それぞれが修行を始めてそろそろ終わりがこようとしていた。
「小猫、もう少しだ!」
「は、ハイ!」
小猫はついに猫又の力を少しずつだがマスターし始めた。
清隆も桜で篭手などをつくり、それで攻防を繰り返し続けていた。
小猫は清隆との修行で格段と強くなっていった。
黒歌の事を認める事は最後まで出来なかったが、清隆に徐々に心を開き始め、猫又の力を清隆相手ならためらわずに使えるようになってきていた。
「ハァァ!!」
「クッ!」
小猫の攻撃がギリギリのところで清隆に止められる。
「まだ、甘いな!」
「グフッ!!」
そして、受け止められた小猫の一瞬の隙を清隆は突き、攻撃を仕掛ける。
その攻撃はクリーンヒットし、小猫を吹き飛ばした。
「ふぅぅ」
清隆は桜の篭手を解除し、小猫のもとに駆け寄った。
「小猫ぉ、大丈夫か?」
倒れている小猫に手を差し伸べた。
「……は、はい。やっぱり、清隆先輩は強いですね」
小猫も猫又モードを解除し、清隆に差し伸べられた手を握り、立つ。
「そんなことないって。小猫もかなり猫又モードを使いこなしてきているじゃないか」
「それでも、やはり他の人達に使うことは……」
清隆の言葉に小猫はショボンとする。
「まぁ、猫又モードを使う事によって全体的な基礎能力はかなりアップしているはずだから、今回の修行は成功かな」
「……ハイ!」
小猫は満面の笑みで答えた。
「……え?」
清隆は小猫の頭を撫でた。
「あっ、ごめん。なんかサラを思い出して。つい癖で」
清隆はすぐに手を引っ込める。
「あ、あのぉ。その、先輩さえよければ、撫でていてもらえませんか?」
「お、おぅ」
小猫が上目遣いで清隆に頼み、少し清隆は困惑するがもう一度撫で始めた。
「……うにゅぅ」
小猫は嬉しさのあまり尻尾を出して揺り動かしていた。
「小猫、よく頑張ったな」
「え?」
「なぁ、俺が和平会談の始まる前にグレモリーさんたちに言ったセリフ覚えているか?」
小猫は少しうつむいた。
「……やっぱり、あれは私に言ってくれていたのですね」
「あぁ。少しでも届いてくれてたらなと思ってな」
小猫は嬉しそうな顔をする。
「やっぱり。あの時のセリフ、私覚えてますよ。きっと私に言ってくれたと思ってました。先輩は優しいですから」
「小猫……」
「私、次に黒歌お姉さまに出会えたらきちんと話をしてみようと思います。それで、きちんと罪を償ってもらおうと思います」
「そのことなんだがな、小猫に話をしなくちゃいけないことがあるんだ」
「……?」
清隆の言葉に小猫は?マークを浮かべた。
「黒歌の事だ。この前のカウンセリングで黒歌の姿を見てお前自身はどう思っている?」
「ッ!?」
明らかに小猫に動揺が走る。
今清隆が言った様に、小猫に行なっている定期的なカウンセリングの末、遂に小猫自身も黒歌の最後の顔を見ることが出来、最後の言葉も聞いたのだ。
「小猫は黒歌が暴走して主を殺したと本気で思っているのか?」
「……て……ん」
小猫は俯いて呟いた。
「思っていません。あんな姿を見せられて、お姉さまが暴走しているなんて思えません!」
小猫の言葉を聞いて清隆は微笑んだ。
「そうか、分かった。小猫、お前にもし覚悟があるなら真実を教えてやる」
「え?」
「俺たち風見鶏が集めた情報を小猫に見せてやる。そのかわり、それを見るということは覚悟を決めてくれ。引き下がる事はもうできないかもしれない。もしかしたら、グレモリーさん達にもう会えないかもしれない。それでも真実を知りたいか?」
小猫は清隆をまっすぐ見つめた。
「……はい。私は知りたい、真実を」
「分かったよ。なら、少し休憩したらリッカさん達のところに行くぞ」
清隆は小猫を連れて学園長室まで来る。
コンコンッ
「清隆です。小猫を連れてきました」
清隆がそう言うと小猫を連れて学園長室に入る。
二人が入ると其処には、リッカ、杉並、巴、静流の4人が既に座っていた。
「小猫を連れてきたって事は、伝えるという事で間違いないのね?」
リッカの言葉に清隆は小さく頷いた。
「そう、分かったわ。まぁ、とりあえず二人も座りなさい」
リッカに言われるままに巴と杉並が立ち、席を空けてくれると二人は小さく会釈してそこに座る。
「清隆に言われたと思うけどこれを知れば、もう引き返せないわよ?本当にいいのね?」
「……はい。私はお姉さまの、あの事件の真実を知りたい」
リッカも小猫の真剣な眼差しを見て、横に置いてあった資料を小猫に手渡した。
小猫は無言でそれを受け取る。
「……これは?」
「それは、あなたの姉の引き起こした事件を我々風見鶏の情報網をすべて使い手に入れた情報が記載されている資料よ。そこにあなたの知りたい真実が書かれているわ」
リッカの言葉を聞き、小猫はその資料を素早く開き、見入るように読み続けた。
小猫の表情がどんどん強ばっていくのがその場に居た全員が理解した。
何分過ぎただろうか。その場は小猫が読んでいる間ずっと無言だった。
そして、小猫が震えだし、涙を流し始めた。
「……そ、そんな。これが真実なんですか?」
小猫は助けを求める様に横に座る清隆に尋ねた。
その小猫の言葉に清隆はゆっくりと頷いた。
「……うぅ。私は……」
小猫は資料に涙をこぼす。
清隆はゆっくりと小猫を抱きしめた。
「大丈夫。きっと、黒歌も分かってくれるよ。だから、泣くなよ。そんな姿を黒歌が見たら悲しむぞ?」
「それでも、私はなんて勘違いを……。お姉さまを信じず、恨むなんて……。私は……」
「だから心配するな。俺たちだって黙って見ているつもりはないしな」
「……え?」
小猫がゆっくりと見上げると清隆が笑っている事に気づいた。
周りを見てみると、皆は「任せろ!」とでも言いたい様に笑っていた。
「俺たちの予想では次のレーティングゲームの前夜にあるパーティーで黒歌が小猫に接触してくると考えている」
「何故ですか?」
「黒歌が所属しているヴァーリチームだというのは前に話したな?」
小猫は頷く。
「それで、おそらく小猫がグレモリーさんに拾われ、次のレーティングゲームに参加する事を知った筈なんだ。小猫の夢見をしているとき、黒歌の夢も少しだが見えたんだ。この事が意味するのは黒歌も小猫の事を考えてるという事だ。つまり、黒歌は一刻も早く小猫に会いたいと思っている。それで、会う事が出来る最も大きな出来事は前夜のパーティーってところだ」
「それでね、小猫には悪いのだけれどそのパーティーでグレモリーに近づかず、清隆のそばにいて欲しいの」
「どうしてですか?」
リッカが続け、小猫が聞いた。
「おそらく、黒歌が接触してくるとしたらあなただからよ。それをいち早く清隆に伝えて欲しいの。あとは清隆がどうにかしてくれるはずだから」
小猫は清隆を見上げる。
「任せとけって。絶対に助けるから。みんな笑顔のハッピーエンドだな」
「……で」
「ん?」
「何でそこまでしてくれるんですか?私は悪魔で、先輩は人間です」
小猫は清隆を見ながらつぶやいた。
「何で?ん~、改めて言われると少し困るけど、しいて言うなら俺がそうしたいからじゃダメか?」
「そうしたい?」
「そう。俺はただ目の前で苦しんでいる友達を見過ごせないだけなんだよな。小猫と関わったのだって、巴さんに相談されたからなわけだしな。それで、小猫と知り合って、それから友達になって。で、小猫が苦しんでいるから助けたいと思った。たったそれだけなんだよ」
(皆さんが、先輩に付いていくのが私にも理解できる気がします。もし、部長ではなく先輩に出会っていれば……)
小猫は清隆を見ながらそう思っていた。
「……ありがとうございます。何から何まで」
「あぁ。いつでも相談してくれな。じゃ、ここらで今日のミーティングは解散しますか。それと小猫、このことは口外しないでくれよ?」
「……分かりました」
力無き者は強大な力を求める……
力有り者は自らの力に恐怖する……
それが『力』……
ティアナは語る、自らの目標を……
清隆は前しか見ていないティアナにある少女の物語を語る……
才能がなく、必死でもがき続けた少女の想いを……
主人公ではなく、主人公を補佐する魔法使いを目指した少女の覚悟を……
そして、ついに修行が終了する……
次回「『力』とは……」
いいか、お前は強くなれない!このままいけば、確実に魔法使いとしての大事なものを失っちまうぞ!