とある妹達《レギオン》の監視役《ウォッチドッグス》   作:大体三恵

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7000億のガレキ

 私と氷川の対決は、ctOSに負荷をかけるため、わざと公開状態にさせてある。

 防犯カメラや街角カメラ、インフルエンサーやマスコミのカメラ、野次馬の配信。

 

 おかげで世界中のトラフィックは増大の一途。

 話題の激震地であるここなんて、重くてショートメッセージも送れないでしょうね。

 

 ctOSを補助輪にしてる氷川には、ことのほかつらい状況でしょうね。

 目も見えず能力も上手く扱えず、不利を悟ったのか氷川が逃げ腰になった……その瞬間!

 

「いかん! 囲め! 護送車! 封鎖しろ!」

 

 銭形のおじさんが、街路樹の上から指揮を取る。

 護送車やパトカーが、私と氷川を囲むように並び始め、警察のレイバー4体が高さをカバーする。

 これで私はともかく、氷川は簡単には逃げられなくなった。

 

「はは、いいじゃない。警察車両デスマッチってところね」

 

 逃げ腰の氷川に向け、牽制の電撃!

 これは能力で防がれるけど、同時にまばゆい閃光が放たれる。

 氷川はこれをもう直接見てしまうなんてことはないけど、顔を背けて目まで瞑っていては私を姿を確認することなんてできない。

 

 一気に間合いを詰める!

 

「隙ありっー! でりゃーーーっ!」

 

「ぶぉっ!」

 

 目を閉じてそっぽを向いている氷川の横っ面へ、ジャンプしながらビンタを叩きつける。氷川は無様な声をあげた。

 これは美都(ロキ)の分!

 

「まだまだっ!」

 

 美都のお父さんの分のハイキックを一発。

 よろめいていた氷川の巨体が、大きくぐらついて膝をつく。

 

 氷川が体制を立て直す前に私は腰の入った回転を加え、得意のハイキックを後頭部へと叩き込む。

 ついに氷川の巨体が地面へと倒れた。

 

 畳み掛けるように、私は電撃を何度も何度も何度も放つ。

 

「これはセンギョウ和尚の分! これは明子さんの分! これは操さんの分! これは牛丸さんの分! これは高瀬さんの奥さんとお腹の赤ちゃんの分! これは江馬のおじいさんの分! これは冬畑ちゃんの分、これはこれはぁっ…………」

 

 何度も何人も何回も村の人たちの名前を叫び、私は小さくまるまって防御体制になっている氷川に電撃を撃ち込み続ける!

 

:> こ、こわー

:< おしおきのレベルたかい

:> さっきのお願いキャンセルで

:< 俺もキャンセルで

:> 踏んでください

:< 天罰だ! ざまぁっ!

 

 さまざまな反応が私の眼前を通過していく。

 それが私の雷撃回転速度を上げていき──

 

「いかん! そこまでだ! 御坂美琴っ!」

 

「……っ! って、名前、呼んでんじゃないわよ!」

 

 銭形のおじさんに名前をフルネームで叫ばれ、私はやっと電撃を撃ち込むのやめた。

 おじさんは街路樹に引っかかり、ちぎれた縄が絡まっている状態なのに私を止めてくれた。

 あとARゴーグルに並ぶネットの反応を改めて見直し、ちょっと冷静になった。

 

「なによ! なんか私が弱いものいじめしてるみたいじゃない!」

 

 反撃してこない、というかできない氷川を怒鳴りつける。

 警察も命令がなからだろうけど、私を警戒しているのか近づいてこない。

 

 氷川は身体中からぶすぶすと煙をだしているけど、別に命に別状はないはずだ。

 その氷川が丸まった隙間から顔を向け、トカゲのような形になった目を私にむけてきた。

 

「き……き、貴様のような子供にはわかるまい。このプロジェクトにかけた金額を」

 

「へえ……。いくらかけたの?」

 

「100億に迫る金が…………かかっているのだぞ! 想像できまい!」

 

「7000億円」

 

 氷川が具体的な数字をだしたので、私は大雑把な数字を提示した。

 

「……む? な、なにが?」

 

「7000億円よ。私が潰してきた研究プロジェクトの総額とか、気に入らないやつらを吹っ飛ばした被害額とかもろもろ」

 

 氷川が何をいっているんだ、という顔をした。

 トカゲ顔なんでよくわかんないけど。

 

 抵抗する気がないみたいだから、語ってあげようかな。

 

「きっと投資で巻き込まれて破産した人もいるでしょう。路頭に迷った研究者だっていると思う。あと研究妨害とか関係なく、道路もボロボロにしたし、製圧所の天然ガスタンクも3つくらい吹き飛ばしことも……。そうそう、攻撃衛星も1つ落としたことあるわね。あと不本意だけど、イヤなヤツに操られて街の一区画くらいガレキにしちゃったなー。ほかにもいろいろ入れたら、1兆円を超えるガレキを作ってんのよ、私」

 

 軌道エレベーターも倒壊させたけど、私の分担は3分の1くらいね。これは言わなくてもいいか。

 

「な、なにを言っている」

 

「お金の話のするなら、100億なんて子供のお小遣いみたいな金額から、せめてあと一桁はギアをあげてきてから言いなさいッ! つってんのよ!」

 

 氷川は青ざめる。そしてすぐに怒りで赤くなり、力を解放して黄色く光る。

 なによ、コイツ。信号機?

 

「き、貴様ァッ! 貴様などにッ! 貴様のようなっ! この私の悲願っ! 潰されてなるものかっ!」

 

「そうッ? あんたのお小遣い! いらないけど私のスコアにさせてもらうわ!」

 

「死ねぇーーーーーーッ!」

 

「死ねって言えば、殺せる能力かってのっ!?」

 

 空気中に1%も満たないアルゴンガスを集め、小さな不可視の攻撃を放ってくるけど、それらはARゴーグルで視認できる。

 私が周囲一体に、微弱な電子の運動を繰り返させてるから、不可視の攻撃がわずかに光る。

 だからもう、これは不可視の攻撃ではない。

 

 ARゴーグルの補助がないと見えないけど、これを私は電撃で閃光へと変える。

 アルゴンは不活性だけど、電子にぶつかると容易にその軌道を変えて光を放つ。

 そうやって、氷川の攻撃を完封してあげた。

 

「ぬぉおおおおっ!」

 

 くやしさか、苦し紛れか、氷川が怒号をあげて体を膨張させる。

 どんどんと人間をやめて、人肌だった鼻や額、胸や肩までもが鱗で覆われていく。 

 

「はは、『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの』とか、いうけど。アンタと私の姿を見るとさ、『だが姿は人の身に留まらず』って感じよね」

 

 あまりに無様な姿を見て、私は怒りが治ってしまった。

 今の私が放てるレベルの電撃に、コイツは耐えられるかしら?

 哀れだから、そろそろ気絶させてあげましょう。

 

 そう思って、大電力の電撃をまとったその瞬間。

 

「……っ! げほっ、がはっごほ、ごほっ!」

 

 私は急に胸の苦しさを感じてせき込んだ。

 喉の奥、胸のあたりがむずむずとする……まさか、風邪!?

 

 能力で作った電撃が、消えて、いく……。

 

 あ、なんかめまいが、急に……うそ、そんな……ガチで風邪?

 こんな急に体調が悪くなるなんて……。

 

 って、思い当たることしかない!

 

 10月の末の深夜に水の中に飛び込んで、電磁浮遊で2キロメートルくらい高速移動。

 着替えてお風呂に入ったけど、夜更かしだってした。

 その上、さっきまでビルの屋上で風に当たってたし……。

 

 朝から熱っぽいとはおもったけど……。

 

 こっちの動きが止まったことを、氷川は見逃してくれない。

 

「死ねぇっーーーー!」

 

 芸のないことに、氷川はまた同じ叫び声をあげて殴りかかってけど……。

 これ、ピンチかも。

 




7000億円は適当捏造です。
でもフェイズ5.4と軌道衛星と軌道エレベーター(三人割り)だけで大分近い数字にいくと思うんですよね。
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