小猫たちと別れ、清隆は空を眺めていた。
「ん?あれは……」
清隆がふと下を見ると自主練をしているティアナの姿が視界に入ってきた。
「ん~、行ってみるか」
清隆が部屋から出るとちょうどサラが来ていた。
「あっ、清隆」
「お?どうしたサラ?俺に用事か?」
「用事というほどでもないんですが、ティアナについてです」
「まぁ、ここじゃなんだ。俺の部屋に入るか?」
「は、はい。お願いします」
清隆に連れられるようにサラは清隆の部屋に入っていく。
「何か飲むか?」
「じゃぁ、紅茶でお願いします」
清隆は紅茶を入れるためにポットのお湯を沸かす。
その作業を数分行い、サラに紅茶を渡す。
清隆も自分の分の紅茶を飲む。
お互いの紅茶を飲む音だけが部屋に響きわたる。
「ティアナ、伸び悩んでいるようなんです」
サラが沈黙を破るようにそうつぶやいた。
「伸び悩む?修行はうまくいってないのか?」
「い、いえ、私やシャルルさんから見れば全然いいんです。でも、本人が全然納得してないみたいなんです」
「うぅ~ん。でもなぁ、オーバーワークはあんまり体によくないからな。俺の方から言ってみるかな」
「え?清隆、ティアナが今どこにいるか知ってるんですか!?」
「ほら、そこの窓から下を見てみ?」
サラは清隆の指さした窓から下を見るとティアナの自主練の様子が見えた。
「こんな場所で自主練してたんですね」
「まぁ、俺がここにいること自体知らないんだろうけど。で、どうする?俺はティアナのところに行こうと思ってるけどサラも来るか?」
清隆はサラを誘うが、サラはゆっくりと首を横に振った。
「私は遠慮しときます。私は何度も言いましたがダメでしたから。だから、清隆。あとはお願いします」
「了解」
そう言って二人は部屋を後にした。
清隆は缶コーヒーを買って、ティアナの自手練している場所に歩いていった。
すると、ちょうど疲れて休んでいるティアナの姿が清隆の目に写った。
「ティアナー!」
「へ?き、清隆さん!?」
姿を現した清隆にティアナは驚いた。
「オッス。これ差し入れ」
清隆は持っていた缶コーヒーを1本ティアナに投げる。
ティアナはそれを受け取る。
「あ、ありがとうございます。でもなんでここが?」
「やっぱ、気づいてなかったのか。俺の部屋ちょうどここの2階なんだよ。それでさっき下を見るとティアナの姿が見えたからさ」
清隆が上を指さしながらそう言った。
そして、二人は缶コーヒーをゆっくりと飲んでいく。
「今の自分の力が不満か?」
「え?」
「サラから聞いたよ。強くなろうとするのはいいことだ。でも、練習でオーバーワークをするのは間違ってると思うぞ」
「すみません。私、才能ないですから」
清隆の言葉にティアナはきっぱりと答えた。
「才能ないって。それでも、そんなに練習ばっかりしてたら体を壊すぞ?」
「才能ない私は努力でカバーするしかないんです」
清隆はその言葉を聞いた瞬間にサラの姿がよぎった。
彼女も自分の力の無さを努力でカバーしようとして何回も倒れたのだ。
少し考えたが清隆はサラの話をすることにした。
「少し、昔話をしようか」
「何でですか?」
「まぁ、聞いてって。あるところに有名な貴族の子供がいました。しかし、彼女には魔法の才能がありません。そして、その家族には魔法の力がありませんでしたが、久しぶりの魔力持ちの子供がもう一度一族の復興をしてくれることを信じ、その少女に様々な英才教育を施しました」
「……」
ティアナは黙って清隆の話を聞き続ける。
「そして、有名な魔法使いの学校に入学し、そこでもトップの成績を収めました。さらに、魔法の実技の大会のようなものがあり、家族からのプレッシャーはさらに強くなり、その中で彼女は努力し続けました。しかし、無理なオーバーワークにより、体を壊しかけます。彼女の友達たちが止めることで、無理なオーバーワークをすることはやめました。そして、大会本番に彼女は大会優勝候補の人と1回戦で当たります。彼女は頑張りましたが、負けてしまいました。そして、彼女の見つけた道は主人公になることではなく、主人公を補佐する魔法使いでした」
「も、もしかして、その少女って」
「そう、サラだよ。あ、この話したことはサラには黙っといてくれな」
清隆の話を聞いてティアナも感づいたようだ。
清隆は言い終わると、ティアナを見る。
「なんで、ティアナはそんなに力を求めるんだ?」
ティアナは少し考えるが、口を開いた。
「兄の、ランスターの弾丸に貫けないものはないという事を証明するためです」
「兄の想い、か。なるほどな」
「私は証明しなくちゃいけません。そのためには力がいるんです……」
「はぁ、分かったよ。ティアナ、少し銃を貸してみ?」
清隆はティアナに銃を貸すように言う。ティアナにはよくわからなかったが2丁の銃を清隆に渡した。
すると清隆の手に魔力が集まり、一瞬のうちに2丁の銃は砕け散った。
「なっ!?清隆さん!一体何するんですか!!」
清隆の手から無残に落ちていく自分の銃をティアナは拾い集めようとする。
「な、何でこんなことをするんですか清隆さん!!」
ティアナが怒鳴ると清隆はティアナの肩をつかんだ。
「いいか、お前は強くなれない!このままいけば、確実に魔法使いとしての大事なものを失っちまうぞ!才能のせいにするなよ!もっと自分の力を信じろよ!」
「そんなの才能がある清隆さんには私の気持ちなんて分かるはずもない!」
「なら、ティアナには分かるのかよ!力のある者の気持ちが!」
「……え?」
「力のある人間はな、いつ自分の力が暴走しないかっていう恐怖といつも戦ってるんだ!俺だって怖いよ!自分のこの力がもし、仲間を傷つけるようになったらって思うとな!ティアナにもこの気持ちが分からねぇだろ!」
ティアナは涙を流し始めた。
「な、なら、私はどうすればいいんですか……」
それは、清隆の初めて見るティアナの弱さだった。
「兄の力を証明したい……。それでも、私には力がない……。努力するしかないじゃないですか!」
「今のティアナは前しか見えていない。そんな魔法じゃ、この先戦っていくなんて絶対に無理だ。前ばかり見るのではなく、周りを見てみるんだ。周りを見て、みんなで歩んでいくんだ。そうすれば、魔法は必ずティアナに答えてくれる」
「答えて、くれる……」
ティアナは下をむいてしまう。まだ涙をこぼしているようだ。
それから少しの時間が経ち、ティアナの涙も止まった。
「す、すみません。お恥ずかしいところを」
「いんや。頼ってくれて嬉しいぜ。それで、今回は俺の想いは伝えることができたか?」
「は、はい!……って言っても、武器が……」
「なぁ、ティアナ。手をだしてみ?」
「は、はい……」
ティアナは清隆に言われたとおり、手を差し出した。
そして、清隆はティアナの手を触り出した。
「あ、あのぉ、擽ったいんですけど……」
「やっぱりだ。なぁ、ティアナって魔力弾とか作れる?」
清隆の言葉にティアナは俯いてしまう。
「得意じゃないんですよ。だから、結果的に武器に頼ることになっちゃって」
「なら、今作ってみ?」
ティアナは言われるままに手に魔力を集めていく。
「……え?えぇぇ!!」
ティアナ自身の驚きの声が上がった。
なぜなら得意ではなかった魔力弾の生成がいとも簡単に成功したからだ。
「これも、修行の成果だな」
「な、なんで?」
「サラに感謝しろよ。ティアナに少しずつこういうのが上手くなるように術式を加えていたんだ。俺も今さっき術式を見て内容を思い出してな。もう、武器は必要ないだろ?多分、この修行で一番成長したのはティアナだよ。後は、その魔力弾に慣れていく事だな。それと」
清隆は立ち上がる。
「ティアナはもう、兄貴を超えてると思うぞ。それに、ティアナの力はティアナだけの力だ。だからさ、兄貴を追うのはやめにしないか?いつまでも、居ない者を追いかけるのは見ているみんなもかなり辛いんだ。でさ、その代わりと言っちゃなんだけどさ」
清隆がティアナの方を振り向く。
「風見鶏を、公式新聞部を最強の魔法使いチームにするためにティアナの弾丸を貸してくれないだろうか?」
清隆の姿にティアナは過去の兄を思い出した。
『見てろよ、ティアナ。俺の弾丸がいずれ風見鶏で有名になるんだ。風見鶏にランスターの弾丸ありってな!』
ティアナには今の清隆の姿が兄の姿と被って見えた。
「……はい。いつまでも、どこまでだって付いていきます。私は、清隆さんの弾丸なんですから」
「ありがとな、ティアナ。それと、今のティアナの顔はすっごい綺麗な顔をしてるぜ。今まで見たなかで一番いい笑顔だ」
「ッ!?」
清隆の言葉にティアナは顔を赤くしてしまい、直ぐに自分の顔を隠した。
「それじゃ、みんなのところに帰るか」
清隆にティアナはついて行った。
そして、ティアナの新しい力について皆に報告すると、すべての歯車がうまく噛み合うように最後数日の修行は完璧だった。
「行くぞ、星!」
「任された!」
「「禁手(バランス・ブレイク)!!!」」
二人の英雄の子孫は禁じられた力を身に纏う。その姿はまるで、古代より伝えられし龍騎士のように。
「行くよ、アロンダイト……。フォルムチェンジ!!」
一人の剣士は二本の剣を鞘に収める。今の彼女の反射神経は風見鶏トップクラス。
「私に貫けない物は存在しない……」
ひとりのスナイパーはゆっくりとターゲットに視線を向ける。今の彼女の弾丸を防げるシールドは存在しない。
「デュランダル。いや、これからお前の名前はデュランダル・クロスだ」
聖剣使いは自らの聖剣に聖なる輝きと想いの力を宿す。
「魔法は想いの力……。私は強くなる!『電光化(でんこうか)』!!」
電気の力を宿す少女は自らの体に電気と光を纏わせる。
「行くわよ、スバル。私を信じてひたすら走りなさい!あなたの進む道は私が開くから!」
「うん!ティア、信じてるよ!」
一人のガンマンは自らの周りに銃弾を浮遊させ、目標を捉える。
そして、開いた道を一人の拳士が走り抜ける。その姿はまるで、虎のようだった。
その教え子を見ている影が二つ。
「リッカさん」
「えぇ、私たちの修行は完璧に仕上がったわ」
「そうですね。打倒、悪魔!ですね」
「まぁ、その前にしなくちゃいけないことがあるんだけどね」
二人は教え子たちの成長を暖かい眼差しで見ていた。
風見鶏の修行を終えた小猫は冥界に帰還する……
そして、清隆達の予測通りに黒き猫は姿を現す……
白き猫は語る、自分の願いを……
黒き猫は語る、自分の想いを……
永きに渡る姉妹の絆は再び繋がろうとしていた……
永遠に交わることのない想いが今、桜によって紡がれる……
次回「白キ願イ 黒キ想イ 紡ガレシ姉妹ノ絆」
どれだけの年月が過ぎようと、どれだけ姿が変わろうとお姉さまのことが好きだという気持ちが変わることはないのだから!