とある妹達《レギオン》の監視役《ウォッチドッグス》   作:大体三恵

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毎日更新の限界!

朝倉・オリビア・萌亜はオリビアというミドルネームがあるので、両親のどちらかが外国人だと思いますのでそう捏造します。

洗礼名ってことはないと思いますが、とりあえずそういうことで。

……三人称の地の文ではオリビア表記か萌亜表記かどっちがいいのでしょうね。
見やすくなるので、オリビアで行きます
訂正しきれず、混在しているかもしれません。


朝倉・オリビア・萌亜

 朝倉・オリビア・萌亜には秘密がある。

 

 オリビアは小学校6年生の夏休み。彼女はトラックに撥ねられた。

 

 夕暮れ時、速度超過と過積載をしたトラックは、カーブを曲がりきれず、歩道を歩いていた塾帰りのオリビアを撥ねた。

 

 時速60キロメートルを超すトラックに真正面からぶつかりながらも、彼女には意識があった。

 吹き飛び、転がり、ガードパイプを突き破り、植え込みの枝を折り、公園のゴムチップ舗装歩道の上を20メートルほど転がった。

 

 痛みはないが、少し目が回っている。

 状況を理解したり、怪我の確認をするまえにオリビアは立ちあがろうとした。──と、視界に入る異形の手。

 

 それは立ち上がるため、両手をついた自分の手だった。

 (おぞ)ましい鉤爪と、そこから伸びる肘まで覆う赤黒い硬質化し肥大した皮膚。

 驚き、身を引いた拍子に、両手の鉤爪の先がゴムチップの舗装歩道をえぐる。

 

 慌てて両手を振って、鉤爪を振り払おうとした。

 腕になにかが張り付いただけだと思って、そんな行動をしたのだが、鉤爪の先まで体の一部として振り回す感覚まであった。

 

 闇雲に振り回したため、鉤爪が公園の街灯に当たった。

 チュインッ……と、小気味いい音がして、街灯のスチール柱が鉤爪によって抉り取られた。

 

 オリビアの頭上に向け、折れて倒れ込む街灯。

 混乱していて動けないでいるオリビアの額に命中し…………、そこを支点としてスチール製の柱がくの字に曲がった。

 

 当たった感触は確かにあった。

 しかし衝撃は額から首元で吸収され、柱の重みでオリビアが押し倒されるようなこともなかった。

 まるで、身体の外側で支えられているような感触だった。

 

 くの字に曲がった街灯は、バランスが変わって捻るように公園の歩道に落下した。

 

「大丈夫ですか……うひゃっ! ば、ばばば化け物!」

 

 この光景を見ていた者がいた。

 撥ねたオリビアの様子を見ようと、トラックから降りてきた運転手だ。

 

 彼はオリビアの姿を見るなり、顔面蒼白にして背を向け逃げ出す。

 そしてトラックに乗り込み、外れたバンパーを引きづりながら、オリビアを残して走り去ってしまった。

 

 状況が飲み込めないオリビアは、周囲を見渡した。

 近くに大型のゴミ箱があった。

 側面がピカピカのステンレス製で、鏡状になっている。

 

 そこには、一対の捻じれた巻き角を額から生えた悪魔が写っていた。

 首元にも硬質化した皮膚があり、それが服に隠れた身体の中にも及んでいることが窺える。

 両手は学生カバンよりも大きな手のひらとなり、そこから凶悪な鉤爪が5本伸びている。

 

 スカートから伸びた両足も例外ではない。

 タイツを突き破って、硬質化した皮膚がゴツゴツと表面を覆っている。 

 

 敏いオリビアはすぐに気がついた。

 

 この悪魔は私だ。

 

 朝倉・オリビア・萌亜には秘密がある。

 

 悪魔であるという秘密が。

 

 + + + + + + + + +

 

 なんとか人目につかず帰宅できたオリビアは、すぐに母親に相談した。

 隠すことなく相談できた理由は、両親との信頼関係が特に高かった理由と、母方の家系の特殊な事情にあった。

 

「そう。萌亜には受け継がれたのね」

 

 家系の特殊な事情により、母親の理解は早かった。

 オリビアもやっぱりという気持ちが、どこかにあった。

 母方の実家では、やや特殊な宗教的な風習が色濃く、不思議なことも何度か経験があったからだ。

 

「でも大丈夫よ、萌亜。あなたは悪魔なんかじゃないわ」

 

 オリビアの不安に、母親はいち早く気がついた。不安を払拭するため、いくつか出生地の秘密を明かした。

 かつて、御坂様と呼ばれる雷神が村に降り立ち、いくつもの恩恵を残して行ったこと。

 経緯はイレギュラー的、そしてごく稀ではあるが、村では不思議な力を持つ人々が現れ始めたこと。

 母親は不思議な力を持たないが、親族には数人いることなど。

 

 一方で、父親は困惑していた。

 彼はフランス系アメリカ人で、母親の出身の村の風習どころか、日本にそれほど詳しいわけでもない。

 

「君が言っていた村の風習か」

「あなた……」

「わかっている。君と結婚するとき、村の決め事をできるかぎり優先すると決めた。逆らうつもりはない。だが……」

 

 父親は一緒に村にはいけないと断言してしまう。

 仕事の都合などがあり、無理もない。

 

「萌亜。あなたのそのお姿は、御坂様のお姿にそっくりなの。村ではそう扱われると思うけど……ごめんなさい。覚悟しておいてね」

 

 いったい、どのような運命が待っているのか。

 

 小学生だったオリビアは戦々恐々たる思いで、江馬家の門の潜った。

 

  + + + + + + + +

 

「そういうようなことで、御坂様の生き写しということでお祭りでは輿に乗ったりして、今はここから1時間ほどバスに乗って、麓の高校に通っていますのよ。これが一番、村での生活で難儀なものでして……」

 

「わりと何もなかったみたいですね、先輩」

 

 あっけらかんと、お嬢様然とした態度の朝倉先輩が、一番大変なのは通学時間と断言した。

 経緯を聞いていたら、どんな因習村の話が始まるのかと思っていたけど、単に能力を隠して暮らすため都合のいい実家に戻っただけなのね。

 

 まあ、バス通学で1時間は可哀想だなぁ…………。

 

「ただ父と離れて暮らすことになってしまったのは、残念ですわね」

「ああ、それはちょっとねぇ」

 

 学園都市の生活は、一部の例外を除いてほぼ全員が両親と離れて暮らしている。

 それと比べればなんてことないだろうけど、誰もがそんな特殊な環境である場合と、母と母方の親族がいるだけで山奥に来るのでは話が違う。

 

「朝倉先輩は、司さんと同じ江馬姓を名乗っているんですか? 朝倉姓はどうしたの?」

 

「母の旧姓を名乗ってますが、朝倉姓でなくなったわけではないんです。もしも小学校時代、街中でこの姿を見られていた可能性を考え、少しでも探られにくいように、事情を知っている高校で角爪と名乗ってます」

 

「ああ。高校もこの村の関係者がいるのね」

 

 村の秘密を隠すため、協力者がそこそこいるという。

 私がいなくなった後、ごく稀ではあるけど能力を使える物が増え始め、戦時中になると怪しい宗教として取り締まられることのないように、秘匿し始めた。

 その際、内外に協力するものを増やしたのだろう。

 

 そうこうしているうちに、土間にいたおばあさん……朝倉先輩の祖母にあたり、司さんのお孫さんにあたるおばあさんが広間に戻ってきた。

 

「司さんは大丈夫ですか?」

 

「ええ。歳のせいもあるけど、むしろ御坂様にお会いできたって喜びと興奮の方で倒れたようなものよ」

 

「能力のせいではないんですね?」

 

「多少はあるでしょうけど、結構普段からビリビリってやってますから」

 

 案外、気軽に放電してたみたいね、司さん。

 

 110歳の司さんの身体に、問題がなくてよかった。

 と思う反面。

 私自身の問題もあった。

 

 まず、村の関係者とはいえ、ほとんど事情を知らなかった警官であるトレンチコートのおじさんに私の正体と過去の出来事がバレてしまった。

 

「ううむ。この村にそんな秘密があったとは……」

 

 トレンチコートのおじさんはおじさんで、どうやら私のことより出身地の思わぬ秘密に困惑しているようだった。

 

「平太郎は小さいうちに東京へいったからのぉ」

「平太郎と呼ばんでください」

 

「はっはっは。娘さんはどうしておるかね」

「ごまかさんでください、住職。娘は東京の女子校に職員として勤めております」

「そうか、そうか。あの鬼火っ子も息災なようじゃ」

 

 司さんも、江馬のおばあさんも、現住職も事情を知っていたようだが、トレンチコートのおじさんは何も知らなかったようだ。

 住職に名前を揶揄われ、娘の話を振られたりと、和やかな雰囲気に戻った。

 

「しかしぃなんだ。わしのじいさんの時代から、この村にそんな不思議なことはあったことも驚きだが、それはそれとして」

 

 和やかな雰囲気になったとはいえ、私のことは捨ておけないのだろう。

 探るというより、困惑という表情で私を見てくる。

 

「そっちの子が今、話題の雷神ガールとはな」

 

「はい、そう呼ばれてます」

 

 もうなにかといろいろ全部バレた。

 でっかいお屋敷の広い座敷の上座に座らせられて、借りてきた猫みたいな気分になって私は小さくなるしかない。

 

 このおじさん、まあまあ偉いお巡りさんらしく、私に職務質問のひとつくらいしたいそうだけど、「悔しいが政治的な問題でできん」と言い出した。

 すでに上からお達しが届いていて、雷神ガールを念頭に入れ情報を共有しつつも、深く探るなと

 

 とはいえ、こうして同席して、いろいろ情報を得ようとしてるところはなかなか強かだ。

 

「あー、やっぱりここで見聞きしたこと。報告するんですか?」

「聞かれたら……と、言いたいが、明かせば先祖代々、村での話もせねばならんからな。いかんともしがたい」

 

 真面目な警官と思ったけど、当たり前のように人情もあり何事も四角四面で法が全てという人ではないようだ。

 顔は面白いくらい四角四面だけど。

 

「平太郎。隠し始めたのも戦中の問題じゃから、今の能力者について隠せば、過去にそういった宗教があったという程度にならんか?」

 

「平太郎と呼ばんでください。いいですか、住職。犯罪と違って、政府が興味を持ったという事柄はそうはいかんのです。もう世間は大騒ぎになっておりますからな。犯罪は露見せねば探るものはおりませんが、国家として情報を得ねばならんという事案は調査が入るもんなのです。それにマスコミやネットにでも漏れたりなどしたら、それこそ目も当てられんことになります」

 

 トレンチコートのおじさんは、故郷を踏み荒らされることを懸念しているらしい。

 司さんは高齢だし、せっかく山奥で不便な生活までして能力を隠している朝倉先輩に迷惑がかかる。

 

 そのあたりを鑑みて、トレンチコートのおじさんは板挟みになっているようだ。

 

「むう。折衷案だ」

「どんな?」

 

「御坂美琴といったか? 貴様が道理に背いたようなことをしなければ、胸のうちにとどめておこう」

 

「道理に背くようなこと?」

 

「たとえば乱用して人様に迷惑をかけたり」

 

 目を背ける。

 

「たとえば電撃で人を傷つけたり」

 

 顔を背ける。

 

「……たとえば公共物をむやみやたらに破壊したり」

 

 身体ごと背ける。

 

「貴様、どんだけ背いとるんだ。なにをした。吐け!」

 

 ついにトレンチコートのおじさんの追求が始まった。

 

「ノ、ノーコメントで」

 




掲示板回書くのが嫌すぎて、ここまで書き溜めしてました。
他にも別作品に逃げて、新連載数話分が書き溜まってます。

・朝倉・オリビア・萌亜 過去編にて常盤台中学三年生。水鏡派所属。

とある科学の超電磁砲の過去編で登場した美琴の先輩。
角質を変化させて装甲にし、その姿は山羊の角に大きなかぎ爪姿と、お嬢様らしからぬ状態になります。
美琴「せんぱーい…」と圧をかけられたくらいで、会話はほとんどしてませんが、能力の行使時に角が生えるという特徴があるため、雷神御坂と同一視されて村でゆる~く崇められてる設定にしました。

雑誌掲載時は「朝倉」ではなく「角爪」という苗字でした。
特に意図はないのでしょうが、苗字が変わったというメタをネタとしてこちらでも採用しました。
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