小猫との会話を終え、清隆たちはグレモリー家を訪れた。
そしてそこで数日間過ごし、冥界を観光した。静流と清隆は初めて見るものばかりでワクワクが止まらず、その子供っぽい姿をリッカと巴は笑いながら見ていた。
そして、時は現代に戻る。清隆たちはリアス達と共に都市の地下のホームと呼ばれている場所に来ていた。
「いい。もう一度確認するわよ。何が起こっても平常心でいること。何を言われても手を出さないこと。上にいるのは私達の将来のライバルたちよ。無様な姿は見せられないわ。特に、グリーンウッドに葛木!」
「お、俺!?」
突然、自分の名前を呼ばれたことに清隆は驚いた。
「まぁ、私はともかく清隆は絶対に暴れちゃダメよ?あなたは風見鶏の代表なのだから。まぁ、暴れれば私と静流が止めに入るから安心しておきなさい」
リッカがそう言うと、静流も頷いた。
そして、皆が行くとサイラオーグが出迎え、そして少し話をする。そして、視線は清隆に移った。
「お前が風見鶏の代表の葛木清隆で合ってるか?」
「は、はい。はじめまして、葛木清隆です。俺のことは清隆で大丈夫です。よろしくお願いします。サイラオーグさん」
清隆は握手を求めると、サイラオーグもその握手に応じた。
「やはりか、お前からはかなり強い力を感じたのでな。俺のこともサイラオーグと呼び捨てで構わん。それにしても、お前の噂はこちらまで届いているぞ」
そんな会話を少ししていると、建物を揺らすほどの魔力のぶつかり合いがサイラオーグの出てきた扉の向こうから聞こえてきた。
清隆たちは直ぐにその音の出ていた奥の部屋に向かった。
そこにはひとりの男性とひとりの女性が喧嘩をしている風景が目に入る。
清隆はサイラオーグをチラ見する。
サイラオーグはため息をしながらこの部屋が軽い挨拶をする場所だということを伝える。
サイラオーグの説明を聞いた後、巴とリッカも溜め息をついた。
「なんだ、ここはバカを集める場所なのか?」
「ほんとよ。落ち着いて挨拶もできないガキの集まる場所なの?」
「ん??バカバッカダナ?」
「ちょっと、巴さん、リッカさん、静流。聞こえますよ」
「んだとぉ!てめぇ!」
巴とリッカが愚痴る。静流はどういう意味なのかいまいち理解できていなかったがなんとなくで繰り返した。その一言がまずいと思い、清隆は止めに入るが一歩遅かった。男の方がこちらの声に気付き、近づいてきたのだ。
「てめぇ、人間の分際でいい気に乗るんじゃねぇよ!あぁ!」
「はぁ、なんでもかんでも威嚇して。それがバカだと言うんだよ。人間でも知ってるぞ?」
巴の言葉にさらに男は顔を赤くする。そして、片手に魔力を溜める。
サイラオーグは止めに入ろうとするがそれをリッカが止める。
「サイラオーグ、見てなさい。人間の力を」
「何?」
巴に拳を振りかぶろうとする男の前に清隆が歩み寄る。
「んだ!てめぇは!」
「やめとけ。俺たちを人間という理由でどれだけ罵っても威嚇しても構わない。でも、手を出すなら容赦はしない。いいか、これは警告じゃない。命令だ」
「人間風情がこの俺様に命令してんじゃねぇ!」
男が拳を振り上げ、清隆を殴ろうとする。
「……行くぞ」
清隆が一気に魔力を出そうとした瞬間、男が突然倒れる。
「……何してんだ、静流?」
男の腕には微妙な切り傷があった。
静流はナイフをポケットに戻す途中だった。
「さっき、清隆とリッカは手を出すなと言われていた。だから、私が手を出すことにした。心配するな。少しの間眠ってもらうだけだ。30分ほどで目が覚めるだろう。これで解決だな」
静流はVサインをしながら言った。
「ごめんなさいね、サイラオーグ。清隆の出番がなくて」
リッカはニヤニヤ、しながら謝る。
「い、いや構わない。今のが風見鶏の力の片鱗なのか?」
「えぇ。 静流は今のでもかなり力をセーブしていると思うわ」
「いや、違う。俺が言っているのは清隆の方だ……。なんという魔力なんだ。おそらく、この中で気づいているのは、風見鶏の連中と俺ぐらいだろう。おそらく、少女が手を出さなかったら今頃、ゼファードルは病院に行かなくては命に危険があっただろうな」
「へぇ。今のに気付いたんだ。あなたもなかなかやるじゃない」
そんな会話をしていると、清隆の驚き声が聞こえる。
「ソーナさん。お久しぶりです」
「お久しぶりね、清隆君」
「清隆、知り合い?」
リッカは清隆に尋ねる。
「あぁ、そう言えばみんなは初対面だったな。こちら、俺の通っている駒王学園の生徒会長であるソーナさん。俺が学校でいろいろ困ってたとき、助けてくれたんだ。で、ソーナさん。右から、リッカさん、巴さん、静流だ。3人とも俺の大事な仲間だ」
「ソーナ・シトリーです。よろしくお願いします」
「リッカ・グリーンウッドよ」
「五条院巴だ。よろしく頼む」
「……中津静流。ヨロシク」
それぞれが自己紹介をしていると、使用人がやってきてさらに奥の部屋に案内される。
清隆たちの案内された部屋には向こう側にサーゼクスや上級悪魔らしい悪魔たちが座っているのがわかる。
最初は、人間という理由で嫌な目をされたが4人はそれぞれ無視を決め込む。そして、それぞれの将来についての話題に変化する。
「俺は、魔王になるのが夢です」
サイラオーグがそう答える。
その夢について数人の上級悪魔は笑い出す。清隆は拳を握りしめるが、清隆を囲む様にリッカ、静流が立つ。
『なんで止めるんですか!』
『止めるわよ!ここで暴れたらさすがにまずいわ。それに冥界では大王が魔王なんて前代未聞なことなのよ。前代未聞のことはどんな世界でも笑われる。ここは我慢よ』
『本人が耐えているんだ。ここは我慢だ、清隆』
リッカと静流の説得により、清隆は悔しそうに下を向く。
その後、リアスはレーティングゲームで勝ち抜くことが今の目標だという。
そして、ソーナの番となった。
「私の夢は冥界にレーティングゲームの学校を作ることです」
「しかし、レーティングゲームを学ぶ場所なら既にあるのでは?」
確認するように上級悪魔が問う。
その問いにソーナは淡々と答えた。
自分の考えているのは上級悪魔のための学校ではないこと。下級悪魔や転生悪魔などの身分の低い悪魔でもレーティングゲームの事を学べる学校を作りたいと。
その想いを聞いた瞬間、清隆はこの夢を応援してやりたいと思った。
しかし、上級悪魔達の反応は違っていた。
上級悪魔達は一斉に笑い出した。
「これは傑作だ」
「それは無理だ」
「夢見る乙女というわけですな」
「若いというのはいい。そのような無謀な考え、ここで話せて本当に良かったな」
どれだけ笑われても、ソーナは表情を変えなかった。
「私は本気です」
ソーナは本気で自分の想いをぶつけていた。今の冥界の差別を少しでも減らしたいと。
しかし、ひとりの悪魔が語りだした。
転生悪魔は、上級悪魔達のために存在して、その行動は上級悪魔たちのメンツを潰すことになると。
清隆は周りを見た。リアスやその眷属は目をそらしていた。
ほかの者も仕方ないという感じだった。
だが、上級悪魔に逆らう悪魔が一人だけいた。
「黙って聞いてれば、なんで会長―――――ソーナ様の夢を馬鹿にするんですか!こんなのおかしいっすよ!叶えられないなんて決まったことじゃないでしょ!俺たちは本気なんですよ!」
「下級悪魔の分際で調子に乗るな!ソーナ殿。下僕の躾がなっていないのでは?」
「すみません、後で言って聞かせます」
それでも、歯向かおうとする少年をソーナは止める。その時、清隆はソーナの顔に気づいてしまった。
今にも泣きそうな顔をしていることに。それでも、これは自分の運命(さだめ)だと言う事だと自分に言い聞かせている顔だった。それを必死に我慢をする顔でもあった。
まるで、お役目を引き継がなくてはならないことが決まっており、その運命から逃れる事の出来ないと言い聞かせていた姫乃の顔にそっくりだった。
清隆には今のソーナの顔がその顔に似ていると思った。
清隆がソーナの顔を見ていることにリッカは気づいた。それに釣られるように静流と巴も見る。
その瞬間、リッカと静流は退く。
「いいんですか?」
清隆が二人に言うと二人は呆れながら答えた。
「はぁ、仕方ないでしょ?どうせ怒られるのはグレモリー達だし。和菓子食べ放題で手を打ってあげるわ」
「……私も清隆の和菓子を食べてみたい」
「はぁ、ストッパーのお前たちがトリガーになったら本末転倒じゃないか。私は一応、最初からこうなることは予想していたからこそ面白くなりそうだから来たのだよ?だから、清隆。遠慮する必要はない。やるなら、徹底的に、だ」
リッカ、静流、巴は一斉に清隆の背中を押した。その行動に一番驚いたのはリアス達だった。
「あなた達、何をs「じゃかましいわぁぁぁ!!」葛木!?あなたたちなんで止めないのよ!」
清隆が思いっきり叫ぶ。その行動に上級悪魔たちも驚く。
「な、なんであなたたち止めないの!ここで暴れたら本当に!」
「本当に、何?」
「お前たちは間違っている」
「なぜ止めないか?面白いことを聞く。ならなぜお前たちは黙ってみている?」
リッカも既にキレており、静流も怒っていた。巴はリアスに問うた。
「お前たちは友人なのだろう?なぜ、今の清隆の様に怒鳴らない?なぜ、間違っていることをきちんと言わないんだ?」
「そ、それは相手が上級悪魔なのだから仕方ないじゃない!」
その一言に3人はため息をついた。
「あんた、本当に死ねばいいのに……」
「……これは重傷だ」
「清隆ですらこれは無理だな」
そう呟いて、3人は清隆の方に行った。
「じゃかましいわぁぁぁ!!」
清隆が怒鳴る。
その声に最初は上級悪魔の面々も驚が、直ぐに冷静さを取り戻す。
「な、何だ!人間風情が!我々の会話にいちゃもんをつけるつもりか!」
「あぁ、付けるね!お前らウザイんだよ!こいつらに夢を語らせ、あざ笑う。これが上級悪魔の、悪魔の大人のやり方なのかよ!メンツ?位?そんなもんがこいつらを笑っていい理由にはなんねぇだろうが!」
清隆の怒りは止まらなかった。
「なんで笑うんだよ!おかしいんじゃないのか!ガキの夢を応援するのが大人の使命じゃないのかよ。それをなんで、あんたらが否定するんだよ。サイラオーグの時もだ。前代未聞?だからなんだよ!無理だとなぜ決めつける!」
清隆はソーナの下に歩き、ソーナの手を握る。
「え?き、清隆君!?」
突然のことにソーナも戸惑った。
「いいか、よく聞け!ソーナさんの夢が叶わないだと?なら、俺が叶えさせてやる。たとえ、お前たち悪魔を敵に回そうと!この『桜の守護者』の名に賭けて!」
「清隆君……」
「さっきから黙って聞いておれば人間が調子に乗るなよ!―――――ッ!?」
一人の悪魔が立ち上がり、魔力を放とうとする。それをサーゼクスたちが止める前にその悪魔の肩にナイフが突き刺さり、その悪魔が倒れる。
その光景にほかの悪魔たちが驚き、倒れた悪魔から離れる。
「……お前が調子に乗るな。例え、お前がどれだけの力を持とうと私たちには勝てない。大丈夫か、清隆?」
静流を筆頭にリッカと巴の3人が歩み寄ってきた。
「あぁ、静流。俺は大丈夫だ。どうしますか、サーゼクスさん」
清隆はサーゼクスの方を向き、言い放った。
「あぁ。今回の件は私たちが全面的に悪かった。ソーナさん、本当にすまなかった。サイラオーグも今回の件は申し訳なかった」
サーゼクスは二人に向かって、頭を下げた。
「サ、サーゼクス様、顔を上げてください」
「そ、そのとおりです」
サイラオーグとソーナは直ぐにサーゼクスに頭を上げるように言う。
「我々も、すまなかった」
ひとりの上級悪魔が謝ると次々と謝り出す。
その光景にリアスやほかの新人悪魔達は驚きを隠せなかった。
「では、少し変わるが私は新人悪魔たちと風見鶏の方々を交えたレーティングゲームを行いたいと思っております。その初戦として、私の妹のリアスとソーナさん、それに風見鶏の方々の三つ巴のゲームと言うのはどうでしょう?」
その言葉にそこにいた皆が驚いた。
「それはいい。風見鶏の力というものも見てみたい」
「赤龍帝も捨てがたいが『桜の守護者』の力も見てみたい」
次々に賛成意見が出て、その組み合わせと日時が発表され、その場は解散となった。
ソーナの夢を叶えさせる為に清隆は早速行動を開始した……
それと同時に小猫にはある決断が迫られる……
冥界で皆と共に修行するか……
それとも風見鶏で修行するか……
次回「小猫の決断」
小猫ちゃんの想いを知らない君や部長がとやかく言うことじゃないよ……
感想欲しいです……