初音島へ
清隆とリッカは空港に来ていた。
初音島に行くには空港から近くの港に行き、船で行くしか道がないからだ。
「清隆、少しお手洗いに行ってくるわ」
「ハイハイ、でも、時間もあんまりないですから早めにお願いしますね」
「わかってるわよ。ここらで待っててね」
そう言い残し、リッカはトイレの方向に走っていった。
「はぁ、でもほんとにみんな大丈夫かなぁ」
清隆が心配しているのは、姫乃たちのことであった。
あのレーティングゲームが終わって次の日、みんなに初音島に行くことを伝えると、みんなが来ると言ってきた。しかし、俺自身の問題であるためどうみんなを説得しようかと思っていると、リッカさんがすぐに説得してくれた。
しかし、今日の朝、杉並先輩が木場の負の感情の原因である聖剣計画という計画の中身をある程度持ってきた。
近々、その主要人物であるバルパーと言われる人物が行動を起こすかもしれないと言う情報もあった。しかし、姫乃たちは「こっちは私たちに任せてください」といい、俺はその言葉を信じ、初音島に行くことにした。
みんながいるが、やはり心配なものは心配だった。
「リッカさんまだかなぁ」
清隆がそう呟いたとき、ふと3人組の信徒の人たちが目に入った。
ここ日本では信徒の姿などかなり珍しいもので、周りの人々もチラチラと見ていた。
そして、3人のうち一人がこちらを振り向いたとき目が合ってしまった。
しかし、その女性は清隆の知る人物にそっくりだった。
清隆が驚いていると、向こうも清隆に気づいたようでほかの二人を置いて走ってくる。
「人違いならすまないが、もしかしてあなたはの名前は葛木清隆では?」
「その声はもしかして、ゼノヴィアか?」
そう、二人は過去に1度だけ接触したことがあった。
まぁ、その話はのちのち語るとしよう。
「久しぶりだな清隆。だが清隆はヨーロッパの方にいたのでは?」
「あぁ。向こうの用事が終わって今年から帰ってきたんだ。それで、ゼノヴィアは?」
「私たちも少し野暮用でな」
「ゼノヴィア~。そっちの人紹介してよ~」
「そうだな。教えてほしいな」
ゼノヴィアと清隆が話していると、話にふたりが入ってくる。
「おっと、二人とは初対面だな。紹介しよう、彼は葛木清隆。でこっちが、イリナとルーツだ」
「はじめまして、葛木清隆です」
「こちらこそ、紫藤イリナです。よろしくね、清隆君」
「俺は、ルーツっていいます。それと、ゼノヴィアさん、そろそろ行かないと」
ルーツが二人にそう言うと、ゼノヴィアが名残惜しそうな顔をする。
「まぁ、用事なら仕方ないよ」
「あぁ。またな清隆」
清隆がそう言うと、ゼノヴィアは二人とともに奥の方に行く。
それと入れ違いにリッカが帰ってくる。
「あれ、清隆さっき人がいなかった?」
「えぇ。昔の知り合いに会って少し話しこんでたんです。って言ってもちょうど入れ違いになりましたが」
「そうなんだぁ……」
リッカは少し残念そうにする。
「でも、会わなくて正解だったかもしれませんよ?」
「どうして?」
「彼女たちは信徒ですから。リッカさんあまりそう言うの好きじゃないでしょ?」
清隆の言うとおり、リッカはかつて親友を信徒に魔女呼ばわりされ殺された過去があった。
彼女自身、過去に信徒とけんかになったときがあり、冷静さを失いかけたこともあったのだ。
「そうね……。って彼女たち!?その知り合いってもしかして女!?」
「え?えぇ」
「その話詳しく教えなさい!!」
その後の飛行機では、清隆はゼノヴィアとの過去についていろいろ話させられた。
初音島
「清隆……」
「分かってます」
二人が船で初音島に近づくと魔法による干渉が見受けられたのだ。
「やっぱり、魔法に関係していたのね」
「それになかなか強い結界でしたね」
二人が初音島に入る瞬間結界に阻まれそうになったのだ。
人よけのような結界だったため、何も起こらなかったがもしも本物の結界だったら壊さなければならなかっただろう。
「それだけ重要なものがここにあるってことですよね?」
「そう言うことね。でも、本当に大丈夫?」
リッカが清隆を心配して声をかける。
初音島に近づくにつれて清隆の表情に曇りが見え始めたのだ。
「だ、大丈夫ですよ」
「嘘ね。もしかして、嫌な思い出でも思い出したの?」
「いえ、そう言うわけではないんです。表現するのが難しいんですけど、すごく嫌な気分なんです。俺の過去とか関係なく具体的なものはないんですけどなんか変なんですよ。あ、でも大丈夫です」
「まぁ、ここまで来たら行くしかないから私は止めないわ」
たとえここで引き返そうとリッカが提案したところで清隆が賛成するわけないことは理解していたため、リッカは反対しなかった。
そのまま、ほとんど無言が続きふたりは初音島に到着した。
そして、二人は『芳乃』へと向かって行った。
清隆の記憶はあやふやだったが、二人とも何かに導かれるように歩いて行った。
そして、二人は普通の家の約3つ分ほどの大きさを持つ家の前に立った。
清隆が呼び鈴を鳴らすと、一人の女性が出てきた。
「そろそろ、やってくる時期だと思っていたわ。清隆」
その女性は清隆の母。芳乃涼香だった。
初音島に着き、清隆は『芳乃家』を訪れる……
そこで教えられたのは『芳乃』の真実……
そして過去と運命……
清隆が捨てられた本当の理由……
母の望んだのは”普通”の日常……
徐々にパズルのピースが埋まっていく……
次回「『芳乃』の意志と破滅の運命」
私は!私は清隆に『普通』に生きて欲しかった……!