元ゲヘナのシスターフッド 作:シャモ星
多分これからもこれくらいかもう少し遅いくらいになると思います。
でもこれはオラよりオラはそんな連続でできねぇのにZカウンターとかドゴンを連打して見せつけてくるCPUがわりぃと思う。
風紀委員から無事逃げ切ることができた私は、後日早速黒服さんにあの鬼ごっこ中に覚醒したバリヤーについて相談をしに行きました。
なお私を巻き込んでくれたテロリストは無事指名手配され逮捕、連邦生徒会の矯正局送りになったそうです、ザマァ見ろです。
あ、ちなみに私の方は指名手配とかはされませんでした。
今まで学区内外問わず犯罪どころかまともな戦闘すらしたことないですからね、おそらくデータがなかったのでしょう。
バリヤーについての話に戻りますが、黒服さんに話したところ早速耐久力のテストをすることになりました。
やることはとてもシンプルで、黒服さんが用意したさまざまな通常火器による射撃を私がバリヤーで受け止めるというただそれだけです。
まあ結論から言いますと、神秘も込められていない通常火器では対物ライフルだろうがグレネードランチャーだろうがダメージが貫通することはありませんでした。
残念ながら黒服さんは武器に神秘を込めることができないので、神秘付与の攻撃に対してどれだけの防御性能が有るのかはわかりませんでしたが、流石に生徒にいきなり撃ってくれなんて頼めませんからね……
まあゲヘナで暮らしていれば直ぐにでもためせる機会も来るでしょう。
あとは迫撃砲を受け止めた時からわかっておりましたが、衝撃力だけは逃しきれません、つまりそればっかりは転んだりしないように、気合で踏ん張るしかないということです。
黒服さんも体外に放出された上で実体を持ち維持される神秘に大変喜んでいてずっと上機嫌そうにいつもの笑い方をしています。
ただ一点問題がありまして……このバリヤーとにかく燃費が悪いんですよね。
それなりくらいの強度で展開しても10分も持ちません、全力展開しようものなら数十秒でガス欠してしまいます。
まあこれはデメリットだけではありません、神秘の消費が早いという事はつまり、私の超回復と合わせる事でパワーレベリングが出来るということです。
そして神秘が増えればバリヤーの安定した展開が可能となり、このゲヘナという地獄で平和に暮らす為の究極のパワーが手に入るのだ!
戦うのは嫌ですけど、傷つくのはもっと嫌ですからね、ですが先日の風紀委員のように、いつか逃げるだけではどうしょうもない時が来るかもしれませんから、備えすぎということはないはずでしょう。
再び楽しい修行ライフが始まりますよー!
時間が経てば当然私の学年も上がるものでして、気づけば私もゲヘナ学園中等部に進学していました。
勉学については前世で取った杵柄で全く問題ありません、歴史以外は。
そんな私に一つ小さな変化がありました。
なんとついに私にも友達が出来たんです。
まぁ……私の友達ということで私と同じおとなしい寄りの、ゲヘナでは珍しいタイプの生徒です。
彼女の名前は陸八魔アルちゃんと言いまして、ボブカットの髪に眼鏡をかけてる心根の優しい女の子です。
ちなみにそれなりに高い神秘をその身に秘めており、獲物であるPSG-1『ワインレッド・アドマイアー』と相まってその火力は本物です、もしかすると今の私のバリヤーすらも貫通するかもしれません。
私と違って殴られたなら殴り返すのもやむなしな気概は持っていますから、偶に襲いかかってきたチンピラやスケバンを逆に叩きのめしています。
あとはそんなアルちゃんの幼馴染である浅黄ムツキちゃんともたまにお話しますね。
メガネっ娘大好きでイタズラ好きで爆弾魔な模範的ゲヘナ生と言えるでしょう。
そんな二人……というかアルちゃんは何者にも縛られないアウトローな存在という割とあやふやなものに憧れているらしく、いつか便利屋企業を設立したいらしく、私も一緒にやろうと誘ってくれています。
まあ私は戦いたくないので、やるなら経理とかですかね。
そして友達とは別で大きな変化も一つありました。
小学生の頃のうちは喧嘩もしない、法令遵守の精神、授業も真面目に受けてテストの成績もいいという、あまりにもゲヘナらしくない私は周りの子たちから変な子くらいの扱いだったのですが、中学生になってからまあそれが空気読めない、ノリが悪いという感じになりまして。
早い話がイジメが始まったんですね。
しかもゲヘナのイジメですよ、最初は陰口位だったんですが、しばらく経つと銃が出てき始めます。
まあもはやバリヤーのある私に銃くらいどうってことないですし、むしろいい修行にはなるんですけど、鬱陶しいものは鬱陶しいですね……
「アヤちゃん、大丈夫?」
「あれ、アルちゃん、それにムツキちゃんもなんでこんなとこに」
日課とまでは言いませんけど、定期的に襲撃してくるいじめっ子達をスタングレネードやスモークを使って振りきって路地裏から大通りに出ると、そこにはアルちゃん達が立ってました。
「アヤちゃんがまた今日もいじめられてたから平気かと思って……」
「あれくらいなら大丈夫ですよ、怪我もしてませんし」
「ほら言ったじゃんアルちゃん、あれくらいならアヤちゃんは大丈夫だって」
どうやらいじめっ子達に襲撃された私を心配して様子を見に来てくれたらしいです。
本当に優しいいい子ですねぇ……ゲヘナの癒やしですよ。
ムツキちゃんもなんだかんだ一緒についてきてくれてますし、いつもの爆弾入りカバンも持ってきてくれてますし、優しい子です。
「それにしてもアヤちゃんさぁ、あんな奴らぶっ飛ばしちゃえばいいじゃん、アヤちゃんなら余裕でしょ?」
「いえ、私は自分から銃を撃つどころか殴ったことすら無いですし……」
「えー?そんなに強いのにもったいなーい」
まあ私も流石にここまで強くというか、タフになるともったいないかなぁという思いはありますけど、どうしてもリミッターというか、暴力良くないという前世価値観が一向に抜けないんですよね。
というかむしろあれだけ暴力を振るわれるとなおさらこんなものに頼りたくないと言いますか……
「もしいつかやり返したくなったら言ってよね、楽しいおもちゃいっっっぱい用意しとくからね」
「私も手伝いますからね!」
「あはは……検討しておきます……」
まあ今のところは私にダメージも入らないですし、放置しておけばそのうち興味を失うなり飽きるなりするんじゃないですかね。
とりあえずいじめっ子達が追いついてくる前にさっさとこの場を離れてしまいましょう。
「せっかくですしどこかでお茶でもしていきましょうか」
「そしたら便利屋を起業する相談をしましょう!」
「アルちゃんまたその話?高校までまだ一年くらいあるよ?」
「それに別に高校生になっても起業の許可は降りないと思いますけど……」
「べ、別にいいじゃない!それに規則は破るためにあるってよく言うでしょ!」
いや確かによく言いますけど……まあそれがアルちゃんの目指すアウトローのあり方なんですかね。
結局私達は喫茶店に入り、アルちゃんの語るアウトローのなんたるかであったり、どういう仕事をしたいとかどういうポリシーを持って活動していきたいという話を延々と聞くことになるのでした。
まあやりたい仕事についてはまぁ社長の好みでいいと思うんですけど、経理担当者としては払ってくれると言うならちゃんと手付金貰って欲しいですけどね……暴力を生業とする以上どうしても弾薬費や治療費で出費も嵩みますし。
「あ、そういえばアヤちゃんに渡そうと思ったものがあったんだった」
「私にですか?」
「私からもあるよー」
そう言うとアルちゃんとムツキちゃんはカバンからそれぞれ小さな箱を取り出して手渡してくれました。
これは……今開けても大丈夫そうですね、二人共様子を見たそうにワクワクしています。
ではとりあえずアルちゃんのプレゼントから……
包装を丁寧に剥がして箱を開けると、中には名刺入れが入っていました。
アルちゃんの得物に冠している名前と同じワインレッドで品のあるデザインでどこで使っても恥ずかしくない良いものです。
「こんないいもの、いいんですか?」
「もちろん!アヤちゃんには経理をやってもらう以上交渉もしてもらうかもしれないんだから、使う道具も一流じゃないと!」
「ありがとうございます、大切に使わせてもらいますね」
大事にかばんにしまったら、続いてムツキちゃんから貰ったプレゼントを開封してみましょう。
……メガネケース?中には伊達メガネも入ってますね。
私の金髪にあわせて金色の細い金属フレームのメガネでした。
「これは……プレゼントと言うかただのムツキちゃんの好みでは?」
「アルちゃんもよく言ってるけど、やっぱり格好から入るのは大事だからね」
「そう言って、かけて欲しいだけですよね?」
「くふふ〜」
まあ、ムツキちゃんが期待してるようですし、せっかくだからつけてあげましょうか。
カメラのインカメラで確認してみると……
うーん、さすがメガネ愛好家ですね、サイズも雰囲気も私にぴったりです。
「見立て通り似合ってるね〜、いつでもかけてくれていいからね?」
「……たまにならかけてあげてもいいですよ」
メガネケースにしまったら、こっちも大切にカバンにしまっておきましょう。
友達から初めてのプレゼント、いつか私もちゃんとお返ししないとダメですね。
そうですねぇ……アルちゃんには私も名刺入れを、ムツキちゃんには……黒服さんに頼んでゲヘナにはない珍しい爆弾でも仕入れてもらいましょうか。
いや、これからも長い付き合いになるでしょうし、ちゃんと形
ゲヘナでは珍しくもない崩れかけの廃墟で、何人かの生徒が集まり話し合いをしていた。
全員が全員剣呑な雰囲気をしており、少なくとも善良と言える生徒ではない事が、この場を見れば誰でもわかっただろう。
「おい、例の物はちゃんと用意出来てるのか?」
「もちろん、ちゃんと指定された場所にあったよ」
「トラップも準備出来たし人払いも済んでるよ」
彼女らは、アヤをいじめていたいじめっ子の集団であり、次の襲撃計画を立てている真っ最中だったのだ。
だが、普段とは違う点があった。
装備の質が明らかに中学生の持てるものではなかったのだ。
比較的新しいカスタム済みの火器類に、各種トラップ、更に彼女たちはとある
何故そこまでアヤに固執するのか、それは──
「田雪アヤ……いつもいつも私達のことを歯牙にもかけねぇで……見下しやがって」
「無視しようってんなら無理矢理こっちを見てもらおうじゃん」
彼女は一つ、思い違いをしていた。
確かに効かない振りを、無視を決め込んでいればいつか徒労感や虚しさでいじめは終わるだろう。
ただし、それは前世での話だ、ここキヴォトスではその限りではない。
キヴォトス人達は生徒に限らず非常に頑丈であり、それに応じて引き金が軽く、最終的に暴力で片付ければいいという考えが多かれ少なかれ人々に根付いている。
これはゲヘナに限った話ではなく、お嬢様学校として名高いあのトリニティ総合学園の学区でさえ、定期的に銃撃戦が起こり正義実現委員会が出動する。
なにより暴力が日常でなければ『トリニティ自警団』などという鎮圧の為とはいえ非認可の暴力を用いる組織が黙認される筈が無いのだ。
その事を、未だに理解できていない。
そんな常識の世界で、襲撃されても傷の一つも負わず、反撃してくる事も無く去っていく。
それはつまり、相手にされていないということなのだ。
戦うまでもない相手なのだと言外に告げているにも等しい、言うならば煽り行為と言ったっていい。
ましてやその相手は特に好戦的なゲヘナの中でもいじめっ子達。
その行為がどれだけ彼女達の神経を逆なでしているか、わかっていなかった。
「しかし、本当にこんな装備をこんな格安で譲ってくれて良かったのか?」
「えぇ、勿論ですよ」
「私としても、彼女と
彼女が無意識にばら撒いてしまった悪意の種が、今密かに発芽しようとしていた。