とある妹達《レギオン》の監視役《ウォッチドッグス》   作:大体三恵

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とある二十三区(メガゾーン)財神黒客(ツァイシェンヘイカー) 2

 真優が微笑混じりに、なんか言った!

 え? 私が、「しまパンツ」の子?

 

「なななな、なんなの? ちょっとどういうことよ!」

 

 今、パンツが見えてるわけじゃないけど、私はスカートを抑えて身構え、しょうさにどういうことかと尋ねる。

 しょうさもちょっと困っていて、答えてくれない。なんなのよ!

 顔が真っ赤と分かるけど、スカートを抑える手が離せない。

 

「いやさあ、アスキーのやつがな。 あんたが暴れた時、見たってすげー自慢するからさ!」

 

 しょうさは退きながら、両手を前で振って言い訳をする。

 ──そう。

 あのとーへんぼくが、私の……パン、パ、パン、パンツ見たのね!

 そういえば短パンを履いてるつもりで、あいつの前で回し蹴りをした……。

 ああ、私のバカ!

 なんで忘れてたのよ!

 

 羞恥で、恥ずかしくて、ここから出て行こうかと思ったその時、アジトの入口の電子錠が解放される。

 

「おい! もう来てるか? あの子!」

 

 グッドタイミングで、昨日助けたアスキーこと、遊驥とかいうヤツが入室してきた。

 

「おまえかーっ!!」

 

 近くにあった紙束を掴んで、飛び込んできた昨日助けた少年に、叩きつけた。

 こいつか、こいつか、こいつが悪いんかーっ!

 

「ぶわーーーーっ!」

 

 大げさにスッ転んで、半回転して汚れた床に上にうつ伏せで倒れた。

 そして顔をこちらにあげ──。

 

「あ、しまパン!」

 

 這いつくばっている遊驥の視点から、私のパンツが……丸見え?

 

「見るなーーーーっ!」

「ぐはーーーーっ! なんだぁーっ! この懐かしいかんじーーっ!」

 

 私が小さな電撃を一つ放つと、アスキーは意味のわからない悲鳴を上げた。

 はあはあ……一発、電撃を放つと、少し気分が落ち着いた。

 

「ご、ごめんなさい、よく考えたら八つ当たりよね。大丈夫?」

 

「で……できればビリビリってするまえに、気がついて欲しかったなあ」

 

 倒れたアスキーに手を差し出し、立ち上がる彼を助ける。

 

「悪かったわ。もうしないわよ」

 

 改めて謝ると、アスキーはニヤリと笑った。

 

「でも今のでわかった。あんた、近くに高圧電流が流れてるところなら、電撃を打てるんだろ?」

 

「……なんでそう、結論したのかしら?」

 

「ナイフを弾いた時、あんたは電界がどうのって言ってた。ナイフくらいを磁力でどうこうさせるには、携帯できる電磁石くらいじゃ無理だ。でもあそこは埠頭の施設用に、高電圧ケーブルがいくらでもあった。高電圧を意図的にあちこち迷走させて、狙ったところで磁界を発生させた。電撃もその応用だろ?」

 

 アスキーはあっちとこっち、を指さし、そこを繋ぐと擬似的にコイル状になることを説明した。

 たしかに彼の指差したところには、動力線や高圧ケーブルが埋め込まれている。たぶん、地下街のあちこちに配線するものかな。

 

「……そんなことできると思うの?」

 

 推測は外れている。でも私が能力者だなんて、気が付くはずがないし、仕方ないわね。

 突拍子の無い発想ても、オカルトに逃げないのは好感が持てるし、推論は面白いので、続けてと促す。

 アスキーは手応えあった、という得意顔で話しを続けてくれた。

 

「へっへーん。でだな、デッドセックやシカゴのフィクサーや自警団(ビジランテ)なんかは、【ユーティリティ】で、配電盤なんかを高圧電流で爆発なんかさせてる。昔のあっちの機器じゃ爆発するが、こっちの今の機器じゃそうそう簡単には爆発しない。配電盤の品質もあるが、容量が決まってる600V用あたりの動力線とかも、今は品質がふたつもみっつも上だ。一瞬なら耐えられる」

 

「かなーり、正確な電流操作がいるわよね? できると思う?」

「いやー無理だな。滑稽無稽、理論的でもない。漫画じゃないんだから」

「そうよね」

「でも、できるんだろ?」

 

 自信たっぷりに切り込んでくる。

 どうだい? というドヤ顔がちょっと癪に障るけど、完全に外れているので不思議と深いにならない。

 しょうがないわよね。

 なにもない空間に、電磁界を作り出せる私のほうがおかしいんだから。

 

「半分くらいご名答。すごいわね。ああ、それから私のことはレールガンって呼んで。仲間になれたら、本名は秘密であんただけに教えてあげる。半分は、さっきの電撃のお詫びよ」

 

 超能力という点は外れているが、手ぶらで電界を作っているのは正解なので、大甘で半分正解としてあげる。そして、さっきの暴力のお詫びを半分合わせて、本名公開の約束した。

 

「ぅおよっしゃ! 俺は篠原遊驥! よろしくな。そんで、あの時はありがとう」

 

 大袈裟にガッツポーズを取ったアスキーは、本名を名乗ってくれた。もしかしたら、私の目にかかっては、無駄だと判断したのか。それとも私の本名公開への先払いか。 

 

「落ち着いたかい?」

 

 遊驥への対応が終わると、真優が涼しい顔をして声をかけてきた。

 そのにこやかな笑顔の中に、ちょっとしたイタズラ心が見えた。

 

 こいつ、私が拒絶した仕返しをしてきたな!

 

「私に触れたら、ビリビリだかんね!」

「ひどいなぁ。ボクは本名を伝えたのに」

「勝手にそっちが名乗っただけでしょ」

 

 そっちがその気なら、と私は受けてた気になったけど──

 

「まあまあ、 お二人とも、その辺で、その辺で」

 

 しょうさが作り笑顔で、割って入る。

 真優は楽しかったよ、と引き下がった。

 私も電車賃をくれたしょうさの手前、引き下がることにした。

 

「じゃあ、改めて紹介だ。俺はしょうさ。本名はまあ、苗字バレてるけど沢口大智。で、助けてもらったそっちと、あっちのヒロヒロ」

 

財神黒客(ツァイシェンヘイカー)って、3人で全員なの?」

 

「あと一人いるんだけど、その人は普通に社会人なんで、今はいない。ああ、あとアスキーは住んでるとこと学校が八王子なんで、そんなにこっちにはいないんだよね。週末くらいかな」

 

「4人なのね。それでどんなことしているの?」

 

「具体的になに、とはいえないけど。まあいろいろ。健全なところだと、知り合いの機械直したり」

「俺はハード担当だな」

 

 しょうさの説明に、遊驥が補足する。彼が修理などしているのだろう。

 

「パソコンの調子が悪いって時は、遊驥もやるけど、メインは俺の出番だな」

「ふーん。つまり表向きは、なんでも屋ってことね」

 

 私の理解に、しょうさは嬉しそうに笑う。

 

「そうそう。で、裏ではフィクサー。表ざたにできないようなことをしてるわけ」

「つってもぉ、そんな悪いことはしてないからな」

 

「でも、正確には教えられないと」

「後ろめたいことは確かだけど、お天道様には顔向けできる程度だよ」

 

 まだ私は所属すると決めていない。

 だから彼らは、ふんわりとした紹介しかできないのだろう。

 

「で、あっちはなにすんの?」

 

 大人しく壁の花となっていた真優を差す。

 

「ボクはソーシャル担当だからね。デジタルもメカもネットも、あまりあわないから」

 

 真優本人が、役割を答えてきた。

 ふーん、なるほど。

 私は真優の様子と外見を眺め。

 

「その顔で、情報集める担当ってことね」

 

 と冷たく言い放つ。

 少しは怯むかと思ったが、真優は逆だった。

 

「いい勘してるね。好きだよ、キミみたいな子」

 

 スッと手を伸ばしてくる。

 電磁波レーダーがあるはずなのに、本当に隙をついて、するりと入ってくるわね、この人!

 

「ちゃ、ちゃかさないでよね!」

 

 延ばされた手から逃れると、遊驥が真優を捕まえる。

 

「おい、こらやめろ! お前、子供には興味ないっていってたろが!」

「ははは、ごめんごめん。からかうとおもしろくて」

 

 まるで男同士みたいに、二人はじゃれ合っている。

 

 ぐう、や、やばい。この人は、黒子と違う意味でやばい!

 

「そうね。怪しいけど、信用したいって気持ちがあるし、仕事を見学させてもらうとか、試験でなにか仕事を割り振ってもらうとか、そういうのできるかしら?」

 

 私の方から条件を提案してみる。

 しょうさは「それなら!」と、笑顔でタブレットの画像を見せてきた。

 画像は黒ぶちの猫だ。かわいい。

 

「猫探し、とかどうかな」

「パス」

「やっぱ、不満?」

 

 しょうさは、「だよね~」と言っているが、そうではないのよね。

 

「というより、私、動物は好きなんだけど、その動物が私を避けるのよねぇ」

「そう……」

 

 残念ながら、と断ると、不思議装に首を捻るしょうさ。

 まあ、解らないわよね。常に私から電磁波が出てるとか。

 妹達(シスターズ)はそんなことないんだけど、私の意識が入っていると、常時展開しちゃのよね、電磁波レーダーとか。

 

「まあ、猫が逃げちゃうんじゃ、しょうがない」

 

 しょうさは諦めて、次の仕事はないかとタブレットを操作する。

 

「レールちゃん」

「誰よ、私?」

 

 真優がペットボトルを片手に、変な呼び方してきたので、思わず反応してしまった。

 無視してやろうと思ってたのに。

 

「なにか飲むかい?」

 

 ミネラルウォーターとコーヒーを持っていたが、私はさすがに手を出せない。

 

「飲み物ならあるわ」

 

 私はおにぎりと一緒に買った、ほうじ茶のペットボトルを見せて断る。

 

「別になにも入ってないのに」

 

 シュン、とする真優。こういうしぐさは、素直に魅力的だと思うけど、なんだろうこの私の中にある警戒感。

 勘というか、なんというか。

 たぶん、苦手なんだと思う。あの第6位みたいに。

 

「あとの仕事はぁ」

 

 しょうさはまだタブレットを操作している。

 私は操作が終わるのを待ちながら、ぬるくなったほうじ茶に口をつけ──

 

「あった、あった。他に今ある仕事はあれだな。神社の賽銭泥棒探し」

「ぶぼはっ!」

 

 吹き出した。

 3人の視線が集まる。

 眉を秘めて、しょうさが指を差してくる。

 

「え? 犯人……?」

「ごほっ! がはっ! ち、違うわよ! た、たぶん……」

 

 お、思い当たる節はあるけど、電子賽銭は回収した9982号に紐づけされてるんだもの。

 あの子のお小遣いを拝借してるという意味ではギルティかもしれないけど、賽銭泥棒じゃないと思う。

 

「で、その賽銭泥棒探しってなんなのよ」

 

 内心、ドキドキしながら訊ねる。

 

「あ、ああ。まあ、浅草近辺で賽銭泥棒が多発してて、証拠をつかみたいんだ。できる?」

 

「ん? まあ、できると思うわ。お試しで、一緒にやるわけでしょ?」

「そうなるね。報酬も前金を渡しておくよ」

前金(まえきぃぃん)?」

 

 しょうさが前金を提案すると、遊驥が訝しがる。

 たしかにお試しで、前金というのもおかしいはなしだと思う。

 

 でも、これはあれね。無一文の私に配慮してくれたのね。

 しょうさは真優や遊驥に、私がお金に困っていることを隠して、理由をつけ援助をしてくれたわけ。

 ちょっと借りができた。と、同時に、悪い奴じゃないのかも。と絆された。

 

「いいわ。じゃあ、それやってみましょう」

「いいのか? 地味だけど」

 

 しょうさが変な確認をしてきた。

 そりゃ地味だとは思うけど、やってみたいという気持ちもあった。

 

「任せて。私、一度、落としてみたかったのよ」

「なにを?」

 

 遊驥が心底不思議そうに、私の顔を覗いてきた。

 その顔に、私は堂々と言ってみる。

 

「天罰ってやつを」

 

 

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