とある妹達《レギオン》の監視役《ウォッチドッグス》   作:大体三恵

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今回、実験で美琴の一人称で書いてます。

祠にいた妹達は10031号から、9982号に変更します。
理由はあとがきで。


ジュース飲んでんじゃネーヨお姉様

 貴重な資金を、夕食で半分も溶かしてしまったその後。

 気を取り直し、私は芝浦のctOS集中端末である祠を掌握した。

 

 夜の倉庫ビル街の屋上で、私は静かに手を合わせて祠を開ける。

 

「やっぱり……ここにもいたのね」

 

 そこにも御坂命(みさかのみこと)を記された木札があった。やはりあの子(9982号)のかけらが、封入されていた。

 

 目には見えないデータを、触れられない数字を、抱きしめるように回収する。

 わずかに私の中で、あの子(9982号)()()が増える。

 

「ふたつ目……。あと、どれくらいかしら」

 

 23区……いえ、東京都内だけで済むのか、不安になる。でも、私の決意は変わらない。

 

 不法に侵入している倉庫ビルの屋上から、最上階の8階に非常階段で降りた。

 

 私の目的は決まった。

 ctOSは各所にあり、あの子という存在が分けられて安置されている。

 

 ならばctOSに組み込まれ、利用されている9982号の回収。そして再構成して、この肉体を譲り渡す。

 いえ、肉体を返す。

 

 目的が決まると、思考がすっきりした。

 

 それにしても、このctOS集中端末は、なぜ祠の形をしてるのかしら?

 外側こそ小さな祠だけど、中にはちゃんとネットワーク機器が組み込まれている。

 それに物理的にアクセスしにくいわりに、論理的なアクセスは簡単……なのは、ctOSの問題ね。

 

 私はこれからを考える。

 あの子を回収するにしても、私を……じゃない、あの子の身体をちゃんと管理しないといけない。

 意識をctOS端末に向け、倉庫内ビルを掌握。8階から順に、防犯カメラと動態センサーを使って、私意外に人がいないか確認。

 侵入前にもやったけど、芝浦のctOSを掌握したので、念のためもう一回する。

 

 掌握前の一回目と違い、データ通信の出入りや流れも見える。

 確認したかぎり、私以外に人はいないし、管理下に入っていない区画や防犯システムはなかった。

 

 芝浦の祠のあったこのビル倉庫の警備は、完全無人化されてよかった。

 あとはセンサーに私が反応しないようにして、防犯カメラ映像を改ざんすれば、一晩くらい潜むくらいできるわね。

 

 おまけに繁忙期、使用するための仮眠室があるのよね、ここ。

 

 何カ月も使用されてなかったら、カビ臭かったけど、放電でオゾンを発生させて、しばらく密室にして解決させておいた。もし、害虫などがいても、オゾンで逃げ出すか死滅していると思う。

 

 あと充分に換気してから、布団を敷き直す。

 

 オゾンは腐食性が非常に高いけど、仮眠室に酸化しやすい精密機器があるわけじゃないしいいわよね。

 布団とベッドだって、耐用年数が減るくらいだし問題はないと思う。

 

 壁は打ちっぱなしのコンクリートだし、オゾンは影響がないはず。

 

「次の問題は……このまま寝るかどうかよね」

 

 制服とスカートを摘み上げ、どうしたものかと、自然にため息が出てしまった。

 洗濯、アイロンができる環境ならまだしも、このまま寝れば制服がシワでどうなるか……。

 かと言って、下着姿で寝るのも問題がある。

 

 警備システムを全て乗っ取ってるから、侵入者……この場合正規のIDパスを持った者もふくめて、誰かが入ってくれば私に一報が入る。

 でも、悠長に制服を着てる暇があるかわからない。

 制服を抱えて、下着姿で退散することになったら、考えるだけでも恥ずかしいっての!

 

 私はスカートを抑え、短パンなしの心もとなさに顔が赤くなるのがわかった。

 

「もう、仕方ないかー。従業員が出社してくる前に、起きないといけないし、悩むよりねましょう。おやすみなさーい」

 

 学園都市企業謹製のシワになりにくいシャツを信じて、オゾン臭の残るベッドに潜り込んだ。

 

 + + + + + + + + +

 

 翌日。

 

 早めにタイマーをセットしてあったラップトップのアラームで起こされた。

 仮眠室の壁にかかった鏡をみると、見事に寝ぐせがあった。

 まるで小さいころにあった、アホ毛とからかわれた形になっている。アホ毛と言った男子は、特殊なやり方で黙らせた。

 

「こっちの問題もあったわよねー」

 

 寝ぐせを何度も撫でて、直らないので諦める。

 まさかシャツは無事で、髪の毛がこうなるとは……。

 

 私は仕方なく、畳んでおいたサマーニットを着た。髪は手櫛で整え、いつも通り髪留めで分け目を固定する。

 

 さてと。倉庫の従業員が来る前に、退散しますか。

 私は最低限の身支度をして、仮眠室から出た。

 廊下の小さい窓から、のぼったばかりの朝日が差し込んで、私の寝ぼけ眼を刺激する。

 

「ん……。こんな早起き、いつぶりかしら」

 

 だいたい黒子に起こされるので、ひとりで起き出すこんな気分も懐かしい。

 非常口の電子錠を開け、外の様子を防犯カメラで確認してから非常階段へと出た。 

 

 周囲に人はいるけど、この非常階段を視角に捉えるような場所には誰もいない。

 小走りに階段を駆け下り、下にくるころには軽く汗ばむ。

 

 あー……シャワー浴びたいなぁ。

 

 私は通りに出てから、ラップトップを起動。

 近くにシャワーのあるネットカフェがないかと探す。

 

 ……あった。女性専用エリアもある。

 

 ちょっと歩くけど、朝の散歩と考えればいいか。

 人がまばらなビル街を抜け、ネットカフェのある雑居ビルに足を踏み入れる。

 

 早朝であれば、ネットカフェも学生の利用を拒まないはずだ。

 それに不信に思われても、「ちょっと寝癖を直すの忘れて、電車にのっちゃって」とでもいえば、いいわけになる……はずだよね。たぶん。

 

 怪しまれたら、そんな言い訳をしようと受付をしたら、なんと自動受付で必要がなかった。

 

 か、肩透かし。いえ、こんな店舗ならば、何かの時は誤魔化せるか。

 ハッキングして、会員登録や身分証提示を飛ばせるかもしれない。

 

 流石に泊まるつもりで、昨夜に来ていれば自動受付でも年齢確認をされたと思う。

 でも朝の6時であれば問題なかった。

 会員登録を「後で」とタッチパネルで選び、無事、自動受付を通過。

 

 ロックされてた内扉の鍵が解放されたので、私はロビーの中へ入った。

 ロビーには出社しようとしていたサラリーマンがいて、私と入れ替わりで出て行った。

 もう一人、ロビーに学生くらいの男の人がいたが、ジュースを取りにきただけのようだ。

 私をちらりと見て、ちょっと驚いた様子でこそこそと個室に入って行った。

 ……なんで、あんな驚き方すんの?

 

 まあいいか。

 それよりシャワーは……ああ、女性エリアの階にもあるのね。

 ロビー奥のエレベーターに乗って、女性専用階に移動。エレベーターを降りると、小さな部屋になっていて、またドアがあった。

 受付で受け取ったカードを、読み取り機に通すと内ドアが開いた。

  

 シャワーは入ってすぐ脇にあった。

 またもドアを開け、中に入るとシャワー室が4つ並んでいた。

 ひとつだけ開いていたので、すぐにバーコード決済で支払って利用する。

 

 脱衣所は共有なので、貴重品は貴重品ボックスに入れるようになっている。一先ず、見つかったらヤバいあの子の武器と無くなったら困るラップトップ型端末……それに、缶バッジをしまった。

 

 服を脱いでロッカーに収め、半透明のドアを開け、シャワーを浴びた。

 

 くぅ~、熱い水流が染みるぅ!

 

 やっぱ、あの子たちの肌、すごいわねー。ボディケア直後のシャワーって感じ。寸分変わらない身体なのに、張りツヤしっとり感は私より高い。

 ……寸分も変わらないわよね?

 

 そっと胸を揉んでみると、なんだかちょっと胸のふっくら感が違うような。

 

 そ、そそそそーんなはずないわ。みんな私のクローンなんだから、同じよ、そう同じ。

 きっと私も成長したのね、うん。もしくは気のせい。

 

 時間制限があるので、いくらか急いで身体を洗い、髪はやや念入りに洗った。

 時間いっぱい利用し、さっぱりした身体で脱衣所に戻る。

 

 怪しい新品の縞パン履き、気分も一新。

 

 履いていたパンツは、スポーツブラとともに洗濯機へイン。

 

 なんとここ、下着用洗濯機の貸し出しがあるのだ!(有料)

 小型の乾燥機も設置してある!(有料)

 

 さらにヘアケア用品の貸し出し!(有料)

 歯磨きセット!(販売物)

 ネイルキット!(有料)

 選べる基礎化粧品のパック!(各社お試し価格)

 暖かい朝ごはん!(追加料金)

 

 豪遊‥‥! 私、豪遊!

 

 ……って、おい、私。こら、御坂美琴。ほぼ全額使ったぞ!

 

 ネ、ネイルはいらなかっただろ、私ぃ〜〜!

 基礎化粧品も削れば、ランチくらい食べられたのに〜〜。

 違うの、この身体はあの子に返してあげるつもりだから、ケアを欠かせないの。

 絶対、荒れた肌なんかで返したら、あの子のことだもん。

 

「まさかここまで不摂生だったとは……と、ミサカはお姉様の女子力低下を嘆きます」

 って、言うに違いないから、仕方なく。

 

 自分に言い訳しながら、サービスのドリンクバーではなく自販機でお高いジュースを購入……あ。

 ち、違うの! これは違うの!

 暑いから、外は日中暑いから、飲み物は必須なの!

 ちょっといいジュースで、あの子の身体を健康管理してんの!!

 

 ごくごく……ごっごっごっ、ぷはぁー!

 

 ………はあ、自己嫌悪。

 

 私、お金の管理こんなに下手だったのね。

 こんな時、あいつだったらなんていうかしら。

 そうね。

 

「ジュース飲んでんじゃネーヨお姉様、とミサカはお姉様のいじましい姿に失望します……かしら?」

 

 




10031号から9982号への変更理由。

見切り発車だったので、各所のctOS祠に、1号から10031号がいて、それを集めるストーリーにしようと考えてました。
ですが、あのど□□の48体より多すぎるので、8月18日の執筆してた俺しっかりしろ!と19日の俺が正気になって修正しました。
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