「あの兵士を倒す必要はないわ。私は個人的にあなたが許せないのよ。来なさい!魔王の妹!」
「望むところよ!『孤高のカトレア』!」
その言葉と共にリアスは消滅魔法を片手に溜め、それをリッカの方向に放つ。
「たしかに、少ない量でその威力の魔法を作ることができるのはすごいかもしれない、でも!」
リアスの消滅魔法がリッカに当たる瞬間、リッカが片手を前に突き出すと一瞬でリアスの魔法が霧散していった。
「私の前では、その程度の魔法は通用しない……」
リッカが睨みつけるように言い放った。
「くっ!さすが人間の中でも5本の指に入るだけの実力者ってわけね。でも、私たちにだって負けられない理由がある!」
次は両手で魔法を溜め、先程の倍近い量の魔法をリッカに向けて放った。
しかし、リッカの前でやはり霧散してしまう。
「量が増えただけ……。分かった?あなたの魔法は私には届かない。これが今のあなたと私の実力差……」
「なら、これならどうよ!」
リアスは、消滅魔法を槍状に変え、そしてそれをリッカに投げる。
(多分、さっきからグリーンウッドを守っているのは何らかの結界のはず。なら、結界は一点突破に弱く、脆い!)
しかし、その攻撃を見たリッカはやれやれと言いたいような顔をし、先ほどと同じように片手を突き出す。
槍は一直線にリッカの手の平の中央に当たる様に向かっていき、当たる瞬間に先ほどと変わらないように霧散する。
「な、なんで……」
リアスはその様子を唖然と見つめるしか出来なかった。
「あなたの考えていること当ててあげましょうか?」
「え?」
「あなたはこう考えたはずよ。相手のあの防御はおそらく結界か何かで防御しているはず。なら、槍ならもしかしたら貫けるかもしれない。なぜなら、結界は鋭いものに弱いから」
「……」
リッカに自分の内心を見破られ、リアスは黙ることしかできなかった。
「なんでわかったの?みたいな顔をしてるわね。なんでわかったかそれは、あなたのその考え方が当たり前すぎんのよ」
「どういう意味?」
「あんたの考えることなんて魔法使いなら誰だって考えることだわ。ましてや、そんなことわかりきっている人間はわざわざこんな攻撃に魔力なんて使わないわ」
「くっ」
言い訳は出来なかった。なぜなら、リッカの言葉は間違っていないからだ。
「それに、上位の魔法使いなら私が使っているのが結界じゃないくらい一目見ればわかるわよ?」
「じゃぁ、一体私の消滅魔法をどうやって打ち消してるっていうのよ!……っ!?」
リアスは自分の言葉により、自らの矛盾に気づいた。
「少し気づいたみたいね。そうよ、私は、あなたの魔法を打ち消していたのよ?結界は魔法を防ぐための盾のようなもの。もしかしたら、打ち消す結界もあるかもしれないけれど、そんなものは役に立たない。結界じゃ、魔法は打ち消せないのよ。私が、あなたの魔法を打ち消していたのは純粋な私の実力よ」
「じゃぁ、私の技を魔力で相殺していたっていうの!」
リアスは怒鳴った。消滅魔法は冥界でもなかなか使うことのできない希少な力だからだ。そして、消滅魔法の力は冥界でもかなりの力があることは誰でも知っている事なのだからだ。
「あなた、それは自意識過剰よ。あなたにとって消滅魔法がどれだけのものかわからないけれど、私から見れば宝の持ち腐れ以外言葉が見つからないわ。あっ、そういえば豚に真珠って言葉もあるわね」
リッカは挑発するように笑う。
「確かに私から見ても消滅魔法は脅威のひとつよ。でもね、あなたはその力をを鍛えた?強くしようと努力した?本当の力を知らないの?あなたはただ自分の才能に溺れていただけなのよ。さっき、私の技を魔力で相殺したのって言ったけど、才能だけのあなたの力と才能と血が滲むような努力で身に付けた私の力。どっちが上か子供でも少し考えたら分かることよ」
もう、言い返すことができず、リアスは跪いてしまった。
リッカの言ったとおりだったからだ。リアスは生まれ持った消滅魔法に溺れ、裕斗が、小猫が、朱乃が、アーシアが、そしてイッセーが努力していたのを見ていただけだったからだ。
どこかで、私にはこれがあると調子に乗っていたのかもしれない。
そのことが悔しく、涙があふれてきた。また、私のせいで負ける。そのことが怖かった。
その時、自分たちの上の方でとても大きな魔力が動き出した。
リアスは知っていた。その魔力の正体を。
リッカもその魔力に驚いていた。
(イッセーが頑張ってるのだから私も頑張らなきゃね!)
リアスは立ち上がり、リッカを睨みつける。
「見せてあげるわ、私の全力を!あなたたちは魔法は想いの力って言ってるけど、私だってあなたたちに負けないぐらいの想いを持ってるのよ!これでも、くらいなさい!」
リアスは先程の数倍の魔力を圧縮し続け、手のひらサイズまで小さくした。
そして、それをリッカに向けてはなった。先程よりも小さいが威圧感は先ほどとは比べ物にならないぐらいだった。
「そう、それがあなたの想いね。でも軽すぎるわ。たかがそれぐらいの想いで偉そうにされては困るわ」
リッカも片手に風を圧縮し、それをリアスの魔法に当てるように投げる。
それは二人の中央で交差し、そして爆発した。
その爆風で周りの壁などが吹き飛んだが、二人は立ったままであった。
しかし、リアスは疲れがかなり表面上に見えており、肩で息をしていた。
リッカはそれとは対照的にまだまだ、余裕という感じの状態でいた。
(今のを軽々防がれた!?それにイッセーの魔力を感じられなくなった……。もしかして、イッセーが負けた?でもそれなら放送が入るはず……)
「分かってるわ。さっきの魔力について清隆には聞きたいけど、作戦は成功ね!じゃぁ、みんなはもう休んでていいわ」
リッカがイヤホンに向けて何かを話しているのが聞こえてきた。
そして、リアスの方を向き、言い放った。
「あなたたちの負けよ、リアス・グレモリー。あなたとアーシア・アルジェントを除く全てのグレモリー眷属は全て撃破した。残っているのはあなたたち二人だけよ」
その言葉の意味がリアスには理解できなかった。
「そ、そんな嘘よ。たしかにみんなの魔力は感じられないけどどこかで休んでいるかもしれないでしょう。それに、撃破されたら放送で言われるはず……」
「まだ気づいてないの?あなたたちがこのレーティングゲームの作戦を考えて、私たちが考えないとでも思う?たしかに私は強い。でも、ほかの子達はそこまで強いわけじゃない。だから作戦を考えてるに決まってるじゃない」
「ま、まさか……!?」
「そのまさかよ。放送自体にジャックをしたのよ。グレイフィアの声は、私たちのスピーカーからしか聞こえてこないわ。それに、あなたたちの通信器だってほかの声は聞こえてこないはずよ」
リッカの言葉にリアスは驚きを隠せなかった。
放送をジャックなど到底できるようなものではないからだ。たしかに反則じゃない。でも、そんなことに費やす力があるならもっと違うところで力を使うはずだからだ。
「まぁ、あなたたちからは考えられないようなことでしょうね。だって、私ですら驚いた作戦だもの。でもね、私たちの中にはたとえ魔王にも神にも縛ることのできない規格外がいるのよ。この作戦を言われたときはさすがに私も焦ったわよ。まさか、通信器だけじゃなくて、放送自体ジャックしようなんて言われたときは。でも、効果覿面だったみたいね。あなたたちは、援軍に行ったりせず、そのまま戦ってくれた。仲間がみんな生きてると思ってね」
最後の言葉を聞いてリアスの顔が絶望の色に変わっていく。
自分の仲間たちはみんな倒されたというのが徐々に現実じみてきたからだ。
「キャッ!」
突然のアーシアの声にリアスは後方を振り向いた。
すると、アーシアは魔法陣に囲まれており、そこには白銀のロングヘアーの女性が立っていた。
おそらく、あの女性がアーシアを捉えたのだろう。
「戦闘中に油断はしたら危ないよぉ」
女性がそんなことを言っている。
「シャルル!?」
「リッカが遅いから来ちゃった。心配しなくても清隆君やみんなは無事だよ。今、巴とサラちゃんと葵ちゃんが治療してるところだしね」
そして、シャルルはリアスの方を向き、睨みつける。
「この人が清隆君を?」
明らかにシャルルは怒っていた。もちろん、理由は清隆を攻撃したからだ。
「えぇ。でも、もう終わりよシャルル。どうする?リアス・グレモリー。あなたにはもう、戦う持ち駒はもう残ってない。チェックメイトよ?」
「ま、負けました。投了します」
リッカに言われ渋々リアスは宣言した。
その瞬間、そのステージにいた皆の足元に魔方陣が浮かび上がり、元の駒王学園に転送された。
ついに悪魔VS魔法使いの戦いに決着はついた。
勝利は魔法使いという形で……
そして、戦いが終わったと思いきや物語の歯車は動き始めたばかりだった……
次回『はじまりのはじまり』
リッカさん。俺、行こうと思います。初音島に……