「それはね、夢見の魔法でのカウンセリングさ」
「カウンセリング?」
清隆の言葉に小猫が聞き返してくる。
「カウンセリングって人の話とか聞いたりして悩みを解決する奴のことかい?」
「まぁ、間違ってはいないかな。でも、俺のは少し特殊でね。今も言ったように夢見の魔法を使うんだよ」
「「夢見?」」
二人は聞き慣れない単語に少し戸惑っていた。
「夢見の魔法っていうのは人の夢を見る魔法なんだ。少し危ない魔法でね、専門の人以外は使うことはあまりオススメしない魔法なんだ」
「人の夢を見る……」
「そう、それでね、これは人のプライバシーにも関わっているからあまり使うこともおすすめされてないしね。だから黙っていて欲しかったんだ。人の夢を勝手に見えるなんて魔法が使えるなんて知ったら少しまずいだろ?」
清隆の言葉に二人はリアスを思い浮かべすぐに頷いた。
「でだ、通常のカウンセリングで話を聞いたって本当かどうかは微妙なところなんだ。生き物全てにおいて言えるけど、言葉では何とでも言えるんだよ。でも、夢の世界では嘘は付けないんだ。本当の自分しかいないし、俺の干渉も自覚できないから、断れないしね」
二人は清隆の話を真剣に聞いている。
「だから、塔城さんにはこの家で寝てもらう。あっ、心配しなくても夢見の魔法を使うにあたって催眠の魔法もうまく使えるからすぐに眠られると思うよ。それで、塔城さんが夢の世界に入ったら、俺も塔城さんの夢の世界の中に入って過去を見る。そこから塔城さんのトラウマについて詳しいことを探る。こんな手順だけど大丈夫かな?」
清隆がそう言うと小猫は無言で縦に頷いた。
「分かった。なら、木場は巴さんと一緒に向こうに立っていてもらえるかな。じゃぁ、塔城さん。そこに寝転がってもらえる?」
清隆の言葉に皆はすぐに動いた。
そして、寝転がった小猫の目の前に人差し指を持っていく。
「この指を見ててねぇ」
指を小猫の目の前で数周回すとすぐに小猫から規則正しい寝息が聞こえてくるようになった。
「はい、落ちたぁ。じゃぁ、俺も落ちるから二人はあとのことをお願いな」
清隆もすぐに小猫の横に寝そべると規則正しい寝息が聞こえるようになった。
清隆が夢の世界に行き、巴と裕斗のみがその場に残った。
「それにしても、小猫ちゃんがそんなに自分のことで思いつめているなんて僕は知らなかった」
「まぁ、よく見なければわからないさ。だが、少し考えれば分かることでもあった。兵藤は赤龍帝の担い手、木場自身は禁手に至った。周りはどんどん強くなっていく。そして、戦車は女王の次に強い駒だからな。変なプレッシャーもあっただろう。だが、このことも決して木場からグレモリーたちに伝えることは許さない」
「えっ?」
木場は驚いた。木場自身も助けてあげたいと思うし、言えばきっとみんな協力してくれるからだ。
「わからないか。これは塔城の問題だ。そして、これは君たちや私たちでは解決できるような問題でもない。君たちが助けたいと思い、表に出すと彼女は余計に自分を追い詰めるぞ?弱いものから見たら君たちが言うとただの嫌味にしか聞こえないだろうからな」
裕斗は巴の考えに反論できなかった。
「そして、清隆でも救うことは難しいかもしれない。でも、清隆ならなんとかしてくれそうな気がするんだ」
その一言に裕斗は少し笑った。
「五条院さんは信じているんだね、葛木先輩のこと」
「まぁな。まぁ、いつだって、私には出来る事は無かったがな」
そうつぶやいて二人は眠っている二人の目覚めを待った。
そこは夢の中。
(これが、塔城の過去なのか……)
清隆は小猫の夢の中をさまよっていた。
すると、突然二匹の猫の姿が見えた。
片方が黒く、尻尾が2本あった。
もう一方は対照的に白く、尻尾は1本だけだった。
(黒い方が黒歌で白いほうが塔城だよな)
そして、二匹の生きている光景を見ていた。
「白音、今日のお昼ご飯だにゃん」
「でも、お姉さまの分は?」
「お姉ちゃんはここに来る途中に全部食べたにゃん。だからこれは白音の分だにゃん」
そう言って黒歌は小猫に魚を渡したのだ。
(自分は食べずに妹を優先か。どこが力に溺れるやつなんだ。絶対に間違ってる!)
それからもいくつかの場面があったが、どれも黒歌の優しさが見えた。
ピンチになってもいつも助けに来てくれる。理想の姉のようなものだった。
(違う、これじゃない!どれだ!小猫の最後の黒歌の記憶は!)
清隆は黒歌の優しさを知り、忌まわしい二人を切り裂いた最後の記憶を探す。
そして、明るい色の記憶の中の奥の奥に黒ずんだ記憶があることに気がついた。
(なんだ、あの記憶は。近づきたくない。でも、行くしかないんだよな)
一瞬、シャルルの顔が浮かびすぐに行くことを決意した。
そして、その記憶に入った。
すると、小猫と黒歌が別れるシーンだった。
「白音、少しここで待ってるにゃん」
「え?でもご主人様が……」
「大丈夫、すぐに終わらせるから」
そう言って出ていく黒歌の姿が最後に入った。
(今の顔……。なるほど。そういうことかよ。何が眷属だ、何が家族だ!ふざけてやがる)
最後の小猫の記憶は自分たちの主を無残な姿で殺している姉の姿だった。
「な、何で?何がどうなってるの?う、うわーーーーーーー!!!」
「し、白音!?」
近づこうとする黒歌はすぐに歩を止める。
「白音。絶対に生きて、もがいてもがいて生き抜くにゃ。そうすればいつか会えるから……」
そう言って、黒歌はその場から逃げた。
しかし、小猫にはその声は届いているようには見えなかった。
(なるほど、これは奥が深そうだな。でも、必ず助けなきゃな。塔城さんだけじゃなく、黒歌も)
清隆は新しく決意し、そのまま夢の世界から出ていった。
清隆が目覚めると、巴と裕斗の視線に気づいた。
「おはよう」
「あぁ、お疲れさん」
「お疲れ様です」
清隆の声に2人はすぐに反応した。
清隆は横で眠っている小猫の顔を見た。
すると、目から一滴の涙がこぼれ落ちたのに気がついた。
(ほんとは大好きなはずなのに、認められない、か。あんまり自分を追い詰めなきゃいいけどな)
それから、10分ほどで小猫も目を覚ました。
「……どうでしょう?私自身どんな夢を見たか覚えてないんですが」
自分が夢に付いて全く覚えていないことに少し不満があるようだった。
「大丈夫、塔城さんのこともだいぶ分かったから。じゃ、定期的に俺が呼びに行くから、その日に次の診断日を決めるって形で大丈夫?俺自身もいろいろあってずっとこっちにいるわけじゃないからさ」
「……分かりました。それと、私のことは小猫で構いません」
「じゃぁ、僕も裕斗でお願いします」
小猫が言うと、それに続くように裕斗もお願いした。
「分かったよ。なら俺のことは清隆でいいよ。姫乃とかぶるだろうしな」
「なら、私は巴で構わない」
そのあとも4人は少し雑談をして今日はお開きとなった。
二人が去ったあと、リビングには清隆と巴のみとなった。
「で、清隆。詳しいことを教えてくれないか?」
「わかってますよ。まず、やっぱり思っていたとおり目の前で黒歌が主人を殺した後の姿を目撃している場面がありました」
巴は無言で頷いた。
「続けます。力を恐れているというよりは、力を使っている姉の姿に恐怖を抱いていると思われます。しかし、小猫自信は姉の事をまだ完全に疑いきった訳ではないと思います」
「というと?」
「夢にはそれぞれ色があります。例だと、熱狂的な夢には赤などが、寂しい夢には青などです。そして、苦しみは黒色です。小猫自身姉の思い出は表現がうまくできませんがとにかく綺麗な色だったんです。本当に恨んでいたり、嫌っていると、全ての思い出が黒くなるはずなんです」
巴は少し考える。
さらに清隆は続けた。
「ここからは想像です。黒歌の表情から杉並先輩の仮説が正しいと思います。おそらく黒歌は」
「小猫を救うために自ら道化となり、すべての罪を被って妹を守った、か?」
巴の言葉に清隆も頷いた。
「なるほどな。まぁ、杉並には伝えておくよ」
巴がそう締めくくって、一日が過ぎていった。
ついに歯車が噛み合った……
運命の和平会談……
天使、堕天使、悪魔、人間の平和を維持するための会談……
会談が始まる前、ゼノヴィアは清隆にあるお願いをする……
次回「謝罪」
これ以上ゼノヴィアを追い詰めてみろ。潰すぞ?