とある妹達《レギオン》の監視役《ウォッチドッグス》 作:大体三恵
今回、とある場所の飲食店の提供物が「まずい」と表現されていますが、事実ではありません。
ですが、パトレイバー世界ではそうなってます。
TOKYOWARにも書いてある
2度目の雷神ショックは、日本社会に置いて正しく
1度目の雷神ショックは、映画の宣伝イベント最中の事故ということもあり、大多数の人は驚きながらも、その存在を否定する思考がどこかに存在していた。
世間ではオカルトが下火であり、頭から信じる者がオカシイという意識があったのだろう。
実際、囃し立てる側ですら、期待こそあれ雷神や神秘的な能力を信じているというより、世間が騒ぐ様子が楽しいという様子だった。
もちろん映画制作側の仕込みと、疑う者も多かった。
捜査当局側も同じ判断だった。しかし、疑うことが仕事なので間違いではない。
映画制作者たちは連日の調書取りから解放され、やや違った意味で2度目の雷神ショックに感謝していた。
何より今回、秋葉原での雷神ショックは、事件であり当局の本気が違う。
物的損害だけでなく、軽傷者8名、重傷者1名という人への被害があったことも大きい。
怪我人のいない池袋の事故と違って被害者と加害者がいると、オカルトの真実はさておき、警察が意欲的に動き出す。
行政機関として、オカルトであるか、手品であるかは後で判断することである。
誰がどうして何をもって故意か否かで、誰を傷つけたかを証明すればいいのだ。
なにより、この傷害事件では実行犯が確保されている。
この傷害事件の犯人ですら、雷神ガールに匹敵する「異質な存在」だ。
アニメや漫画のキャラよろしく、彼も異能の力を振って衆目を集めた。
ネットでは
:>俺たちにもやがて『個性』が芽生えるのか?
:<歴史の転換点に、俺たちは立っている
:>こんなのが増えたら、自分が被害者になることも考えろ
:<政治も行政も司法も大変だぞ、これから
:>雷神ちゃんみたいな子ならいいけど、悪用する奴らが手にいれたら……
などと異常な事態を、自分に影響がある可能性も思慮して、受け入れていた。
不安の声が大きく、期待してる側とて、自分たちが浮かれていると自覚している。
行政側の対応も、本腰を入れはじめている。
すでに無力化されていた犯人、30歳無職の安洞何某は、確保しようと手を伸ばした警官ひとりを(事前に近くの電気店店員から警告を受けていたが)、不可思議な力で吹き飛ばして、行政の官吏に被害を与えた。
信じる、信じないではなく、警官が被害を受けた。
これはもう
すでに電源コードで拘束されている容疑者確保のため、警官に機動隊合わせて100人が動員された。
たったひとりの容疑者を確保するため、秋葉原の相当範囲に規制線が張られた。
そして、なんとレイバー小隊まで投入される。
容疑者はガードレールごと取り外されて、レイバーでトレーラーに積み込まれた。
この作業光景は、日本警察特有のブルーシートで覆われ人目に触れなかった。
しかしながら報道ヘリの上空からの映像と、シートの隙間からの撮影されて晒されている。
「いやぁー。ガードレールに縛られた人を持ち上げて運ぶなんて、まるで市中引き回しみたいでしたよ。いや、トレーラーに乗せるまででしたがね。ああ、シートでも囲われてたけど」
のちに、この件を警察庁の食堂で、まずいコーヒーを飲みながらこう語った特車小隊の隊員が、現場にいなかった同僚に語ったという噂もあった。
一方、一般人はもはや反応をしているだけではない。
現代の一般人は、過去の一般人というカテゴリから逸脱した発信力を持っている。
「はい、ではですね、今回は雷神ショックで有名な秋葉原にきてみました」
規制線が溶けていない秋葉原通りの一角で、自撮り棒を片手に実況する配信者がいた。
ひとりふたりではない。
群衆に紛れ、100を下らない人々が、ネットに接続して動画を流し続けている。
「これ、ぼくのSNSのアカウント。雷神ちゃんからの連絡待ってまーす」
「雷神さーん。お友達になりませんかー!」
ネットが必ず誰かに繋がる時代、異常な存在と繋がろうとする者がいた。
撮影機材を扱い、顔出し数人で組んでいる配信者もいる。
顔出しをせず、ただ動画を垂れ流す者もいた。
そんな動画ですら、一瞬、何かが映りこむ可能性がある。
何事もなかった日常が、直後に変わるかもしれないと、期待して動画を見ている人もいる。
ネットに上げるつもりもなく、動画を撮っている人も、ひとたび何かを撮影すれば、すぐにネットに上げるかもしれない。
下手をすれば群衆すべてが、潜在的な配信者と言ってよかった。
中には……。
「出てこいや! 雷女ぁっ!」
いかつい顔をしたサングラスの男が、取り巻きの仲間に撮影されながら気炎を揚げていた。
路上のケンカで1000戦無敗を自称し、雷神ガールへ名指しでかかってこいと豪語する。
無論、
なので、周囲の通行人を威嚇するだけである。
困ったもんである。
「電撃が発生した瞬間に、低空タックルで一発。はっきりわかんだね」
クマのテレフォンパンチ画像を雷神に置き換えた図解で、自分の格闘テクニックで封殺できる! と豪語する者もいた。
ネタなのか本気なのかわからない。
ノーコメントである。
なお、レイバーで雷神ガールを捕まえると、個人所有のボクサーを持ち出した配信者は、警察のご厄介となって、別の意味で視聴者が増えていた。
この混乱の中、ある意味もっとも注目を受けた者である。
困ったもんである。
『念動力者の能力範囲は5メートルくらいと考えられるぜ』
『それはどうしてかしら?』
秋葉原の現場で、有志による検証動画を見ている人たちもいた。
集合知というのもバカにならない。
専門家がフェルミ推定を容易て算出した値より、ネット内で無責任に出し合った推測の中央値の方が正解に近いという実験データもある。
テレビのコメンテーターが的外れなことを言っているなか、ネットでは比較的真実に近い検証結果が出ている。
もちろんテレビのコメンテーター以上に的外れなことを、ネットで喚いている者も多い。
それらを弾けば念動力者の能力は、正しく導き出されていた。
『警察による確保時、この能力は大きく減退してて、警官が弾き飛ばされたときとか、あきらかに弱かったんだぜ。これは雷神ガールが念動力者を縛り上げる時、耳元からイヤホンのような機器を外したからと、推測されるんだぜ……』
配信者が秋葉原に集まり、事件現場を世界へと伝える。
+ + + + + + + + +
「総理。どうされるのですか? 確認のホットラインが総理以外にも届いているとか」
官邸の一室でくつろぐ日本国の首相に対し、政界に置いては若手とされる内閣官房長官が問い詰める。
現在、日米韓で引かれているホットラインは、国家首脳間だけでなく、省庁など関係各所でも繋がっている。
外務省同士、FBIと警察庁、ペンタゴンと防衛省間などがその例だ。
それらの回線がフルで、日本政府に問い合わせをしてきているという。
この異常事態でありながら、現首相は端然とした態度であった。
「別段、答えられるような情報は、誰も持ち合わせていないのだろう? むしろ現場はよくやっているじゃないか。秋葉原の犯人を、うまく捕まえて隔離してると聞く。褒めてやらないとな」
念動力というオカルトな力を振るう男を、左右5メートル以上のガードレールごと取り外して確保。そのまま
超能力など対応したことない日本の警察が、マニュアル通りに活動せず対応している。
現場には多大な負担がかかっていた。
「だからこそです! 対応マニュアルがあるのではないか? と警察庁、警視庁に問い合わせがきているのです!」
「マニュアル外の臨機応変なことをしたら、マニュアルがあるのではないかと疑われるのか? ははは、面白いな!」
官房長の焦り具合に対し、首相は瑣末なことのように考えてる様子だった。
実は、この捕物劇にはいくつか偶然が重なっていた。
まず御坂美琴が念動力者の特性を、近くにいた電気店店員に説明した。
この店員が正しく理解し、科学と電気工学とアニメの知識を総動員して、基本的な対応を思いつく。
彼の思いつきだけであったら、そこでおしまいであっただろう。
この時、駆けつけた警官が地域に密着した活動をしており、店員とは知り合いだった。
店員から説明を受けた警官が、先週の雷神事件を想起して信用した。
しかし、同僚が信じず、目を覚まして叫ぶ念動力者に近づき、引き寄せられたあとに吹き飛ばされた。
そこからは地域密着警官と店員の独壇場だった。
念動力者は自分に密着しているものを動かせない……というより、動かすと縛られているので自分が痛い思いをするので動かさないと、店員がまず気がつく。
実際、裸足の男は自分と重量物を、正確に同期させて動かすことができなかった。
例えるなら寿司のシャリとネタを、別々の人が箸でつまみ、桶に盛るような作業だ。
息を合わせたとしても、まったく上下左右をズラさずに動かすことは不可能だろう。
ネタとシャリが縛り合わされていたら、シャリは崩れるかもしれない。
ついで地域密着警官は、ガードレールごと確保する手を思いついた。
ガードレールは工事現場や一時車線を変更するため使われる移動式で、足にコンクリートの重しがついている物だった。
雷神の少女はそこまで考えて、捕縛したのだろう。
ただし、かなり大掛かりになってしまっため、一連の作業がテレビやネットに広まってしまった。
ブルーシートで隠して作業したのだが、それでも頭上という穴があり、マスコミのヘリや、周囲の高いビルの上から断片的に撮影されていたのだ。
また張られたシートには隙間もあり、相手がテレビ会社のカメラだけならなんとかなるが、通行人全てがカメラマンの現代、すべてに対応することもできない。
「まあまあ、官房長。おちつきなさいな」
「首相!」
自国で起きた前代未聞、史上初の出来事でありながら、この首相には危機感がない。
官房長官は総理大臣と一心同体といっても過言ではない。
野球でいうところのピッチャーとキャッチャー、恋女房に当たると言われることもある。
官房長官は自身が信用されていないと、首相の態度から感じ始めた。
「ホットラインには確認中で押し通しましょう。現場に超能力への対応マニュアルなどないのですから……。現場に裁量を与えて、責任はこちら側に」
「そ、そうですか」
一応の対応指示され、官房長官も語気を和らげた。
まだ収まらない官房長を見て、首相はゆっくりと語る。
「それにですね。現場に超能力への対応マニュアルなどありませんけど、こちらにはマニュアルがあるので目を通しておいてください」
「はい?」
関係各所にはないマニュアルが、首相官邸にはある。どういうことなのか、優秀な官房長官も呆けた。
「すまないねぇ、長官。これは極々一部にしか流布していないものでね。股肱の臣であっても、なかなか明かせない物なんだ。むろん、私の側近あたりも知らない物でね」
首相は椅子脇の鞄を開けた。内閣官房長官の前に、そこから一冊にまとめられた書類束が取り出されて差し出された。
書類束を受け取りながら、かえって長官は落ち着きを取り戻した。
「わかりました。それが私に開示されるということは、そういう事態が起きて、そういう対応をせねばならないのですね」
分厚いファイルを受け取り、官房長官の顔は引き締まった。
魑魅魍魎が跋扈する政界やマスコミを相手にする時に顔だ。
「ああ、そうそう」
官房長官の覚悟に、水をかけるような声で首相が一言付け加える。
「マニュアルがあっても、マニュアルに従う必要はないよ。むろん、私もそのマニュアル、参考程度にしかしていないよ」
「……承知いたしました」
最初こそ、その冷や水に唖然とした官房長官だったが、表情にも表さずうなずいた。
雷神ガールの出現で、世間は熱を持っている。しかし、官房長官は今の今まで、雷神ガール騒動を冷ややかに受け止めていた。
だが、今ここで、官房長官の心にも火が灯る。
マニュアルが昔から存在していた上に、それに従う必要もないという国家の指導者。
超能力などより、はるかに高度な政治劇が裏にあると察し、
+ + + + + + + + +
日本が、東京が雷神熱で浮かれている中、冷ややかな空気に包まれている場所があった。
氷川インダストリー新社屋、それである。
氷川というその社名の通り、氷のような冷たさが流れていた。
会議室に幹部クラスが集められ、若き姿の社長によって絞り上げられている。
上座の後ろの壁には、氷川インダストリーの前身である氷川製薬の創立者「氷川
その前、その下、その席に、氷川製薬を氷川ケミストリー、氷川ケミストリーを氷川インダストリーへと成長させた現社長、氷川
長めの髪を後ろに撫でつけ、印象的な切れ長の目つき、うすい色素の肌に、うすい唇に、反して精悍な眉毛が強調されていた男性だ。
「それで。実験体が逃げ出したことで、警備部の弁明は?」
鋭い目つきが酷薄なイメージを与える氷川誠一郎が、居並ぶ会社幹部達を睨みつける。
幹部の誰もが彼より一回りも二回りも年上で、一角の功績を残しているものだ。
しかし氷川の前では、誰も薄っぺらい存在である。
「ほ、報告によりますと、当日に異常はないとなっております。これはこちらでも精査いたしまして確認済みですが……」
「では、異常がないというのに、あの実験体は痕跡をデジタル機器に残さず、逃げ出したというのかね?」
「……そ、そうなりますね」
「そうなりますね、ではない!」
氷川の眼光が、惰弱な幹部を射抜く。
同時に、幹部の前に置かれていたペットボトルのお茶が吹き飛んだ。炸裂音をたてて蓋が跳ね飛び、内容物を撒き散らす。
会議室の部屋の隅まで吹き飛んだペットボトルは、未開封であったにも関わらず、大型トラックにでも踏み潰されたかのごとく、薄っぺらい姿に変わり果てていた。
「ひ、ひいいいっ! 申し訳ございません! 再チェックと、異常なし下での逃走パターン検証を徹底いたします!」
その光景を見た幹部は、席から跳ね上がって頭を深々と下げる。
他部署の責任のない幹部たちすら、思わず頭を下げようとしてしまった。
しかし、思いとどまり、視線を逸らして無関係を装う。
頭を下げれば、氷川から「君もなにか謝罪する点があるのかね?」と問われるからだ。
対人リスク回避も幹部の能力である。
「君たちは、我が社の警備を駐車場やイベントの人員整理とでも考えているのかね?」
会社の事業規模にしては、内部に警備部署を持つ理由は、ひとえにその秘匿性と違法性にある。
そこが失態を犯すとなれば、会社にとって致命的である。
氷川は押し黙る幹部たちから視線をそらし、大きな窓から見える東京の景色を眺めつつ言葉を続けた。
「報告を見る限り、旧社屋……あの勝島運河沿いの産業センターでは、すべての警備システムに不備はない。なにもかもが普段通りだった。映像はなんら異常はなく、動体センサーの記録すら不審な点がない。にも関わらず、冷凍されていたあの実験体は逃げ出しており、秋葉原で雷神とかいう何者かと大騒ぎを起こした。痕跡が何もないという異常だ。意図的かどうか知らないが、間違いなく異常がないという異常があった」
痕跡がない。
その異常事態を引き起こした者は、御坂美琴であった。
御坂美琴は、潜入の痕跡を消した。
誰も……引き起こした御坂美琴ですら預かり知らぬことであるが、彼女が運河沿いの氷川産業センターへ進入したおり、警備システムを含むすべてのデータを
のちの話ではあるが、警察が
これも潜入から退避の際、御坂美琴と
重苦しく冷たい空気に包まれた会議室に、ノックの音が響く。
「なんだ、入れ!」
幹部たちへのプレッシャーが解け、氷川の厳しい視線が会議室の向けられた。居並ぶ幹部たちは、緊張感から解放されて一様に小さなため息をつく。
会議室の真新しく大きな扉が開かれると、男の理想を絵に描いたかのようなグラマラスで神秘的な女性秘書が一礼して報告をあげる。
「失礼します。社長。
「御前様が? すぐ出迎える」
会議を中断してでも、氷川は石木を迎えなくてはならない。
単なる出資者ではなく、
すぐに玄関に出迎えを、と氷川は立ち上がるが、女性秘書は頭を下げたまま状況を付け加える。
「はい。ですが、石木様は応接室へ向かわれた」
「あいかわらず、日本でも有数な財団の理事長とは思えないお方だ。お前たちは残った奴ら……残務の処理を全うしておけ」
どうやら事前連絡や、社屋到着前に一報すら入れず、本当に突然と現れたらしい。
氷川は表面上、軽い表現をしたが、内心では常識が通じない金持ちは、対応が面倒臭いと考えていた。
心を落ち着けながら、足早に会議室を後にし、応接室へ颯爽と到着する。
「石木様。氷川がいらっしゃいました」
先に入室した女性秘書が、氷川の到着を伝える。
「これは急なご来訪! お出迎えもできず、申し訳ありません、御前様」
応接室では、ソファにも座らず、腰に手を当てて室内をうろうろとしていた老人がいた。
矮小と言えるような小柄なスーツ姿の老人で、手のひら、靴は大きく、小さな体がより小さく見える。
顔色は悪く、不気味な皺が顔に刻まれ、口の悪い人間からは妖怪とも呼ばれている財界の重鎮、石木翁であった。
「いやぁ、今回のあの事件。心配になってねぇ。やっぱりキミのところの、アレ?」
挨拶もそこそこ、石木翁は本題を切り出してきた。
翁の人なりを知っている氷川でも、この急な会話には戸惑う。
「か、管理不行き届き、申し訳ありません。現在、調査中ですぐに対策を」
「ん、ああ、いいのいいの。あれがキミのところの実験体なら、それでいいの」
大きな手の平をひらひらとさせ、もう本当にどうでもいいという態度を示す。
その飄々とした態度が、氷川を苛立たせる。しかし、それを押さこんで声を絞り出す。
「それでは……このままで?」
「ん? キミ、何か心配事でも? ……ああ、もしも支援のことを心配しているのなら、安心して」
「ありがとうございます」
平身低頭。頭を下げっぱなしの氷川だった。
女性秘書も氷川を見習い、目を伏せたまま翁の様子を伺うこともしない。
「早急に対策を施し、以前より計画していた敵対企業をスケープゴートとするため、旧式のスピリッツの供与を開始いたします」
許してくれるとはいえ、氷川は不始末の収束方法を説明する。
「ん、そう。ま、これからは気をつけてね。面白いものが見れたし、今回は気にしてないから。ほんとうだよ」
楽しかったという笑みを見せたが、それは邪悪な笑みに見えた。
氷川は石木翁を便利な支援者と捉えているが、同時に性格の悪い老人だという印象を持って嫌ってもいた。
氷川は清廉ではないが、気高い企業人で研究者である……と、都合よく自己評価している。
石木氏も、氷川から見ればただの金持ちで過ぎないと見下していた。
「じゃ、ぼくも帰るから。見送らなくてもいいよ」
「そうはまいりません。せめてエントランスまで」
「そう」
もう用はないと立ち去ろうする石木翁。
石木翁の忙しわけでもないのに、氷川インダストリーを忙しくさせる行為。氷川は歯痒さを感じだ。
しかし、翁の後ろ盾と資金の援助がなければ、
(100年の念願! 叶えば貴様など!)
背面服従な考えを抱えながら、氷川は黒塗りの車に乗り込む石木翁を見送った。
そんな氷川を尻目に、石木翁は老いた身体を、車のソファに深く沈め直しながら、深く深く呟いた。
「彼の研究、大学生の卒業論文みたいな出来だったから支援をしたけど……。当人はまるで中学生の夏休みの宿題気分だねぇ〜」
石木翁は、他人が人生をかけている研究を、そう評して
早く女の子たちのお話を描きたいので、3話分くらいを無理に長めの1話としてまとめました。
「警視庁のコーヒーはまずい」
小説 機動警察パトレイバー TOKYOWAR(前後編)で、警視庁本庁庁舎のコーヒーがまずいとえがかれていました。
私も印象に残っていたシーンで、「あー、あーいうところのコーヒーってまずいんだぁ」と思ってました…………が!
その小説を書いた押井守先生が、この件でいろんな人から「警視庁のコーヒーってまずいんですね! さすがよく取材されていますね!」と言われたそうです。
専門的な現場のそれらしい嘘を、それっぽくそれとなく丁寧に小説で書いたら信じられてしまったという例で、後年なんかの雑誌(ドラ ンマガジン?)でおっしゃってました。