涼香の話を聞き終わり、清隆とリッカは芳乃家に泊まらせてもらうことになった。
そして、涼香のことを清隆はまだ信じられずにいた。
今まで、そう簡単に人を信じてはいけないと教えられてきたからだ。
二人は一応違う部屋に案内された。と言っても隣同士なのだが。
夜になり、リッカは清隆の部屋にやって来た。
「ねぇ、清隆。調子はどう?」
「分かりません。『芳乃』のことを聞いてもう後戻りできないのはわかってます。でも……」
「スケールが大きすぎってこと?」
「はい」
そう、清隆にとって何かあると思ってはいたが、ここまでスケールが大きいとは思っていなかったのだ。
「それにこの力はみんなを破滅に導くって……」
あのあと、帰り道にこの力のことを聞いて絶句してしまったのだった。
この力の持ち主には強い者が沢山近寄ってきて、周りの人間を不幸にするということを。
「はぁ、清隆はそんなこと気にしてるの?」
「そ、そんなことってなんですか!俺はみんなに傷ついて欲しくない……」
「清隆……」
清隆の見せる弱音にリッカはかける言葉が見当たらなかった。
ここまで弱気になっている清隆を見るのは二度目であった。
かつて、戦闘において自分では役に立たなく、殻にこもってしまったあの頃の清隆と同じ顔をしていたのだ。
「一人にしておいてもらえますか?」
「分かったわ。ゆっくり考えなさい。でも、これだけは忘れないで。私は、いえ、私たちはいつだってあなたの隣にいる」
リッカはそう言い残し、清隆の部屋から出ていった。
「…………みんなはいつだって俺の隣にいる、か……」
清隆はリッカのそのセリフを最後に繰り返し、そのまま眠りについた。
「…………やよ!」
(ん?誰のセリフだ?)
「……で、でも!」
(何を言ってるんだ?)
「それしか……じゃよ」
(うまく聞き取れない)
「……すまない」
(何を謝っているんだ?)
「……りました」
(何なんだ?)
そこで場面が途切れた。
その瞬間、清隆はここが夢の世界なのだと自覚した。
(参ったな。結構制御できていたはずなのに無意識に誰かの夢の世界に入っちまうなんて)
清隆は夢から脱出しようと試みたが全然抜け出せなかった。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
女性の悲しい言葉が清隆の心に響いた。
(なんなんだこの夢は……)
「ごめんなさい。清隆……」
(っ!?)
『清隆』という言葉に驚いた。
(俺の名前……もしかしてこの夢は)
そして、突如場面は変わり、先程の公園の風景が写った。
さらに、そこにはひとりの女性と大きな桜の木があった。
「な、何で?何でよ!もう枯れたんじゃ……。何でこの桜が咲いてるの!」
女性は姿から清隆は涼香だと判断した。
涼香は桜の木に爪を立てる。
「何で!あの子を捨ててまで私は!私はあの子にこんな宿命を背負って欲しくないの!」
涼香は涙を流し続けた。
(”母さん”……)
清隆は気づかないうちに『母さん』と涼香のことを呼んでいた。
(何だよ、何なんだよ!こんなにも苦しい思いがあったなんて。こんなにも悲しんでいたなんて……。それなのに俺は何も知らないくせに……。本当に最低なのはどっちだよ!ただ一人しかいない血縁者である母さんを疑ったりして!)
涼香が涙を流し続ける様子を清隆は見ることしかできなかった。涼香の泣き叫ぶ姿を。苦しむ姿を……。
(俺は……。俺はどうすればいいんだ?いや、違うよな。もう、後戻りはできないんだ。)
『これが真実……』
(え?)
どこからか声が聞こえてきた。清隆は声の出どころを探すがわからなかった。
『これが涼香の真実だよ……』
(な!?誰だよ!こんなの見せて!)
『よかった。まだ間に合って……』
だんだんと、声が小さくなるにつれて誰なのか清隆にはわかった。
『桜の下で待ってる……』
(桜の下で待ってる……?)
その声の主はどんどん遠くに行くような気がしてきた。
(待てよ!待ってくれよ!……さくら!)
清隆の叫びは空を切り、一気に清隆は力が抜けていく感覚に陥った。
夢から覚める清隆……
しかし、夢から覚めた清隆からはほとんど魔力が感じられなかった……
魔力がなくなった清隆は困惑する……
しかし、時は止まらない……
次々と明かされる真実……
悲しみしか生まない『芳乃』の運命……
誰も望まない未来……
しかし、桜は咲き乱れる……
次回「母として……」
あなたの想い、たしかに受け取ったわ!あとは任せなさい!