とある妹達《レギオン》の監視役《ウォッチドッグス》   作:大体三恵

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Mobile Police Z(enigata) ☆

 深夜になれば、やっと肌寒くなる近年の10月。

 府中街道を北上する大型トレーラーと追随するトラックがあった。

 

 追随するトラックの荷台には布の幌がかかり、積み荷は見えない。

 大型トレーラーはキャリアーと呼ばれるレイバー輸送車である。

 キャリアー部には、直線的的な四肢に対し、エッジの少ないボディと頭部を持つレイバーが積載されていた。

 

 シャフト・エンタープライズ社(SEE)製高性能レイバー。サターン・U。

 

 警備用として四半世紀前には旧型機と化していたSEE製サターンに、同じくSEE製軍用レイバーであるウーフーの技術をフィードバックさせて近代化を図った改修機である。

 

 コストパフォーマンスの高さと、枯れた技術の極致を組み合わせた傑作であり、各国各所の要所で使われている実績があった。

 しかし、今日を持って、その経歴と印象に傷がつく事件が起きる。

 

 中央公園の駐車場に停められたキャリアーから、サターン・Uがその身を起こす。

 隣に止まっている4tトラックの荷台から、貴重な荷物を器用に取り出し抱える。その間に、キャリアートレーラーやトラックから黒装束の男たちが銃器を片手に降り立つ。

 日本の安全を守る者たちは何をしているのか?

 およそ日本とは思えない光景であった。

 

 銃器を持った存在が跋扈し、深夜の公園を警備レイバーが平然と歩く光景は異様だ。

 近代化改修を得て、ほぼ無音で駆動するサターン・Uは、車幅灯などの保安部品を切っているため、闇に浮かぶ巨人として見えた。

 公園の木々を目隠しに、集団はジリジリと北上する。

 

 その先には東京都民に給される水道水の浄水場。東村山浄水場があった。

 かつてあった新宿の淀橋浄水場の二倍にあたる濾過水量を誇り、東京総配水量の三分の一を担う重要拠点である。

 

 そこへ迫る武装集団と、危険なカプセル型タンクを抱えるサターン・U。

 大惨事は目の前に近づいている。

 気が付いているのは、近くの住宅で鳴く犬だけだ。

 鎖につながれた犬など、集団には脅威にも問題にもならない。

 集団は飼い犬を無視して、新青梅街道を越え、サターン・Uが浄水場施設に隣接する空堀川の遊歩道へ足を踏み入れたその時──!

 

「バウッ! ガワワンッ!!」

 

 その時、一際大きな犬の鳴き声が響き渡った。

 大型犬だの、犬の集団だというレベルの話ではない。

 衝撃波を感じさせ、空堀川の河津桜の枝を揺らすほどの爆音だった。その衝撃波で武装集団がよろめき、サターン・Uのボディが、ビビリ音を立てたほどだ。

 

 同時にサーチライトでサターン・Uと武装集団が照らされ、爆音の犬の鳴き声と光で武装集団の全員が怯んだ。

 

 空堀川を跨ぐ西武多摩湖線の橋脚と、新青梅街道のアンダーパスに隠れていた警察の一団が、サーチライトを持って武装集団を照らしていた。

 

 さらにイングラムmarkⅢが二機、西武多摩湖線の盛土を越えて姿を現し、パトランプで周期的に周囲を赤く照らす。

 加えて、一際異様な動物型のレイバー。

 

 近年、警視庁が「非常に特異な事情で導入した」猟犬型ハンターウルフ二体のうち一体、アレスが今にも飛び掛かろうと低く構えて唸り声をあげている。

 

 markⅢだけならばまだしも、さすがにハンターウルフの存在にはテロリストも怯んだ。

 加えてイングラムmarkⅢの肩に乗るトレンチコートの刑事。銭形警部が御用提灯を片手に、拡声器で怒鳴る。

 

「きさまらぁ! 逮捕だーっ! とうっ! いくぞ~、ワンちゃん!」

『ガウッ!』

 

 

【挿絵表示】

 

 

 しかも彼はレイバーの肩から飛び乗り、ハンターウルフの背に乗る。

 機械の大型獣を意のままに操り、特攻してくるトレンチコートの銭形警部はハンターウルフを超える脅威の対象だった。

 正気ではない!

 

 怯えた武装集団は、逃げるより銃を乱射した。

 

 ハンターウルフにとって個人携帯銃器など豆鉄砲。浄水場という閉所と機器が並ぶ場所を制圧する目的で、彼らはよくてサブマシンガン程度しか持ち合わせていない。

 サブマシンガンの拳銃弾を連射する程度ではハンターウルフは怯まない。なんならほとんど当たりもしない。

 当たらないほど高機動回避をするハンターウルフに、しがみつける銭形も異常である。

 

 体高*14メートルを超える高さから飛び降り、乱射する男を踏み倒して確保。

 敵陣のど真ん中に降り立った銭形警部は、そのまま近くの二人を十手で叩きのめし、その向こうにいた男は投げ手錠で足を絡めて止め、

 

 まさに一瞬。

 

 二機がかりでサターン・Uを制圧する数分の間に、銭形警部は十人に及ぶ武装集団を無力化させた。

 いくらハンターウルフの突撃で怯ませた後とはいえ、脅威の捕縛術である。

 

 一方、サターン・Uへの対応は慎重だった。

 この機体が小脇に抱えるタンクは、危険な薬品であり貴重な証拠でもある。

 

「サターン・U搭乗員に告ぐ。直ちにレイバーを停止させ、機体からおりなさい!」

 

 イングラムmarkⅢ一号機からの警告。

 これを無視して、サターン・Uは肩から電磁ナイフを取り出そうとしたため、回り込んでいたイングラムmarkⅢ二号機が素早く駆け寄り抜刀を手で抑えて防いだ。

 

 その動きは比較的高性能と評価されるサターン・Uのどこか機械的な動きに比べ、はるかに素早く的確で滑らかかつ繊細で、人の動きを見事に再現した機動であった。

 

 もはや武道の達人と、体の動かし方を覚えたばかりの子供の動きを比べたかのようだ。

 

「抵抗とみなす!」

 

 短い一号車からの宣言。直後に駆け出す。

 電磁ナイフの抜刀を諦めて、二号車から離れようとしたサターン・Uの大腿部の関節部に向けて、電磁警棒を突き込む。

 

 片足の制御を失ったサターン・Uは、その場に膝を付き、空堀川の水のなかにタンクを持たない手をついて転倒を回避する。

 ここでサターン・Uは悪あがき。

 脇に抱えていたタンクを、浄水場へ向けて投げ込もうとした。

 

「アレス! ゴーっ!」

 

 一号車からの指示。

 駆け抜けた後、戻ってきていたアレスが3機のレイバーを飛び越えつつ、投擲されたタンクを口で加えて着地した。

 

 このままハンターウルフは楽しそうに駆け抜けて、着地した空堀川で水浴びを始めた。

 まるっきり、大きな犬である。

 

 二号車はサターン・Uを、素早く取り押さえて完全に制圧。

 この場での抵抗は止まった。

 

「おー、よくやったよくやったアレス。こっちこい」

 

 一号車が呼びかけるとアレスは嬉しそうに駆け寄り、タンクを渡してお礼を求めてちょこんと座る。

 

「えらいえらい。さすがアレス! よくできましたー」

「ワン!」

 

 一方、銭形によって制圧された武装集団は、他の警官隊によって確実に確保され、手錠をかけられて引き立てられる。

 

 彼らは日本人だけでなく、さまざまな国籍の集団であった。

 

「むう。やたら手応えがないと思ったが、カラーチャートの傭兵ではないのか?」

 

 覆面を剥がされた集団の顔を確認し、銭形はカラーチャートの傭兵カタログにない顔ばかりだと思案する。

 

「ふむ。どうやら氷川はカラーチャートから決別されて、そこらの素人を雇ったか」

 

 銭形は素人と判断した。しかし、素人と呼ばれた彼らも戦闘経験がないわけではない。

 だが、経歴は非常に怪しい。

 海兵隊に数ヶ月所属していただけで、エリートを(うそぶ)いてはいるが、それでも正規の戦闘訓練と、戦地での戦闘経験を収めている。

 

 そんな集団が皆、銭形に怯えてしまっていた。

 

 そして、その畏怖は正規の日本警察官へも電波していた。

 

 一号車搭乗員である戸西巡査は、銭形の活躍を見て戦慄していた。

 

「ひえ……、なにあのおじさん。あの人離れした動き、女子校時代の寮監を思い出すよぉ……」

 

「どんな寮監だよ、それ……。ていうか警部をおじさんっておまえ……」

 

 二号車搭乗員の成瀬巡査も、銭形警部の鬼神のごとき活躍には驚いていた。

 しかし、彼はもともと警視庁内勤であったため、銭形警部の活躍の噂は聞いていた。同僚にも直接稽古をつけてもらった者もいるため、その人離れした体力と格闘能力も知っている。

 なので戸西ほどの驚きは感じていない。

 もちろん、あれほどとは思ってなかったが……それでも心構えがあった。

 

「ところで、なんであのおっさんの指示を聞いてるんだ?」

 

 成瀬巡査は、そんなことよりとハンターウルフのアレスと、それを「でかいわんころかと思ったが、きさまなかなかやるなぁ」と褒める銭形を指さして戸西巡査に尋ねた。

 

「アレスはいい子なのよ」

「……それでいいんだ」

 

 戸西巡査の自慢げな返答をうけ、成瀬は気だるく納得した。

 

 気を抜いた成瀬巡査のイングラムマークⅢのモニターに、銭形警部へ慌てて駆け寄る警官の姿が映し出される。

 

「銭形警部! 朝霞浄水場の警戒にあたっていた埼玉県警より報告です!」

「なんだ!」

「埼玉県警警備部、および県警レイバー隊は、朝霞浄水場へ近づく武装集団と接触。これを制圧したとの報告です!」

「そうか!」

 

「ですが、薬品タンクを朝霞浄水場へ投げ込まれたとの報告です!」

「なんだと!」

 

 朝霞浄水場に配置されたレイバー隊は、一世代前のパトロールレイバーである。しかも、こちらのようにアレスというハンターウルフという存在がない。

 なにより銭形がいない。

 その差が出たようであった。

 

「そ、それでどうした!」

「はっ! 薬品が拡散する前に、雷神ガールが飛来! 浄水場へ飛び込んで、電気分解を持ってこれを無力化させたという話です!」

 

「よ、よかった…………って、良くはないわ! なにをやっとるんだ御坂……いや、雷神ガールは! 助かったけど! しかし、何をやっとるんだ〜〜〜〜〜〜っ!」

「わおーーーーーーーーーん!」

 

 複雑な立場の銭形は、複雑な気持ちで、複雑な咆哮を放った。

 アレスも仲良く咆哮という遠吠えを、銭形と一緒に仲良く夜空に向かって放った。

*1
地面から胴回りの一番高い位置。一般的に肩甲骨の頂点




銭形がイングラムの肩に乗って、御用提灯を持ってるシーンの挿絵を描きたかったけど、連載3つ抱えたので時間が……そのうち書きます。

・ハンターウルフ 警視庁仕様 【ゾイド×パトレイバー - Code Name B.U.D.D.Y.】 より

東京都伊豆諸島の今は無人島となった

惑星Zi出身のはずですが、どうして地球にいるのかまだ謎。
本作品では、ハンターウルフの構造体金属の一部は、とある世界でたびたび出てくる不在金属(シャドウメタル)とほぼ同一か、振る舞いが近似属性の金属とします。
過去に置いて御坂美琴と御坂妹たちが不在金属(シャドウメタル)を大量に残して去っているため、ハンターウルフの研究と解析が進んでおり、その異質性は比較的抑えられて世界と日本に受け入れられている設定としています。

作者は装甲巨神Zナイトは知らないので、完全スルーです。ていうか作者は旧ゾイダーな上に、Zナイトとか最近知りました。
現段階では、異星の生物とは判明していない段階とさせてもらってます。
普通にゾイドコアが古代に飛来?して、そのまま金属生命体として地球で誕生してるので、起源は異星由来の地球出身ですね。
鉄腕バーディーのアルタ人と同じで土着していくと思います。

ハンターウルフのハウリングガンはデチューンさせてもらってます。
本能解放はしてないはずなので、ソニックブースターは発動できないか別物かと思います。漫画の中でそれっぽいことしてました。

異星由来と判明すれば、大統領も歓喜することでしょう。

…あ、奇しくもタイトルがゾイド×パトレイバー - Code Name B.U.D.D.Y. でコードネーム「バーディー」ですね



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