とある妹達《レギオン》の監視役《ウォッチドッグス》   作:大体三恵

8 / 65
あ…いけね。
電脳コイルの舞台2026年じゃん
年齢が合わな……み、みなかったことにしよう!


とある二十三区(メガゾーン)財神黒客(ツァイシェンヘイカー)

 

 大当たりだ。

 

 【しょうさ】こと沢口大智は、自分の幸運と地元の神社の御守りに感謝した。

 

 友人で、同じ財神黒客の仲間で、元同級生の篠原遊驥(しのはらあすき)を助けた謎の美少女に出会えた!

 

 捜索していたわけでもないのに、本当に偶然、強運で出会った。

 

 わかっていたことは外見のみ。制服らしき物を着ているが、似ている制服はあれど一致する制服無し。出身校はわからなかった。

 サマーニットの左胸にあった校章らしきマークも謎。サマーニットはロータリークラブや乗馬クラブなど、何かの社会クラブのものか。もしくは日本国内の学校じゃないのかもしれない。

 

 身体能力が優れていて、スタンガンなどを持ち歩いている。

 あと、しましまパンツを履いている。重要。

 

 助けられた遊驥はこう言っていた。

 

『ありゃぁ、なんか持ってんな、秘密ガジェット。しかし、あの距離でナイフを弾いて、室外機に貼り付けるとなると、直径1メートルくらいの電磁石いるんだよなあ。しかも電源ぬきで』

 

 大智は弾かれたナイフというのは、遊驥の勘違いと考えている。ナイフ使いの手が滑ったのだろう。

 

 声をかけて見ると、警戒する素ぶりこそあったが、拒絶するような狭量さは感じられない。むしろ、こちらに興味を持っていてくれる気配すらあった。

 

 彼女がデットセックのメンバーでなかったのは残念だが、考えようによっては勧誘できるチャンスでもある。

 

 レールガンと名乗られたのは、反応にちょっと困った。

 まさかあの【ユーティリティ】を使ったアタックが、レールガンということはないだろう。

 ……だが、意味があるはずだ。

 

 大智は推測、いや夢想する。

 たとえば一直線にあるすべてのデジタル機器を、クラッシュさせる電磁投射砲……とか?

 彼女の事を考えると、ワクワクすると大智は笑みが絶えない。

 

 元祖大黒……じゃなかった。財神黒客の戦力に、彼女は成れる。

 

 盗撮しようとしていた人だけを狙い撃ちして、スマートフォンをクラッシュ、再起動させるハッキング能力には舌を巻いた。

 噂に聞く自警団(ビジランテ)が、そんな【ユーティリティ】を使ったと聞くが、それ以上だと大智は評価していた。

 

 高い運動能力も持っているようだし、胆力は計り知れないものがある。

 

 なにより美少女だ。

 いてくれるだけで、価値がある。

 

「俺たち、財神黒客(ツァイシェンヘイカー)の仲間になってくれないか!」

 

「へいかー? ああ、黒客ね。なに? あんたたち、ハッカーなの?」

 

 意を決して勧誘すると、レールガンの反応は悪いものではなかった。

 急な話しを、理解しようとしてくれるだけでもありがたい。

 

「ああ、そうハッカーだ。でもプライム8みたいなやつらとは違うぜ。そりゃ正義とか社会のため、とかは言わないが……。それと別に中国は関係ない。名前だけさ」

 

 ある程度、正直に答える。

 品行方正とは程遠いし、イタズラの域を越えた行動もしょっちゅうだ。

 

 見知らぬ女の子に、仲間にならないかという誘いは怪しまれるのはわかってる。

 だが、これも交渉である。

 少なくても、この少女……レールガンは高い技術を持ったハッカーである。

 こちらもハッカーだといえば、一定の興味を示してくれる。

 

 そして交渉術として、仲間は無理ならせめてこちらの連絡先だけでも受け取ってくれ。という手段が使える。最初に強気な提案をして、次に「そのくらいいいか」という思わせる弱めの提案をするテクニックである。

 

「ふ〜ん……。おもしろいわね。話しくらいなら、聞いてあげていいわよ」

 

 思った以上に好感触。

 たぶん、助けた相手である遊驥の人なりを見知っているから、警戒度が低いのだろう。これは仲間にするのも不可能じゃないかもしれない。

 連絡先を交換しあうのも、簡単に思えてきた。

 

「じゃあ、ここで話すのもなんだ。俺たちのアジト……って、わけにもいかないか」

 

「いいわよ」

「え? いいの?」

 

 レールガンはベンチから立ち上がると、スカートのお尻を払った。短いスカートなので、その程度でもパンツが見えそうだ。

 どこか話しができる喫茶店でもないか、と考えていたら、まさかの快諾である。

 このサバサバ感、警戒がないというより、ちょっと怖い。あの【暗号屋】を思い出す。と、大智は昔のトラウマを刺激され、ちょっと苦手意識が生まれ始めた。

 

「いいならいいけど、ちょっと離れてるんだよね」 

「別にいいわよ。どこ?」

「浅草」

「へえ、情緒のあるところを、根城にしてんのね」

 

 やたらと好感触。

 とんとん拍子で、大智の方が調子が狂う。

 

「移動は地下鉄とかになるけど?」

「浅草ね。じゃあここからなら、大門か御成門駅で電車に乗って……げ」

 

 急にレールガンが、美少女らしからぬ声を上げた。

 いままで余裕のあった態度はどこへやら。戸惑った様子で視線をさまよわせて言う。

 

「あ、あんたさあ。えっと、勧誘の提案がそっちなんだから、足代とか出してくれる?」

 

「……へ? ……まあいいけど。あっ! まさかオマエ、電車賃とかねぇの!?」

 

「そ、そそそそそ、そんなことあるわけないでしょ! あんたの仲間を助けたお礼とか、そういうのよ! そう! 報酬の要求!」

 

「はあ、マジかよ。腕利きのハッカーかと思ったら……」

 

「違うって言ってるでしょ!」

 

 さっきまでのクールでサバサバした美少女はどこへやら。

 

 ただ、どことなく世間知らずなので、わがままお嬢様が家出でもしてきたか。

 そんな印象を大智は抱いた。

 

「あー、わかったよ。礼ってことで、電車賃な」

「ありがとう。うん、別にお金ないわけじゃないけど、ありがとう」

 

 腕をこまねき、こちらに背を向けながら強がるレールガン。

 なんというか、愛嬌があるというか、隙があるというか、狙ってやってるのかと疑うほどだ。

 

(コイツに乗っ取られるってことはないかなぁ)

 

 小学生のハッカーグループのリーダーだったころ思い出す。あの頃とは俺だって違う。と大智は自負してる。

 それに、このレールガンと名乗る子は、あの悪辣な【暗号屋】とはちょっと違うような気がする。

 

 駅に向かう道中、そんなことを考えていたら、スマートフォンが着信音を立てた。

 

「おっと、ちょっとアスキーから連絡だ」

 

「アスキ……ああ、ASC][って書いて、アスキーって読むね」

 

 頭の回転も速いな、と思いつつ電話に出る。

 

『しょうさ! 彼女はどうした!』

 

「勧誘の話し、聞いてくれるってさ。アジトに向かってるとこ」

 

『でかした、よくやった! 今、向かってる!』

 

「え? 学校は?」

 

『もうサボっちょる! さっき電車に乗った』

 

「あー、もう。仮にも高専生が、それとか怒られんぞ」

 

 大智は通話をきる。

 

「ふーん。あいつもくるんだ」

「まあ、学校もあいつん家も八王子からだから、1時間はかかるぞ」

 

 大智の買った切符で、電車に乗るレールガンは、席に座ろうとしない。

 女子中学生の仁王立ちだ。

 先に座った大智の方が居心地が悪い。

 

「……あのさ、俺がプライム8の仲間で、罠に引っ掛けようとしてると思わないのか?」

「でも、助けたあの人と、今、話ししてたでしょ?」

 

 見下す位置から、レールガンの視線が降りてくる。

 この自信は、ハッキング能力から来てるのか、育ちから来てるのか、大智はいまいちわからない。

 

「それって、映像と音声くらいどうとでもできるだろ? 俺とだけ会話しただけだから、応答はシナリオ通りでさ。それにアスキーがプライム8に捕まって、脅されてああ話してるって可能性もある」

 

「ほー……なるほど、なるほど」

 

「で、アジトでプライム8の奴らが待ってましたー。なんてことがあるかもしれない」

 

「ふむ。まあ、それをあんたが警告してくれるっていうんだから、かえって信用できるし、対策をもできるけど……。いえ、あえて手の内を晒して、こうするかもしれないぞ、って選択肢を狭めて、その対策をさせて、他の手を打ってくるというのもあるわね」

 

 罠を想定し、受けて立ってやるわ、と鼻息が荒いレールガン。

 大智は肩を落として、溜め息をつくばかりだ。

 

「はあ、肝が据わってんなぁ。アンタ」

 

 

 + + + + + + + + +

 

 

「さあ、ここが財神黒客のアジトだ!」

 

 しょうさはドヤ顔で、手を開いて宣言した。

 

 私は周囲を確認する。

 ここは、日本最古の地下街と言われる浅草地下商店街。

 空きテナントが目立つ中、その一角に看板の無い店舗がある。

 外から見えないようブラインドがかかってて……なんか、もう、なんか……なんか見るからに怪しい。通行人がなんだぁ、ここ……と思いそうなところじゃない? 

 

「さあさあ、どうぞ」

 

 しょうさは電子ロックで鍵を開け、先に中に入って私を招く。

 

 ボディチェックをしないだけでも、敵対するつもりがないとわかるわね。

 ブチのめしたやつらは、私がスタンガンを持っていると誤認していた。つまり持っているなら、取り上げたいはずよね。

 私に危害を加えるつもりなのに、ボディチェックをしないということは、スタンガン対策をしてるか、数など揃えてよほど自信があるか、忘れるくらい頭が悪いかのどちらかってこと。

 

 学園都市には完全絶縁の対電撃スーツとあるけど、ただの中学生相手と思ってる奴らがそんな準備はしてないはず。そもそも用意できないし、多分存在してない。

 

 能力者も知らないだろうし、知ってても私がどういった能力者かわからないのだから、対策は結局不可能ってわけよ。

……なんか、いま誰か乗り移ったような気分がしたけど、気のせいよね?

 

「お、おじゃましまーす」

 

 小さく挨拶して、頭を下げて入店……入アジト? どっちでもいいわよね。とにかく中へ入った。

 

 室内は元なにかの販売店という内装だけど、元は何のお店だったかはわからない。少なくても食べ物関係じゃないわね。

 ガランとしている中、応接セットが中央にあり、そこには白いスーツを着た誰かがいた。

 こちらに背を向けているけど、しょうさには気が付いている様子ね。

 

「しょうさ、戻ったのかい。依頼された猫は見つかった?」

 

「うんにゃ、まだだよ。って、いたのか、ヒロヒロさん」

 

「ああ、いたよ。ん?」

 

 白いスーツの人が振り向いた。

 垂れ目がちで、胡乱な雰囲気がある青年ね。大学生かしら?

 まあ美形といえば、10人中10人が美形っていうだろうけど、私は別にそんなのどうでもいい。

 

「これはこれは、可愛らしいお嬢さんだ」

 

 芝居がかった仕草で、応接ソファから立ち上がる。 

 顔がいいから似合ってるけど、こういうタイプって苦手なのよねぇ。

 

「ボクは広瀬真優(ひろせまひろ)。大学生。歳は一昨日、お酒が飲めるなったばかり。キミは?」

 

 中性的なスタイルに仕草。手足が長くて、同じ人間とは思えない

 ……って、おい。え、ちょっと!

 

「は、はわわ、ちょ」

 

 何、この人!

 ぬるって感じで私のパーソナルスペースに、入りこんできた。

 自然に追い詰められた!

 だからって、イヤという気にならない……。ん? もしかして、この感じ。

 

 パーソナルデータを確認する──。

 

 広瀬真優は本名、年齢も誕生日が昨日というのも事実で、大学生も本当。

 そして性別が女と書かれていた。

 

「あ! あんた、もしかして女!?」

 

 大声を上げると、壁ドンしようとした真優の手が止まった。

 表情も硬くなり、優しかった目がスッ……と、冷えて行く。

 

「生物学的には。……ああ、ctOSにもそう登録されてるね、忌まわしいことに」

 

 広瀬真優は、この事実は不本意ながらね、という態度で首を竦め、私を壁際から解放してくれた。

 

「た、助かった」

 

 まだ動悸のある胸を抑え、ちょっと距離を取る。

 私、この人……苦手だ。たぶん。

 

「はあ……私がタイを直したりしてあげると、後輩の子たちの様子が変わるのわかった気がするわ……。こういう気持ちだったのね」

 

 覚えが……ある。

 後輩の女の子たちが、顔を真っ赤にさせたり、縮こまったり、拒絶するようで待ち構えるように大人しかったりと、さまざまな反応みせた。

 うん、今、私もそうなりかけてた。

 

「はは、キミもなかなかに隅に置けないようだね」

 

 優しく微笑んでくれるが、もう警戒しかない。

 これならプライム8とかいう連中が、徒党で待ち構えてた方が気楽だったわ。

 

「で、しょうさ。もしかしてこの女の子が?」

「そう。アスキーを助けてくれた子だよ」

 

「へえ、すごいな! 一日で見つけて、連れてきたのかい!」

 

 話をアスキーから聞いていたのか、私が何者かを理解して、冷めていた目がまた温かく、そしてキラキラとした。

 今にも抱き着いてやる、と手を拡げたので、思わず身体が強ばった。

 その隙に、真優は叫ぶ。

 

「じゃあ、この子が、しまパンの子なんだね!」

 

「はっ?」

 

 真優という謎人物のぶっちゃけに、私もしょうさも固まるしかなかった。

 

 

 




「おねぇさま! そんなスケコマシがいいんですの! 黒子というものがありながら!」

 ちょっと長くなったので分割
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。