路上のガードレールに固定し、幟で念入りに目隠しをした。

 

 目隠しをしている最中、裸足の男が小型のインカムイヤホンをつけていることに気がついた。

 軽くハッキングを仕掛けて見て……私は驚いた。

 

 これ、機能が限定的だけどctOSとの通信端末だ。あーなるほど、これで能力を増幅してたのね。

 仕組みはくわしい調べないとわからないけど、少なくてもctOSと相互通信しているのと、脳に刺激を与えてるのは確実。

 

 私はインカムを取り上げ、ポケットにしまった。

 

「これで、よし。ねえ、みんな。こいつの5メートル以内に絶対近づかないでね。警察にもそう伝えて」

 

 裸足の男の能力強度は激減しただろうけど、念の為、近寄らないでと指示した。

 

「ら、雷神ガール…………な、なんで、5メートル?」

 

 近くにいた店員に説明したら、雷神ガール? とか言われた。私、そう呼ばれてんのね。

 そのゲーム屋? 電気店? の店員が、理由を尋ねてくる。

 

「コイツの力、5メートル範囲だから。5メートル以内に入ると、引っ張られて吹き飛ばされるわよ」

 

「そうなんだ。……あ、つまり、この超能力は念動力で、さっきの電撃を使った戦い方は、最初に範囲を探る牽制と、それへの対策! 超能力で電撃も防がれたから……そうか、ガチャガチャの台とか電気伝導体! 敵の攻撃手段を利用したんだ! すごい!」

 

 最初こそ、唖然としていた店員だったが、ほとんどの意図を理解して興奮気味になった。

 

 ふむふむ、さすが秋葉原の店員。

 電気の知識とサブカル知識があるから、理解が早いのね。

 

「さて、こっちは終わり! ロキ! ねえ、大丈夫?」

 

 私は美都の無事を確かめるため、歩道で立ち上がってる乗用車を飛び越えた。

 スーツの白人男性に、ガチャガチャやらの山から、助け出されている美都がいた。

 

 通行人に撮影されまくってるけど、もうどうしょうもない。これはもう諦めよう。

 撮影すんな、って今更怒鳴ってもサマにならない。なにより聞くわけがないから、そこからは脅しかけて、騒ぎが大きくなるだけだ。

 

「ロキ、大丈夫だった?」

 

「はい、お姉さ……トールさん」

 

 駆け寄ると、助け出した白人の手から離れて、無事な姿を見せてくれる美都。

 私は彼女の背中やら足やら確認して、なにも傷がないと安心する。

 

 助けてくれた白人の男の人、あれ、サイボーグね。

 頭を怪我してるけど、身体の方はダメージこそあれ危険ってことはなさそう。

 パーソナルデータは……あ、米兵なんだ。それでか。

 

「私の……友達を助けてくれてありがとう。さすがは米兵さんね」

 

「え!?」

 

 お礼を言うと、スーツの白人男性はギョッとした顔になった。

 パーソナルデータに、米陸軍の伍長となってたからつい言ってしまった。

 よく見れば、所属は米軍だけど、職業は在日アメリカ大使館の施設管理員となっている。

 

 名前はロドニー・ヒューズさんか。名前を言うと勝手にパーソナルデータを覗いたってわかるし、気分を害するでしょうから、私から名乗りますか。

 

「私は御坂美琴。お礼がてらこれは本名よ、できれば秘密にして欲しいけど……」

「うお……、私はロドニー、ロドニー・ヒューズだ」

 

 彼も狼狽ながらも、本名を教えてくれた。この異常事態だもん。このくらい慌てても仕方ない。

 所属は軍人だけど、職は外務省の施設管理……という名目の警備をしてる人かな?

 

 あー、だからサイボーグなのか。

 きっと戦闘か任務中の事故で、代替機械を使ってるのね。

 

 私は彼の体をそれとなく調べてみる。

 うん、学園都市でサイボーグ化してる人と、あんまり変わんないわね。

 たぶんもう軍人としては活躍できないから、外務省の駐在武官の手助けって名目で配されてるのかな。

 

 大変ね。そんな身体になっても、アメリカのため働いているんだ。

 

「右肩のサーボ。ふたつくらい変形してるから、動くうちにメンテナンスしてもらったほうがいいわね」

「なっ!」

 

 親切で故障箇所を教えると、またも白人男性は大げさに驚いて見せる。

 やっぱり欧米の人って、リアクションが大きいわねぇ。

 なんて感心していたら、後ろから誰かの声が上がった。

 

「何事だ! 君たち、なにがあったーっ!」

 

 振り向くと、群衆を書き分けて、こちらに駆けてくる警察官が見えた。

 これはもう逃げないといけないかな。

 

「ごめんなさい。お礼は改めて。連絡先、あなたのタブレットに捨てアドだけど送ったから」

 

「っ!」

 

 ヒューズさんは目を見開き、カバンの開いてタブレットを確認している。

 お礼もほどほどに、美都をお姫様だっこして抱えあげる。

 

「おおおっ!」

 

 美都を抱き抱えると、一斉に周囲の男たちが大騒ぎした。

 

「わわ、重くないですか?」

「大丈夫、黒子に比べたら軽い軽い。初春さんくらいかな」

「そ、そうなんですか?」

 

 考えてみると、怪我したり、疲れ切った誰かを抱えたり、抱きついたり抱きつかれたりして、戦闘とかしてる私たちが異常なのよね。

 

「じゃ、ちゃんと捕まっててね」

 

 駆け寄ってきた警官の頭上を飛び越えて、向かいのビルの側面に張り付く。

 

「ひゃああああーっ!」

 

 腕の中の美都が悲鳴をあげて、私の首に抱きついてきた。

 そりゃ人は空を単独で飛ばないし、こんな緩急のある速度で立体起動したら怖いわよね。

 大丈夫よ、美都を強く抱き寄せ、さらに離れたビルの屋上までビル側面を駆け上る。

 

 ある程度、離れたビルの屋上で、目を閉じて震える美都を降ろす…………。手を離すけど、美都が離れてくれない。

 

「ひ……お姉様ぁ……」

「大丈夫だって。ここは足元ちゃんとあるから」

 

 宥めて降ろそうと身を屈めるが、美都は離れようとしてくれない。

 どうしようかなと、思ったその時、スマートフォンが鳴った。

 

 美都にぶらさがられたまま、左手で腰を抱き、右手でスマートフォンに出る。

 

『なにやっとんじゃ、おまえーっ!』

 

 デジャビュ。

 1週間前と同じように、また遊驥に怒鳴られた。

 

「なによ、怒鳴ることないじゃない!」

 

 私も負けじと怒鳴り返すが、またも分が悪い。

 なんだかんだ仕方ないとはいえ、やりすぎた。どう考えても厄介事になる。なにしろ、美都も巻き込んでしまった。

 反省はしてるけど、遊驥に怒鳴られるほどじゃないと思う。

 

『せっかく、いざという時のセーフハウス(隠れ家)を用意したのに、無駄になった! ぱーだよ、ぱー!』

「無駄になったの? なんで?」

『アキバにあったんだよ! そこに! セーフハウスが!』

「あー、うん。それは……」

 

 これは怒鳴られるほどだった。

 

 セーフハウスを用意してくれた場所で、騒動を起こしてしまっては隠れのも難しいだろう。

 よく灯台下暗しって言うけど、さすがに外に出れなくなるだろうから不自由極まりない。

 

 私は悪くないけど、遊驥の労力を一切、無駄にしてしまった。

 私は悪くないけど! 

 

『とにかく、一旦戻れ! ヒロヒロを迎えに出す! それまで隠れてろ!』

「はーい」

 

 負い目のある私は、遊驥の指示に従って、しばらく屋上の看板下に隠れ待つことにした。

 

 




アメリカの認識

「ロドニー・ヒューズくん! キミは超人に生まれ変わったのだ! (後でメンテしなくてはいけないが)銃撃を浴びても、素手で敵をまとめて薙ぎ払う! (限界ぎりぎりなので、やはり後でオーバーホールだが)車だって持ち上げられる! 我々が与えたその力、アメリカのために有益に使ってくれたまえ!」

御坂美琴の認識(学園都市基準)

「内蔵武器とかないし、パワーはあるみたいけど、きっとリミッターも付いているでしょうし、素材的に制限してないとまず壊れるでしょうから、とても軍用って感じじゃないわね。きっと失った身体の代わりでしかなく、戦闘なんてできないから、あの身体でも仕事ができる外務省付きにさせてもらってるのね……。え? アメリカ軍の技術なら、サイボーグってもっとすごいでしょ?」

 ctOSやレイバーがあるため、御坂美琴はアメリカが自分の世界と同じくらいの技術があると、思ってます。


 追記。

 そろそろ東京都内で、作者の土地勘のある場所がなくなってきました。
 だんだん街の描写に捏造が出てくると思います。
 
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