二人の学生と別れたあと、清隆はエリザベスのいる学園長室の前にたどり着いた。
そして、清隆はノックをして部屋に入った。
「清隆です。エリザベスさん、入りますよ?」
そう言いながら清隆が部屋に入ると、難しそうな顔をしている女性が4名いた。
二人は知り合いのエリザベスとリッカだった。
しかし、残りの二人には全く見覚えがなかった。
「やっと来たわね、清隆。どこをほっつき歩いていたのよ?」
「どこも行ってませんって。それで、俺に何か用ですか?」
清隆はエリザベスに何の用事でここに自分を呼んだのか聞いた。
「えぇ。実はね、そこの二人があなたに会いたいと言っていたのよ」
「え?でも、それだけなら、俺の家を教えて、そのまま俺の家にくればいいんじゃないですか?」
「その方がいいんだけど、この二人、結構ワケありなのよ。でも、この二人がどうしてもっていうから」
「はぁ~。ほんと、信じられないわよね。こんな人が風見鶏のトップなんて」
露骨にめんどくさそうにリッカは嫌味を言った。
「だ、だって仕方ないじゃない!困ってる人がいたら助けるってものが風見鶏の方針よ!」
「そのお人好しの性格も誰に似たんだか」
リッカは清隆を見ながら呟いた。
「いやいや、俺関係ないですよね!?」
「はぁ~。で、清隆も来たことだし、そろそろ、そちらの二人の自己紹介をしてくれないかしら?こっちは知ってるわよね?」
「はい、そちらが、リッカ・グリーンウッドさんで今来た男性が葛木清隆さん。はじめまして、私は、愛紗と申します」
「私は星と申す」
愛紗がそう言うと、隣にいた白い服の女性も一度全員を見渡して言った。
「えっとね、二人とも『元』禍の団の一員なの」
エリザベスのその一言にその場にいた全員に緊張が走る。そして、まっさきに口を開いたのは清隆だった。
「元?それは一体?」
「それは、私から説明いたします」
愛紗が答えた。
「まず、私たちのことを話す前にみなさんは禍の団をどこまで理解していますか?」
「テログループであり、リーダーがオーフィスと名乗る者。そして、中には大きく分けると3つの派閥が存在すること。旧魔王派と呼ばれる今の魔王達を快く思わない悪魔たち、ヴァーリチームと呼ばれる一番小さいけれど個人個人の力がすごく高いチーム。そして、人間の英雄の子孫達で作られている英雄派。その3つがあるということぐらいね」
リッカの言葉に清隆とエリザベスは頷いた。
「そこまで分かってるなら説明は必要ないですね。では、私たちのことを話します。私たちは中国の生まれで、私は関羽、星は趙雲の子孫として命を授かりました」
その言葉に星は頷き、それとは対照的にリッカ、清隆、エリザベスは少し驚いた。
「話を続けます。そして、私たちは自らの力を高め続けました。そして、自分たちにある力が目覚めたのです。星」
「うむ。了解した」
すると、二人は胸の前に何かを包み込むように構えるとそこが光り出した。
そして、愛紗の前には偃月刀が、星の前には直刀槍が姿を現した。
「みなさんも知っているとおりこれは私たちの神器です。私のは英雄の関羽が使っていたと言われる青龍偃月刀です」
「私のは、英雄の趙雲が使っていたと言われる龍牙という直刀槍ですな」
二人が3人に見せたあと、それぞれの神器は光になって姿を消した。
「今見せたように私たちにはこのような特別な力があります。そして、この力のトレーニングをしているときに禍の団の英雄派のリーダーである曹操の子孫に私たちはスカウトを受けたのです。『俺たちは人間の可能性を信じてどこまでいけるか試してみたい。だから、俺たちに協力してくれないだろうか』と」
「それで、あなたたちはどうしたの?」
リッカが質問した。
「私たちは曹操の提案を受け入れ、仲間になりました。私たちは最初は皆の笑顔のためを思い自らを鍛えてきました。しかし、私たちは生粋の武人だった。どこまで自分の力が通用するか試してみたかったのです」
その言葉を愛紗が言った瞬間、星が目を背けた。
まるで、自分たちがとんでもないことを考えてしまったかのように。
「それに曹操たちは私たち二人を仲間の様に接してくれました。昔から私たちの強さは異常で、皆に蔑まされて生きてきた私たちにとっては天国のような空間でした。そして、曹操たちがさらに私たちのような神器所有者を集めていると聞いた時は一生この人についていこうと思いました。しかし」
愛紗は涙を流した。
「それは、これからの戦いの為の使い捨ての道具にする為に集めたということを知ったのです。そして、禁手になるために無茶な訓練をさせるようになりました。私と星は曹操達にやめるように言いました。しかし返ってきたのは『人間の限界に挑戦するためには禁手が必要なんだ』と言う言葉でした。そして、私達の言葉は届かず、禍の団をやめるように私たちが言ったら、皆は私たちに牙を剥いたのです。私たちは一生懸命逃げ続けました。そして、限界を迎えようとしたとき、ふと思い出したのです。ロンドンに仲間を思い続けている魔法使い達がいることを。そして、私たちがロンドンについて倒れかけているときにエリザベスさんに出会ったのです」
「それで、今に至るということね」
「そのとおりです」
そして、リッカは一度目を瞑り、少し考えるような素振りを見せる。
「どうしました?リッカさん」
「清隆、そこの二人のこと信じられる?」
「「「「え?」」」」
清隆、エリザベス、愛紗、星の4人はリッカの質問の意味が分からず同時に声をあげた。
「たしかに今の話を聞いていれば、あなたたちから得られる情報はかなり大きい。でも、エリザベスの表情から察するとこの二人を預かるのは私たちということよね?」
リッカの質問にエリザベスは言い返さなかった。
「無言は肯定ととるわよ?」
「待て!私たちの言ったことが信用できないということか!」
「落ち着け、愛紗。一言もグリーンウッドはそのようなことを言っていないぞ。概ね、私たちを預かるかどうかはそこの葛木氏の返答次第ということだろう。預り先に私たちが葛木氏を指名したのだからな」
愛紗が怒鳴ったのを星は華麗に流す。
「そういうことよ。清隆。あなたは二人のことをどう思う?」
清隆は二人の目をじっと見た。
「俺は、信用できると思います」
清隆の言葉に愛紗と星はホッとしたような顔をした。
「分かったわ。清隆がそう言うなら私も信じるわ。それに、あなたたちは即戦力になりそうだしね」
「え?どういう意味ですか?」
リッカの言葉に清隆が疑問をぶつけた。
「この前行なったレーティングゲームに魔法使いも公式に参加するようになったのよ。それで、この前みたいにチェスで行ってもいいのだけれど、それじゃ悪魔とかぶるでしょ?」
「はい」
「それで、天使達はトランプを利用してそれを行おうとしているの。で、私たちは、リズ」
「分かってるわ」
エリザベスは机の方に行きそこから清隆に馴染みのあるものを取り出した。
「将棋?」
「その通りよ。リズにはそのことで相談を受けてね。それで将棋を思い出したのよ。ちなみにほとんどの駒は決まってるわ。それでも、まだまだ戦力は足りないのよ。それで、この二人にも私たちの仲間になってもらおうと思ってね。反対意見はある?」
「いえ、私たち自身願ってもなかったことです。断る理由がありません」
「そのとおりだ。それに噂以上のお方のようだしな、葛木清隆という人物は。なぁ、愛紗よ?」
「な?何を言っているんだ!」
「そう照れるな」
「ゴホンッ!」
リッカは明らかに大きな咳をした。
「まぁ、二人もいいって言ってるわけだし。リズ、いいわね?」
「分かったわ」
そう答えて、エリザベスは『香車』の駒を二つ取り出した。
「では、二人とも右手の甲を出してください」
二人はエリザベスの言うように右手の甲を出す。
「では、あなたたちにこれを授けます。本当に後戻りはできませんよ?」
二人がエリザベスの言葉に頷く。
「では、これを」
吸い込まれるように香車の駒が二人の甲に入っていき、二人の甲には『香』という文字が浮かび上がった。
「フフッ、サイドからの遊撃として頑張ってね」
「そういえば、清隆さんにも渡さなくちゃいけないわね」
そう言いながら、エリザベスは王の駒を清隆の方にもっていく。
清隆は何も言わずに右手の甲を前に出し、そのままそこには王と刻まれた。
「そういえば、リッカさんはどの駒なんですか?」
「私は、これよ」
リッカが見せた右手の甲には『飛』と言う文字があった。
「リッカさんは飛車ですか」
「その通りよ」
「ひとつよろしいか?」
清隆とリッカが話しているのに入ってきたのは星だった。
「ん?何か他にありますか?」
「いや、私たち自身の力なども知っておかねばこれから不憫ではと思いまして」
「へぇ、なるほど。そういうこと」
星の一言でリッカはすべてを理解したように答えた。
「つまり、模擬戦をしようということよ」
リッカが答えた。
二人の英雄と模擬戦をすることになったリッカと清隆……
二人の英雄はカテゴリー5の魔法使い相手にどのように戦うのか……
次回「英雄との模擬戦」
一撃だけ、本気でいかせてもらう!