魔法科高校生の日日   作:千川 悠汰

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ギリギリ連日投稿出来ました。


第十八話

 あの後即ぶっ倒れた俺は一度医務室行きとなったが、ものの数分で覚醒。制止してくる委員長や会頭を振り払って2戦目を強行。テンションが逝ってたのと身体が警告代わりの脳内物質を出してたので存外普通に魔法は使えた。とはいえ長期戦は出来ないのは分かっていたので初っ端から《擬似・氷炎地獄(インフェルノ)》とプラス振動系統の基本(カーディナル)コードで全部へし折りに行った。最後の相手が数字付き(ナンバーズ)直系とかじゃなくて本当に良かった。

 

 そういう訳でやり切った俺はその場で昏倒し、もう一度医務室へ運ばれて色々と検査を受けた上で待機。医務室の先生曰く、なんでも顔面どころか全身蒼白で生きているとは思えない感じだったらしい。やっぱあの術式おかしいぞ。

 

 そんなこんなで丸一日昏倒した俺は8月9日になって漸く目覚めたのだった。───腹減った。取り敢えずなんか胃に入れたい。

 

「少しだけ待ってくださいねー?先生呼んできますからね」

 

「お?起きたか良かった良かった。はいはい、それじゃあね。まず、自分の名前と年齢は言えるかな?」

 

「九十九朔です。16歳です」

 

「うん、意識も明確でバイタルも問題ないようだね。一応経過観察したいから1日ぐらい時間は取るけど、すぐ戻れるよ」

 

 思ったより拘束されないなと思ったが外傷もないしそんなもんか。あ、そういえばここって観れるのかな。

 

「あの、ここからって九校戦観れますか?」

 

「ああ、観れるよ。そこのテレビで中継やってるから」

 

 医者の操作で画面にモノリス・コードの映像が映る。丁度一高が試合をしているようだ。メンバーは…もう達也たちに変わってるのか。となると森崎たちも()()に来ているのではないか?

 

「あの、先生。もしかして他の一高の生徒もこちらの医務室に来ていないでしょうか?」

 

「ああ、そうそう。なんでも試合中の事故だったとかで3人ほど来ていたね。なんで分かったんだい?って、選手が変わっていればそう考えるか」

 

 頷き返し、そのまま画面を見る。特殊なレンズで捉えた魔法式の光がコンピュータ処理を受けて映像化されている。ただやはり、一高側はあんまり目立たないというか奇襲戦法が決まりまくっている。こういう自然物の多いステージでは古式魔法の優位性が全面に出るなぁ。反対に市街地ステージだと工夫がいるけど…それはそれで達也とレオがハマりまくってるから心配は要らない。

 

 試合をぼんやりと眺めながら昨日の振り返りをする。

 古式魔法で現代魔法と戦闘した場合その奇襲性は大きなアドバンテージになる。実際古式魔法由来の結界に対して、一条は最後まで有効な方法を出せず事象干渉力による力押しになっていた。あの手の結界は手順こそ踏めばいとも簡単に壊されてしまうのだが、そこを隠し誤魔化すのが技量になってくる。まあ最後は力任せしたけど。

 それに攻撃面でも儀式レベルなら現代魔法の情報強化にも効果があるのが分かったのは大きい。携帯出来る札や護符で一部省略した威力落ちでも戦えるなら手札が結構増えるしな。幹比古がこの後使い出す鉄扇型の呪符CADってもしかして使い勝手良いのかな…

 

 まあでもやっぱ問題は《竜刃》か。なんだよ竜って。どこに竜要素あった?ただの自爆技…なんか引っかかる。ちょっと確かめてみるか。

 

「すいません、家のものに持ってきて欲しい本があるんですけど端末ってここ使えますか?」

 

「廊下なら使えますが…歩けますか?」

 

 足の方に意識を向けてみるが特段問題なさそうだ。廊下に出て試しに家の固定電話に掛けてみる。

 ワンコールで聴き慣れた声が聞こえてきた。

 

「朔!?起きたの!?」

 

「あー、うん。取り敢えずなんともないよ母さん。それでね、退院するまで暇だから家から幾つか魔法関係の本とか持ってきてくれない?特に《竜刃》が記述されてる奴」

 

「え?え、ええ。良いわよ。その感じだと…特に問題なさそうね」

 

「まず駄目だったら電話が許されてないし。正直腹減ってる以外はなんともないよ。」

 

「そう。なら持って行くから、ちょっと距離あるから待っててね」

 

 一先ずこれでよし。あー、しかし腹減った。

 あと気づいたら予選も佳境に入ってた。まああの3人なら負けないだろとは思っていたけど、いざ観るタイミングを逃すとなんか悔しいな。あ、病院食来た。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「朔、持って来たわよ。あとこれお見舞いのお菓子」

 

「ありがと。さてと…」

 

 やっぱり《竜刃》のオリジナルが記述されてる魔導書はうちの倉の中だと異質だ。大体が中世日本の代物なのだが、これ含めて数冊は本革の表紙でどこか西洋風の表紙になっている。あんまり深く考えずに*1読んでたけど…なんで神道を基本とする家にこんな西洋然とした魔導書があるんだ?

 術式に関する部分は綺麗に清書されているが、それでもその他のページや端の方には乱雑な文字がある。走り書きのような清書されていない文字に、箇条書きに近い文体。なんというか()()()()()()()()()書いているような、兎に角時間のなさが感じられる。

 

 うーむ。ここまで考えたけどヒントが無さすぎる。倉にある他の似たような本もないと分からん。取り敢えずなんらかしら向こうの古式魔法師と関係があったのか?

 ───多分、必死に頭の中をひっくり返したからだろうか。ふっと前世のなんかの漫画で読んだ雑学が蘇ってきた。ルーマニアのヴラドさんがどうたらとかいう、要はドラキュラの元ネタにドラゴンが関わっているみたいな話を見た記憶だ。

 

 と、そのタイミングで扉の外にそれなりの人数の気配がした。ノックのの後にぞろぞろと入ってくる。

 

「よー達也。予選お疲れ」

 

「体調は問題ないのか?」

 

 こっちが達也たちであることを気づいていたことに一切驚かないあたり本当に司波達也だが、深雪さんとかエリカ、果ては雫までもが似た様な反応なので俺はそういう人間だと認識されているようだ。納得いかねぇ。

 

「一気に血液が抜けたのが原因だから実際の量はそこまでだし。明日の応援は余裕で間に合うね」

 

「それはいいんだが…まあ、元気なのが1番か」

 

「うす。委員長、皆さん。ご心配おかけしました」

 

 いやほんと、すいません。

*1
というか表紙の違いとか気にしている余裕がなかった




蛇足
ヴラドさんとはヴラド三世のことです。ドラキュラ云々は結構有名な話なのでご存知の方も多いかもしれませんね。
あと母親の反応ですが、そもそも魔法科高校入学前から朔が死ぬかもしれないと感じる程度の稽古をつけるような両親の1人なので、丈夫さとかそこら辺はあんまり心配してなかったりします。
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