魔法科高校生の日日   作:千川 悠汰

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また少し投稿間隔空きましたすいません!


第十六話

 昨日に引き続き爆睡をかました俺は起きて早々身なりを適当に整えた後、技術スタッフが朝早くから忙しそうにするテントに向かった。

 

「おはざーす」

 

「朔か。どうかしたのか?」

 

「達也、戸口先輩*1ってどこにいる?」

 

「2年の先輩達と向こうでミーティング中だな。もう少しで終わると思うぞ」

 

 達也の話の通り1分もしないうちに戸口先輩が来た。

 

「昨日言ったやつ、準備出来そうですか?」

 

「9割方出来てるってとこだな。後は九十九が実際に使ってみて調整するだけだ」

 

「んじゃ早めに終わらせちゃいましょう」

 

 テントの裏手に周り、適当な木の枝に向けて《不可視の弾丸(インビジブル・ブリット)》を発動する。ちゃんと発動した小さな《不可視の弾丸》が木の枝を数本と葉っぱを数枚散らしていった。うん、この先輩の腕は中々じゃなかろうか。

 

「実は中条さんと司波にも手伝ってもらっててな。俺だけじゃここまで綺麗には出来なかったよ」

 

 マジか。後で中条先輩と達也にお礼言っとこう。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ───バトル・ボード新人戦男子準決勝

 

 俺はスタートを決めながらも各選手が入り乱れる集団ギリギリの先頭に立っていた。後方の全選手に妨害をする為である。

 バトル・ボードは水面に干渉する魔法ならば禁止されていない。大抵の選手はそれを逆手に妨害用の魔法を幾つか用意している。俺も勿論用意しており、その1つが今発動している《円形攪拌(えんけいかくはん)》。収束系魔法であり、効果は名前の通り円形に密度を操作することで波や隆起を発生させる魔法だ。

 で、俺はこの魔法を後ろの選手達が団子になっているところに行使する。水面が同心円状に波打つので俺には追い波になるが、後方の他の選手には面倒なことこの上ない妨害である。事実1人がすっ転ぶというかなりの足止めになった。しかし、1人だけちゃんと着いてきている選手がいた。五高である。自前のボード操作技術であの波を越えてきたらしい。

 

「待てよ一高!そう易々と行かせねえぞ」

 

 魔法の兆候を感じ取る。水路の水が左右に捌け、真ん中の水量が少なくなった。反対に左右から戻ってくる水がかなりの高さの波になって迫ってくるが…

 

「うりゃっ!」

 

 俺はボードの切先を軽く上に持ち上げ、()()()()の姿勢を取る。接水面を極限まで減らし、バランスは自前の三半規管を信じてボードと身体は硬化魔法で座標を固定する。ボードと一体になった俺は迫ってくる波に乗り上げながら波のベクトルを操作、前方への加速として利用した。

 収束系魔法で水の密度を操作し、向こう側へ流れる水の量を増やす。相手も巧みなボード操作で抜けてきたが、俺は大した妨害は貰わず一走を終えた。

 

「お前のレース見てるとあっという間な気がするんだが…気のせいか?」

 

「速度はそれなりに出してるので。気のせいではないですよ」

 

「だよな?俺の気のせいじゃないよな。…取り敢えず、次で決勝だ。相手は七高、ここまで来たら油断するなよ」

 

「了解です」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 さて決勝、1on1のマッチレースである。相手は七高で予選で勝った相手とはもちろん別の選手。映像を見た限りどう見積もってもボードの操作技術、水上の魔法式選択の正確性など、バトル・ボードにおいて主眼を置かれる点は負けているだろう。その代わり魔法力では勝てそうなのは救いか。

 

「真正面からやり合うしかないですかね」

 

「とはいえ九十九はピラーズ・ブレイクもあるからな…。あんまり無理しないで滑った方がいい。既に15点以上は確定しているんだからな。それに、ピラーズ・ブレイクで入賞出来ないほど消耗したら獲れる点も獲れなくなるからな」

 

 モノリス・コード以外は点数配分がほぼ変わらないからなぁ…言う通りある程度この後も考えて滑った方がいいか。

 

「ま、手を抜くなんてことはしませんけどね」

 

「そりゃあな。ただ油断せず、けども無理せずな」

 

 水路の脇に上がるとそこには自分と七高選手の2人だけがいた。他には安全対策用のための数人の協会の魔法師だけだ。近くの全ての座席の視線とカメラが一斉に俺ら2人に降り注ぐ。

 モニターにデカデカと数字が映し出されカウントダウンが進む。気温の低いこの夏ではそれなりに応える寒さの水で感覚がやや鈍りそうなものだが、カウントに集中する俺は逆に神経が研ぎ澄まされていくのが分かった。

 

 ブザーの音と同時に待機していた移動系魔法、硬化魔法、振動系魔法をマルチ・キャストで行使する。ボードは凄まじい勢いでスタートラインを飛び出した。この速度なら大きく離せると踏んでいたのだが…流石は七高、後ろにピッタリと着いてくる。

 とはいえ収束系や移動系で妨害を行うと流石に距離が空く。が、依然として油断できない距離感だ。なにしろコーナーでの速度が全く違う。こちらはかなり減速するのに対して、向こうは僅かにスピードを落とすだけでほぼ最大速度で滑るのだから距離は詰まってくる。

 

「一か八か…次のコーナーでやってみるか」

 

 姿勢を低く取り魔法を用意しておく。レースも大詰めとなってきており、コーナーはここので終わり。ここで近付かせなければ勝ちはグッと近くなるはずだ。

 コーナーでは減速することで通っていたが今回は全く違う方法を取る。

 収束系魔法により水路から溢れない程度に水をコーナーの外側に寄せ、同時に移動系魔法でボードごと体をコーナーの外側の壁に這わせるように動かす。体。ギュッと縮こませ、水路の壁に対して垂直ギリギリで波に乗る。速度を一切落とさずにコーナーを通過した俺は七高の選手に対して更に差を広げることに成功した。

 

 後は緩やかなカーブと最後の直線のみ。勝ちを確信し屈んだ姿勢を戻そうとした瞬間、魔法の兆候を足元から感じた。

 ボードの先が沈む。慌てる暇もなく、明確な命の危機が迫ってきた。現在かなりの速度を出しており、この先も緩やかとはいえカーブがある。このままでは水面に叩きつけられるのではなく、水路の壁に衝突してしまうだろう。

 そんな終わり方はお断りだ。

 

「───ぅうおおおりゃあぁぁぁぁ!!!!!」

 

 硬化魔法で相対座標が固定されている両足の中で後ろ側にある右足を上げ、ボードの後ろを持ち上げる。右手でボードを掴み、そのままボードの切先を軸に反時計回りをしてみせた。ボードはボードでもスケートボードやスノーボードのような回転である。

 崩れた姿勢ではあるものの立て直しは十分に効く。水面を操作して壁に寄せ再び垂直走行をして、直線は悠々と振り切った。

 

 ゴールラインを割った瞬間思いっきり体と腕を振る。

 

「っっし!!!しゃっらああぁぁぁ!!!」

 

 思わずガッツポーズが出た。まあ、観客も盛り上がってるしいいだろ。

*1
朔の担当技術スタッフ




蛇足というか余談
感想で展開を一部当てられたのはかなり焦りました
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