リッカ、清隆、静流、巴、シャルル、黒歌、愛紗、星、杉並、葵、サラの11人は予定された場所に集まり、そのままレーティングゲームの会場に向かった。
今回のゲーム内容はオーソドックスな短期決戦だった。フィールドも少し大きめな砂漠地帯だ。
「このフィールドなら、相手の場所なんかも全部わかりますけど作戦はどうするんですか?」
サラがリッカに質問する。
「作戦?そうねぇ。私が本気を出して倒す。後は、みんなに巻き込まれないように防御魔法や結界魔法とかをひたすら出し続けてもらう。それだけよ」
リッカのその言葉に静流と杉並と巴以外は驚きを隠せなかった。
「まぁ、みんなには悪いと思っているわ。でもね、今回だけは我慢して欲しいのよ。みんなにも軽く話したわよね。清隆の内に眠る『芳乃』の力のことを」
皆が頷く。そして、リッカはさらに続ける。
「『芳乃』の想いは本物よ。それをあいつはバカにした。みんなをバカにした。清隆をバカにした。『芳乃』の力が破滅ですって?黒歌が化け物ですって?たしかにみんなも怒っていると思うけど今回だけは譲って欲しいの」
「大丈夫なんですか?」
リッカに清隆が問う。
「えぇ、怒りに囚われているけれど自分を制御できているわ。もう、あんなことは絶対に起きることはないから心配しなくてもだいじょうぶよ」
「そうですか。なら、今回だけリッカさんのワガママを聞きましょう。みんなもそれでいいか?」
清隆がそう言うとみんなは同時に頷いた。
そのあと、始まるまで少しの時間はみんなで防御魔法を組み立てていた。
「清隆はカテゴリー5の強さを知っているか?」
清隆と作業をしていた静流が突然そう清隆に言ってきた。
「え?ん~」
「なら、カテゴリー5のメンバーを知っているか?」
「えっと、『孤高のカトレア』であるリッカさん、『体内薬物製造器』の静流、『桜の守護者』の俺、『金色の死神』フェイト・ハラオウンさん、『氷雪の女王』カナデ・エンジェリードさん、『虚無の担い手』ジョゼフ・ガリアさんですよね。でも、俺ほかの3人とは話したこと無いんでどんな人たちなのかわからないんです」
「そうか。フェイトは私同様速さで勝負を決めるタイプの魔法使いだ。カナデは氷結系の魔法のプロフェッショナルだ。それに、カナデの持っている剣がその攻撃力を底上げしている。ジョゼフは『虚無』と呼ばれる古より伝えられし魔法を使う。その正体は私でさえ詳しくは知らない。まぁ、それはいい。清隆を除き、私たちカテゴリー5には制約がかかっている」
「制約?」
「そう。力を使いすぎないようにとな。無論、個人的に解除することもできる。しかし、普段は皆つけているはずだ。この前のレーティングゲームでもリッカや私はこの制約を外すことなく戦っていたのだからな。だが、今回のリッカには制約がかかっている痕跡が全くない」
その言葉で清隆には嫌な汗が吹き出してきた。
「ま、まさか……」
「今回のリッカは本気だ。しかも、誰も見たことのないような力を使う。このフィールドには制約がない。フィールドをどれだけ荒らしても文句は言われない。だから、もしもリッカが殺そうとしてしまったときは命懸けで止めなければならない。その覚悟だけはしておいて欲しい。もしもの時は私も制約を外す」
「了解しました」
そのまま、静流は違う場所に作業をしに行ってしまう。
「制約、か。でもな、静流。リッカさんはもう大丈夫なんだよ。今のリッカさんにはそんな心配なんてな。リッカさんは過去を乗り越え、今を見続けることが出来るんだ。もう、リッカさんが何かにとらわれるなんて絶対にないんだ」
清隆は不安どころか笑っていたのだった。
『では、レーティングゲーム。スタートです!!』
アナウンスがフィールド中に広がる。
そのアナウンスと共にリッカは上空に飛ぶ。
「皆、死ぬ気で守るぞ!!」
『オー!!』
一気にいくつもの魔法が展開されていく。その中には清隆の桜の花びらも混じっていた。
リッカは上空で魔力を溜める。
直ぐに相手の悪魔達が魔法を撃ってくるが全てリッカに届く前に相殺されてしまう。
「な、何なんですか、あの魔法は!?」
「すごい、これがリッカの本気か!?」
「これは、禁呪『偉大なるテュポーンの術』か!?」
サラ、愛紗、杉並の順で言った。
「はぁァァァァァ!!あなただけは許さないわよ!眷属と共に吹き飛べぇぇぇぇぇ!!!!!」
その言葉と共にフィールド中に大嵐が巻き起こる。
そして、残ったのは風見鶏とディオドラだけだった。
『え、え!?あ、えぇっと、ディオドラ様の眷属、全員リタイアです』
アナウンスの悪魔も一体何が起こったのかも分からず、全員が残っていないことを確認して眷属全員とまとめた。
さすがのディオドラも驚きを隠せなかった。
「な、何なんだ!!今のふざけた魔法は!!あんなもの過去のデータにはなかったはずだ!!」
ディオドラもやけになりリッカに怒鳴り散らす。
リッカは静かに降りてくる。
「過去のデータ?そんなものあるわけないじゃない。だって、これを使ったのもほんとに久しぶりだもの。それに、今まで本気出してなかったし。アスタロト、あなたも本気出したら?そうしないと本気出す前にやられるわよ?」
「クッ、化け物が!!」
その瞬間にディオドラが砂埃を辺りにまき散らすと突然魔力が膨れ上がった。
「行くぞ、化け物がッ!?」
ディオドラが魔力を溜めようとした瞬間にリッカは突然ディオドラの前に現れる。
「遅すぎよ!」
リッカはディオドラを杖で弾き飛ばし、杖に魔力を溜める。
そして、そこから先程に似ているが少し違う暴風が放たれディオドラを襲った。
その力に風見鶏も驚きを隠せない。
もちろん、清隆もだ。
「これが、リッカさんの本気なのか」
「うむ。今のも禁呪の魔法だな。確か『破滅を呼ぶ龍王の咆哮』だったと思うぞ。龍王の咆哮はどのようなものも吹き飛ばす」
清隆の言葉に杉並がその技についての説明を行う。
「葛木はグリーンウッドがなぜ、『孤高のカトレア』と呼ばれているか知っているか?」
「いや、俺は知らないけど」
「二つ名とはその人物の全てを表すような言葉だ。体内薬物製造器がいい例だな。そして、グリーンウッドの力はその圧倒的な力故に仲間を近づけさせない。グリーンウッドは力の加減は出来るだろう。しかし、周りから見れば、あんな力に近づきたいと思うか?」
「それが、孤高の由来……」
杉並の言葉を聞いて清隆が最後につぶやく。自分とリッカとの力の差を。
ディオドラはあまりの威力に跪いていた。
「ハァハァ、何なんだよ!!僕はアガレスやその眷属全てを倒したんだ!それなのにたかが人間一人に僕が負けるはずないじゃないか!!」
「あんたが言ったのよ、『化け物』と。その言葉の否定はしないわ。でもね、『芳乃』を破滅やら化け物と言った言葉だけは絶対に許さないわ。私が最も愛する人をバカにしたことも。覚悟しなさい、ディオドラ・アスタロト!!禁呪『彷徨える鎌鼬』!!」
ディオドラの居る場所一面に鎌鼬が起こる。
その威力は絶大だった。
直ぐに静流が動き出そうとするが、清隆が止める。
「なぜだ!あのままではアスタロトが死んでしまう!!」
「大丈夫だって、静流。よく見てみろよ」
清隆に言われ、ディオドラを見る。
すると、そこには激しく出血しているが呼吸しているディオドラの姿があった。
しかし、リッカは拳を握っているがそれ以上の追い打ちをしようとはしなかった。
「その量の出血だとあなたの負けみたいね。分かった?芳乃や黒歌以上の化け物の存在を。これが本物の化け物の力よ。あなた程度じゃ風見鶏は勝てないの。もう、二度と清隆の前に現れないで!!次、芳乃をバカにしてみなさい。あなたの命を狩らせてもらうわよ!」
「いずれ、後悔することになるぞ。破滅の桜に関わることを……。あいつに運命を狂わされ、お前たち皆は滅びる。それに、お前たちは既に無限に……」
最後にディオドラは何かの言葉を残そうとするが言い切る前にその場から姿を消した。
『ディオドラ様が投了したため、このゲーム風見鶏公式新聞部の勝利です』
アナウンスがステージ内に響きわたった。
その瞬間、みんなの顔には笑顔が浮かんだが、清隆にはディオドラの言葉が離れなかった。
『破滅の桜』……
全てを破滅の道に引きずり落とす力……
忘れていたわけじゃない……
それでも、再び考えさせられる……
この力を持つ自分がみんなと共に暮らしていて本当に良いのかを……
全てを一人で背負い込む……
誰にも迷惑をかけないために……
しかし、そんな身勝手を風見鶏の仲間達が許すわけがなかった……
自分達の未来を救ってくれた清隆の前にひとりの少女が手を伸ばす……
次回「清隆の弱さ」
その言葉は清隆が見せる心の闇だった……
中途半端に強く、大きな使命を背負ってしまった自分の……