魔法科高校生の日日   作:千川 悠汰

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だいぶ間隔空きました!ほんとにすいません!


第十四話

「……ひとまず精霊を見てみようか」

 

 1分ほどたっぷり停止していた幹比古が漸く動き出し、人形(ひとがた)に確保されている精霊の解析を勧めてきた。妥当なので大人しく人形を渡す。

 

「いや、作業車の方に行こう。今の時間なら空いている」

 

「んじゃそっちの方でやりますか」

 

 エントランスの裏口から外に出て作業車を占領する。ちょっとした電子機器にCAD関係の調整機材など色々積み込んであるようだ。

 

「えーっと。休止状態だけど調べられんの?」

 

「俺に聞かれてもな。幹比古、どうやって調べるんだ?」

 

「朔が知らないことに驚きだけどね…取り敢えず、大事なのは起こさないこと。落ち着いて精霊を知っていけばいい」

 

 この後幹比古は達也の助言やモノリス・コードの実戦で神童と呼ばれていた頃以上の実力になる訳だが…スランプ状態の今でも十分凄い、というかこれでスランプなのかと呆れてしまう。

 多分、精神的な部分での引っ掛かりなんだろうな。《竜神》に無理矢理引き上げられるのってそんなにヤバいのか。俺もそういうSBを従えられるならもっと変わるのか?いやいや、目下の問題に対しての話では時間が足りん。これは夏休み中の課題だな。

 

「───分かった。これ、少なくとも我が国の古式魔法師が使う術式ではないね」

 

「理由は?」

 

「古式魔法にも流行り廃りがあってね。我が国では式神に実体を持たせるのは廃れたものなんだ。でもこの式神は実体を構築する工程が含まれてる。だから、多分この式を仕掛けたのは海の向こう…大陸の術師だと思うよ」

 

 もしかして人形使ってる俺も非主流派では?うーむ…SBだけで運用する方法を調べるか。

 

「あー…悪い、俺特段古式魔法に詳しい訳でもねえからさ。捕まえといてなんだが正しく処理できる自信ないし」

 

「分かった。僕が責任を持ってやっておくよ」

 

「ならそろそろ帰るか。あまり長居は出来ないしな」

 

 それと達也は多分今のタイミングで精霊の眼(エレメンタル・サイト)を使ってSBの構造を見てるだろうから、その情報と《電子金蚕》があれば動けるでしょ。そうなれば俺は担当種目が終わり次第お役御免でのんびり出来るぞ〜。

 

「んじゃ俺バトル・ボードあるから寝るわ。また明日」

 

「ああ、また明日」

 

 2人と分かれて部屋に戻る。明日からアイス・ピラーズ・ブレイクへの仕込みを始める。色々と不確定な部分も多いが…来たからにはやるしかないんだ。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「胃が痛い…」

 

「胃薬要るか?」

 

「大丈夫っす…なんとか上手くやるんで」

 

 技術スタッフの上級生のお気持ちだけ受け取りつつ、ボードを担いで移動する。ここまで内臓にクるのは前世の部活動の大会以来だ。

 

「気をつけなきゃ行けないのは七高だな。別に他校の選手も気を付けなくて良いという訳じゃないが…まあ、九十九の能力なら普通に滑れば問題はないさ」

 

「うす。作戦は基本に忠実にアウト・イン・アウトですよね」

 

「ああ。だが渡辺委員長のような不慮の事故もある。気をつけろよ」

 

 頭を下げてコースに上がる。まさかこういう水上スポーツをちゃんとやるなんて思いもしなかった。人生何が起こるか分からないものだ。ちなみに使う魔法はほぼ委員長の丸パクリにする予定。本人にも話は通してある。

 また、さっき先輩に言われた通り七高は水上が大の得意だ。カリキュラムから言って水場は専門だろうしな。が、俺はそれを捩じ伏せて勝てないと意味がない。アイス・ピラーズ・ブレイクで対決する一条将輝に印象を残し、思う存分に警戒していただこう。

 なんて思考の間にもスタートは刻一刻と近づいていた。使う魔法式のキーを思い返し指で確認する。よし、行くか!

 

 ブザーが鳴り響き一斉に選手たちが滑り出す。俺はスタートダッシュを決め先頭のポジションに着き、2番手すらも置き去りにして悠々自適な一人旅をしていく。

 どうして数字付き(ナンバーズ)として優秀程度の俺がこんな芸当を成せるのか。タネというには至極簡単なものだが、要は加速と移動を使った脳が認識可能なギリギリのスピードで滑るという荒技である。当然、コーナーや坂など魔法の切り替えを行わないと行けない箇所もあるが、そこは普段から山の森林や岩場を自己加速術式で駆け抜けている俺だ。反応は十分に間に合うし、使う魔法を限っているので焦ることもない。それに自慢じゃないがマルチ・キャストは得意だ。

 造波抵抗を弱め、ボードと足を硬化魔法で固定し、自己加速術式で滑る。基本この3つを使い、他の選手の魔法の影響も受けずに逃げ切った俺はゴールインと共に大きく腕を振った。

 

「九十九君、圧勝だったね!」

 

「ほのかさんか。見てたんだな」

 

 私も選手だからね。と返すほのかさんの近くにいた達也にも声をかける。

 

「圧勝ー!」

 

「おつかれ。調子も良さそうだな」

 

「バッチリさ。次でいきなり準決勝なんだから楽なもんだよほんと」

 

「よく疲れませんね。私は1戦だけでもそれなりに辛いですよ?」

 

「そりゃあ家が山奥にあるから、登下校でも山登り山下りしてるようなもんだからね。荒行みたいなのもやってるし、自分で言うのもアレだけど体力は多い方だな」

 

 へぇ!と感嘆するほのかを横目に達也が聞いてくる。

 

「朔は明日のアイス・ピラーズ・ブレイクにも出るよな?」

 

「そ。まあ半日間隔が空くし十分十分。2試合ぶっ通しだからペース配分に気を付けることにするわ」

 

 さてと、(九十九朔)はパワーゲームでどれぐらい戦えるのやら。




蛇足
朔の仕込みは古式魔法の印象を与えないことです。奇襲性に富む古式魔法ですが、さらに本番でいきなり使用することでその性質を上げたい訳ですね。
なのでこっからアイス・ピラーズ・ブレイクの決勝リーグまでは古式魔法なしで突っ走ります。
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