駒王学園で激闘が行われているとき、違う場所でも激闘が行われていた。
「アスナさん、スバルさん、目の前の二人をお願いします。私は、後ろの魔獣を斬ります」
「「了解!」」
スバルとアスナが魔獣の前にいる二人の魔法使いと対峙する。
「ケッ、風見鶏のガキかよ、驚かせんなよ!」
「まぁ、少し可愛いんじゃないか?」
二人の魔法使いが魔法を放とうとする。
「……撃たせない」
そのつぶやきと共に二人のロッドは二つに折れる。
「「え?」」
二人がその唖然とする中、スバルとアスナはそれぞれの敵に接近する。
「ディバイン・バスター!」「断空斬!」
スバルの一撃とアスナの一閃により、二人の魔法使いは倒れる。
「グガァァァァァァァ!!」
植物の形をした魔獣に姫乃が接近する。
「化け物には容赦しません!辻斬り!」
姫乃は高速の一撃で魔獣を切り裂く。
スピード自体はそこそこのレベルだが太刀筋の速さはもはやここにいる誰にも見ることができなかった。
その姫乃の姿を見て、風見鶏勢も唖然とするしかなかった。
「さすが、姫乃ちゃんだぜ!それにシノンちゃんもなかなかいい援護射撃だったぜ!」
「……どもです」
「マスターは何もしてないでしょう?」
「ホントだよねぇ。耕助君、さっきから戦いに全然参加しないよねぇ?」
理由を知っているシャルルが四季に便乗する。
いつものやりとりが先程まで緊張していた空気をはねのけ、笑いが生まれていた。
そして、その後も何人かの魔法使いや魔獣。それにトラップなどもあるが、皆はそれを難なくクリアしていく。
そして、ガーディアン日本支部の建物の前までやってきた。
「……シャルルさん」
「えぇ、分かってるわ」
姫乃とシャルルは頷きあって、ゆっくりと扉を開ける。
どことなく緊張の糸が張り詰めていた。風見鶏勢の皆も緊張していた。
扉が開いた先にいたのは一人の男性だった。
その男性が、瞑っていた目をゆっくりと開ける。
その瞬間、一気に緊張が走る。
「やぁ、君たちだね。風見鶏の襲撃者というのは」
そうつぶやいた瞬間、姫乃達は全員武器を構える。
「まぁ、全員相手をするのも構わないのだが―――――」
男性は持っていた刀を抜く。
「動けるものから来なさい!」
その瞬間、スバル、ティア、アスナ、シノン、美琴は跪いてしまう。。
5人ともなぜ自分が跪いているのか理解できていなかった。
「耕助君、四季さん!5人を安全な位置まで下がらせてください!完全に呑まれてます!」
姫野の言葉を聞いた瞬間、5人はなぜ自分が跪いているのか分かった。
目の前の男性の強さに恐怖していたのだということに。
姫乃の指示を受け、耕助と四季は5人を担ぎ、その場を少し離れる。
「シャルルさんは結界魔法で5人の防御を。耕助君と四季さんは私と共に江坂さんとの戦闘を行います!」
その言葉に二人は頷く。
そして、四季と耕助が姫乃の横に並ぶ。
「ほぉ、そこにいるのは人形か。なるほど、『江戸川』の関係者か。そして、『鬼の担い手』か。相手にとって不足なし。来たまえ!」
江坂が構えた瞬間、姫乃と四季は江坂に向かって走り抜く。
「ハァァァ!!」
姫乃が切りつける。
「フン!」
江坂は高速の姫乃の太刀筋を一瞬で見切り、弾き飛ばす。
弾き飛ばされた姫乃は驚くしかなかった。自分の信じていた太刀筋の速さだけには自信があったのだ。
そして、四季がすぐさま拳を構え、一気に接近する。
「悪くない手だ。だが!」
四季が拳を放とうとすると、江坂は刀を逆手にもち一気に腰を下げ柄の部分で四季の腹部を攻撃する。
「グハッ!?」
あまりの衝撃で四季が止まってしまうと、それを江坂が追撃するように蹴り飛ばす。
耕助がうまく走り込み、ギリギリで四季をキャッチする。
「大丈夫か、四季!」
「えぇ、なんとか。でも、あの人かなり強いですよ。最初から飛ばしてください、マスター」
「え、あ、分かった!」
四季はなんとか立ち上がり、耕助は魔力を四季に流し込む。
「鬼姫、私たちも最初から飛ばしますよ」
姫乃も鬼姫の力を解放し、瞳の色が赤く染まる。そして、魔力自身も赤く染まっていく。
「ほぉ、これが『鬼の担い手』の本気と『人形使い』の本気か。長生きはしてみるものだな。まぁいい。かかってきなさい!」
「行きます!」
姫乃は先程よりも速いスピードで、江坂に接近する。そして、切りつける。
今回は江坂が少し押される。
「クッ!」
「ハァァァ!!」
姫乃の猛攻に受けるしか江坂には手がなかった。
もうすでに、人間の域をその太刀筋の速さは超えていた。江坂は経験のみで受け止めている形になっていた。
「これが、鬼の力……。さすがだ!」
なんとか、姫乃をはじき飛ばす。そして、姫乃と距離をとるがそこにすかさず四季が飛び込む。
「私もいつまでも負けっぱなしは嫌です!」
四季の攻撃を江坂はよけるが先程よりも四季の攻撃が鋭くなってきているのに江坂が気づく。
「四季、決めやがれ!ハァァァ!機術・陽炎砲!!」
その声に反応するように四季の拳に魔力が集まる。
「行きます!」
「これはまずい!?」
江坂もすぐさま危険を察知するが時すでに遅しという状況だった。
四季から放たれた魔力は江坂を包み込んだ。
そして、そこには木でできた人形らしきものが倒れているのに気がつく。しかし、その周りに血が飛び散っている。
「そ、そんな……。嘘だろ……」
「マ、マスター。これって」
耕助がその人形に近づき、それを観察し、拳を握りしめる。
四季も必死に首を横に降っていた。
「こ、耕助君?これって一体?」
『ほぉ、これを聞いているということは、私と同等の力をもっているこの人形を倒したということだな』
「ふざけんなよ!!」
姫乃も近づき不思議そうにしていると、突然、江坂の声が聞こえてきた。その声に耕助が怒鳴る。
「こ、耕助君!?少し落ち着いてください!」
「そうです!マスター、気持ちは分かりますが!」
「耕助くん!?みんなも見てないで止めて!」
姫乃と四季が止めに入るがそれでも暴れて、シャルルと風見鶏勢も止めに入る。
「てめぇ!それだけはやっちゃいけねぇだろうが!それがてめぇらのすることかよ!許さねぇ!たとえ皆が許しても!俺が!『江戸川家次期当主』の俺だけは絶対に許さない!お前を見つけて、お前も潰してガーディアンを潰す!」
そう言い残し、皆にもういいと伝え少し離れる。四季も耕助に付いていく。
風見鶏勢は全然性格が変わってしまったことに驚きを隠せなかった。先程まで、このチームのムードメーカーとしていた彼が何故ここまで怒るのかと。
姫乃とシャルルも同様だった。
『今回の奇襲は君たちにとっては成功で我々にとっては驚きだった。そして、我々ガーディアンはこの日本支部を一時破棄する。おそらくこれからも君たちと相見えると思うがその時は戦ってやろう』
そう、江坂の声が聞こえると建物のどこかから爆発音が聞こえる。
「シャルルさん!この建物壊れます!」
「わかってるわ。みんな!ここは撤退するわよ!」
『ハイ!』
耕助と四季を含む今回の奇襲舞台は無事全員帰還することに成功した。
その帰り道に皆とは離れ、耕助は姫乃とシャルルに江坂の人形のことを話した。
「あれはな、人体人形だよ」
「人体人形?」
「あ、何か聞いたことあります。確か、禁忌でしたっけ?」
シャルルは聴き直し、姫乃には少し思い当たる節があった。
「姫乃ちゃんの言うとおり。人形使いの禁忌の魔法さ。人形に人間の肉体を組み込んで人形自体の力を底上げしまくる最低の魔法さ!」
耕助は涙を流しながら拳を握る。
「あんなのふざけてるんだよ!人形は人間じゃねぇ。感情のある人形もいれば感情がない人形もいる。でもさ、人形にだって人形らしさがあるんだよ。それを人を犠牲にして人形を強化していいわけねぇだろうが!この禁忌を犯せば、元の人形も壊れちまうんだよ。心も体もな。だから許せないんだ。人形をそんな使い方をする奴らを。だから……」
耕助は二人をじっと見る。
「ガーディアンは許せねぇ。江坂は俺が潰す……。人形をゴミみたいに扱うあいつらだけは。人形使いの『江戸川家次期当主』の俺が必ず……」
二人は耕助に何も言えなかった。
ついに戦いに決着がついた……
そして、どの勢力にもダメージが与えられた……
最もダメージの大きかった清隆は入院させられる……
これは、そんな日常の午前の部の出来事……
次回「とある入院生活の一日 午前の部」
お、俺が冥界に行く!?